東京都大田区出身。スタニスワフ・レムの作品に熱中し、ポーランド語を専門とすることを決める。学生時代には、非英米圏SF研究ファングループ「イスカーチェリ」に参加し、のち、日本SF作家クラブ会員。1977年(昭和52年)- 1979年(昭和54年)の第19次『新思潮』に参加し評論を書いた。四方田犬彦、平野共余子らの映画同人誌『シネマグラ』にも参加。日本学術会議会員。日本ペンクラブ副会長。ヴィスワヴァ・シンボルスカの詩集『瞬間』の翻訳を未知谷のサイトで連載中(2017年(平成29年)5月 - )[1]。
妻の沼野恭子はロシア文学者(東京外国語大学名誉教授、放送大学客員教授)。
- 1973年(昭和48年)3月 - 東京教育大学附属駒場高等学校(現・筑波大学附属駒場高等学校)卒業
- 1977年(昭和52年)3月 - 東京大学教養学部教養学科ロシア分科卒業
- 1979年(昭和54年)3月 - 東京大学大学院人文科学研究科露語露文学専門課程修士課程修了
- 1981年(昭和56年)9月 - フルブライト奨学生としてハーバード大学大学院スラヴ語スラヴ文学専攻博士課程へ留学
- 1984年(昭和59年)
- 2月 - ハーバード大学助手(ティーチング・アシスタント、1985年(昭和60年)6月まで)
- 6月 - ハーバード大学より文学修士 (M.A.) 取得
- 1985年(昭和60年)
- 3月 - 東京大学大学院人文科学研究科露語露文学専門課程博士課程単位取得満期退学
- 6月 - ハーバード大学大学院スラヴ語スラヴ文学専攻博士課程単位取得・博士論文提出資格取得
- 8月 東京大学教養学部ロシア語教室専任講師
- 1987年(昭和62年)9月 - ワルシャワ大学東洋学研究所客員講師(1年間、日本語学科の講師を務めた[2])
- 1989年(昭和64年 / 平成元年)1月 - 東京大学教養学部ロシア語教室助教授
- 1994年(平成6年)4月 - 東京大学文学部スラヴ文学研究室助教授
- 2000年(平成12年)5月 - ロシア国立人文大学(英語版)において共同研究(国際交流基金フェロー 11月まで)
- 2002年(平成14年)10月 - ロシア国立大学アジア・アフリカ研究所客員教授
- 2004年(平成16年)4月 - 東京大学大学院人文社会系研究科教授
- 2007年(平成19年)4月 - 東京大学大学院人文社会系研究科・文学部に新設された現代文芸論研究室に所属(スラブ文学研究室と兼任)
- 2009年(平成21年)- 日本ロシア文学会会長(2013年まで)[3]
- 2014年(平成26年)- 日本ロシア・東欧研究連絡協議会代表幹事(2017年まで)[3]
- 2015年(平成27年)
- 2019年(平成31年)
- 2020年(令和2年)
- 3月 - 東京大学を定年退職
- 4月 - 名古屋外国語大学世界教養学部教授・東京大学名誉教授
- 2002年(平成14年)-『徹夜の塊』でサントリー学芸賞芸術・文学部門
- 2004年(平成16年)-『ユートピア文学論』で第55回読売文学賞
単著
- 『屋根の上のバイリンガル』(筑摩書房) 1988、のち白水Uブックス 1996
- 『永遠の一駅手前 - 現代ロシア文学案内』(作品社) 1989
- 『夢に見られて - ロシア・ポーランドの幻想文学』(作品社) 1990
- 『スラヴの真空』(自由国民社、読書の冒険シリーズ) 1993
- 『モスクワ - ペテルブルグ縦横記』(岩波書店) 1995
- 『W文学の世紀へ - 境界を越える日本語文学』(五柳書院) 2001
- 『亡命文学論 - 徹夜の塊』(作品社) 2002、増訂版 2022
- 『ユートピア文学論 - 徹夜の塊2』(作品社) 2003、増訂版 2022
- 『世界文学から / 世界文学へ 文芸時評の塊 1993-2011』(作品社) 2012
- 『チェーホフ 七分の絶望と三分の希望』(講談社) 2015
- 『世界文学論 - 徹夜の塊3』(作品社) 2020
編著
- 『ロシア怪談集』(河出文庫) 1990、新装版 2019.10
- 『東欧怪談集』(河出文庫) 1995、新装版 2020.9
- 『ユートピアへの手紙 - 世界文学からの20の声』(河出書房新社) 1997
- 『イリヤ・カバコフの芸術』(五柳書院) 1999
- 『ユダヤ学のすべて』(新書館) 1999
- 『鰐 ドストエフスキーユーモア小説集』(講談社文芸文庫) 2007
- 『芸術は何を超えていくのか? - 未来を拓く人文・社会科学15』(東信堂) 2009
- 『チェーホフ「かもめ」』(NHK出版〈100分de名著〉、2012年9月度放送テキスト)
- 『世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義』(光文社) 2012
- 『やっぱり世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義2』(光文社) 2013
- 『村上春樹「かえるくん、東京を救う」英訳完全読解』(監修、NHK出版) 2014
- 『それでも世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義3』(光文社) 2015
- 『8歳から80歳までの世界文学入門 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義4』(光文社) 2016
- 『つまり、読書は冒険だ。対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義5』(光文社) 2017
- 『スタニスワフ・レム「ソラリス」』(NHK出版〈100分de名著〉、2017年12月度放送テキスト)
共編著
- 『世界文学のすすめ』(大岡信, 奥本大三郎, 川村二郎, 小池滋、岩波文庫別冊) 1997
- 『世界は村上春樹をどう読むか』(柴田元幸, 藤井省三, 四方田犬彦、国際交流基金編、文藝春秋) 2006、のち文春文庫 2009
- 『書きなおすナボコフ、読みなおすナボコフ』(若島正、研究社) 2011
- 『ユーラシア世界1〈東〉と〈西〉』(塩川伸明, 小松久男, 宇山智彦共編、東京大学出版会) 2012
- 『ユーラシア世界2 ディアスポラ論』(塩川伸明, 小松久男共編、東京大学出版会) 2012
- 『ユーラシア世界3 記憶とユートピア』(塩川伸明, 小松久男共編、東京大学出版会) 2012
- 『ユーラシア世界4 公共圏と親密圏』(塩川伸明, 小松久男, 松井康浩共編、東京大学出版会) 2012
- 『ユーラシア世界5 国家と国際関係』(塩川伸明, 小松久男共編、東京大学出版会) 2012
- 『世界の名作を読む 海外文学講義』(工藤庸子, 池内紀, 柴田元幸、角川ソフィア文庫) 2016
- 『ドストエフスキー ポケットマスターピース10』(高橋知之共編訳、集英社文庫ヘリテージシリーズ) 2016
- 『ヨーロッパ文学の読み方 近代篇』(野崎歓共編著、放送大学教育振興会) 2019
- 『文庫で読む100年の文学』(松永美穂, 阿部公彦, 読売新聞文化部共編、中公文庫) 2023
- 『徹底討議:二〇世紀の思想・文学・芸術』(松浦寿輝, 田中純、講談社) 2024.3
- 『ハーバード大学ダムロッシュ教授の世界文学講義:日本文学を世界に開く』(デイヴィッド・ダムロッシュ、監修、高橋知之ほか2名訳、東京大学出版会) 2024.4
- 『輝く世界』(アレクサンドル・グリーン、月刊ペン社) 1978、のち沖積舎 1993
- 『師匠たちと弟子たち』(ヴェニアミン・カヴェーリン、月刊ペン社) 1981
- 『シーポフの冒険 - あるいは今は昔のボードビル』(B・オクジャワ、沼野恭子共訳、群像社) 1989
- 『象』(スワヴォーミル・ムロージェック、長谷見一雄, 吉上昭三, 西成彦共訳、国書刊行会) 1991
- 『大理石』(ヨシフ・ブロツキイ、白水社) 1991
- 『微笑を誘う愛の物語』(ミラン・クンデラ、千野栄一, 西永良成共訳、集英社) 1992
- 『金色の玄関に』(タチヤーナ・トルスタヤ、沼野恭子共訳、白水社) 1995
- 『ライロニア国物語 - 大人も子どもも楽しめる13のおとぎ話』(レシェク・コワコフスキ、芝田文乃共訳、国書刊行会) 1995
- 『私人 - ノーベル賞受賞講演』(ヨシフ・ブロツキイ、群像社) 1996
- 『亡命ロシア料理』(ピョートル・ワイリ, アレクサンドル・ゲニス、北川和美, 守屋愛共訳、未知谷) 1996
- 『わが家の人びと - ドヴラートフ家年代記』(セルゲイ・ドヴラートフ、成文社) 1997
- 『終わりと始まり』( ヴィスワヴァ・シンボルカ、未知谷) 1997
- 『1917年のロシア革命』(ロイ・メドヴェージェフ、石井規衛共同監訳、現代思潮社) 1998
- 『消えた太陽』(アレクサンドル・グリーン、岩本和久共訳、国書刊行会) 1999
- 『ナボコフ短篇全集』1 - 2(諫早勇一, 貝澤哉, 加藤光也, 毛利公美, 若島正共訳、作品社) 2000 - 2001
- 増補版『ナボコフ全短篇』全1巻(上記+秋草俊一郎, 杉本一直共訳、作品社) 2011
- 『真説ラスプーチン』上・下(エドワード・ラジンスキー、望月哲男共訳、日本放送出版協会) 2004
- 『ポーランド文学史』( チェスワフ・ミウォシュ、関口時正, 森安達也, 西成彦, 長谷見一雄共訳、未知谷) 2006 - ※第42回日本翻訳出版文化賞受賞
- 『賜物』(ウラジーミル・ナボコフ、河出書房新社、世界文学全集) 2010、のち新潮社「ナボコフ・コレクション」 2019
- 『新訳 チェーホフ短篇集』(アントン・チェーホフ、集英社) 2010
- 『チェスワフ・ミウォシュ詩集』(関口時正共編、成文社) 2011
- 『かもめ』(アントン・チェーホフ、集英社文庫) 2012
- 『ソヴィエト文明の基礎』(アンドレイ・シニャフスキー、平松潤奈, 中野幸男, 河尾基, 奈倉有里共訳、みすず書房) 2013
- 『ヌマヌマ はまったら抜けだせない現代ロシア小説傑作選』(ミハイル・シーシキン、沼野恭子共訳、河出書房新社) 2021.10 ISBN 978-4-309-20840-4
- ヴィクトル・ペレーヴィン、エドワルド・リモノフ、ヴィクトル・エロフェーエフ、アサール・エッペリ、アンドレイ・ビートフの作品を訳出
スタニスワフ・レム
- 『枯草熱』(スタニスワフ・レム、吉上昭三共訳、サンリオSF文庫) 1979
- 『金星応答なし』(スタニスワフ・レム、ハヤカワSF文庫) 1981
- 『完全な真空』(スタニスワフ・レム、工藤幸雄, 長谷見一雄共訳、国書刊行会) 1989、のち河出文庫 2020
- 『虚数』(スタニスワフ・レム、長谷見一雄, 西成彦共訳、国書刊行会) 1998
- 『ソラリス』(スタニスワフ・レム、国書刊行会) 2004、のちハヤカワSF文庫 2015
- 『高い城 / 文学エッセイ』(スタニスワフ・レム、巽孝之, 芝田文乃, 加藤有子, 井上暁子共訳、国書刊行会) 2004
- 『天の声 / 枯草熱』(スタニスワフ・レム、吉上昭三, 深見弾共訳、国書刊行会) 2005
- 『短篇ベスト10』(スタニスワフ・レム、関口時正, 久山宏一, 芝田文乃共訳、国書刊行会) 2015
注釈
ダムロッシュの『世界文学とは何か?』(国書刊行会、2011年)の解説に「世界文学三カ条」を提唱している。大まかに次の通り。
1条「
旅には意味がある」 - 外国の文学を読むということは、
作品が旅をしているということ。旅というのは、行く前と行った後では自分が少しだけ変わる体験をする。外国の文学を読むということは旅をするということ。
2条「
多様性はいいことだ」 - 世界文学には、差異と多様性が満ちている。自分の考えと違う考え方が書かれたものが読める。そのことに触れることのよさがある。たとえそれが原文でなくても、翻訳を通してでもどんどん読めばいい。
3条「翻訳は豊かにする」 - 世界文学全集というのは、一種のカノン = 聖典、つまり、ある時代に読むべき価値のあると認められた作品群である。翻訳が二次的な
偽物という限界もあるけれど、ある国の
領域を越えて外に出ていき、そこで新しい読者と出会う機会を与えてくれる力がある。
- 先代
- 袴田茂樹
|
- 日本ロシア・東欧研究連絡協議会代表幹事
- 2014年(平成26年) - 2017年(平成29年)
|
- 次代
- 林忠行
|