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村上春樹による日本の小説 ウィキペディアから
『1Q84』(いちきゅうはちよん)は、村上春樹の12作目の長編小説。
1Q84 | ||
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著者 | 村上春樹 | |
発行日 |
BOOK1: 2009年5月29日 BOOK2: 2009年5月29日 BOOK3: 2010年4月16日 | |
発行元 | 新潮社 | |
ジャンル | 小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 上製本 | |
ページ数 |
BOOK1: 554 BOOK2: 501 BOOK3: 602 | |
公式サイト |
村上春樹の最新長編小説 『1Q84』|新潮社 | |
コード |
BOOK1: ISBN 978-4-10-353422-8 BOOK2: ISBN 978-4-10-353423-5 BOOK3: ISBN 978-4-10-353425-9 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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書き下ろし作品である。装丁は新潮社装幀室。装画は(C)NASA/Roger Ressmeyer[3]/CORBIS[4]。
2012年4月から6月にかけて、BOOK1、BOOK2、BOOK3がそれぞれ前編と後編とに分け、全6冊として新潮文庫より出版された。
タイトルの『1Q84』は1984年に浅田彰が発表したカセットブック(ドクトル梅津バンド 演奏、浅田彰著 ISBN 4-89342-024-0)と同名である[5][注 1]。各巻毎の表記は以下の通り。なお、"Q"の読みがローマ字で表記される"kyū"ではなく英単語"kewpie"(キューピー)と同じ"kew"([kjuː])となっている。
執筆の動機として、ジョージ・オーウェルの近未来小説『1984年』を土台に、近過去の小説を書きたいと以前から思っていたが[10]、それとは別に、地下鉄サリン事件について『アンダーグラウンド』と『約束された場所で』に書いた後も、裁判の傍聴を続け、事件で一番多い8人を殺し逃亡した、林泰男死刑囚に強い関心を持ち、「ごく普通の、犯罪者性人格でもない人間がいろんな流れのままに重い罪を犯し、気がついたときにはいつ命が奪われるかわからない死刑囚になっていた——そんな月の裏側に一人残されていたような恐怖」の意味を自分のことのように想像しながら何年も考え続けたことが出発点となった。そして「原理主義やある種の神話性に対抗する物語」を立ち上げていくことが作家の役割で「大事なのは売れる数じゃない。届き方だと思う」と述べた[10]。
執筆の背景はカオスのように混沌とした冷戦後の世界で起きた1995年の阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件、2001年の9.11事件に言及した上で、村上は語っている。
「 | 「僕が今、一番恐ろしいと思うのは特定の主義主張による『精神的な囲い込み』のようなものです。多くの人は枠組みが必要で、それがなくなってしまうと耐えられない。オウム真理教は極端な例だけど、いろんな檻というか囲い込みがあって、そこに入ってしまうと下手すると抜けられなくなる」
「物語というのは、そういう『精神的な囲い込み』に対抗するものでなくてはいけない。目に見えることじゃないから難しいけど、いい物語は人の心を深く広くする。深く広い心というのは狭いところには入りたがらないものなんです」 |
」 |
— (毎日新聞インタビュー、2008年5月12日[11]より) |
なお、村上は1997年、『アンダーグラウンド』を上梓した直後、地下鉄サリン事件をベースにした小説の可能性について読者からの質問に以下のように答えている。
「 | 「いつかもっとずっと先に、この仕事で得たものが、僕自身の遺跡として(あるいは)出てくるかもしれません。でもそれはほんとうに先のことです。僕はこの本の取材をとおして、人生を大きく変えられてしまった人々の姿を数多く見てきました。言葉にならないほどの切望や哀しみが、そこにはありました。僕はそれをたとえ一部でも、自分のものとして抱え込むことになりました。ある意味では彼らの声は僕の声であり、僕の声は彼らの声であるのです。
僕はその人たちの身に起こったことを、そんなにかんたんに自分の『材料』にしてしまいたくないのです。たとえ生のかたちでないにせよ。僕にとっての小説というのは、そういうものではないような気がするのです。その気持ちはわかっていただけますでしょうか? - At 1:19 PM 97.3.19」[12] |
」 |
『ニューヨーク・タイムズ』2011年10月23日号が行ったインタビューに対し、著者は、本書は短編小説「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」(1981年)から派生した作品であると答えている。「基本的には同じ物語です。少年と少女が出会い、離ればなれになる。そしてお互いを探し始める。単純な物語です。その短編をただ長くしただけです」[13]。
村上は刊行直後のインタビューで「ほぼすべての登場人物に名前を付け、一人ずつできるだけ丁寧に造形した。その誰が我々自身であってもおかしくないように」と答えている[10]。
2人の主人公、天吾と青豆は孤独な10歳の少年少女として、誰もいない放課後の小学校の教室で黙って手を握り目を見つめ合うが、そのまま別れ別れになる。
そして相思いながら互いの消息を知ることなく長年月が過ぎた1984年4月、2人は個別にそれまでの世界と微妙に異なる1Q84年の世界に入り込む。さまざまな出来事、試練に遭遇したのち、12月になって20年ぶりの再会を果たし、1984年の世界に戻ったところで物語は終わる。
スポーツインストラクターの青豆は、老婦人・緒方の考えに共鳴して、女性をDVで苦しめる男たちを暗殺する仕事を引き受ける。彼女は人間の身体の微妙な部分を捉える優れた能力をもっており、首の後ろのあるポイントに細い針を突き刺すことで、心臓発作に酷似した状況で人間を殺害することができる。青豆がそのような殺人行為をするようになった背景には、無二の親友を自死で失った過去が関係している。しかし、1984年4月にその仕事のひとつをやり終えたあたりから、青豆は自分がそれまでの現実とは微妙に異なった世界「1Q84年」に入り込んでいるらしいことに気づく。
一方、予備校の講師として数学を教える天吾は、小説家を目指して新人賞のために小説を書きつづけている。応募していくなかで知り合った編集者の小松とも親しくなり、小松から無署名のコラム書きや新人賞応募作の下読みなどの仕事を与えられる。天吾は新人賞応募作のなかから、「ふかえり」という少女の書いた『空気さなぎ』という小説を見出し、小松に強く推薦する。小松は天吾に『空気さなぎ』のリライトを勧め、天吾はそれを完成させる。『空気さなぎ』は新人賞を得て爆発的に売れるが、いつしか天吾は周囲の現実の世界がそれまでとは微妙に異なって天に月が2つ浮かぶ『空気さなぎ』の虚構の世界そっくりに変貌していることを知る。
かくして個別に「1Q84年の世界」に入り込んだ2人は、それぞれが同じ「さきがけ」という宗教団体に関わる事件に巻き込まれていく。
BOOK1、BOOK2では、スポーツインストラクターであると同時に暗殺者としての裏の顔を持つ青豆を描いた「青豆の物語」と、予備校教師で小説家を志す天吾を主人公とした「天吾の物語」が交互に描かれる。
BOOK3では2つの物語に加え、青豆と天吾を調査・探索する牛河を主人公とした「牛河の物語」が加わる。
BOOK 1
BOOK 2
BOOK 3
これまでの村上の小説の中でもとりわけクラシック音楽の比重が強い[46]。
本作に出てくるクラシック音楽がEMIミュージック・ジャパンからCD化された。[50][51]
翻訳言語 | 翻訳者 | 発行日 | 発行元 |
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英語 | ジェイ・ルービン(BOOK1、BOOK2) フィリップ・ガブリエル(BOOK3) | 2011年9月18日 (BOOK1)、同日 (BOOK2) 2011年9月25日 (BOOK3) | ランダムハウス(英国) Knopf(米国) |
フランス語 | Hélène Morita、Yôko Miyamoto | 2011年8月25日 (BOOK1)、同日 (BOOK2) 2012年3月1日 (BOOK3) | Belfond |
ドイツ語 | Ursula Gräfe | 2010年10月 (全1巻: BOOK1からBOOK2) 2011年10月 (BOOK3) | DuMont Buchverlag Gmbh |
イタリア語 | ジョルジョ・アミトラーノ | 2011年11月8日 (全1巻: BOOK1からBOOK2) 2012年10月16日 (BOOK3) | Einaudi |
スペイン語 | Gabriel Álvarez Martínez | 2011年2月 (全1巻: BOOK1からBOOK2) 2011年10月 (BOOK3) | Tusquets Editores |
カタルーニャ語 | Jordi Mas López | 2011年2月 (全1巻: BOOK1からBOOK2) 2011年10月 (BOOK3) | Edicions Empúries |
ガリシア語 | Mona Imai Gabriel Álvarez Martínez | 2011年2月 (全1巻: BOOK1からBOOK2) 2011年9月 (BOOK3) | Editorial Galaxia |
ポルトガル語 | Maria João Lourenço, Maria João da Rocha Afonso | 2011年11月 (BOOK1)、2012年3月 (BOOK2) 2012年9月10日 (BOOK3) | Casa das Letras(ポルトガル) |
Lica Hashimoto | 2012年11月1日 (BOOK1)、2013年3月1日 (BOOK2) 2013年11月28日 (BOOK3) | Alfaguara(ブラジル) | |
オランダ語 | ヤコバス・ウェスタホーヴェン | 2010年6月25日 (BOOK1)、同日 (BOOK2) 2011年2月17日 (BOOK3)[52] | Atlas |
スウェーデン語 | Vibeke Emond | 2011年 (BOOK1)、2011年 (BOOK2) 2011年 (BOOK3) | Norstedts |
デンマーク語 | Mette Holm | 2011年9月29日 (BOOK1)、2011年10月 (BOOK2) 2012年8月29日 (BOOK3) | Klim |
ノルウェー語 | Ika Kaminka | 2011年 (全1巻: BOOK1からBOOK2) 2012年 (BOOK3) | Pax forlag |
フィンランド語 | Aleksi Milonoff | 2013年4月11日 (全1巻: BOOK1からBOOK2) 2013年10月11日 (BOOK3) | Tammi |
ポーランド語 | Anna Zielińska-Elliott | 2010年10月27日 (BOOK1)、2011年2月9日 (BOOK2) 2011年11月 (BOOK3) | Muza |
チェコ語 | Tomáš Jurkovič | 2012年10月25日 (全1巻: BOOK1からBOOK2) 2013年10月25日 (BOOK3) | Odeon |
スロベニア語 | Aleksander Mermal | 2012年 (全1巻: BOOK1からBOOK2) 2013年 (BOOK3) | Mladinska knjiga |
ハンガリー語 | Erdős György (BOOK1) Erdős György, Nagy Anita (BOOK2) Nagy Anita (BOOK3) | 2011年11月 (BOOK1) 2011年11月 (BOOK2) 2012年4月 (BOOK3) | Geopen Könyvkiadó Kft. |
ルーマニア語 | Iuliana Oprina, Florin Oprina | 2011年 (BOOK1)、2011年 (BOOK2) 2012年 (BOOK3) | Polirom |
セルビア語 | Nataša Tomić | 2010年 (BOOK1)、2010年 (BOOK2) 2011年 (BOOK3) | Geopoetika |
ギリシア語 | Αργυρακη Μαρία | 2012年10月25日 (BOOK1)、2012年10月25日 (BOOK2) 2013年4月18日 (BOOK3) | Ψυχογιός |
ロシア語 | Dmitry Viktorovich Kovalenin | 2011年 (BOOK1)、2011年 (BOOK2) 2012年8月 (BOOK3) | Eksmo |
ウクライナ語 | Ivan Petrovych Dzyub | 2009年11月12日 (BOOK1)、2010年9月17日 (BOOK2) 2011年4月22日 (BOOK3)[53][54][55][56][57] | Folio(Фоліо) |
エストニア語 | Margis Talijärv | 2013年12月 (全1巻: BOOK1からBOOK2) 未完 (BOOK3) | Varrak |
ラトビア語 | Ingūna Beķere | 2012年3月 (BOOK1)、2012年4月 (BOOK2) 2013年 (BOOK3) | Zvaigzne ABC |
リトアニア語 | Ieva Susnytė | 2011年 (BOOK1)、2011年 (BOOK2) 2011年 (BOOK3) | Baltos lankos |
トルコ語 | Hüseyin Can Erkin | 2012年 | Doğan Kitap |
ヘブライ語 | Einat Cooper | 2011年 (BOOK1)、2011年 (BOOK2) 2012年 (BOOK3) | Keter Publishing House |
中国語 (繁体字) |
頼明珠 | 2009年11月13日 (BOOK1)、同日 (BOOK2) 2010年10月5日 (BOOK3) | 時報文化(台湾、香港、マカオ) |
中国語 (簡体字) |
施小煒 | 2010年5月22日 (BOOK1)、2010年6月1日 (BOOK2) 2011年1月1日 (BOOK3) | 南海出版公司(中国大陸) |
韓国語 | 梁潤玉(ヤン・ユンオク) | 2009年8月25日 (BOOK1)、2009年9月8日 (BOOK2) 2010年7月27日 (BOOK3) | 文学トンネ |
ベトナム語 | Lục Hương | 2012年 (BOOK1)、2012年 (BOOK2) 2013年4月12日 (BOOK3) | Nhã Nam |
モンゴル語 | オチルフー・ジャルガルサイハン | 2014年-2015年 | Монсудар |
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