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日本の漫画、アニメーション作品、その主人公たる架空の犬 ウィキペディアから
黒犬の野良犬黒吉、通称のらくろを主人公とする。
大日本雄辯會講談社(現・講談社)の雑誌『少年倶楽部』にて1931年から連載された。連載のきっかけは、『少年倶楽部』の人気小説『あゝ玉杯に花うけて』の作者である佐藤紅緑が、当時の編集長である加藤謙一に対し、「もっと漫画を載せたらどうか。漫画は家中みんなで読めるし、なにより誌面が明るくなるからね」とアドバイスをしたことにあったという[1]。これをうけて、加藤は田河に漫画作品を依頼。田河は「男の子が好きなものを組み合わせれば人気が出るだろう」と、「犬」と「軍隊」をモチーフとした作品を考案したと述べている。のらくろの姿は、アメリカのアニメ『フィリックス・ザ・キャット』の黒猫フィリックスにヒントを得て発想された。
当初は実際の兵役同様「志願兵で2年満期除隊」という構想で、最初失敗続きだったのらくろが後半少し手柄を上げたのち、めでたく除隊となる予定だった。しかし、非常に人気が出たため、伍長(下士官)に昇進させて作品が続くこととなった。
「のらくろ」は日本の漫画の黎明期の作品として高い人気を獲得、手塚治虫、長谷川町子(田河の弟子となった)などにも大きな影響を与えた。劇場映画用として短編アニメもすでに戦前につくられている。漫画作品にとどまらず子供向けの商品にも次々にのらくろが登場した(ただし著作権の法律が確立されていなかった時代だったので、ほとんど原作者や出版社の無許諾商品)。
戦前発表の漫画としては稀有な長期連載となっていたが、1941年、太平洋戦争開始直前の状況もあり、内務省の役人から「この戦時中に漫画などというふざけたものは掲載を許さん」という指導が入り、編集長は、やむなく打ち切りにしたと述べている[2]。
戦後の1958年、潮書房の戦記月刊雑誌「丸」において、のらくろ自身の一人称でつづられた挿絵つき「のらくろ自叙伝」が連載された(昭和33年9月号から1年9か月間)。これは戦前版の大尉で退役になるまでの軍隊時代のことを語ったものであるが、掲載紙からも分かるように、すでに大人になったオールドファンを対象に書かれており、完全子供向けであった旧本編とは違い、語り口の違いのほか、大人向けのエピソードが多く加えられている。
その後、漫画としての本編の続編が、同じ『丸』において、昭和36年1月号 - 昭和38年12月号に連載され、『のらくろの息子』という外伝をはさんで、さらに昭和42年3月号 - 昭和55年12月号にわたり連載、少年倶楽部における昭和6年1月号の開始から、ちょうど満50年で全編が完結した[3]。続編は「のらくろ自叙伝」の設定も受け継いでいる。
戦前の雑誌掲載のもの及び単行本は、1967年から講談社をはじめ、普通社、ろまんす社などから復刻連載版や単行本版が刊行されている。1970年10月からテレビアニメが半年間放映された。
1989年、漫画執筆権を田河の弟子の「のらくろトリオ」(山根青鬼、山根赤鬼、永田竹丸)が継承した。田河と山根赤鬼の死後も、残るふたりによって新作が発表され続けているが、田河の作品よりギャグ漫画色がどちらかといえば強い。現在(2023年時点)でもキャラクター関連商品などが多数販売されている。
ほかに、外伝的なもの、のらくろの息子や孫を登場させたスピンオフ的な作品も多い。スピンオフ的な作品としては以下のようなものがある。
1947年、田河の編集による『漫画トランク』(東京漫画出版社刊・1947年12月20日発行)に掲載。
1956年1月4日 - 同年6月29日に、『中部日本新聞』の夕刊に連載。題名は『のらくろ』だが、のらくろの息子(小学2年[4])が主人公「のらくろ」として登場している。
1966年には、『丸』昭和41年2月号 - 昭和42年2月号に『のらくろの息子』が連載(上述の通り「丸」において本編連載のあいだに発表されたもの)。第4回より『のらくろの息子デス』に改題。デスは「ぼくら[注釈 1]」(後の『ぼくらマガジン』→『テレビマガジン』・講談社)」版『まんが自衛隊 のらくろ二等兵』(昭和38年6月号~12月号)の主人公でもある。
戦前の作品内容
「猛犬軍の『猛犬聯隊』」に野良犬ののらくろが入営。当初は、やせっぽちですぐに音を上げ、失敗を繰り返すばかりであったが、段々と活躍することが増え、山猿軍、チンパンジー軍などの敵を相手にした戦争でも勝利に貢献することたびたび、猛犬連隊に不可欠の存在となり、最終的に、二等卒(二等兵)から士官学校を経て将校となり、大尉にまで進級する。大尉で除隊、予備役となり、大陸に赴き、資源発掘の探検隊を組織、金脈を探し当てる(当初、のらくろをさらに少佐に昇進させるつもりだったが日中戦争下、軍からのクレームで[注釈 2]、軍隊を舞台にし続けることができなくなり大尉で除隊させたとも、少佐までいくと前線にはあまり出ないので、動かしにくくなったためとも推察されている)。
連載期間が、満州事変の年にはじまり、太平洋戦争開戦の年に終わっただけに、軍国主義、立身出世主義、大陸渡航奨励の風潮が反映されているものの、完全に子供向けなのものあって、作品全体は明るくユーモアのあふれたものとなっている。
戦後の続編の作品内容
のらくろは予備役大尉として再招集され、中隊長として新兵の教育に当たる。宿敵山猿軍との戦争がふたたびおこるが、互いに物資の窮乏と市民のあいだに厭戦、反戦気分が高まったため、和平を結ぶこととなり、両軍の軍隊は解散、のらくろは元の野良犬として社会に放り出されることとなる。かつての軍隊仲間が新たな職に就き成功していく中、のらくろは放浪しながら様々な職業に挑戦するが、失敗や運の悪さからいずれも長続きしない。しかし、最終的に喫茶店の店主として自活できるようになり、かつて思いをよせていた女性(牝犬)おぎんちゃんと結婚して、「もう野良犬ではない」というシーンをもって物語は完結する。
ストーリーは戦前のものから連続しているが、戦後の続編はオールドファンを主読者層としており(掲載雑誌は、戦記雑誌の『丸』)戦前のように完全な子供向けではなくなっているうえ、価値観の変化、作者自身の年齢(戦後、続編の連載がはじまった時点で田河は還暦をひとつ越えていた)、また、戦前版より擬人化が進んでおり、若干キャラクターの色付けも変更されているところがあるため、テイストはやや戦前とちがうところがある。
以上の「本編」とは別に、「外伝」的な設定の作品が何作か執筆されており、のらくろが様々な職業についていたり、のらくろの息子や孫を主人公としたものもある(のらくろの息子に関しては、本編の最終単行本「のらくろ喫茶店」で、のらくろ自身が「作者のつくったフィクション」と語る場面がある)。
先ず,1933年に、横浜シネマでアニメーション映画の『のらくろ二等兵』が製作され、次に、1934年には『のらくろ伍長』が製作されている。
1935年には、「瀬尾発声漫画研究所」主宰の、瀬尾光世によるアニメーション映画『のらくろ二等兵』、『のらくろ一等兵』が映画撮影され公開。戦時下の1938年にも同じく瀬尾の手による、『のらくろ虎退治』(芸術映画社)が公開されている。当時としても少国民らに人気となり、シリーズ化された。時代的にまだカラーフィルムは完成しておらず、いずれも白黒映画(モノクロームムービー)である。
戦後にテレビ放送が盛んになると、連続アニメーションの番組がテレビ向けに量産されるようになったが、1970年10月5日 - 1971年3月29日には、エイケン(TCJ動画センター)によりテレビアニメーション『のらくろ』が放映。主人公のらくろの声は大山のぶ代。カラー映像で放映されたが、世間ではまだ白黒テレビも多かった時代である。また、1987年10月4日 - 1988年10月2日にはスタジオぴえろによりフジテレビ系列でテレビアニメーション『のらくろクン』が放映された。のらくろ(のら山くろ吉)の孫、のらくろクンを主人公としており、ギャグアニメーション色が強いものであった。のらくろクンの声優は坂本千夏、祖父のくろ吉役を八奈見乗児が演じた。のらくろの世界が人間界と別に存在するという設定になっており、人間界の木下家を間借りして「のらくろ探偵事務所」を開くという、『のらくろ捕物帳』を意識した設定になっている。
原作に準じた設定で記述する。
その他、山羊の国などが出てくるが、これらは、犬が日本内地と朝鮮、豚は支那(中国漢民族)、熊はソ連(ロシア人)、羊は満州、山羊は蒙古を暗示させるもので、当時の国際情勢と日本の外交政策を反映している。また単行本では他にのらくろの口から、豚国を狙う狸の存在も言及されるが作中には実際に登場しない。但しあくまで「のらくろ」は創作であり、当時の実在の国、国際状況とは必ずしも合致していない[7]。
大陸で金脈を探すためにのらくろと金剛が組織した5匹からなる探検隊。隊長はのらくろ。このメンバーは戦後の続編には登場しない。
以下は『のらくろ総攻撃』の冒頭で紹介されたもの。師団長がいるのであるから、師団以下に他の連隊もあるはずで、実際そのような前提で話が進められているときも多いのだが、豚軍との戦争や、山猿軍との和平によっての軍隊解散など、のらくろの所属する猛犬聯隊が、猛犬軍のすべてであるかのように話が進んでいる場合も多い。
以下も『のらくろ総攻撃』の冒頭で紹介されたものを基本としている。
単行本:以下の5巻が、戦前発表のもの同様、雑誌掲載(戦後は戦記月刊雑誌『丸』に連載)のエピソードをもとにして、3色刷り印刷、布装、箱入りの同じ装丁で単行本化され。また同じくそのカラー文庫版とが出版された。2012年には、最後の『のらくろ放浪記』『のらくろ捕物帳』『のらくろ喫茶店』の3冊が「のらくろ 幸福(しあわせ)3部作」として復刊ドットコムからカラー復刻版として出版された。『丸』に連載されたもの自体は(少年倶楽部連載時と同じく1回につき基本4ページ)2023年現在、出版されていない。
「のらくろカラー文庫」15巻「のらくろ喫茶店」(昭和60年刊行)の巻末156~158ページに『のらくろ履歴書』が掲載されている。昭和六年の入営から昭和五十六年の「のらくろ喫茶店」出版まで、時系列でまとめられている。
1970年10月5日から1971年3月29日の毎週月曜日の19時00分~19時30分にフジテレビ系列で全26話(カラー作品)が放映された[14]。
「明治百年(西暦1967年、昭和42年)」にあたるこの時期に昭和初期のリバイバルブームが起こり、上述の通り「少年倶楽部」連載版をおさめた『のらくろ漫画全集』が復刻・刊行されてヒットした。これを受けて1970年にアニメの制作に至る。
当初は田河と親交があったうしおそうじ率いるピー・プロダクションでの制作が予定されていたが、同時期に企画を立ち上げたエイケンが売り込み先のフジテレビでピー・プロの存在を知り、企画ごと買い取ったという。当時のピー・プロは財政難だった為、エイケンからの買取に了承したという[15]。
軍隊の話という基本設定は原作と同じであるが、原作の要素「のらくろの出世」は戦後の時代を考慮してはずされ、のらくろは最後まで「二等兵」でデカと同僚の設定。また、原作に女性キャラクターのいない点を補い、従軍看護婦のミコがオリジナルで追加された。
原作が昭和初期の作品であることから、当時の子供向けテレビアニメとしては珍しく大人からの反響が大きかった。本放送開始以後、1970年10月末までにフジテレビには約2,000通の手紙が寄せられたが、その中の約40%が大人からのものだった。大人層からの反響では、原作から戦後向けにアレンジされた点(特にアニメオリジナルキャラクターのミコ)に関しては概ね不評だった[16]。
原作者の田河は本作の出来に納得がいかず、エイケンの鷺巣政安に『あれは是非ともピー・プロにやらせたかった』と晩年まで漏らしていたという[15]。
名前の後ろに☆印のあるものはアニメオリジナルキャラクター。
話数 | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 演出 | 原画 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1970年 10月5日 | 大脱走の巻 | 広山明志 | 鳥居伸行 | (不明) |
特製胃袋の巻 | 辻真先 | ||||
2 | 10月12日 | 河童大騒動の巻 | 岡田宇啓 | ||
火薬庫歩哨の巻 | |||||
3 | 10月19日 | 銃剣術の巻 | 若林一郎 | 山本功 | |
防空演習の巻 | 広山明志 | 角田利隆 | |||
4 | 10月26日 | 山ザル隊長捕虜の巻 | 村山徹 | 鈴木輝昭 | |
ガッカリ大手柄の巻 | 松元力 | 楠本勝利 | |||
5 | 11月2日 | 突撃戦車隊の巻 | 広山明志 | 鳥居伸行 | 金子勲 |
象狩の巻 | 城山昇 | 山本功 | (不明) | ||
6 | 11月9日 | 一騎打ちの巻 | 広山明志 | 村山修 | 月川秀茂 |
飛行機を作れ! | 城山昇 | 渡辺はじめ | 山岸弘 | ||
7 | 11月16日 | 火事だあ~の巻 | 岡田宇啓 | (不明) | |
軍事探偵の巻 | 辻真先 | 村山修 | |||
8 | 11月23日 | 雪の進軍の巻 | 松元力 | 高垣幸蔵 | 楠本勝利 |
暴れ馬の巻 | 鳥居伸行 | (不明) | |||
9 | 11月30日 | 迷子の子ザルの巻 | 広山明志 | 金子勲 | |
清潔検査の巻 | 大工原正泰 | 村山徹 | 角田利隆 | ||
10 | 12月7日 | 古池や...の巻 | 広山明志 | 鳥居伸行 | (不明) |
激戦第3高地 | 松元力 | 山本功 | |||
11 | 12月14日 | 母ちゃん!たすけての巻 | 雪室俊一 | 岡田宇啓 | 楠本勝利 |
斥候の巻 | 松元力 | (不明) | |||
12 | 12月21日 | いい湯だぞの巻 | 広山明志 | 山本功 | 鈴木輝昭 |
面会日の巻 | 鳥居伸行 | (不明) | |||
13 | 12月28日 | 西から来た軍曹殿の巻 | 高垣幸蔵 | ||
武士のなさけの巻 | 松元力 | 岡田宇啓 | |||
14 | 1971年 1月4日 | ぼくは一人ぼっちの巻 | 城山昇 | 山本功 | 山岸弘 |
怪獣退治の巻 | 武田貴美子 | 渡辺はじめ | (不明) | ||
15 | 1月11日 | 大洪水の巻 | 広山明志 | 岡田宇啓 | 月川秀茂 |
スパイ珍作戦の巻 | 松元力 | 村山徹 | (不明) | ||
16 | 1月18日 | トレーニングコーチの巻 | 城山昇 | 鳥居伸行 | |
汝の敵を愛せよの巻 | 広山明志 | 渡辺はじめ | |||
17 | 1月25日 | 連隊長殿行方不明の巻 | 山本功 | 楠本勝利 | |
雪合戦の巻 | 松元力 | 村山徹 | (不明) | ||
18 | 2月1日 | 不寝番の巻 | 城山昇 | 山岸弘 | |
野外演習の巻 | 広山明志 | (不明) | |||
19 | 2月8日 | 空とぶ戦車の巻 | 辻真先 | 渡辺はじめ | |
射撃演習の巻 | 鳥居伸行 | ||||
20 | 2月15日 | 使命を果せの巻 | 城山昇 | 岡田宇啓 | |
カッパ沼異変の巻 | 辻真先 | 山本功 | 月川秀茂 | ||
21 | 2月22日 | 寒い国から来た父子の巻 | 城山昇 | 村山徹 | (不明) |
オンボロ軍旗に敬礼の巻 | 鈴樹三千夫 | 高垣幸蔵 | |||
22 | 3月1日 | ミコちゃんSOSの巻 | 雪室俊一 | 岡田宇啓 | |
わんぱく大将がやって来たの巻 | 広山明志 | 村山徹 | 山岸弘 | ||
23 | 3月8日 | 大列車作戦の巻 | 生田直親 | 山本功 | (不明) |
春よ来いの巻 | 広山明志 | 鳥居伸行 | 鈴木輝昭 | ||
24 | 3月15日 | ウルトラ大砲の巻 | 村山徹 | (不明) | |
がんばれ二等兵の巻 | 武田貴美子 | 渡辺はじめ | |||
25 | 3月22日 | 帰って来た軍曹殿の巻 | 広山明志 | 岡田宇啓 | 山岸弘 |
わんぱく大将捕虜の巻 | 山本功 | 江口徹 | |||
26 | 3月29日 | 蛇の目傘作戦の巻 | 雪室俊一 | 竹中純 | (不明) |
男は度胸の巻 | 鈴樹三千夫 | 村山徹 |
この節の加筆が望まれています。 |
年代不明ながら次の4本がビデオソフトされたが、いずれも現在は廃盤になっている。
オープニング・エンディング映像は、1986年に東映ビデオから発売&レンタルされた「TVヒーロー主題歌全集 8(エイケン篇)」(VHS)と、1999年12月より同じく東映ビデオから発売された「エイケンTVアニメ主題歌大全集」(VHS、LD。後にDVDも)に収録されている。しかし収録されたOP映像はオリジナル版ではなく「再放送版」である。
1987年10月4日から1988年10月2日までフジテレビ系列で毎週日曜日の18時00分~18時30分に放映された。スタジオぴえろ(現:ぴえろ)制作、全50話。
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