定期列車は1日6往復が運行されており、うち2・5号は東室蘭駅発着、それ以外は室蘭駅発着である。東室蘭駅 - 札幌駅間の所要時間は約1時間半、最高速度は120 km/hである[1]。
2024年3月15日までは、室蘭発着列車の室蘭駅 - 東室蘭駅間は普通列車扱い(無愛称)であったが、翌16日から特急列車扱いとなっている。ただし同日以降も、同区間の駅相互間を利用する場合に限り、普通乗車券のみで指定席の空席を利用できる[2]。
本列車は、函館駅 - 札幌駅間を結ぶ特急「北斗」と東室蘭駅 - 札幌駅間で運行経路が重複するが、「北斗」系統を補完して道央・胆振地区の都市間輸送に重点を置いた性格となっており、「北斗」系統と比較して停車駅が多くなっている。
使用車両・編成
2024年3月16日以降の編成図
|
すずらん |
← 室蘭 札幌 →
|
|
- 凡例
- u=普通車指定席「uシート」
- 指=普通車指定席
|
札幌運転所に所属する785系電車および789系電車(1000番台)の2系列が共通運用されている。いずれも全車普通車の5両編成で、4号車が指定席「uシート」、それ以外は通常の指定席となる。
2020年3月14日より、白老町に「ウポポイ」が開設される(同年7月12日)のを前に指定席を2両に拡大した[3]。2024年3月16日には、自由席を廃止して全車指定席となった[2]。
運行開始時点では781系電車が用いられていたが、785系への置き換えで運用を終了した。その他に臨時に用いられた車両については下記「#沿革」を参照。
列車名の沿革
- 1956年(昭和31年)11月19日:函館駅 - 札幌駅間を函館本線・千歳線・室蘭本線で結ぶ客車急行列車として「すずらん」が「洞爺」を改称して設定される。
- 1960年(昭和35年)4月1日:「すずらん」一等車2両を含むキハ55系気動車による編成に変更。運転時分は、蒸気機関車牽引の客車列車時代に比べ、約1時間の短縮の5時間ちょうどとなる。
- 同年10月1日:冬季の寒さ対策として「すずらん」の二等車をキハ22形気動車に置き換える。
- 1961年(昭和36年)日付不詳:上記の暫定的な措置がキハ56系の増備に伴い解消され、一、二等車共に北海道用の急行形気動車となる[6]。
- 1968年(昭和43年)10月1日:このときのダイヤ改正に伴い「すずらん」が6往復へと増発。
- そのうち1往復は客車列車で、夜行急行「たるまえ」を「すずらん(上り・下りとも)6号」に名称変更したものである。一等寝台車1両、二等寝台車2両、一等車1両を含む編成のほか、運行区間、列車番号(1217・1218列車)などもそのまま引き継がれた。運転時間帯の都合で食堂車の連結はない。
- 1980年(昭和55年)10月1日:「すずらん」は定期列車の運転を終了。臨時列車のみとなったが、夜行列車(8217・8218列車)は使用車両を14系客車とし、運転期間を繁忙期に限りながらも夜行快速「ミッドナイト」が運転開始される1988年(昭和63年)まで存続した。
- 14系化後の編成は当初は座席車(普通車指定席・自由席)のみだったが、運行末期には座席車に加えて2段式B寝台車も連結された。列車名としては当初は「すずらん59号・60号」、後に「すずらん89号・90号」とされた。
- 1992年(平成4年)7月1日:「すずらん」が室蘭駅 - 札幌駅間のエル特急として名称復活。以下は「運行系統の沿革」を参照。
運行系統の沿革
ここでは、室蘭駅 - 札幌駅間の系統を含め、室蘭本線・千歳線を経由する列車で函館駅までの直通がないものを述べる。なお、函館駅までの直通系統については「北斗」の項目を、循環急行「いぶり」(札幌駅 - 伊達紋別駅 - (胆振線) - 倶知安駅 - 札幌駅)は「胆振線」を参照されたい。
国鉄時代
- 1950年(昭和25年)10月1日:室蘭駅 - 札幌駅間を運行する準急列車が設定される。この列車には翌1951年(昭和26年)に「エルム」の名称が与えられる。
- 1953年(昭和28年)5月16日:虻田駅(現在の洞爺駅) - 札幌間に準急列車が運行開始。後述の準急「たるまえ」の前身に相当する。
- 1956年(昭和31年)11月19日:「エルム」に長万部駅発着編成を連結。なお、長万部駅 - 東室蘭駅間は普通列車として運行された。
- 1958年(昭和33年)10月1日:虻田駅 - 小樽駅に臨時準急列車「たるまえ」新設。
- 1959年(昭和34年)
- 6月7日:札幌駅 - 様似駅間を千歳線・日高本線経由で運行する臨時準急列車として「えりも」が運転開始する。
- 9月22日:室蘭駅 - 札幌駅間に気動車準急列車として「ちとせ」が設定される。
- 「ちとせ」については、長万部駅・礼文駅・豊浦駅・虻田駅始発の列車を東室蘭駅で分割・連結するものもあった。なお、長万部駅・礼文駅・豊浦駅・虻田駅 - 東室蘭駅は普通列車として運行された時期もあった。
- 1960年(昭和35年)4月22日:札幌駅 - 様似駅間を運行する準急列車として「日高」(ひだか)運転開始。
- 1961年(昭和36年)10月1日:このときのダイヤ改正に伴い、以下のように変更する。
- 室蘭駅 - 札幌駅間を運行する準急列車の名称を「ちとせ」に統合。これにより、「エルム」の名称廃止[注 2]。
- 「たるまえ」は定期化とともに延長され、函館駅 - 旭川駅の準急列車となる。以下の「たるまえ」の沿革はこちらを参照のこと。
- 1963年(昭和38年)6月1日:臨時準急「えりも」が定期化される。
- 1965年(昭和40年)10月1日:豊浦駅・洞爺駅 - 札幌駅間に準急列車として「とうや」新設。
- 1966年(昭和41年)
- 3月5日:準急列車制度の改変に伴い「ちとせ」・「とうや」・「えりも」・「日高」を急行列車に格上げ。
- 6月1日:「日高」は「えりも」に編入。同時に1往復増発し3往復体制とする。
- 1972年(昭和47年)3月15日:「とうや」を「ちとせ」に統合。また、「えりも」下り3号・上り1号の静内駅 - 様似駅間を普通列車に格下げ。「えりも」は全列車が2両編成となる。
- 1980年(昭和55年)10月1日:室蘭駅 - 白石駅間電化完成および千歳空港駅(現在の南千歳駅)新設に伴うダイヤ改正により、室蘭駅 - 札幌駅 - 旭川駅間に781系電車による電車エル特急「ライラック」を新設。
- 「ライラック」デビュー当時の停車駅(札幌駅 - 室蘭駅間)
- 1982年(昭和57年)11月15日:「ライラック」・「ちとせ」・「えりも」が新札幌駅に停車。
- 1985年(昭和60年)3月14日:「ライラック」の東室蘭駅 - 室蘭駅間を各駅停車の普通列車に格下げ[7]。
- 1986年(昭和61年)
- 3月3日:「えりも」の静内駅 - 様似駅間が全列車普通列車に格下げ。千歳空港駅 - 白石駅 - 札幌駅間の最高速度を、従来の100 km/hから120 km/hに向上[8]。
- 11月1日:「えりも」を廃止して札幌駅・苫小牧駅間を「ちとせ」に編入[9]。また、東室蘭駅 - 幌別駅間、および苫小牧駅 - 沼ノ端駅 - 千歳空港駅間の最高速度が従来の100 km/hから120 km/hに向上[8]。
- 1988年(昭和63年)3月13日:幌別駅 - 苫小牧駅間の最高速度が、従来の100 km/hから120 km/hに向上。これにより当該区間を通る「ライラック」も最高速度が120 km/hに引き上げられ、所要時間が3 - 10分程度短縮された[10]。
民営化後
- 1990年(平成2年)9月1日:「ちとせ」を廃止して「ライラック」に編入。
- 1992年(平成4年)7月1日:新千歳空港開港・新千歳空港駅開業に伴い、旭川駅 - 札幌駅 - 千歳空港駅・苫小牧駅・室蘭駅間を直通で結んでいた旧「ライラック」を廃止し運転系統を再編。
- 新千歳空港駅・札幌駅 - 旭川駅間の新「ライラック」と、室蘭駅 - 札幌駅間の「すずらん」(7往復)に分離。
- 新「ライラック」については、新千歳空港駅 - 札幌駅間は快速「エアポート」として運行。
- このころ、781系の出入口ドアの増設工事のため車両不足になり、「すずらん」が785系2両編成2本連結やキハ183系3両編成による代走が翌年6月頃まで見られた[11]。
- 1994年(平成6年)3月1日:「スーパー北斗」運転開始により「北斗」系統を8往復から11往復に増発。これに伴い「すずらん」のダイヤが見直され、利用の少ない2往復(7・13号、4・14号)の運行を取りやめ、5往復に削減[12]。
2000年代の動き
- 2000年(平成12年)
- 2004年(平成16年)3月13日:「すずらん」全車禁煙化[13][14]。
- 2007年(平成19年)10月1日:「すずらん」の全列車を785系電車に置き換え、札幌駅 - 南千歳駅間の最高速度を130 km/hに引き上げ[15][16][注 3]。これにより札幌駅 - 南室蘭駅間にて平均5分の所要時間短縮が図られた。また、「すずらん」全列車が沼ノ端駅に停車[16]。
- 2008年(平成21年)3月23日:室蘭市に所在する入江運動公園陸上競技場で開催されるJリーグの試合への便のため、室蘭駅 - 札幌駅間に臨時特急「コンサドーレ号」がキハ183系6両(基本番台車)で1往復運転された[18][19]。当列車を使用した応援ツアーも組まれた。
- 2009年(平成21年)9月20日:昨年同様、室蘭駅 - 札幌駅間に臨時特急「コンサドーレ札幌号」がキハ183系6両(基本番台車)で運転された[20]。
2010年代の動き
- 2010年(平成22年)12月4日:10号の運転時刻を繰り上げる。同時に土休日やイベント開催時に運行される臨時列車1本(82号・改正前のすずらん10号の時間帯)が増発される[21]。「スーパーカムイ」などに使われていた789系1000番台が臨時列車として運用される。
- 2011年(平成23年)6月12日:室蘭駅 - 札幌駅間に臨時特急「コンサドーレ号」がキハ183系5200番台「ノースレインボーエクスプレス」で1往復運転された[22]。「すずらん」同様、東室蘭 - 室蘭間は普通列車として運転されるため、乗車券のみでリゾート気動車に乗車することが出来た。
- 2012年(平成24年)10月27日:「すずらん」1号の運転時刻を繰り下げる[23]。
- 2013年(平成25年)11月1日:ダイヤ改正により以下のように変更[1][24]。
- 札幌駅 - 南千歳駅間の最高速度を120 km/hへ引き下げ[1]。
- これにより、南千歳駅で「すずらん」3号から「スーパーおおぞら」3号の接続ができなくなる。
- 臨時列車として運用されていた789系1000番台が785系と共通運用となる。
- 2014年(平成26年)
- 2016年(平成28年)
- 3月26日 : ダイヤ改正で以下のように変更[27]。
- 室蘭発5時台に「すずらん」1号(札幌着は7時過ぎ)を増発。これにより、東室蘭・登別・白老から新千歳空港始発の航空便が利用可能となる。
- 「はまなす」の廃止に伴い、最終の「すずらん」12号の札幌発を22時ちょうどに繰り下げ。
- 「北斗」4号の札幌駅発車時刻繰り上げに伴い、札幌駅7:30発の「すずらん」2号を増発。
- 「すずらん」2号と5号が札幌駅 - 東室蘭駅の運行となり、東室蘭駅 - 室蘭駅は普通列車に乗り換えとなる。
- 2017年(平成29年)3月4日:「エル特急」の呼称を廃止し「特急」とする[28]。車内自動販売機サービスを廃止。
- 2018年(平成30年)9月10日 - 9月19日:胆振東部地震による北海道内の電力供給量の不足に伴い、上り3本・下り3本を運休[29]。
2020年代の動き
側面行き先表示
(2017年撮影、上:785系、下:789系1000番台)
列車愛称の由来
五十音順による
- 「エルム」:ニレ科の植物の総称。
- 「えりも」:襟裳岬から。
- 「すずらん」:北海道に多く見られる花のスズランから。
- 「たるまえ」:通過地付近にある樽前山から
- 「ちとせ」:通過地である千歳市・千歳線にちなむ。
- 「洞爺」・「とうや」:洞爺湖から。
- 「日高」(ひだか):日高支庁・日高本線から。
「すずらん」は、北海道旅客鉄道が商標として登録している[41]。
さらに見る 登録項目等, 内容等 ...
登録項目等 | 内容等 |
商標 | すずらん |
称呼 | スズラン |
出願番号 | 商願平04-270861 |
出願日 | 1992年(平成4年)9月29日 |
登録番号 | 第3021046号 |
登録日 | 1995年(平成7年)1月31日 |
権利者 | 北海道旅客鉄道株式会社 |
役務等区分 | 39類(旅客車による輸送) |
閉じる
注釈
130 km/h運転に対応させるために架線の改修(主に架線張力の調整)を白石駅 - 南千歳駅間で実施したため[17]。以南は気動車のみが130 km/hで走行可能。
当初は、2020年4月24日に再開予定だった[32]。
出典
『鉄道ジャーナル』第21巻第1号、鉄道ジャーナル社、1987年1月、49頁。
“「スーパーカムイ」デビュー”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 1. (2007年10月2日)
松本典久「列車追跡シリーズ エアポート〜スーパーホワイトアロー 空港直通特急SWA」『鉄道ジャーナル』通巻428号(2002年6月号)、鉄道ジャーナル社、2002年6月、41頁、ISSN 0288-2337。