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バラ目ニレ科の植物 ウィキペディアから
落葉広葉樹の高木で[3]、高さ15 - 25メートル (m) になり[4][5]、大きなものでは幹径3 m、高さ30 - 50 mほどの個体もある[6]。開けた場所に生える個体は、枝が扇状に大きく斜めに広がり、独特の美しい樹形になる[7][2]。樹皮は灰白色から灰褐色で、若木のうちは滑らかで横長の皮目があるが[2]、老木になるとモザイク状や鱗片状、あるいは大きく反り返って剥がれるなど、剥がれ方は一様ではなく、幹の表面はまだら模様になる[3][5][2]。一年枝は褐色で無毛、ジグザグ状に伸びて皮目がある[2]。
花期は4 - 5月ごろ[2]。開花は目立たないが、葉が出る前に本年枝に数個ずつ薄い黄緑色の花が咲く[3][5]。雌雄同株で雌雄異花。本年枝の下部に数個ずつ雄花が、上部の葉腋に1 - 3個の雌花がつき[5]、雄花と雌花をつけた短い枝を「着果短枝」という[7]。花後に長枝が伸びて、本葉が出る[7]。
葉は互生し、葉身は長さ3 - 10センチメートル (cm) の卵形から卵状披針形で、葉縁にある鋸歯は曲線的に葉先に向かう特徴的な形であり、鋸歯の先端は尖る[5]。葉の正面はざらつく[4]。春の新緑や秋の紅葉(黄葉)が美しい樹木でもある[5][7]。都市部ではあまり鮮やかに紅葉せず黄褐色から褐色になって落葉してしまうが、寒冷地では個体によって色が異なり、黄色・橙色・赤色など色鮮やかに紅葉する[8]。若木や徒長枝の葉は大きく、赤色に紅葉する傾向が強い[8]。紅葉は褐色を帯びるのが比較的早く、落ち葉もすぐに褐色になる[4]。
葉はハルニレやムクノキに若干似る。ハルニレは鋸歯の形が特徴的で二重鋸歯になること、ムクノキは葉が大きく光沢があり、葉脈は三行脈で側脈がしばしば分岐することから見分けられる[9]。ムクノキはかつてはケヤキやハルニレと同じくニレ科に入れられていたが、APG分類体系ではアサ科に移動されている。
果期は10月[7]。果実は長さ約5ミリメートル (mm) の平たい球形をした痩果で、秋に暗褐色に熟す[5]。小枝についた葉が翼となって、果実がついたまま長さ10 - 15 cmの小枝ごと木から離れ、風に乗って遠く運ばれて分布を広げる[8][2]。
冬芽は互生し、小さな卵形で暗褐色の8 - 10枚の芽鱗に包まれており、横に副芽を付けることがある[2]。枝先には仮頂芽がつき、側芽は枝に沿わずに開出してつく[2]。冬芽の横には、しばしば副芽がつく[2]。冬芽のわきにある葉痕は半円形で、維管束痕が3個ある[2]。
発芽は地上性(英:epigeal germination)で子葉は地上に出てくる。このタイプの子葉は胚乳の栄養を吸い取る吸器、および最初に光合成をおこなう器官という2つの役割がある[10][11]。
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比較的湿潤環境を好み、斜面下部から中部に分布することが多い[12][13]。スギも同じような環境を好むので、スギと混交させた時の反応なども調べられている。土壌を分析した結果ケヤキが優先する林分ではC/N比が低く微生物の餌として魅力的だと見られている[14]。
陽樹と見られており、露岩地帯にもよく出現する。多くの樹木は日陰では葉の厚さを変える(いわゆる陰葉)ことが知られているが、ケヤキはこの切り替えがあまりうまくない樹種だと見られれている[15]。
花芽原基の形成は前年の夏に行われる[16]。ブナやミズナラと同じく、ケヤキも結実には極端な豊凶があるという[17]
枝葉と一緒に落ちることで種子だけの時より1/3以下に減速し、風に飛ばされやすくなっている。下から巻き上げるような風に乗ると80m程度とぶこともあるという[18]。小さい個体でも結実するが、発芽率はよくないという[19]。
葉はオゾン暴露により黄変する[20]
東アジア地域に分布。朝鮮半島、中国、台湾と日本に分布し[3]、日本では本州、四国、九州に分布する[21]。
自然分布の他に、人の手によって街路や公園、人家のまわりにも植えられたものもよく見られる[3]。日本では特に関東平野に多く見られ、屋敷林に使われることが多い[6]。北海道には函館や札幌などの都市部で、庭園樹や公園樹として植えられたものがある[22]。
ケヤキは国産広葉樹としてはブナ科のミズナラと並ぶ有用木材である。ミズナラが比較的山の木であるのに対し、ケヤキは人里近い所にもよく適応し親しまれた。木材の気乾比重は平均0.7程度、道管の配置は環孔材で年輪ははっきり出る。環孔材の木材に共通であるが、成長が良く年輪幅が広いほど良材で硬く重くなる。これはミズナラも同じである。辺材は黄褐色、心材は赤褐色で色の違いは明瞭に出る。辺材部、心材部共に水を通しにくいことが特長の一つである[23][24]。広葉樹の一部は辺材部の細胞が死んで心材化していく過程においてチロースを形成し、水の通動静を低下させることが知られている[25]。一方この性質上、水が抜けにくく乾燥には非常に時間がかかる。乾燥時に狂いも生じやすく扱いの難しい木材である。ケヤキは幹の途中から大きく分岐するので、丸太の歩留まりをよくするためには高い所での分岐が望ましい。一般に樹形には密度効果が現れるとされており、スギとの混植の場合はケヤキは7,000本/ha以上での植栽が望ましいという[26]。
硬すぎて明治期に成るまで薪炭材以外ではあまり使われなかったミズナラに比べれば、加工も容易であったケヤキは古くからよく利用されていた。製材時すると稀に表面に水玉模様が現れることがあり、「玉杢」「泡杢」などと呼ばれ珍重される。また、磨くと艶が出て、頑丈で壊れにくい。このような性質から手元においておける家具、木工品、板材としての評価が特に高い樹種である。
強度があること、手に入れやすさから建材としてもよく利用された。大建築への利用は縦引き鋸が使われ出した室町時代以降のことといわれる[7]。ヒノキほどの寿命は無く、建築後1200年経過した奈良・薬師寺東塔に使われていたケヤキ材は破断状態にあったという[7]が、建築後250年経過のケヤキ材は強度的に問題はないという報告もある[27]。京都・清水寺の舞台も太いケヤキの柱で支えられている。現在のものは江戸時代初期に作られたといわれ、建築後約400年が経過している。地際部の腐った部分だけを定期的に切り取って新しい部材に入れ替える「根継」という技法で維持しているが、建築後800年を目途に上部も含めてすべて新しいケヤキ材で作り変えることを予定しているという。
電柱が木製だった時代は用材としてケヤキが高く評価されていた[28]。
1940年、戦時色の強まった日本では、用材生産統制規則により特定の樹種について用途指定を実施。ケヤキ材の使用用途については軍需、内地使用の船舶、車両用に限られることとなった[29]
防風効果を期待して家屋の周りに植栽する、いわゆる屋敷林、生け垣として用いられることがあり、この点も里の木として親しまれた。ケヤキとカシ類を併用した屋敷林は特に関東地方で知られる[30][31]。強靭で剪定にもよく耐える点も評価されている。
箒を逆さにしたような樹形が美しく、街路樹としてよく使われる[3][5]。
盆栽に使われることもある。ケヤキの盆栽は幹は太く枝は細い方が高評価といわれ、これを実現するために梅雨頃に新芽を摘み取り、再度芽吹くのを促すという[32]。
朝鮮半島では、ケヤキの春の若葉を茹でて食べることもあり、餅にも入れられる[22]。
各地に伝わるケヤキの巨木の逸話には、蛇や水にまつわることがしばしば登場するという[33]。
なお、東京競馬場の第3コーナー内側に、俗に「大欅」と呼ばれる大木がある。数々の逸話があり、「欅ステークス」という名の特別競走まで開催されているが、実際は榎(エノキ)であってケヤキではない。
和名「ケヤキ」の由来は、「ケヤ」は古語で「すばらしい」という意味があり、「けやしの木」が転訛したものだといわれる[8]。中国名は「櫸樹」[1]。
別名をツキ(槻)ともいう。木材業界などでは良材を「ケヤキ」、材質の劣るものを「ツキ」と呼んでいるという[28]。ケヤキとツキの呼び分けは時代であり、ツキの方が古いという説もある。欅の右辺は「挙」の旧字体であり、樹形が手を挙げるところに似ていたからという説もある[40]
種小名 serrata は「鋸歯のある」という意味[41]で、丸みを帯びて特徴的な葉の鋸歯に因む。台湾の変種は鋸歯がないことで知られる。
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