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替え歌(かえうた)は、パロディの一形態。このことから異名同曲異歌詞曲(いめいどうきょくいかしきょく)とも呼ばれる。
メロディやリズムを可能な限り変えないようにしながら、本来その歌に付けられた以外の歌詞を作詞して歌うこと、またはそれによって歌われる歌のことである。「替え唄」とも表記される(主に嘉門達夫が使用)。
なお、元がインストルメンタル(歌詞がない、楽曲のみの作品)の場合は「単なる作詞」となるか、「替え歌」となるか議論が分かれる。
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古く著作権の意識がなかった頃には、替え歌は当たり前のものであり、むしろ民謡は個々人が変えて歌うのが当たり前であった面もある。現在でもたとえば八重山民謡のトバラーマ大会では出場者はそれぞれ自前の歌詞を歌う。
軍歌「小楠公」が歌詞を置き換えて寮歌や労働歌になったのもこの感覚が残っていた時代のことで、作詞者が陸軍や労働組合に抗議したという話は残っていない。また、この頃の歌には七五調四連のいわゆる今様の形式に則った定型詩を歌詞とする例が多かったのも、替え歌を容易くしていた。
現在では替え歌のほとんどは、遊び感覚で作る物である。替え歌その物を趣味として作る場合もある。大人がパーティーの余興に作ったり、子供の遊びの一部として作られる物など様々である。元になる曲はアニメソングや童謡・唱歌、あるいはその時期の流行曲など、知名度が高い曲が多い。
内容は大人の場合は、時事ネタや内輪ウケが多い。子供の場合は下ネタや残虐なもの、身分による差別、身体上の欠点をネタにするものが多い。また単語の音を生かして、別の言葉に置き換えたり、語尾を否定語にするといった、単純なものもある。これらのネタは、大人の間では幼稚なものとみなされやすい。
一例として、以下のようなものがある[2]。
内容を変えずに、日本語の方言で歌い変えるタイプの替え歌もある。たとえば「リンゴの唄」の冒頭を「あけえ りんごに くちべた ひっつけて」という風である。これは観光旅行のバスガイドが芸として披露する場合がある。「DA.YO.NE」には「SO.YA.NA」(大阪弁)を始め、多数のローカル版が作られた。
無理矢理英語にしてしまう、というのもある。たとえば「めんこい子馬」の卑猥な替え歌の歌詞「夕べ父ちゃんと寝たときにゃ」を「Last night sleeping with my Papa」とやる。あるいは森昌子の「せんせい」の最後の部分を Teacher, Teacher, It's Teacher!! とやるなど。
本格的に卑猥な歌は大人だけに見られるもので、卑猥なネタを扱った猥歌は往々にして替え歌として作られる。一般に猥褻な作品を好んで作り、発表することは品がないことだと認識されている。また発表すること自体もはばかられることから、最初から猥歌として生まれる歌は少ない。したがって有名な歌を猥歌に歌い替える場合が多い。また酒の席で演じられることが多く、素面ではまず歌うことはない。
抗議や風刺を目的とした替え歌もしばしば作られ、今までに抗議活動などでしばしば用いられている。
例えば、1969年の反戦フォークゲリラの際には、高石友也の「受験生ブルース」の替え歌で、機動隊を揶揄する「機動隊ブルース」が歌われた。
1988年には、忌野清志郎率いるRCサクセションが「ラヴ・ミー・テンダー」「サマータイム・ブルース」を、アルバム『COVERS』で、反核ソングとしてカバーした。
2011年4月7日(東北地方太平洋沖地震による福島第一原発事故から約1ヶ月後)には、斉藤和義の「ずっと好きだった」を反原発ソングの歌詞にした、本人歌唱の「ずっとウソだった」が、YouTubeに出所不明という体裁で投稿された。
また、YouTubeやニコニコ動画では歴史上の出来事などを歌詞に合わせた歴史替え歌という作品も作られている
CMやテレビ番組で流すことを前提としているものは、一般に知名度が高い曲(童謡・唱歌・クラシック音楽が中心で近年では懐メロも[3])も多く、特にCMソングでは、認知度の高い歌に商業的な歌詞が付けられる。
これらは、特に多くの人間が聞く機会を持つことから一般に浸透しやすく、中には元歌以上に知れ渡る場合もある。例えば「リパブリック讃歌」は、ヨドバシカメラのCMソングと言った方が通じる、等である。
日本の曲が海外で別の歌詞がつくこともあり、北朝鮮の軍歌遊撃隊行進曲はハイカラ節の替え歌である。
なお元曲が文部省唱歌や親しまれた童謡の場合、「子供が間違った歌詞を覚えて困る」と教育関係者からクレームが入る場合がある[注釈 1]。
替え歌を用いた番組のテーマソングとしては、「隣組」(ドリフ大爆笑)、「めだかの学校」(三波伸介の凸凹大学校)などがある。
また、替え歌を募集して披露、採点するといった趣向の番組もあった。以下のようなものが有名。
かつてNHKでは、番組内での商標の使用を厳しく規制していた。そのため、かぐや姫の「神田川」をNHKの番組で流す際には、歌手自らが「クレパス」の部分を「クレヨン」に置き替えたり、山口百恵の「プレイバックPart2」を流す際には、歌手自らが「真っ赤なポルシェ」の部分を「真っ赤なクルマ」に置き替えたりすることが「暗黙の了解」となっていた。
1964年発売の小林旭の「自動車ショー歌」は、要注意歌謡曲指定制度(民放連の制定)に抵触し、事実上放送禁止となったため、その部分を歌詞変更して再発売した。
現在は以前ほどの規制はなくなり、第71回NHK紅白歌合戦(2020年)では瑛人が歌唱した「香水」でも「ドルチェ&ガッバーナ」の部分はそのまま歌唱された[4]。
記憶した内容を思い出しやすくするため、メロディを手がかりに活用しようという趣旨で作られることがある。
記憶したい内容は各々異なるので、広く知れ渡っている替え歌は多くないが、「ウサギとカメ」のメロディで都道府県の名前を覚える、「アルプス一万尺」のメロディで中国の王朝の名前を覚えるものなどがある。
嘉門達夫の替え歌は「替え唄メドレー」では本歌の1フレーズだけを変えてみせるものであったが、「勝手にシンドバッド」では全曲にラップ風のセリフを当てて見せた。
金谷ヒデユキはその初期にほぼ曲1番分を丸々変えるのを得意にした。
ほかに替え歌を持ちネタとするものに伊集院光、ダイス、下衆ヤバ夫、すわ親治、マキタスポーツ、清水アキラ、清水ミチコ、大川興業などがある。
中には、過去の自分の作品を替え歌にする者もいる。さだまさしは「雨やどり」の歌詞を3通り持っていた。サザンオールスターズの桑田佳祐は「私の世紀末カルテ」等の曲をライブなどで2番以降をその時の時事ネタや、ツアー先の土地のネタ、ファンへの感謝の気持ち等を盛り込んだ歌詞に変えて歌うことがある。
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替え歌は以前から存在した歌のパロディであって、著作権法上二次的著作物という扱いになるため、しばしばその著作権問題が浮上する。
既に著作権の保護期間が終了しているものは別として、歌詞部分には著作権における翻案権、著作者人格権における同一性保持権の侵害となるので、個人や身内で楽しむ場合を除き注意が必要である[5]。
また日本音楽著作権協会(JASRAC)・NexTone等の著作権管理団体では、翻案権・同一性保持権の管理は行っていないため、替え歌を公に発表するときは権利者の許可を得る必要がある[6][7][8]。古いところでは、タモリによるアルバム「戦後歌謡史」は、発売に際してこの問題をクリアできず、1981年にタモリが全責任を負うという形で自主製作の限定版のみでリリースされた。
元曲の歌唱者でも、本人が自ら作詞した曲、あるいは歌唱者や制作側などからの依頼や自身の企画で作詞者が自ら歌詞を改変した場合を除いて、意図的に歌詞を改変して歌唱したりそれをCDリリースした場合は著作権および著作者人格権侵害として作詞者との軋轢を招くこともある(おふくろさん騒動、会いたい (沢田知可子の曲))。
「替え唄メドレー」シリーズとして数々の替え歌を送り出した嘉門達夫の場合、ライブで歌うなりCDリリースする場合は元曲の作詞者と作曲者と歌唱者、さらに替え歌の歌詞の中に実在の人物の名前が出る時にはその人物にも許可を取っている[9]。ただし許可の範囲も人それぞれであり、全面的許可をする者から基本的に許可だが特定の曲だけ不許可とする者、ライブのみ許可をする者(CDリリースは不可)まで様々である。当然ながら許可を得られなかった場合は公の前で歌唱は不可能となる(NGの中にはテレビ番組でのトークのネタとして披露したものはある)。ライブでは「替え唄メドレー」シリーズの歌詞をCD収録の物と変えて歌ったり、CDリリースが不可となった曲を並べた「ボツ・替え歌メドレー」といった曲を披露した事があった。それらの中には、後に許可が出てCD収録された替え歌も幾つも存在する。また、洋楽の替え歌についてはニュアンスの問題で殆どが許可が取れなかった[注釈 2]と語っている。
またラジオ関西の「青春ラジメニア」では番組と親交が深い権利者の曲に限ることとし、また放送後に著作権者に替え歌の内容を報告して事後承諾で許可をとっている。
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