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そばやうどんなどを立ち食い形式で提供する飲食店 ウィキペディアから
立ち食いそば・うどん店(たちぐいそばてん・うどんてん)は、そばやうどんなどを立ち食い形式で提供する飲食店である。鉄道駅にあるものは「駅そば」とも呼ばれる。
簡便な食事場所としての立ち食いそば店の起源は、江戸時代の江戸でのそばの屋台である。
簡単に食事をすませたい場合などに多く利用されているファストフード店の一種でもある。日本各地で見られる店舗形態で、鉄道駅のほか、大都市圏を中心に駅周辺やオフィス街などの市街地・商業地域で営業する店、あるいは遊園地、野球場や競馬場などの遊興施設で営業をする店も多々ある。店によっては立ち食いではなく、カウンターに簡易椅子を設けて腰掛けられるようになっている場合や、テーブル席を置いている場合もある。
高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、一般道路の道の駅などにある、立ち食いもしくはカフェテリアスタイルの軽食コーナーにも、そば・うどんのメニューがあるので、広義にはこれらを含むこともある。また、1960年代から1970年代の一時期には、日本国有鉄道の急行列車の一部にあったビュフェでも立ち食い形式のそば・うどんを提供していたこともあった。
ほとんどの店で、そばとうどんの両方を扱っている。そばの比率は、首都圏では7割から8割を占めている一方、関西では4割から5割とされる。ただし、同じ関西でも「阪急そば」では6割を占めている。売り上げが伸びないうどん専門店をそば店に転換して軌道に乗った店もあり、「駅の立ち食いはそば」という概念が確立している[1]。
基本的に、客は店内のカウンター越しに厨房内にいる従業員へ料理を注文し、カウンター越しに出来上がった料理を受け取る。かつては、出来上がった料理と引き換えに、従業員へ代金の現金を手渡しするスタイルだったが、立ち食いそばチェーンの普及による金銭管理の徹底化、および保健所からの衛生上の観点による指導により、食券販売機を使用する店舗が増えている。また、Suica・PASMO・ICOCA・SUGOCAなどの電子マネーが利用できる店舗も増えつつある[2][3]。ただし、トッピングの追加のみ現金可の場合も多いほか、未だ全商品の代金収受を現金手渡しで行っている店も少なくない。
そばとうどんの違いや、地域によるメニューの違いを理解していない外国人などに配慮して、メニューや看板に料理の写真を掲載している店もある。
立ち食い店では商品を短時間に提供することが売り物のひとつであるため、市中のそば・うどん店とは異なり、主流は「ゆで麺」であり、あらかじめ製麺所でゆで上げられた麺を注文後再度短時間湯通しして、かつ、熱めのつゆをかけて提供される場合が多い。これは、生麺からゆでていては客の「短時間で食事を済ませたい」要求に対応できないことから生まれたものである。また、この方法では調理が短時間かつ簡単なため、店員数が少なくて済み、コスト削減の効果もある。
味への要求から、質感が向上した「生麺」や「冷凍麺」を採用する店もある。逆に冷凍庫を設置しなければならないことや、ゆで麺に対して2分程度のゆで時間がかかるという欠点がある。そのため生麺を使用している店の中には、生麺使用のため多少時間がかかるという旨の注意書きを壁に掲示している店もある。生麺は市街地に立地する店を中心に採用され、注文後生麺からゆで上げ、その後冷たい水で麺のヌメリを取り締めるため、本来の味を楽しむことが出来る。生麺や冷凍麺を採用する店でも、ゆで上げる手間を減らし提供の早さを維持するため、一定量の麺を一度にゆで上げておく店では麺が伸びてしまっている場合もある。
立ち食い店で初めて生麺を導入したのは、1987年、富士そばとされる[4]。「小諸そば」を生麺導入の先駆け的存在とした記事[5]もあるが詳細は不明。
2010年代に入り、主に打ちたての蕎麦を提供する目的で、押し出し式製麺機による店内製麺を導入する店も増えている[6]。大手では富士そばが2016年より一部店舗で店内製麺を始めた[7]。
めんつゆは一般のそば・うどんと同様である。
関東ではつけ蕎麦のツユを掛けて食べてかけそばが出来たように、濃口醤油と砂糖・味醂を材料とする「かえし」と削り節を使用し旨味と香りが強く濃い色のつゆであり[8]、これはつけそば・かけそば、うどんでも同様である。
一方、近畿では、薄口醤油を使用し昆布の風味を生かした薄い色のつゆが主流である。近畿以西(西日本)で濃口醤油を用いた「関東風」のつゆが出される地域はかなり限定的であり、鳥取県米子周辺、島根県出雲地方のみとなっている。ただ、それらの地域でも用いられるネギは他の西日本同様にすべて青ネギである。
内陸部の米原駅の立ち食い店は、薄口醤油と昆布の風味を生かした、明らかに近畿風のつゆの立ち食い店である。東海道本線沿線で米原の東隣に位置する立ち食い店設置駅はかつては大垣駅、2006年時点では岐阜駅で、いずれも濃口醤油ベースの名古屋風つゆの店である。
飛び地などもあり諸説あるが、北から富山県、関ヶ原、愛知県・三重県境を基準として境界線を引くことができるとする意見もある[9]。
2000年12月22日に放送された『タモリ倶楽部 さよなら20世紀SPECIAL』(テレビ朝日、90分拡大SP)の企画で、東海道新幹線各駅のうどんの汁の色の濃を調査した。関東〜東海にかけては関東風で、特に小田原駅から豊橋駅までが最も濃く、また西に進むにつれむしろ濃くなっていった。豊橋駅の次の三河安城駅でやや薄くなる変化が現れ始め、名古屋駅は三河安城駅とほぼ同じ、その隣の岐阜羽島駅ではそれよりさらに薄くなり、次の米原駅からは完全な近畿の薄色の出汁になるという結果であった。なお、番組レビューページの日付は「1月22日」となっているが、2000年のカレンダーや放送サブタイトルなどから、12月22日が正しい[要出典]。また、2001年10月28日放送『所さんの目がテン!』でも同様の調査が行われ、やはり米原駅で近畿に切り替わるという結論に至った[10]。
ご飯物も提供している店舗もある。ご飯・炊き込み類・とろろ飯などの茶碗に盛るだけのもの、カレーライス・かきあげ天丼などの麺類と具が共通のもの、または稲荷寿司・おむすびなどの店舗内での調理が不要か簡単なメニューが多い。その一方で、通常の蕎麦屋のメニューのように親子丼・カツ丼・牛丼・夏季に鰻丼などの丼物を置く店もある。駅弁販売業者が運営する駅内にある店舗では駅弁を扱うところもある。
駅そば(えきそば)は、日本の鉄道駅構内において蕎麦(そば)を提供する飲食店及びその蕎麦である。多くが「立ち食いそば店」の形式で運営されている。椅子を設けている店もある[11]。
駅構内における立ち食いそば店は、主として、駅弁を販売する業者により運営されてきた店舗と、鉄道事業者(主に旧国鉄)が余剰人員対策として[11]直営あるいは関連会社により展開してきた店舗に大別される[12]。明治時代後期には、そばを提供する店が軽井沢駅や一ノ関駅、北海道の長万部駅・森駅にできた[13]。列車の停車時間や乗り換え時などの空き時間に気軽に喫食出来るサービスとしても広まる[14]。またホーム上の駅そば店では停車時間の短縮に対応して、列車内へ持ち込めるように持ち帰り容器込みで販売される形態も広まった。
元々の運営形態である「駅弁販売業者の運営」は駅弁事業の不振や経営者の高齢化により事業者が撤退、「鉄道事業者の余剰人員対策」も余剰人員そのものの整理・鉄道事業者内のグループ再編により閉店が相次いでいる。その後継として鉄道事業者系の外食企業の参入が増えており、駅そばの味付けが画一化される傾向にある[12]。
かつてJR東日本駅構内の駅そばは個人経営が多かったが、1996年(平成8年)に同社の子会社である日本レストランエンタプライズ(JR東日本フーズを経て現在のJR東日本クロスステーションフーズカンパニー)に製麺部門が新たに出来ると自社製麺に切り替わった。順次拡大を広げ、1998年(平成10年)に駅構内の立ち食いそばを全て「あじさい茶屋」(旧:あじさい亭)に統一してチェーン展開を大々的に進めたが、全て茹で麺で各店の味が同一で味に特徴がなかったため、店ごとに様々な味と独特で多彩なメニュー、コストをかけながらも美味しい生麺が楽しめる個人経営時代の駅そばの魅力を分かっていないと苦情が相次いだ[12]。そのため、素早く提供しつつ食味を向上させるため、かき揚げをおいしく揚げられる担当者育成や機械の導入、生麺への切り替えといった工夫も行われている[11]。
系列化が進む現在も、個性的な駅そば店は首都圏を含めて多くあり、味や具の違いを楽しむ愛好家もいる[11]。鉄道そのものの利便性が向上して駅に滞在しなければいけない時間が減少していることは、地方において駅そば店にとって逆風となっているとの指摘もある[14]。
日本国外では韓国の主要都市駅で「駅そば」ならぬ「駅うどん」が存在する例がある(大田駅の記事を参照)[15]。
なお、そば・うどんを全く置かないため本項の範疇からは外れるが、ラーメン専門の立ち食い店も各地に存在する。そばと違ってラーメンはその特性上「茹で置き」が難しく、茹で時間も長く、茹で汁にかんすいが溶けだすためにこまめな水の交換を必要とすることから、限られた時間と空間の中で営業する必要のある駅構内では提供が難しいとされ、駅そば・駅うどん店と比べて店舗数は少ないとされる[16]。かつては「ホームラーメン」という名称の立ち食いラーメンチェーン店が秋葉原駅・浜松町駅などの構内にあった。2021年現在では、細麺中心のため茹で時間が短く、そばと同等の効率でラーメンが提供できる九州地方を中心に立ち食い「駅ラーメン」が見られるほか[16]、関東では東武伊勢崎線西新井駅の「西新井ラーメン」[17]および、春日部駅野田線ホーム上の「東武ラーメン」[18]などがあり、特に春日部駅の「東武ラーメン」は立ち食い「駅ラーメン」の代表格として知られている[19]。また、既存の駅そば店のメニューにラーメンが加わるケースも増えており、「駅ラーメン」の人気が広まってきているという[19]。
鉄道事業者ごとに、関連会社によるチェーンを展開したり、共通の屋号を設けていたりする例がある。また、駅弁店などが複数の駅で営業している場合も見られる。一方で、駅によって独自の屋号を持つことも多い。
西日本、特に近畿地方ではうどんがメニューの中心だが、屋号には「そば」を用いていることが多い。蕎麦の販売割合は4割から5割程度との調査結果がある[20]。要因の一つとして「そばの方が早く食べられるイメージがある」との見解が示されている[20]。
事典であって美味い店の紹介ではないので、特徴をお願いします。「本格的な味」「人気がある」では不適当かつ不充分
他にも函館駅、五稜郭駅、倶知安駅、岩見沢駅、滝川駅、深川駅、留萌駅、増毛駅、遠軽駅、音威子府駅、稚内駅などにも駅そば店があったが、全て閉店している。番外としてバス駅として待合室が活用されている旧静内駅のそば屋や、大通駅改札外すぐにあるひのでそばのように、駅近隣の立ち食いそば屋がいくつかある。北海道の立ち食いそば店のダシは色が非常に濃く、真っ黒いものが多い。しかし味は見た目とは裏腹に、昆布ダシを加えた甘めなものが多く、塩辛さはそれほど強くはない。
庶民向けの安価な食事のイメージが強い立ち食いそば・うどん店であるが、芸能人・文化人などの著名人にも愛好者が存在する。
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