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膜翅目アリ科の昆虫 ウィキペディアから
アリ(蟻、螘)は、ハチ目ハチ亜目有剣ハチ下目アリ上科[1]アリ科(Formicidae)に属する昆虫の総称である。体長は1 - 30 mmほどの小型昆虫で、人家や畑の近くにも多く、身近な昆虫の一つに数えられる。原則として、産卵を行う1匹または少数の女王アリと、育児や食料の調達などを行う多数の働きアリ、餌を得るための狩りや巣の防衛を担う兵隊アリが大きな群れ(コロニー)を作って生活する社会性昆虫である。
世界で推定2万種以上、日本でおよそ300種が知られる。種類によっては食用となる。香港大学などの研究チームによる、世界各地におけるアリの生息状況に関する論文489件に基づく推計では、世界全体で合計2京匹が生息しており、そのバイオマス総量は炭素換算で1200万トンと野生の哺乳類(700万トン)や鳥類(200万トン)を上回り、土壌の撹拌や植物の種子運搬など生態系で重要な役割を担っている[2]。
熱帯から冷帯まで、砂漠や草原、森林など陸上や水中にも様々な地域に分布する。特定外来生物に指定されているヒアリやアルゼンチンアリのように、人為的に分布を広げている種、すなわち「外来種(alien species)」も多数ある。しかしその多くは厳密に外来種であるか判定は難しい。そのため「人間活動に付随して分布を拡大している種」を「放浪種(tramp species)」と呼ぶことも多い[3]。
基本的にはハチと共通の特徴を持つ。体はおおむね円筒形で細長く、頭部、胸部、腹部のそれぞれの間がくびれ、大きく動かすことができる。腹部前方の節が細くくびれて柄のようになった「腹柄節」(ふくへいせつ)は昆虫でもアリだけにある器官であり、アリの巣に掘られた狭い穴の中での生活に適応すべく役割を果たしている。体色は黒いものが多いが、黄色、褐色、赤色などの種類もいる。
頭部には大顎が発達し、餌をくわえたり、外敵に噛みついたりできる。複眼はあるが、単眼は退化するものが多く、さらに複眼まで退化する場合もある。一対の触角が発達しており、その基部の節が特に長く、「柄節」と呼ばれる。そのため触角全体としてはこの節の先で折れ曲がり、「く」の字型をなす例が多い。
胸部は体の中央にまとまっているが、これは実際には四つの節からなり、前中後3節の胸部に、腹部第1節が癒合したものである。歩脚3対はよく発達する。
腹部前端には柄のように狭まった部分があり、これを腹柄部という。腹柄部は一節ないし二節からなる。後端にはハチと同じように毒腺を持ち、針で刺すことのできる種も少なくない。
社会性昆虫であり、同種であっても、カーストによって形態が異なる。繁殖をする雌雄(雄と女王)、それに働きアリ(雌)は形態的に区別できる。働きアリの中に、さらに複数の形態差が見られる場合もある。繁殖行動を行う雄アリと雌アリには翅がある(ただし後述するグンタイアリの女王や、アシジロヒラフシアリのように例外もある)。女王は、後に翅を切り離して無翅になる。それに対して、働きアリは当初から翅を持たない。数の上では、これが圧倒的に多いので、一般的にはアリは無翅の昆虫との印象がある。
針は、元は産卵管であり、有剣ハチ類に至って産卵管から針へと完全に機能を変化させた。従って針を持つのは雌である女王アリと働きアリである。日本で人家の周囲に見られるアリの多くは針を持たず、持っていても針が脆弱であまり刺さない種類が多い。しかし、特殊化の進んだヤマアリ亜科やカタアリ亜科のアリを除けば、系統的には針を持つものが多数派である。熱帯には、積極的に針で攻撃する種が多い。かなり高等な分類群でも、フタフシアリ亜科は針を持つ。
針を持たないか、刺すほど強靭な針を持たないアリは多くの場合、毒液を敵や獲物の体表に付着させたり飛ばしたりして相手を攻撃する[要出典]。針を持つ種類はハチと同様に針を使って毒液を注入する。毒液の主成分は蟻酸とされていることが多い[要出典]が、これはヤマアリ亜科に限られる。これと同様に針を持たないカタアリ亜科や、針を持つフタフシアリ亜科の中でも、刺すだけではなく噴き出した毒液を直接相手にかける使い方もする。シリアゲアリ属のアリは、別の種類の刺激性物質が主成分である。針で刺して攻撃するアリの毒は、多くのハチと同様、タンパク質やペプチドその他の生理活性物質の混合物である。
熱帯性の大型種の毒は、刺した時にスズメバチと同程度の激しい症状を引き起こす。日本でも、暖地にある人家周辺に多いハリアリ亜科のオオハリアリ、寒冷地では草木の上でよく活動しているフタフシアリ亜科のクシケアリ類がかなり強力な毒針を持つ。また人家内に生息するフタフシアリ亜科のイエヒメアリも、微細ながら積極的に針で人体を刺すため、ちくちくした不快感をあたえる被害がある。
アリの食性の基本は肉食だが、種類によって草食、菌食、雑食が分化している。生きた動物を襲う種類から自ら栽培した菌類を主食にする種類まで、多種多様な食性が知られているが、エネルギー源として植物の蜜やアブラムシの甘露、タンパク質源として肉食をする種が多い。肉食の種では、特に土壌性の小型種で、トビムシ、ムカデ、ササラダニなど、ほぼ特定の生物のみを襲って獲物にしている種が多く知られている。
巣の外で餌を見つけると、その場で摂食して素嚢に納めて巣に持ち帰る場合もあるが、丸ごと、あるいは刻んで運ぶ行動がよく知られている。中には、砂粒に蜜をまぶして持ち帰るような、道具を使うアリもいる。その際、アリ達が列をなして行き来するのが見られるが、これは同じ家族の働き蟻によって通り道に残された足跡フェロモンをたどって行くことによるもの。古くはアリは道を覚えて歩くと考えられており、ファーブルの存命時にはこれが解明されていなかった。ちなみにアリ達がなんらかの原因で円を描くように列をなすと、足跡フェロモンをたどる習性が仇となり、延々と渦を巻くように力尽きるまで回り続けることがある[4]。
アリは卵 - 幼虫 - 蛹 - 成虫という完全変態を行う。卵から蛹までを保護しながら家族単位で生活することがよく知られている。蛹では繭を作る種類と作らない種類がある。いわゆる社会性昆虫の代表格であり、真社会性を持つが、実際にはかなりの多様性を含んでいる。
成虫は性別やコロニー内での役割に応じて「女王アリ」「働きアリ」「兵隊アリ」「雄アリ」「新女王アリ」と分化していることが一般的によく知られている。一般的には、雄アリと女王が交尾し、その後、女王が単独で営巣、産卵する。孵化した子が成長すると働きアリとなり、その後は女王が働きアリを産み続けることで、コロニーは大きくなる。女王が複数存在する例も少なくない。しかし中にはアミメアリのように「働きアリ」だけで卵を産んで増えるものもいる。
アフリカ大陸のサブサハラに生息するマタベレアリでは、シロアリの巣を襲う兵隊アリのうち、負傷した仲間を救護する「衛生兵アリ」が確認されている(ドイツのビュルツブルグ大学などの研究)。また、ボルネオ島には、腹部を「自爆」させて毒液を外敵に浴びせて撃退する兵隊アリを擁する種がおり(オーストリアのウィーン工科大学などの研究)、コロニーとしての存続を優先する行動が見られる[5]。
分化と複雑な役割を、個体がたがいに認識できるのは、情報化学物質が伝達を担っているという化学生態学の研究がなされている。
他種の働きアリの労働に依存して生活するものを、社会寄生という。これを行うアリは少なくない。これにはいくつかの形がある。
サムライアリは奴隷狩りをするのでよく知られる。このアリは、クロヤマアリなど、他種のアリの巣に集団で侵入し、繭を持ち帰る。そこから生まれた成虫は、サムライアリの巣の中で、働きアリとして働く。往々にして、巣内の八割が奴隷であるという。似た方法をとるものに、アカヤマアリなどもある。
これに対して、トゲアリの場合、新女王はクロオオアリなどの巣に侵入し、女王を殺して、その後に居座る。そこで産卵をして、その巣のアリに世話をさせる。やがて自分の子が増えて、元の巣のアリが死亡してゆくことで、単独の巣になる。それ以降は他種の世話にはならない。このようなものを、一時的社会寄生という。
さらに、宿主の女王を殺すことなく共存して、自分の子供を他種に育てさせる種がいる。このようなものを完全社会寄生というが、その中でも働きアリを産む種と、働きアリを産まずメスとオスのみを産む種とがある。ウメマツアリに寄生するヤドリウメマツアリには働きアリがいない[6]。
コロニーは基本的に家族単位の群れである。つまり、女王アリと、その娘である多数の働きアリや兵隊アリ、新女王アリ、それに息子の雄アリからなる。女王アリは普通1匹だが、クロナガアリなど何種類かは数匹の女王アリが協力して巣を作る[7](多雌性)。多くは地中に巣を作るが、枯れ木や竹等に出来る空間に巣を作るものや、決まった場所に巣を作らず卵・幼虫・蛹ともども移動しながら生活するグンタイアリのような種類もいる。アリ植物は植物体の上に巣となる空洞部を提供する。ツムギアリは生きた木の葉を幼虫の出す糸で綴り合わせて巣とする。
一つのコロニーに複数の巣を作り、構成員を分散させる例も多い(サテライト)[8]。また巣の入り口に盛り上がった塚を作る例もある。ただし、より巨大な蟻塚を作るものはなく、いわゆる蟻塚を作るのは普通はシロアリである。典型的な「アリの巣」については該当項を参照のこと。
年に一度(一定の期間)、成熟した巣から羽を持つ新女王アリと雄アリが多数飛び立ち、結婚飛行を行い、空中で交尾をする。結婚飛行の時期は種類や地域によって大きく異なり、春から秋にかけて行われる。空中で交尾した雄アリは力尽きて死ぬが、新女王アリは貯精嚢に交尾した雄アリから得た一生分の精子を貯蔵し、地上に降り立った後に自ら羽を落とし、巣穴を掘るか木の皮の隙間などに潜むなどして女王アリとしての最初の産卵行動に入る。グンタイアリ亜科など一部の種では、ミツバチのように新女王がはじめから働きアリとともに巣分かれして、新しいコロニーを作る。
アリはハチと同様に受精卵からは2倍体の雌が、未受精卵からは半数体の雄が生まれる。ただし、アミメアリのように女王アリが存在しない種類では、働き蟻が産卵する卵であっても2倍体の働きアリが生まれる。女王アリは産卵時に有精卵と無精卵を生み分けることができるといわれ、通常、初期のコロニーでは雄アリが生じることは少ない。有精卵はすべて雌性となり、与えられる餌やフェロモンなどによって働きアリになるか新女王アリになるかが左右される。働きアリは通常、女王アリからのフェロモンによって、不妊の状態に制御されているが、女王アリが欠けた場合には卵巣が発達して産卵を開始することがある。この場合、残ったアリは働くことをやめるなどして不活性化していき、やがてその家族は滅んでしまう。
働きアリは女王の世話、卵と幼虫の世話、餌の運搬などの仕事を分担する。外で餌を探しているアリは大抵老齢のアリである。多くの働きアリは巣の中にとどまり、その中に食料を蓄えるなどの役目を果たす。
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アリ科の系統的位置[9] |
アリのような小型の昆虫は潰れやすいために化石になりにくく、もしあったとしてもその小ささから発見もしづらい。そのため進化の過程を解き明かす証拠は少なく、まだ不明な部分も多い。
だが琥珀に内包され化石化したものが存在する。これは形を維持したまま固化し、光を通すので形状の観察も容易である。白亜紀の地獄アリでは捕食時の姿が保存され、現在の両開きの顎ではなく、下あごが発達している様子が確認できる[10]。
また、分子系統学により遺伝子型の比較でも現存種間の分化が調査、整理されつつある。
遺伝子分析によると、ジュラ紀又は白亜紀にアナバチ(ミツバチ上科 Apoidea)との共通祖先から分化したと推定されている。ブラジルの1億1200万年-1億年前の層からは、Cariridris bipetiolata(レイメイアリ)の化石が発見されている。この種はアケボノアリではなく、原始的なキバハリアリに似ている。9000万年前では、コハク中の化石からアケボノアリやヤマアリ亜科、ハリアリ亜科が見つかっている。この時代では、琥珀に含まれるアリは含有される昆虫中0.001-0.05%と比較的少数である。アケボノアリは腹柄や後胸腺があるが触角柄節が短く、現在のアリよりも古くに分化したアリである。
6000万年前、K-Pg境界後では、コハク中のアリの含有割合が1.2%と増加した。
4500-3800万年前のコハクでは含有割合が20-40%を占め、現存の亜科もほぼ出揃った。また4500万年前の層からメッセルオオアリが発見されている。これはアリの中では最大の種で、雌アリは羽を広げると15cmにもなる。
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アリ科の内部系統[13][14] |
現生アリ科は16亜科に分かれる。現生種は39族342属14195種。†は化石群。属は主要なもののみ。種数はAntWeb[15] による。
日本では10亜科280種以上が知られている[19]。寺山(2004)によれば、日本のアリ相には、1:北海道(南部を除く)、2:北海道南部から本州、四国、九州(屋久島以北)および朝鮮、3:トカラ列島以南、4:小笠原諸島の大きく4つの地域性が認められ、このうち特に日本の中心部を含む2の地域は、動物地理学でいう旧北区と東洋区の推移帯とみなすのが妥当とした[20]。他方では日本の在来種262種のうち、固有種は133種で固有種率は約51%に及び、他の多くの分類群(両生類、爬虫類、昆虫の他の分類群など)も高い固有率を示すことを考えれば、日本を動物地理区における独自の地域と考えることもできるとしている[21]。
日常的にはハチとアリは別種の昆虫として扱われる。これは日本のアリの多くが毒針を持たないこと、生殖目的以外では翅を持たずに地面で生活するためである。しかし、生物学的にはアリはハチの1グループであり、スズメバチよりアリ類の方がミツバチに近縁である。
アリは人間になじみのある昆虫の中では小さいことから、人間から見れば弱い存在と思われがちだが、肉食のものが多く活発で攻撃力があって集団をなすことから、他の昆虫にとっては恐ろしい存在である。様々な生態系でアリは最も重要な小動物の捕食者である。熱帯雨林においては、植食性動物ではシロアリ、肉食性動物ではアリが人間のバイオマスに匹敵するほどの大きなバイオマスを誇っているほどである。
またアリグモという、アリに擬態しているクモがおり、かつては仲間と思って近づいてくるアリを襲うと信じられていたが、現在ではむしろアリによく似た姿をしていることで他の動物からの攻撃を避けているとされる。他にもアリそっくりの姿をしたハエ、カマキリ、ツノゼミなどが世界各地で報告されている。
様々な植物で、葉や茎のような花以外の部位に蜜腺(花外蜜腺という)を持つ形質が進化しているが、これは蜜でアリを誘引し、その付近にアリを常駐させ、彼らに植食性の昆虫を襲わせることで体を守る適応的意義があるとされている。また植物の中には、アリに住まいを提供し、それらによって害虫の影響を排除しているアリ植物も知られている。アブラムシやカイガラムシの一部が蜜を出すのも同様な理由と考えられる。ほかに、アリに種子を運ばせるように適応したと思われる植物が多数ある。それらは種子にエライオソームと呼ばれる柔らかな付属物を持ち、これがアリの餌となるとされる。しかし、これはアリの卵に擬態しているのではないかとの説もある。
他方で、その量が多いことから、これを専食する動物も知られる。ツノトカゲ属、モロクトカゲが有名で、この両者は形態や行動にも似たところが多く、収斂進化の良い例である。日本ではアリスイ、アオオビハエトリやハリサシガメがある。名前の上ではオオアリクイというのがあるが、これはむしろシロアリ食である。
その他、アリの巣には特有の昆虫などが同居していることが知られている。それらの多くはアリの巣のみから発見されるが、アリとの関係は様々である。たとえばクロシジミは若齢幼虫がアリによって巣内に運び込まれ、アリに餌を与えられて育つ。その他にアリスアブやアリヅカコオロギ、アリシミなどが有名で、それらをまとめて好蟻性動物あるいは大抵は昆虫なので好蟻性昆虫と呼ぶ。
また、カラスやカケスなどの鳥類の中には体にアリをたからせるものがおり、蟻浴(ぎよく)と呼ばれる。これには、蟻酸により寄生虫を退治する効果があるといわれているが、詳しいことは分かっていない。籠で飼われているメジロやソウシチョウなどの鳥でも、籠の中に生きたアリを入れてやると、素早く捕獲してくちばしに挟んだまま全身に擦りつける動作が観察できることがある。
アリと人間の関係は多彩である。直接的な利害関係の上でも入り組んでいる。
アリが利益を与える例として、小昆虫を獲物とするものが多いことから、様々な害虫の天敵として働いていることがあげられる。直接の利用としては、食用とされる例がある。タイのイーサーン料理では「カイモッデーン」と呼ばれる「赤アリの卵」は食材の一つである[28]。アリ入りのチョコレートがはやった時代があり、日本からもアカヤマアリを1箱に20匹ほど入れたチョコレート(商品名・チョコアンリ)が1950年代にアメリカ向けへ多量に輸出されていた事がある。また、特殊な例としては、蜜をため込むミツアリの例もある。
アジア、アフリカ、南米の一部地域では傷口の治療にアリが使用されていた。まず傷口を押さえておき、アリの胴を捕まえて傷に近づけ、かみつかせると同時に指先で頭と胴を切り離す。アリは一度かみつくと離さない習性があるため、アリの身体をねじり取ってしまえば傷口は縫い合わされる。生物学者のダニエル・クロナウアーによると、西アフリカの部族はサスライアリ属、南米の原住民もグンタイアリ属の兵隊アリを傷の縫合に使っていたという話が伝わる。また、紀元前1000年頃のヒンドゥー教の文献にもこの治療法が掲載されており、小アジアやヨーロッパにも広がっていた治療法であることが分かる。小アジアに位置するスミルナの1896年の記述には、1インチの傷に対して生きたアリ10匹をあてがい、いったんアリが傷にしっかりと噛みついたら、ハサミでアリの身体を切り取り、傷がふさがってきた3日後に残った下顎を取り除くとある。 現代では2006年のアメリカ映画『アポカリプト』にこの方法で傷口を治療するシーンがある[29]。
2019年にケアリ属のアリの出す分泌物に蚊(ヒトスジシマカ)への致死効果があることが確認され、同じ空間にいるだけで効果があることから忌避剤の開発や生物的防除への応用が期待される[30]。
害を被る例としては、まず、噛みついたり刺したりすることが挙げられる。各個体は小さいが、集団で活動するため、攻撃を受けると大変にうるさい。単にそれだけでなく、ヒアリのような特に強い毒を持つ種や攻撃性の強い種もあり、危険でさえある。
また、人間の生活環境に住み込むイエヒメアリや、特定外来生物に指定されているアルゼンチンアリは、人間の食物やその他を食うこともしばしばある[31]。八丈島(東京都八丈町)では、東南アジア原産のアシジロヒラフアリが定着して人家に入り込み電気系統を故障させるなど被害を与えているため、東京都立大学の研究者と協力して駆除剤を開発し、数を減らそうとしている[32]。
農業面では、アブラムシを保護する行動をとるものは間接的に農業害虫である。南アメリカでは、ハキリアリの被害が大きい。
アリは身近な昆虫であり、集団活動したりと目を引くことから、取り上げられる場合が多い。印象としては、ごく小さい虫、たくさん集まる虫、よく働く虫、といったところである。俳句では夏の季語。
アリの役割分担に対する観察結果が、人間社会における組織論などに援用されることもある(「働きアリの法則」参照)。
小さい、という印象では「アリの這い出る隙もない」「アリの一穴」などがある。アリドオシの棘はアリを突き通すほど鋭いという。
「アリの熊野詣で」は行列を作る様からの比喩表現である。
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