新千歳空港駅(しんちとせくうこうえき、英: New Chitose Airport Station)は、北海道千歳市美々にある北海道旅客鉄道(JR北海道)千歳線の駅である。電報略号はシセ。駅番号はAP15。快速・特別快速「エアポート」が発着し、新千歳空港国内線旅客ターミナルへ直結する。日本国内で最北・最東の空港直結駅であるとともに、日本国内で最も東にある地下駅でもある。
終日社員配置駅。みどりの窓口・自動券売機・指定席券売機[2]・話せる券売機[2]・自動改札機設置。自動券売機は到着ロビーからの動線に配慮して改札口左右に配置している。トイレは改札内にある。2021年1月21日より、トマム駅からの列車利用時に限り、「QRコード乗車駅証明書」による精算機の自動精算を行うサービスが利用可能である[報道 9]。
2014年(平成26年)に海峡線(津軽海峡線)吉岡海底駅・竜飛海底駅が廃止されてからは、JR北海道唯一の地下駅となっている。島式ホーム1面2線で有効長は6両分。ディーゼル車への対策としてトンネル中央と駅入口付近に強制排気設備を2基ずつ計4基備えており、当初はトマム駅、富良野駅、ニセコ駅方面などに臨時リゾート列車(「クリスタルエクスプレス トマム & サホロ」「フラノエクスプレス」や[新聞 11]、「ニセコエクスプレス」などが発着していたが、開業当初から排煙の残留や異臭に対する苦情が利用客から生じ[新聞 11]、また快速「エアポート」に時刻変更が発生するなどダイヤ編成上の不都合が多く、2005年(平成17年)以降設定されていない。
自動販売機が設置されている。駅ホームにあったキヨスクは2015年(平成27年)6月末の営業をもって休止となった。
早朝・深夜を除いた時間帯は、いずれかの駅ホームで快速・区間快速・特別快速「エアポート」が発車を待つダイヤとなっているため[4]、基本的に乗客は駅ホームで待たずに乗車できる。そのため駅ホームにはベンチを設置していない。
国内線出発ロビーまでは徒歩約6分。出発客は改札口正面左右のエスカレーターで出発ロビーへ、到着客は両脇のコンコースから改札口へ向かうよう通行ルートを分離している。国際線利用客は国内線ターミナル2階からターミナル間連絡通路を利用して国際線ターミナルへ移動する。国内線到着ロビーに当駅始発列車・南千歳駅乗換列車の発車標が設置されており、航空機を降りてすぐに列車の発車時刻が確認できるようになっていたが、2018年12月現在、南千歳駅での乗換列車の時刻については利用案内を表示するものに差し替えられている。
内装デザインは開業当初1990年10月からJR北海道と提携関係にあったデンマーク国鉄 (DSB) との共同制作第1号として[5]、「空港駅としての近代的な駅」「北海道の気候風土を感じさせる駅」「地下駅を感じさせない駅」をデザインコンセプトとしコンコースに北海道の昼夜の空をイメージした白と青の天井、太陽光をイメージした白い壁を照らすウォールウォッシャー連続照明、温かみと安定感を表す赤い柱などトータルデザインでコントロールを図った[6]。
その後2018年4月より訪日外国人の増加に対応するため大規模リニューアルに着手し、駅のレイアウトの大幅な見直しとともに「”北海道らしさ”を実感していただけるデザイン」をコンセプトとして白や木目調をあしらった内装や北海道の風景を投影する映像装置を設置し12月26日にリニューアル工事が完成[報道 10][報道 6]。設備は改札口の拡張や、待合室部をみどりの窓口や外国人デスクに変更、旧みどりの窓口・外国人デスク部を待合室に転用、一般トイレを改札内に移設し多目的トイレの新設を行った[報道 10][報道 7]。
(出典:JR北海道:駅の情報検索)
2022年(令和4年)度の1日平均乗車人員は13,935人である[7]。2015年(平成27年)度には新札幌駅を、2016年(平成28年)度には手稲駅を抜き、2019年度までJR北海道内の駅別乗車人員で札幌駅に次いで2番目に多い駅となっていた[新聞 12]。しかし、2020年度は新型コロナウイルスの流行による影響で新千歳空港の旅客需要が低迷したため[新聞 13]、当駅の利用者数は前年度と比べ半分以上減少し社内第8位へと後退した。2022年度には乗車人数が回復し、再び乗車人数2位となった。
当駅の1日当たりの平均乗車人員数の推移は以下の通り。
年度 | 乗車人員(人/日) | 出典 |
---|---|---|
2011年(平成23年) | 12,801 | [8] |
2012年(平成24年) | 13,458 | [9] |
2013年(平成25年) | 14,085 | [10] |
2014年(平成26年) | 14,118 | [11] |
2015年(平成27年) | 15,066 | [12] |
2016年(平成28年) | 16,121 | [新聞 12] |
2017年(平成29年) | 17,096 | [13] |
2018年(平成30年) | 17,759 | [新聞 14] |
2019年(令和元年) | 17,710 | [14] |
2020年(令和 | 2年)6,546 | [15] |
2021年(令和 | 3年)8,526 | [16] |
2022年(令和 | 4年)13,935 | [7] |
国鉄北海道総局時代の新千歳空港駅計画の初期段階から第二期計画として苫小牧駅方面の美々駅・植苗駅への延伸を行い空港支線の総延長を約10kmとする案が存在しており[新聞 1]、また苫小牧市が1993年(平成5年)から市の重点要望に位置付け北海道も前向きな姿勢を示していたことから1997年(平成9年)から内部で検討を開始した。しかし、JR北海道は1999年(平成11年)時点で「1000億円近い費用がかかる新線建設が採算に見合うだけの効果はない」と否定的な姿勢を示した[新聞 15]。
1999年9月に北海道・JR・日本鉄道建設公団などが新千歳空港駅から胆振・日高方面への新線研究グループを発足させ、検討を行った[新聞 16]。延伸部分5 - 10 kmのトンネル掘削と南千歳 - 新千歳空港駅間の複線化トンネル新設を合計し、総工費は1,000億円と試算された[新聞 17]。 同年9月には、
の3案が提示され、中でも滑走路北側ルートは大幅な工費節約が見込まれていた[新聞 18]。
2000年(平成12年)の八千代エンジニヤリングによる調査では2003年(平成15年)度着工・2007年(平成19年)度開業の想定で[18]、
の5案が提示されこのうち一番目の南千歳-植苗複線案と二番目の新千歳空港-植苗単線接続最小設備案の収支計画が試算されたが、当時のニュータウン鉄道整備事業費補助・空港整備特別会計の現行制度上では2案ともに単年度黒字化に22年・50年以内の資金黒字化は困難、最短で植苗単線接続案で空港整備特別会計による整備を空港敷地外に適用し2020年時点で北海道新幹線未整備時の場合で単年度黒字化に19年・資金黒字化までに35年と算出された[18]。
協議は結論を出せず、2001年(平成13年)度も継続された[新聞 19]が、延伸が行われることはなかった。
2018年(平成30年)にはJR北海道の経営改善や道東・苫小牧方面への利便性向上を目的として再度支線の複線化とホーム増設、苫小牧方面・石勝線方面への新線建設構想が報道され、国の主導による工事で空港敷地内も含まれることから空港整備勘定の活用も検討し、2022年(令和4年)の完成を見込むとしていたが[新聞 20]、2019年(平成29年)4月に発表されたJR北海道の長期経営計画では千歳線の強化策として快速エアポートの7両化とともに苫小牧方面へのスルー化を2023年(令和5年)以降に検討するのみにとどまっている[19][新聞 21]。
2020年(令和2年)1月4日付けの北海道新聞によると、北海道空港 (HKK) とJR北海道が、当駅を2030年(令和12年)までに国際線ターミナルビル付近の地下へ移転させ、ホームを2面4線以上に拡大した上で6両より長い列車も停車させるようにすることを検討しているとした[新聞 22]。
2023年(令和5年)時点では北海道エアポートの「北海道内7空港特定運営事業等マスタープラン」[20]において空港駅とターミナルビル間の縦導線の改善計画が盛り込まれており、JR北海道は同計画と連携して駅の規模や輸送のあり方を再検討することを示唆している[21]。
2024年(令和6年)に公表されたJR北海道の中期経営計画「JR北海道グループ中期経営計画2026」では北海道新幹線札幌開業後の在来線改良案の一環として空港駅のスルー化の検討が再度盛り込まれ、この他在来線の改良による高速化(軌道強化・線形改良・最高速度の向上・高架化による踏切解消など)を行い、札幌駅 - 新千歳空港駅間(46.6km)の所要時間を最速33分(2024年時点)から最速25分に短縮する構想が示されている[22]。
1985年に北海道新長期総合計画骨子案のプロジェクトの一つとして道内を結ぶリニアモーターカー路線網案が検討され[23]、その後札幌-新千歳空港間でのリニア実験線誘致に向け1986年7月に北海道経済連合会ら8団体が「北海道磁気浮上式超高速鉄道推進協議会」(1990年に北海道リニアモーターカー推進協議会に名称変更[24])を設立し[新聞 23][23]、87年10月には新長期総合計画に正式に盛り込まれた[新聞 23]。
北海道磁気浮上式超高速鉄道推進協議会の想定案では土地が平坦で長く直線に近い路線が敷設可能、用地取得費が安く取得が容易、積雪寒冷地に位置し過酷な条件下での技術達成が可能、実用実験終了後そのまま営業線として活用可能といった利点を挙げ、国鉄(JR)リニア式・総工費約1,100億円・総延長約45 km・途中駅無し・所要時間8分・最高時速450km・1日あたり乗客1.6-1.9万人、1989年に着工し1991年4月から1992年6月にかけ実験を行い新千歳空港ターミナルビル供用に合わせ1992年7月に営業運行を開始する目標とし、道やJR北海道と民間企業からなる第三セクターが建設・保有を行い運行はJRに委託する形で運営、収支は建設費借入比率50%の場合償却後黒字に7-8年・借入金完済に16-18年で民間活力事業として十分成立すると算出されており[25]、またHSSTと比較し最高速度が速く苫小牧や函館へ延伸した場合のメリットが大きい事も挙げられ、総経費の内訳として車両費20両で160億円・工事費445億円などを合わせた1,100億円と見積もられていたが、1987年時点では札幌-新千歳直行のJR式案と異なり途中駅を設け各駅停車便を運行するHSST案に賛同していた広島町・恵庭市や都市交通として中速型HSSTの導入を検討していた旭川市といったHSST推進派も複数存在していたこともあり全道的なまとまりに欠ける指摘が見られた[26]。
その後経済界がJR式・JRがHSST式による建設想定といった認識のずれなど意思統一が取れなかったことから誘致運動は劣勢となり[新聞 23]、1989年に運輸省が山梨・宮崎・札幌-新千歳を建設候補地として選定したのち山梨県への建設に決定[新聞 24]。札幌-新千歳間の計画については実用線第一号として誘致運動を続け1989年時点では準備調査を目的とした財団法人の設立の検討と事業計画として総事業費1,300億円・第三セクター形式での運営で資本金260億円・1994年着工と1997-8年頃の開業を見込み[27]、北海道リニアモーターカー推進協議会は1990年に財団法人「北海道リニアモーターカー調査会」を設立したが[新聞 25]、1997年の第三次北海道長期総合計画ではリニア計画が削除され誘致運動が実質終了し2000年5月には建設コスト低減の見通しが立たないとして調査会を解散し誘致を正式に断念した[新聞 26]。
この他、1972年には日本航空がHSSTによる札幌-千歳空港間約45 kmのアクセス鉄道計画を発表し、1976年時点では1980年の実用化と第三セクター式による運営で恵庭・北広島に途中駅を置く計画としていたが実現に至らなかった[28]。
新千歳空港駅 - 旭川駅間は、2016年3月までエル特急「スーパーカムイ」及び快速「エアポート」(札幌駅で種別変更を行う)による直通列車が運転されていたが、快速区間の利用客増大に特急用車両では対応が難しいことなどを理由に運転が取りやめられた。これに対し、2021年1月の北海道新聞にて新千歳を含む道内7空港を一括運営する北海道エアポートとJR北海道が、新千歳空港から南千歳駅 - 追分駅 - 岩見沢駅を通り旭川駅までを結ぶ新たな特急を運転する構想を持っていることが報道された[新聞 27][29]。北海道エアポートでは新しい特急の設定により、悪天候時に旭川空港を代替空港として活用しやすくすることを狙っている[29]。新千歳空港 - 旭川間の所要時間は約1時間30分を想定している[29]。
ただし、新千歳空港駅の発着容量が逼迫していることや、南千歳 - 追分間(石勝線)並びに追分 - 岩見沢間(室蘭本線)が非電化のため気動車での運転が求められることなど課題も多いため、この構想については公表時から一部で疑問視された[29]。実際2024年3月にJR北海道が公表した「JR北海道グループ中期経営計画2026」の中でも、本構想に該当するような特急の計画は盛り込まれておらず、構想は事実上頓挫している。
新千歳空港駅 - 南千歳駅間は+20円の加算運賃が設定されており、営業キロは2.6キロ (km)に対し運賃は220円となる[報道 11][30][報道 8]。開業時から2019年9月までの加算運賃は+140円とされていたが、設備投資額等の回収が順調なため経営再建を目的とした運賃改定に合わせ引き下げられた[報道 8]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.