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構造計算書が偽造されていたことに始まる一連の事件 ウィキペディアから
構造計算書偽造問題(こうぞうけいさんしょぎぞうもんだい)は、2005年(平成17年)11月17日に国土交通省が千葉県にあった建築設計事務所のA元一級建築士によって、地震などに対する安全性の計算を記した構造計算書が偽造されていたことを公表したことに始まる一連の事件である。耐震偽装問題、「○○(Aの苗字)事件」とも呼ばれる。
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一連の耐震偽装事件は発覚当初は耐震強度偽装が組織的ともみられ、建築会社及び経営コンサルタント会社による組織的犯行と当初報道されていたが、公判では「A元一級建築士による“個人犯罪”」と結論づけられた。東京地方裁判所はA元建築士に懲役5年、罰金180万円の実刑判決を言い渡した。
一級建築士が行なった国土交通大臣認定構造計算ソフトウエアの計算結果を改竄した形での構造計算書の偽装を、建物の建築確認・検査を実施した、行政および民間の指定確認検査機関が見抜けず、承認した。地震多発国の日本において、建築基準法に定められた耐震基準を満たさないマンションやホテルが建設されていたという事実は、人命や財産に関わるものであることから、大きな社会問題となった。
マスコミは、震度5強程度の地震で倒壊の恐れがあると報道しており、「殺人マンション」と揶揄した。
これを受けて警視庁は、千葉県警察・神奈川県警察と合同捜査本部を設置して捜査に乗り出し[1]、事件名を「耐震強度構造計算書偽装事件」と名付けた。
構造計算書を偽装した建築士、建設会社幹部、ディベロッパー幹部、確認検査機関幹部、コンサルタント会社幹部などの関係者らが、証人喚問や参考人招致などで国会に呼ばれて、答弁した。また、インターネット上では「きっこの日記」というウェブサイトがマスコミに先行して本件に関する情報を流し、その結果として[要出典]正確な報道が難航した。また、これにより政治家や官僚と業者が癒着の嫌疑を被せられた。
民主党馬渕澄夫議員の秘書だった大西健介は、この事件できっこと情報のやり取りをした事を「政策空間」で紹介しており、「きっこの日記」を多数引用している[2]。ただし、「きっこの日記」に書かれた情報は、ほとんどが誤情報であった事が後日判明している。
2006年3月には、北海道札幌市のマンションで二級建築士による構造計算書の偽装が発覚、2007年1月には京都府京都市のホテル2棟の構造計算書の偽造が判明し、このケースはA建築士の個人的な犯罪に留まるものでないことから、更なる波紋を呼んだ。
1998年(平成10年)3月15日 、橋本内閣は「建築確認・検査の民間開放」と「戸建住宅・プレハブ住宅等についての中間検査制度の特例」を設ける「建築基準法の一部を改正する法律案」を国会に提出。
従来は、地方公共団体の建築主事のみが建築確認、検査事務を行なってきたが、建築物の着工件数に比べ、建築主事など職員の絶対数が不足していたこともあって、事実上検査が行なわれなかったり、検査が行なわれた場合でも、ずさんだったり、おざなりな検査であったりしたケースが多発し、欠陥住宅災害が発生する原因となっているとする指摘があった。
日弁連などが建築士の協力を得て調査したところによれば、建築確認とまったく異なった建造物が建設された例や、手抜き工事の例が発見され、当時の建築基準法、あるいは住宅金融公庫標準仕様書、日本建築学会標準仕様書などが定める基準を満たさないものが非常に多いことが判明していた。このような背景から、同法案は「建築確認、検査事務」を民間の指定確認検査機関に門戸を開放するべきとしたものであった。
同年4月24日の衆議院本会議で新党平和・井上義久は質問に立ち、阪神大震災の被害について指摘しつつ、ゼネコンやハウスメーカーなどの株式会社(施工業者)が集まって指定確認検査機関を作ることもできる法案であることから公正中立な確認検査が本当に担保されないのでは、違反建築や欠陥住宅がふえるのではないかとの懸念を表明した。これに対し建設大臣・瓦力は、確認検査機関の指定に当たり、役職員の構成や業務内容の中立性を審査するほか、役職員に公務員と同様の罰則を適用する措置を講じ、その建築確認の報告義務を課し、不適法なものについてはその効力を失わせる等の措置を講じるなど万全を期すと答弁している。
同年4月28日、 建築基準法改正案が本会議で可決される(この第9次改正案の公布は6月12日)。「建築確認・検査の民間開放」により、それまで地方公共団体の建築主事のみが行なってきた建築確認、検査事務を、民間の指定確認検査機関(同法第77条の18 - 第77条の35)を創設することにより、株式会社を含む民間機関に開放された検査体制となった。
同年5月20日の衆議院建設委員会では、日弁連消費者問題対策委員会の弁護士が参考人として発言、日弁連の調査で欠陥住宅(違法建築住宅)問題がきわめて深刻な事態となっているため欠陥住宅110番を設置したこと、そこに寄せられた相談事例は多数に上ったことを紹介。建築士法18条4項は法の趣旨として、工事監理者を務める建築士が施工業者と対峙関係にあることを前提として定められているにもかかわらず、実際には建築確認の工事監理者(建築士)届け出における名義貸しの横行のほか、施工業者の従業員となっている建築士が存在し、施工業者と経済的つながりを持つ建築士の存在があると証言して、建築士法18条4項が死文化していると指摘。その上で営利団体による公正な確認、検査に懸念を表明し、確認・検査業務は、行政機関が責任を持って実施すべきだと主張した。
これに対し千葉県柏市長は建築確認・検査業務の実施状況を説明、残業時間が多いため業務が苛酷であると訴え、建築確認・検査業務は、単に一定の基準に適合しているか否かを技術的に判断する作業に過ぎないため資格を持った者であれば、民間の技術者でも可能で、業務を民間に任せることで業務窓口は広がり、また市民サービス向上にもつながり、さらに違反建築物の是正指導力を集中することができるなど、民間開放の利点を挙げた。日本建築士会連合会・制度委員長の藤本昌也は参考人発言で、確認検査機関の利用者の立場として、建築主事主導の機関と民間機関のいずれを選択するか、建築士にとって選択肢が広がる利点を挙げた。公正で適正な業務かどうかの疑問については「杞憂である」とした。
これまで、いくつかの裁判が行なわれたが、構造計算書を偽造した「建築基準法違反」で有罪になったA元建築士以外の関係者でいわゆる「耐震偽装」そのものに関わったとした判決はない。ただし、木村建設元社長やヒューザー元社長が一部物件についてA元建築士による耐震偽装の存在を知った後の対応に関する詐欺を犯したとする判決はある。
愛知県半田市のビジネスホテル「センターワンホテル半田」経営者がA元建築士の偽装によって建築したホテルを休業・解体に追い込まれた為、愛知県とコンサルタント会社の責任を問い、損害賠償を求めて民事提訴を行った。
2009年2月24日、名古屋地方裁判所はビジネスホテル側の訴えを認め、「建築確認の際の注意義務などを怠った」として、愛知県とコンサルタント会社の責任を認め、連帯で5,700万円の損害賠償支払いを命令する判決を下した[7]。このような行政側の過失を認めた判決はこれが初めてである[8]。
2010年10月29日、名古屋高等裁判所は1審判決で「審査に注意義務違反の過失はなかった」として愛知県の責任を覆す一方で総研の単独責任をさらに重いものと認定、総研に単独で1億6,000万円の賠償を命じる判決を下した。
高裁判決後、ホテル側は「責任の所在」について争うべく最高裁判所に上告したが、2013年3月26日に棄却されている[9]。
かねてから日弁連など一部の団体は「営利目的の検査機関」が公正中立ではありえないとして法改正を批判していたが、A建築士が構造計算書を偽装し建築確認申請をした申請先である民間機関のイーホームズ、日本ERIはともに国土交通省が認定した構造計算システムの不備により簡単に偽装できることが原因であると反論している。
現在[いつ?][10]、国土交通省のウェブサイトには「A元一級建築士による構造計算書の偽装があった物件等」が公開されているが、一覧表を建築確認申請日順で並べ替えてみると最初の偽装物件である1997年5月の物件から、2001年8月までは民間審査の物件は全くない。
また、イーホームズに対して最初に確認申請された2002年9月はちょうど日本ERIが営業停止だった時期と重なる。
この発表に対し、藤田東吾は自らのmixi上で、「この問題の制度上の原因は、「『建築物の確認検査制度』にあるのではなく、『構造計算プログラムの大臣認定制度』。偽装(改ざん)可能なプログラムを十分に検証せず認定してしまった国交省(旧建設省)と(財)日本建築センターに責任がある。 そして、この大臣認定制度の不備を悪用した構造設計士が偽装を行なったのが原因である」と述べた。
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