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ナス目ヒルガオ科の植物 ウィキペディアから
サツマイモ(薩摩芋[3]、学名: Ipomoea batatas)は、ヒルガオ科サツマイモ属の多年生植物。あるいはその食用部分である塊根(養分を蓄えている肥大した根、芋)。別名で、甘藷(かんしょ)、唐芋(からいも)ともよばれる。中南米の原産で、ヨーロッパ、中国、日本などへ広まり、各地で栽培されている。食用される塊根はデンプンやビタミン類を豊富に含み、焼酎原料や飼料にも利用される。また食物繊維が多く、便秘改善にも役立てられる。
和名サツマイモは、江戸時代に琉球王国(現・沖縄県)を経て薩摩国(現・鹿児島県)に伝わり、そこでよく栽培された事に由来する[4][5][6]。サツマイモは「薩摩藩から全国に広まった芋」を意味している[7]。別名として甘藷(かんしょ)があり[3]、中国植物名も甘藷である[8]。甘藷は「甘味のある芋」の意味である[7]。
英語では Sweet potato(スウィート・ポテト)[3]、フランス語では patate douce(パタートゥ・ドゥース)[9]、イタリア語では patata dolce(パタータ・ドルチェ)といい、いずれも「甘いジャガイモ」という意味をもつ[10]。イタリア語では potata americana(パタータ・アメリカーナ:アメリカの芋の意)とも表現され[9]、和名にも「アメリカイモ」の別名もある[1]。英語圏の一部では、サツマイモ「sweet potato」を「Yam」(ヤム)などの別の名前で呼んでいる[11][注釈 1]。ヤム芋を育てていたアフリカ系奴隷が、アメリカ合衆国で作られた水っぽい「ソフトスイートポテト品種」がヤム芋と似ていたことから「ヤム」と呼ぶようになったことに由来する。アメリカなどでは本来のヤム芋は輸入食料品店ぐらいにしか置いていないことから、ヤムと表示されていれば「ラベルに注意書き」が無い限り「ソフト」スイートポテトのことである[12][13]。
地方により、また歴史的にも呼称は変遷し、たとえば日本本土では「唐芋(からいも、とういも)」や「琉球薯(りゅうきゅういも)」、野國總管が沖縄本島に導入した当時は「蕃薯(ばんしょ、はぬす、はんす、はんつ)」と呼ばれていた。他に「とん」「うむ(いもの琉球発音)」等とも呼ばれる。唐芋は「中国から伝わった芋」という意味を含んでいる[7]。中国(唐)から伝来した由来により、特に九州では「唐芋」とも呼ばれる場合が多い[14]。長崎県の対馬では「孝行いも」と呼ばれている[15]。李氏朝鮮は対馬から伝わったが、その際に「孝行いも」が変化して、韓国語ではコグマ(고구마)と言う[16]。
各地で栽培されるつる性の多年草[8]。高温や乾燥に強く、痩せ地でも良く育つ丈夫な野菜で、芋(塊根)などを食用にする[17]。葉は、ヨウサイやアサガオに外見が似ている[10]。花はピンク色でアサガオに似るが、高温短日性であるため、日本の本州など温帯地域では開花しにくく、日長要因だけではなく何らかのストレスによってまれに開花する程度である[10]。また、花の数が少なく受粉しにくい上に、受粉後の寒さで枯れてしまうことが多いため、品種改良では種子を効率よく採るためにアサガオなど数種類の近縁植物に接木して、台木から送られる養分や植物ホルモン等の働きによって開花を促進する技術が使われる。デンプンを多く含む芋は、根が肥大したもの(塊根)で、茎が肥大した塊茎を持つジャガイモと相違がみられる[10]。
1955年(昭和30年)に西山市三がメキシコで祖先に当たる二倍体の野生種を見つけ、イポメア・トリフィーダ(Ipomoea trifida)と名付けた。後に他の学者達によって中南米が原産地とされた。若い葉と茎を利用する専用の品種もあり、主食や野菜として食用にされる[要出典]。
芋の皮の色は紅色や赤紫色の他、黄色や白色がある[3]。芋の中身は主に白色から黄色で、中には橙色や紫色になる品種もある[3]。特に全体が紫で、芋の中身がアントシアニンに由来して紫色のサツマイモを、紫芋(むらさきいも)と呼んでいる[18]。
原産地は中央アメリカのメキシコ中央部からグアテマラにかけてとする説が有力である[3][7]。紀元前3000年以前から、メキシコ地域で栽培化されていたとみられている[7]。その後は南米のペルーに伝わり、古代ペルーの遺跡からサツマイモの葉や花、根を描いた土器や綿布が発見されていることから、重要作物になっていったと考えられている[7]。
15世紀末にクリストファー・コロンブスが新大陸を発見し、スペインのイザベル女王へ献上したこと契機に、アメリカ大陸からヨーロッパへと広まった[3][7]。しかし、もともと熱帯作物であったため、ヨーロッパではジャガイモのように普及することはなかった[7]。イギリスではエリザベス朝の頃に、その甘さから好意的に受け入れられた。イギリス人はこの芋をペルーでの塊茎を意味する言葉 batata から patate と呼んだ。18世紀末に甘くないジャガイモ(potato)が一般化するにつれ、サツマイモは sweet potatoと呼ばれるようになった[19]。
大航海時代の1498年に、コロンブスがベネズエラを訪れて以降、1519年にはポルトガルのフェルディナンド・マゼランがスペイン船隊を率いて南端のマゼラン海峡を発見。16世紀に頻繁に南アメリカ大陸にやってきたスペイン人あるいはポルトガル人により東南アジアに導入された[要出典]。ルソン島(フィリピン)から中国を経て、17世紀の初め頃に琉球、九州へと伝わった[要出典]。
ニュージーランドへは10世紀頃に伝播し、「クマラ」(kumara) の名称で広く消費されている[要出典]。西洋人の来航前に既にポリネシア域内では広く栽培されていた[要出典]。
日本へは、17世紀初めに中国から琉球にもたらされ、やがて薩摩へ伝わり、九州南部で栽培されたのが「薩摩の芋」として、全国へ広まり定着した[3][7]。なお、1597年に宮古島に伝わったとの説もあるが、年代に疑義がある上、宮古島から他の地域へは伝播しなかった。西日本の大飢饉の折に、鹿児島で餓死者を出さなかったことから、凶作の年でも収穫が見込める救荒作物として重要視されるようになり[7][20]、江戸時代に飢饉を救う救荒作物として栽培が奨励された[10]。飢饉対策に腐心していた江戸幕府8代将軍・徳川吉宗の命によって、1735年、蘭学者の青木昆陽が薩摩から江戸に種芋を取り寄せて、小石川御薬園(現:小石川植物園)などでサツマイモを試作し、これをきっかけに東日本各地でも栽培が広がった[7][20]。20世紀の第二次世界大戦(太平洋戦争)中は、軍事統制下の深刻な食糧難からサツマイモ栽培が大いに奨励された[7](日本列島における普及史については、「日本列島における栽培と普及史」も参照)。
世界には4000種あるといわれているが、日本で栽培されるのは40品種程度である[9]。紅あずま、紅こまち、紅赤(べにあか)、安納紅、安納こがね、紅はるか、シルクスイート、金時などの品種がある。なかでも、関東では紅あずま、関西および九州では高系14号が主流となっている[9]。デンプン原料用としては、シロユタカ、シロサツマ、コガネセンガン(黄金千貫)などがある。天然着色料の原料としても使用される品種に[21]、七福人参(カロテン色素を抽出する。)、琉球紫(アントシアニン色素を抽出する。)、パープルスイートロード(アントシアニン色素を抽出する。)がある。葉を楽しむ観葉植物用の品種も市販されている。
サツマイモは種芋ではなく、発芽させてから苗をつくり、畑に植え付けて栽培する。植え付けまでは手間がかかるが、植え付け後は収穫するまで放任栽培で生育する。連作障害は出にくく栽培は容易であるが、窒素分が多い肥えた畑では茎葉が育ちすぎてイモができなくなる「つるボケ」になるため、肥料は少なく調整する。
苗となるツルを初夏に定植してから約4か月ほどで、イモの収穫時期となる[27]。サツマイモは繁殖能力が高く、窒素固定細菌(クレブシエラ・オキシトーカ (Klebsiella oxytoca) 、パントエア・アグロメランス (Pantoea agglomerans) )など[28][29]との共生により窒素固定が行えるため、痩せた土地でも育つ。ナス科のジャガイモは連作を非常に嫌う性質を持つ一方で、サツマイモは連作には強く連作障害は少ない方であるが[30]、同じ畑では1 - 2年あけるようにする[17][31]。野菜のうちでは最も高温性で、生育適温は25 - 30度以上、発芽適温は20 - 30度、イモ肥大の適温は20 - 30度が必要とされている[17][10][32]。強い光を好み、乾燥にもよく耐えて生育する[32]。栽培に適する土壌酸度は pH 5.0 - 6.0[17]、土壌の適応性は幅広く、どんな土壌でも栽培は可能であるが、耕土が深くて通気が良いことが芋の肥大には不可欠となる[32]。有機物の多い肥沃な土地では、ツルばかりが伸びて葉が茂り、塊根が太らなくなる「つるぼけ」になってしまうことがある[20][33]。従って、肥料は窒素過多によって茎葉が茂りすぎる「つるぼけ」を防ぐため、肥沃な畑では肥料をごく少なくする[20][32]。施肥するとすればデンプン生成に必要なカリ(つまり灰)を施肥するだけでも十分効果がある[27]。栄養繁殖で栽培するため、前年に収穫したイモを次年栽培用の種芋とするが、低温には弱いため10度以上で保存する必要があるといわれる[10]。
サツマイモは種芋を植えるのではなく、種芋から芽を出して育苗して、7 - 8枚の葉が付いたツル(さし苗)を切り取って土に挿すという形で定植し[注釈 2]、さし苗の葉の付け根の節から出る不定根を発生させるため浅い角度で茎が埋まるように斜めに挿す[20]。その後、不定根が十分に肥大してやがて芋になるので[34]、これを収穫する方法が一般的である。農家では前年に収穫した種芋を土の中で貯蔵しておき、種芋の両端を切り落として温床をつくって伏せ込み、その種芋から伸びたツルを切り取って苗とする[20][35]。植え付ける前に、苗のしおれが戻るまで水に挿しておく[36]。苗をつくる場合は、健全な種芋を育苗土を入れた発泡スチロール箱に埋め、日当たりのよい場所を選んで箱の下半分を地面に埋めて、上方をビニールシートで覆い、さらにビニールトンネルをかけておく[37]。温度上昇に伴って芽が出したら、徐々に覆いを外して日に当て、長さ30 cmの苗に仕上げる[37]。切り取った苗はコンテナなどにそのまま入れて冷暗所に1週間ほどおき、時々水やりをして発根を促しておくとよい[38]。
水はけと通気性の良い環境を好むため、高さ30センチメートルほどの高畝で育てる[17][32]。畝は地中の温度を上げ、除草のためにマルチングを行うときもある[34]。春、高畝にした畑に苗を水平、または斜めに差すようにして、30 - 40 cmずつ開けて植え付ける[39]。苗は、ややしおれ気味になった苗のほうが根が出やすくなり、植え込んでから1週間ほどで活着する[27]。植え付け後の追肥は一般的には不用である[34]。ツルが四方に伸びてくると、畝間など周囲の土にも根付いてしまうので、根付いた部分から余計な芋がつくのを防止するため、また栄養成長を抑えて芋を充実させるために、ツルを持って根を引き剥がして裏返すように置く「つる返し」を何度か行う[39][40][27]。晩夏から秋にかけて、地上部のツルを刈り取って、芋を傷つけないようにまわりの土を掘ってほぐし、株元をつかんで引き抜いて収穫する[34]。霜に当たるとサツマイモが腐ったり、貯蔵性が悪くなったりするため、霜が降りる前に収穫を終えるようにする[41]。
肥料、特に窒素肥料が効き過ぎると葉や茎が育ちすぎる「つるぼけ」になるため禁物である。葉の色を見て特に淡すぎるようであれば少量与えてもよいが、普通の畑ならばほとんど無肥料で良い[42]。サツマイモは痩せた土地でも育つので、前作で野菜を作っている畑の場合では、全く肥料を与える必要はない[43]。苗が植物ウイルスに感染すると収量低下を起こすため、ウイルスフリー苗が利用されることもある[44][45]。
特殊な栽培法であるが、乾燥地ではツル苗の活着率が悪いため、種芋を直接または種芋を適当な大きさに分割して、ジャガイモのように圃場に直接植えつける(直播)こともある。栽培の省力化を目論んで種芋直播用農機具の技術開発が行われている[46]。
病虫害はあまり発生しない方であるが[43]、発生する場合は以下のようなものがある。
沖縄県全域、奄美群島、トカラ列島、小笠原諸島ではアリモドキゾウムシ[49]、イモゾウムシ[50]、サツマイモノメイガ[51]による被害が問題となっているが、根絶に向け不妊虫放飼法による対策も行われている[52]。
国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した統計資料によると、2019年(令和元年)の全世界における生産量は9182万トンであり、主食にするイモ類ではジャガイモ(同3億7043万トン)、キャッサバ(同3億0356万トン)に次ぐ。生産地域は中華人民共和国に極端に集中しており、その大部分は酒類への加工用である。ただし、中華人民共和国においては転作が進んでおり、作付け面積及び生産量は減少傾向にあり、2005年までは生産量1億トンを超えていたが、2012年以降6000万トンを下回っている。その影響で、全世界での生産状況も低下傾向を示しており、2005年までは1億2000万トンから1億5000万トンの収穫量があったが、2006年約1億1000万トンを記録して以降減少し続け、近年は9000万トン程度で推移している。なお、2019年の日本の生産量は74.8万トン。
長期の保管に適していないため、自国における生産消費が大部分であり、貿易量は、世界総計で年間30万トン程度と極めて少ない[53]。主要な輸出国は、アメリカ合衆国、ベトナム、ラオス、エジプトなどで、特に米国は総輸出量の2/3程度を占めている。一方主要な輸入国は、英国、オランダ、カナダ、フランス、日本である[54]。
サツマイモは、比較的痩せた土壌でも生育が可能であり、肥料流通や土壌改良が進まない中でも作付けが容易であったため、1960年代初頭には年間600万トン程度の収穫量があった[55]。しかし、1960年代から1970年代前半にかけ土壌改良等により商品価値の高い作物への転作が急激に進み、1974年には140万トンにまで減少した[55]。それからも、緩慢に減少を続け2000年代に100万トン台、2010年以降は100万トンを割る生産量となっている[55]。
鹿児島県、茨城県、千葉県、宮崎県、徳島県が全国のトップ5県[55][56]。このうち上位4県で全国の8割を占め、とりわけ鹿児島県は全国の生産量約69万トンの3割程度を産する[55][56]。同県ではデンプン原料用や酒造原料用としての作付けも多い[57]。産地の偏在にはいくつか理由がある。まず、鹿児島県内および宮崎県南西部の多くの地域が、多くの農産物には適さないがサツマイモの栽培には適した水はけの良いシラス台地であること。また、サツマイモは可食部が地中の「芋」であるため、台風に襲われても害を受けにくいことなどが挙げられる[58]。
2022年においては、全国の総収穫量は717,000であり、主産地の収穫量は以下の通りである[56]。
この他にも、新潟市西区を主産地とする「いもジェンヌ」のように、地元品種のブランド化を試みる生産者や地方自治体がある[59]。
このほか、生産量は少ないものの地域特産品となっているサツマイモに、新居大島(愛媛県新居浜市)の「七福芋」がある。見かけが白色の白いもで、明治33年(1900年)にアメリカ合衆国から移入された。同島で育てると糖度15%と栗きんとん並みの甘さになる[60]。
植物防疫法の定めにより、アリモドキゾウムシ、イモゾウムシやサツマイモノメイガなどの害虫の拡散を防ぐため国内間でも検疫が行われ[61]、沖縄県全域、奄美群島、トカラ列島、小笠原諸島からは、サツマイモやグンバイヒルガオ等のヒルガオ科植物の生茎葉および生塊根等の持ち出しは規制されている[62]。個人の手荷物程度の量であれば、所定の方法で事前に申請すれば移動規制地域から持ち出すことができる。ただし、蒸気で消毒を行う蒸熱処理を行うためその施設がない地域からの持ち出しは出来ない[注釈 3][63]。加工品にはこのような制限はない。
現地の港および空港に、これらの注意を促す掲示やポスターがあるので、当地を訪問の際には参照されたい。
南方ないしは中国大陸などから伝わったものが薩摩藩で栽培され、享保の大飢饉の際に全国に広まったとされている[4]。
前述のように、一般的には日本列島の南方から順に伝わったとされているが、室町時代や安土桃山時代に中国や東南アジアから直接、九州各地の貿易港や畿内の堺などにもたらされた可能性もあり、複数の導入経路が考えられる。もっともほとんどの経路において、栽培に成功したわけではなく、定着には至っていない。本土で最初にサツマイモが定着したのは薩摩藩であったとされる。
藩を挙げて栽培を奨励していた薩摩藩を除き、サツマイモはまず、民間の力で広まった。最初に本格的な栽培に成功したのは飢饉に見舞われることの多かった芸予地方とされ、その後も土壌や土地傾斜などが耕作に不向きなために食糧生産力が低い、すなわち気候異常などにより飢饉が発生し易かった土地を中心に救荒作物として普及していった。薩摩藩もまた、領内の半数を占めたシラス台地と呼ばれる、米作には不向きな土地があったことが奨励の主要因である。
その後、サツマイモは庶民の生活・文化の中に急速に浸透した。サツマイモを詠んだ狂歌や川柳も多く残る。
主に塊根(芋)の部位が利用される。主食やおかずのほか、軽食、おやつ用に様々に調理・加工される。さらには本格焼酎などの酒醸造の材料として使われる。加熱しただけで甘味があり、焼き芋や天ぷらにするとホクホクしたおいしさが引き立つ[3]。反対に、水分が多くねっとりした食感を持つ品種もある[3]。
また、柔らかい葉や茎も食用にでき、これらは主に炒め物や佃煮、かき揚げなどの天ぷら素材などにして利用される[17]。ヒルガオ科のクウシンサイに似た風味で、茎や葉を専用に食べる品種もある[17]。
サツマイモ本来の旬は9 - 11月とされ、掘りたてより貯蔵後が甘いため、収穫してから1か月ほど熟成させてから出荷される[3][9]。2か月ほど貯蔵して熟成させることで糖度が増し、美味しさが充実してくる[6]。超早掘が5月、早掘が7月から出回ることもあるが[9]、それらは貯蔵性がないため収穫後はすぐに出荷される[69]。芋の皮の色が均一でハリとツヤがあり、傷や斑点がなく、中央部がずんぐりと膨らんでいて、凸凹やひげ根が少ないものが商品価値の高い良品とされる[6][3][7]。
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 559 kJ (134 kcal) |
31.9 g | |
デンプン 正確性注意 | 30.9 g |
食物繊維 | 2.2 g |
0.2 g | |
飽和脂肪酸 | 0.03 g |
多価不飽和 | 0.02 g |
1.2 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 2 µg(0%) 28 µg |
チアミン (B1) |
(10%) 0.11 mg |
リボフラビン (B2) |
(3%) 0.04 mg |
ナイアシン (B3) |
(5%) 0.8 mg |
パントテン酸 (B5) |
(18%) 0.90 mg |
ビタミンB6 |
(20%) 0.26 mg |
葉酸 (B9) |
(12%) 49 µg |
ビタミンC |
(35%) 29 mg |
ビタミンE |
(10%) 1.5 mg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(1%) 11 mg |
カリウム |
(10%) 480 mg |
カルシウム |
(4%) 36 mg |
マグネシウム |
(7%) 24 mg |
リン |
(7%) 47 mg |
鉄分 |
(5%) 0.6 mg |
亜鉛 |
(2%) 0.2 mg |
銅 |
(9%) 0.17 mg |
他の成分 | |
水分 | 65.6 g |
水溶性食物繊維 | 0.6 g |
不溶性食物繊維 | 1.6 g |
ビオチン (B7) | 4.1 µg |
有機酸 | 0.4 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[71]。別名:かんしょ(甘藷)。廃棄部位:表層および両端(表皮の割合:2 %) | |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
生の場合の可食部100グラム (g) あたりのエネルギー量は132 kcalで、水分は約66%含まれ、炭水化物31.5 g、タンパク質1.2 g、灰分1.0 g、脂質0.2 gが含まれている[74]。デンプンが豊富で、甘味が強いのでカロリーが高めと思われがちであるが、米飯とのカロリー比較で約0.8倍にとどまる[6]。また、ビタミンCや食物繊維を多く含み、サツマイモのビタミンCはリンゴの5倍以上とされ、加熱してもデンプン質によって熱から守られて壊れにくいという特長がある[6][74]。水溶性・不溶性ともに豊富に含まれる食物繊維はジャガイモの約2倍で[6]、切り口からにじみ出る白い液体のヤラピンの働きで、腸の働きを活性化し、便秘の解消に効果的な食材といわれ[3][34]、大腸がんの予防、糖尿病や高血脂症、高血圧の予防にも期待されている[74]。ビタミン類は、ビタミンD・Kを除いてバランス良く含んでおり、とりわけビタミンB1・B6・C・Eを多く含んでいる[3][74]。芋の中身がオレンジ色の品種は色素成分β-カロテンを多く含み、紫色の品種はアントシアニンを含んでいる[3]。ミネラル類では、余分な塩分を排出する作用があるカリウム、鉄欠乏性貧血の予防に欠かせない鉄、赤血球を作るのに欠かさない銅、性ホルモンの合成を助けるマンガンなどに富む[74]。
サツマイモは1回に食べる量が多く、栄養的には多くの野菜を摂ったのと同様の効果があるが、緑黄色野菜に含まれるカロテンの量が普通のサツマイモでは少なく、エネルギーが高いため、肥満を気にする人は注意する必要がある[74]。
サツマイモの炭水化物の約8割がデンプンで、良質なエネルギー源であるが、消化しきれないデンプンが1 - 2割は残る[74]。サツマイモを食べるとガスが出やすいのは、食物繊維としてデンプンが残るせいだと言われるが、健康を保つための大切な働きもしている[74]。単位面積当たりのカロリーベース収量は、コメを上回る[75]。他に、栄養面(特にタンパク質)でコメに比べて劣ることも挙げられる[75]。
焼いたり、蒸したりしてそのまま食べるか、煮物、天ぷら、スイートポテトや大学芋などの菓子などに、また裏ごしして栗金団などにする[7]。60 - 70℃程度で長時間かけて加熱すると、デンプンを麦芽糖に糖化する酵素の働きが活発になり、甘味が増す[18][7]。石焼き芋やふかし芋は、この性質により甘味をストレートに最大限引き出す調理法である[18]。また、蒸したあと天日で干して干し芋などに加工されることも多い。いも類はポリフェノール化合物による変色(褐変)を起こしやすく、灰汁のタンニンも含まれるため、切断面を水や焼きミョウバン水にさらす方法などで褐変を防ぎ灰汁抜きを行う[3][76]。色よく仕上げるため、栗金団などで使うときは皮の内側の薄い筋のあるところまで、皮を厚めに剥いて使われる[18][3]。皮が黒変している部分は、強い苦味がある有害成分を含んでおり、完全に取り除いておく[7]。焼き芋では丸ごと使われるが、皮ごと使う煮物や天ぷらは輪切りに、炒め物や大学芋では皮付きのまま乱切りに、揚げ物などには太めの拍子切りにしてよく使われる[3]。
サツマイモは、うまく貯蔵すれば長期間食べられる[77]。低温に弱い性質のため冷蔵庫には保存しないで、乾いたサツマイモを新聞紙や紙袋などでくるみ、風通しの良い冷暗所に置いて保存する[18][3]。温度13 - 15℃くらい、湿度は高めの85 - 90%の日の当たらない場所が、保存に適した環境とされる[7]。旬のものであれば、この状態で3か月ほど保存がきく[3]。低温にはとても弱く[18]、冷蔵庫に長期保存すると腐敗の原因につながる[7]。
農家が種芋として保存する場合は、穴を掘って土の中で貯蔵する[77]。乾燥させたイモを株ごと入れ、藁をかけて、さらに籾殻や土をかけたところにパイプ状のものをさして、空気孔をあけた状態で貯蔵する[77]。
害虫の食害やフザリウム(Fusarium)属のカビからの防御物質(ファイトアレキシン)として苦味のあるフラノテルペン類のイポメアマロン (iopmeamarone)、イポメアニン (ipomeanine) やイポメアノール (ipomeanol) 類を生合成する。この病変は、甘藷黒斑病と呼ばれ、イモは黒緑色から黒色に変色する[78]。イポメアマロンなどの生成物には哺乳類の肝臓および肺への毒性があり、肺の重度出血、間質性肺気腫、肺水腫等の症状を引き起こし、家畜での中毒死事例が報告されることがある。したがって、人の食用および家畜の飼料としては使用できない。また、この苦味物質は焼酎に加工した場合でも、蒸発して焼酎に移行する[要出典]。
サツマイモは、調理素材としての食用他、以下のとおり、原料・飼料として利用されている。用途別の消費量は右のとおり。
サツマイモからはデンプンを取ることができる。このデンプンは、春雨や水飴などの原料となる[要出典]。また、沖縄県ではサツマイモから取ったデンプンがイムクジ(芋くず)という名前で市販されており、生産量が少なく高価な葛粉の代用品として使われている[要出典]。家庭でも葛餅やジーマーミ豆腐など料理の凝固、とろみ付けに使用される[要出典]。
サツマイモは焼酎の原料としても利用され、サツマイモを主原料とした焼酎を芋焼酎といい[注釈 11]、鹿児島県や宮崎県を中心に製造されている[要出典]。デンプンを糖化するための麹原料としても、米と共に芋が使用される[要出典]。
鹿児島では江戸時代から芋焼酎が作られており、法律によって自家醸造が禁止されるまでは、広く家庭で作られていた[80]。よって、鹿児島では「味のよい焼酎を煮れる女が立派な主婦」などといわれていた[81]。当時の作り方は、サツマイモを蒸してから臼で潰し、それに加水して2 - 5日放置し、そこに黄麹を加えて攪拌して放置して作ったもろみを、ツブロ式蒸留器で蒸留するというものだった[80]。
2000年代には焼酎ブームによりサツマイモ不足に陥った。また、中小建設業者が多角化の一環としてコガネセンガン(黄金千貫)の栽培に取り組む例もみられる[要出典]。
鹿児島県南九州市の知覧町と頴娃町には「あめんどろ」と呼ばれるサツマイモを煮詰めて作った蜜が伝わっていた。伝統的な製法を守ってきた最後の職人が廃業し、伝統が消滅する寸前であったが、後継者が現れ全国展開を進めている[83][84]。
食用としても広く消費されるベニアズマや紫芋の1種でアヤムラサキ、焼酎専用品種のジョイホワイトなど様々な品種が使用されており、耐病性、単位面積あたりの収穫量、デンプンの含有率、貯蔵性を良くすることに主眼が置かれた品種改良が行われている[要出典]。
この他にも多種の品種が使用される。
サツマイモは、飼料として家畜に与えられることもある。ブタにサツマイモを与えることを義務付けているブランド豚肉もある。そうして育てる千葉県産「いも豚」は、獣臭さが少なく、脂が甘く食べると口溶けが良いことが特徴である[85]。かごしま黒豚の定義では、肥育後期に飼料含量あたり20%のサツマイモを与えるよう定めている[要出典]。
痩せ地での栽培に適し、デンプンを多く含むサツマイモは、しばしバイオエタノールの原料として注目されることがある。第二次世界大戦中の日本では、不足する航空機用燃料のためにバイオエタノールの製造が研究された[86]。現代においても、環境志向の高まりと将来起こるであろう化石燃料の不足に備えて、研究が進められている[87]。
薬菜の1種として、晩秋から冬にかけて掘り出した塊根を蕃薯(ばんしょ)と称して薬用にする[8]。民間療法では、薬効は疲労倦怠、食欲不振、便秘に有効とされ、煮たり焼いたりして食べる[8]。繊維質が多く、胃腸を温める作用があることから、クリ、ジャガイモ、トウモロコシと同様に、特に冷え症の人の便秘によいと言われる[8]。生野菜を食べても便秘が解消できない人や、虚弱体質で食欲がない子供に向いている薬菜であり、サツマイモを食べると胸焼けを起こす人には、ショウガと一緒に煮て食べるとよいと言われている[8]。
: 鹿児島県で作られるミルキーの様な食感の飴菓子。
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