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2020年後期のNHK連続テレビ小説第103作 ウィキペディアから
『おちょやん』は、2020年度後期放送のNHK「連続テレビ小説」第103作として、2020年11月30日[注 1]から2021年5月14日[3]まで放送された日本のテレビドラマである。
おちょやん | |
---|---|
モデルとなった浪花千栄子 (1956年上映「霧の音」より) | |
ジャンル | テレビドラマ |
作 | 八津弘幸 |
演出 |
梛川善郎 盆子原誠 |
出演者 |
杉咲花 成田凌 名倉潤 宮田圭子 いしのようこ 宮澤エマ 星田英利 板尾創路 西川忠志 板谷由夏 塚地武雅 映美くらら 西村和彦 ファーストサマーウイカ 吉川愛 阿部純子 若葉竜也 六角精児 明日海りお 松本妃代 前田旺志郎 楠見薫 土居志央梨 仁村紗和 東野絢香 井上拓哉 倉悠貴 毎田暖乃 渋谷天外 井川遥 若村麻由美 生瀬勝久 トータス松本 中村鴈治郎 篠原涼子 |
ナレーター | 桂吉弥(語り・黒衣役) |
音楽 | サキタハヂメ |
オープニング | 秦基博「泣き笑いのエピソード」 |
国・地域 | 日本 |
言語 | 日本語 |
時代設定 | 1916年(大正5年) - 1952年(昭和27年) |
製作 | |
制作統括 |
櫻井壮一 熊野律時 |
プロデューサー | 村山峻平 |
製作 | NHK大阪放送局 |
放送 | |
放送チャンネル | NHK総合 |
映像形式 | 文字多重放送 |
音声形式 | 解説放送 |
放送国・地域 | 日本 |
放送期間 | 2020年11月30日 - 2021年5月14日 |
放送時間 | 月曜 - 金曜 8:00 - 8:15 |
放送枠 | 連続テレビ小説 |
放送分 | 15分 |
回数 | 115 |
連続テレビ小説 おちょやん | |
番組年表 | |
前作 | エール |
次作 | おかえりモネ |
上方女優の浪花千栄子の前半生を題材に、戦前から戦後の大阪で貧しく生まれた少女が女優を目指す生涯をフィクションで描く。脚本は八津弘幸、主演は杉咲花が務める[4][5]。
浪花千栄子は松竹新喜劇で活躍した上方女優で「大阪のお母さん」として親しまれた。NHK大阪放送局が制作した千栄子が出演するラジオドラマ[5][6]に着想を得て企画[4][7]された。
「おちょやん」は茶屋や料亭などで働く「小さい女中さん」を表す「おちょぼさん」の大阪ことばである(ヒロイン・千代の名前にも掛けてある)。ヒロインの女中勤め8年間で描いた千栄子の女中奉公を、親しみやすさ、かわいらしさ、意地、誇りなどで象徴する言葉として作品名に採った[4][6][7]。
脚本を担当する八津弘幸は「朝ドラの王道に遊び心も加えてこれまでとは違う、良い意味で進化する朝ドラをみなさんにお届けできたら」と語る[8][9]。
大正から昭和の活気があふれる「大大阪」道頓堀の舞台で「チャーミングと力強さ」を演ずるヒロインは、20代前半で突出する演技力を評価された杉咲花[4][7][10]が務めると2019年(令和元年)8月に決定[11]した。杉咲は2016年度前期『とと姉ちゃん』以来の出演、主演は2018年度後期『まんぷく』から5作連続でオーディションを開催せずに指名された[5][12]。
2019年10月30日に制作が発表され[4]、ヒロイン以外の出演者は2020年(令和2年)2月28日[1][13]と8月13日に発表された[14]。語りは桂吉弥が担当し、黒衣役で登場人物にツッコミを入れつつ物語の解説役を務める[15]。
2020年10月5日、主題歌は秦基博の『泣き笑いのエピソード』に決定したことが発表された[16]。秦は曲本を読み込んで書き下ろしたという。
収録は2020年(令和2年)4月2日にクランクインしたが、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言で4月7日以降は収録を見合わせ[17][18]、6月24日に大阪府内のロケーション撮影で収録を再開[19][20]し、杉咲は7月14日にNHK大阪放送局スタジオでクランクインすると同時に、タイトルロゴが完成した[21]。以降はNHK「新型コロナウイルス感染を防止するためのドラマ制作マニュアル」[22]に則り収録[19][注 2]し、収録予定は大幅に遅延した。7月時点では「台本変更や放送期間短縮などは検討していない」とされていた[20]。
9月8日、「全体の放送回数は未定であるが放送開始は11月30日」[2]と発表され、第1週試写会が11月2日に催された[25]。その後、2021年(令和3年)2月10日に「5月15日が最終回で話数は全115話となる」ことが同局から発表された[3][注 3]。
4月14日、クランクアップ[27]。
5月6日、ヒロインのバトンタッチセレモニーを実施[28]。
7月15日をもって、公式サイト閉鎖。
大正5年(1916年)、大阪の南河内で小さな養鶏場を営む貧しい家に生まれ育った9歳の竹井千代は、酒浸りで働かない父・テルヲと弟・ヨシヲの3人暮らし。5歳の時に実母のサエを亡くして以来、弟の面倒を見ながら家事と仕事をこなす日々で小学校にも通えなかった。ある日、テルヲが新しい母・栗子を連れて来るが、仕事も家事もせず子供たちに冷たい栗子と千代は折り合いが悪くなる。身重の栗子は、千代とヨシヲを口減らしに奉公に出し、テルヲと生まれてくる実子と3人で暮らそうと画策していた。それを知った千代は、ヨシヲを連れ家を出ると啖呵を切るが、実母を覚えていないヨシヲが栗子を母として慕っていると気付き、ヨシヲの養育を栗子に懇願し、独りで道頓堀の芝居茶屋に奉公に出ることにする。「栗子が機嫌を損ねるから」と、仏前にあったサエの写真を渡すテルヲに対し、千代は涙目で睨み「うちが捨てられたんやない。うちがあんたらを捨てたんや」と言い放ち旅立っていく。
千代は芝居茶屋「岡安」に上がり、仕事に厳しい女将の岡田シズの元で忙しく働き始める。また、人気喜劇団「天海天海一座」の座長・天海天海の息子・一平と知り合い、お遣い先で初めて演劇と女優・高城百合子を覗き見て魅了される。そんななか天海が急逝。同時期、千代は実家が夜逃げしたことを知る。千代は一平と悲嘆し、重要なお遣いに遅れ、シズからクビを言い渡される。翌朝、ひとり岡安を出て当てもなく彷徨う千代だったが、先代女将のハナに発見される。彼女の説得や舞台に立つ一平を見て、自分の居場所が岡安しかないと覚悟を決め、シズに必死に頭を下げる。シズに許された千代は、正式に岡安の「おちょやん[4]」に認められる。それから8年の月日が流れる。
大正13年(1924年)秋、翌年に数え年18歳になるとともに年季奉公が明ける千代は、シズから年季明け後の進路についてよく考えるよう命じられ、模索しながら仕事するなか、逃亡中の百合子と出会い、岡安に匿うこととなる。所属事務所から活動女優への転換を迫られ引退を視野に入れていた百合子だったが、千代や岡安の人々と接するうちに考えが変わり帰っていく。一方、シズは昔の恋人・早川延四郎に逢引を持ちかけられ、道頓堀中で噂になる。シズがお茶子修行中の心の支えだった延四郎にお礼出来なかったと悔やんでいると知った千代は、彼女に延四郎と会うよう説得。千代の熱意に折れて延四郎と会い、お礼と決別を果たせたシズであったが、翌月に延四郎の訃報が届く。翌年の1月、千代は年季明けし、シズへ恩返しをしたいために岡安に残りお茶子を続けることを誓った直後、突然テルヲが訪ねて来る。テルヲに「栗子は産まれた娘を連れて家出」「借金は完済」「ヨシヲが病気」と帰郷を迫られ、千代は複雑な思いを抱くが、話は殆ど嘘[注 4]で千代を借金のカタに身売りする魂胆が発覚する。千代は借金取りに抵抗するも岡安に対する嫌がらせが始まり、やむなく店を辞める決断をする。その直後、千代はひょんなことから天海天海一座の舞台に出演し、岡安に残りたいと泣き叫ぶ。後日、借金取りが迎えに来るが、道頓堀の人々が千代を逃がそうと一丸となり協力する。追っ手を逃れた千代はシズに背中を押され、新天地へと旅立っていく。
京都に流れ着いた千代は、カフェー「キネマ」の女給に就職。客から活動女優にスカウトされるも詐欺だった経験や、同僚らが活動写真のオーディションに合格したことへの嫉妬心から、自身の女優願望に気づき、同僚らに「女優になる」と宣言する。劇団「山村千鳥一座」の門を叩き採用された千代だったが、座長の山村千鳥から命じられる膨大な雑用や、彼女の癇癪やワンマンさに程なく怒りが爆発し「辞める」と啖呵を切る。しかし千鳥が苦労を重ねてきたことや、今でも独りで厳しい稽古を続けていることを知り、彼女に土下座して謝罪、一座に戻る。客の不入りで公演打切りの危機となり、座員の提案する新たな作風の演劇「正チャンの冒険」の上演に千鳥は渋々踏み切る。しかし、本番前日に主役の薮内清子が怪我をし、台詞を記憶している千代が代役に選ばれる。千鳥の猛特訓もあって、千代が主役を務めた舞台は大成功。だが、この結果で自身の役者としての姿勢を考え直した千鳥は、旧知の仲である鶴亀撮影所の所長・片金平八宛に千代の紹介状を書き、一座を解散する。こうして千代は、念願の鶴亀撮影所入りを果たし大部屋女優からスタートを切る。
先輩女優たちの意地悪や大失敗の繰り返しで仕事を失い、時間を持て余した千代は、撮影所内の結髪の手伝いを始める。しかし、先輩大部屋女優のピンチを救ったことを機に大部屋に受け入れられ、ワンサの仕事を得る。一方、助監督・小暮真治と親しくなり、やがて彼に恋をする。同時期、撮影所の看板女優になっていた百合子は、監督と揉めた末に撮影を放棄し主演男優と駆け落ち。その直前に千代と語らい合った百合子は、千代を脇役への起用に一肌脱ぐ。そして小暮が百合子に片思いしていると知り失恋した千代は、その思いを投影して脇役の「夫を取られた若妻」を演じ、監督らから賛賞される。それから3年後、中堅大部屋女優に成長した千代を訪ね、テルヲが現れる。破茶滅茶ながらも女優活動を応援してくれるテルヲに当初の警戒心も緩んだ千代だったが、彼が再び博打で多額の借金を作ったことが判明。ヨシヲと再び暮らすために貯金してきた通帳を盗んだテルヲに「ヨシヲは現れない」「女優としてパッとしないのが悪い」と逆切れされた挙句、金づる扱いされた千代は、テルヲに所持金全てを投げつけ絶縁を言い渡す。以来、女優を続ける気力を無くした千代は、夢を諦め東京への帰郷を決めた小暮から求婚される。女優を辞め彼との結婚に心が傾いた千代であったが、偶然一平と再会し口論するうちに女優を続けたいと考え直し、小暮の求婚を断る。小暮と別れた翌日、千代は社長に呼ばれ、新たに立ち上がる喜劇団への加入のため道頓堀への異動を命じられる。
昭和3年(1928年)の夏、道頓堀に戻った千代は、新設劇団の役者との顔合わせで元天海天海一座の面々とも再会する。だが嘗ての天海天海一座の看板役者・須賀廼家千之助の不参加を知り同調した元座員を、座長の一平が説得に回る一方、千代は千之助のもとへ日参し参加を懇願する。やがて元座員らは参加に転じ、一平の「万太郎一座を超える新しい喜劇を作りたい」との懇願の言葉に、ようやく千之助も参加を承諾する。こうして新たな喜劇団「鶴亀家庭劇」は始動するが「公演が不評なら解散させる」という大山社長からの指令もあり公演前から切羽詰まる中、千之助は一平の書いた台本ではなく自著の台本での上演を要求する。一平は要求を受け入れ、いざ上演に踏み切った一座だが、客を笑わそうとアドリブで暴走する千之助に、座員らは困惑する。そんな千之助への千代の苦言から、座員が客を笑わせられなかったら一平は千之助に座長を譲るという勝負に発展する。だが何をしても千之助よりも笑いを取れず悩む千代らは、舞台を見た千鳥からの指摘で、勝負に拘るあまりに演じることを見失っていたと気づき、演じる役の人物設定を考案し本番に臨む。結果、千之助の無茶振りにも上手く掛け合い客の心を掴み、千之助から仲間として認められ、鶴亀家庭劇も舞台の好評により次回公演も決定する。
岡安の一人娘・みつえが、商売敵「福富」の一人息子・富川福助と恋仲と知った千代は、二人に協力するが、両家の溝は深まるばかり。一方、一平は「母の無償の愛」をテーマにした台本を完成させるが、千之助により大半を修正され、釈然としない。迎えた公演初日、みつえと福助は駆け落ちし、千代は動揺を抑え芝居に集中する。この舞台で一平は自身のテーマを忠実に修正した千之助に脱帽。みつえを見つけた千代は、駆け落ちではなく母親を説得するよう訴える。シズや福助の母・菊は対峙したみつえと福助の結婚への強い決意を聞き、二人の結婚を認める。2か月後の昭和4年(1929年)1月、みつえと福助はめでたく結婚する。
2月、警察の検閲で表現の自由を奪われ悩む一平は、一座の第三弾の公演で千代にアドリブで接吻をし一騒動になる。ショックを受けた千代だが、道頓堀を訪ねてきたヨシヲと久々に再会し喜ぶ。一方、脅迫電話により一座の公演は中止になる。鶴亀を潰そうと企む神戸の組織の手先となっていたのが実はヨシヲで、その刺青を見た千代から足を洗うよう諭されたヨシヲは組織の指示に逆らえず劇場に放火しようとする。千之助の機転で放火は失敗し、大山社長が組織と話をつけ事件は収束する。ヨシヲは、千代について「自身を見捨て順調な人生を歩んできた」と思い込み恨んでいたことを吐露する。千代は再び一緒に暮らそうと説得するが、家出した幼い自身を助けてくれた組織への恩義を捨てられないヨシヲは、千代から実母の形見のビー玉を貰い道頓堀を後にする。悲しみのなか千代は一平に抱きしめられ求婚されるも、返事ができずうやむやになる。一座の第三弾公演は無事終演し、一平は大山社長から「2代目天海天海」の襲名を命じられるが、父を嫌う一平は拒絶する。千代は一平の蟠りを解くため、千之助から聞いた住所を頼りに一平と京都に行き、一平の母・夕を探し当てるが、夕は終始冷たく、一平は母が他の男と家出した幼い頃の記憶が蘇り、父が母を追い出した話は嘘と気付く。道頓堀に戻った一平は襲名に意欲的な態度を示すが、内心は襲名直後に引退するつもりでいた。しかし、千代の話で、夕の家出で挫折した父が一平のおかげで再起したと知り氷解。涙する一平を抱きしめた千代は彼に求婚する。こうして迎えた襲名披露の舞台挨拶で、一平は千代への感謝を言葉にし、彼女との結婚を発表する[38]。
昭和7年、家庭劇の人気が高まるなか、チャールズ・チャップリンの来日が決定し、大山社長は喜劇団のトップ「須賀廼家万太郎一座」と家庭劇を競わせ、観客動員数の多い方にチャップリンを招待すると明言する。須賀廼家万太郎に私怨を抱く千之助は意気込み指揮を執るが、女優らに暴言を吐き、挙句、書き上げた台本は座員らに不評で、臍を曲げて一座を去る。一方、過去に千之助をクビにした万太郎の冷酷さを知った千代は憤り、対決に勝つべく千之助に相談する。千之助は一平に頭を下げ、万太郎に認められたい本音を打ち明け、二人で台本を完成させる。こうして千之助が戻り上演した舞台は、動員数15人差で負けるが、座員らは 清々しい気持ちで万太郎一座を追い越す事を目指す。また、千之助を呼び出した万太郎は彼を良きライバルとして認め、二人は和解する。
充実した毎日を送る千代の前にまたもテルヲが現れる。避け続ける千代だったが、死期の迫るテルヲの病状を知り、複雑な思いを抱く。テルヲは父として千代の周囲に挨拶する一方、娘の幸せを思って一平との結婚に反対し、女優を引退させようとするが、役者としての千代を褒める千之助の話を聞き考えが変わる。家庭劇が東京の演劇雑誌の取材に応じるなか、テルヲを追っていた借金取りが千代に詰め寄ろうとする。テルヲは阻止するも乱闘騒ぎになり警察に逮捕、投獄される。テルヲに接見し、彼から今まで受けて来た仕打ちの恨みをぶつけた千代は、彼から涙ながらに詫びられるも許せず、亡きサエに対しても謝罪させ折り合いをつける。テルヲは千代の舞台を観る約束を交わすが、その日の夜、静かに息を引き取る。
岡安の人々や家庭劇の団員らなどが天海家に集いテルヲの供養をしてから5年後の昭和12年の暮れ、大山社長の命令で父親を亡くした少年・松島寛治を家庭劇に受け入れ、身寄りの無い彼を天海家で預かることとなる。千代が母親気分で寛治との生活を楽しむなか、夫婦となった小暮と百合子が天海家を訪れる。自分たちのやりたい舞台を目指すゆえに特高に追われる二人は、千代と寛治の機転で家宅捜索の目を逃れ、ソ連へと旅立っていく。その直後、寛治が家庭劇の舞台準備金を盗んだことが発覚する。開き直り千代の擁護に反発する寛治が、幼い頃に親から見捨てられたと知った千代と一平は、彼に自分たちの生い立ちを打ち明け、似た境遇だからこそ面倒を見たいと話す。そして、一緒に暮らそうとの千代の言葉に寛治は涙し心を開く。
昭和19年、太平洋戦争で庶民も徴兵されるようになり、福助が出征する。同時期、戦争の影響で、大劇場は閉鎖され、岡安も60年続いた暖簾を下ろす。大山社長の命令で解散となった家庭劇で芝居を続けたい千代は、戦時下での喜劇公演を懐疑する一平と衝突する。千代がひとりで通う稽古場へは、やがて座員らも同じ思いで集まり、一平も上演会場を押さえて合流する。そして迎えた本番当日の3月14日朝、京都の劇場に楽屋入りした千代と一平は、前夜に道頓堀が空襲に罹災したことを知る。千代と一平が急ぎ道頓堀に戻ると、岡安と福富の建物は全焼し、菊夫婦が命を落としていた。福助の生還を待つみつえと息子の一福が天海宅に身を寄せた矢先、寛治が芝居の慰問団に志願し、千代と一平の反対を押し切り満州へと旅立って行く。数ヶ月後の夏、福助の戦死公報が届き、みつえはショックで塞ぎ込む。程なく終戦を迎え、3月の空襲後離散していた家庭劇の座員が一部を除いて集結。「天海天海家庭劇」として再開第一弾公演でみつえを笑わせたいと願った千代は舞台に一福を出演させる。そして、この想定外の演出に、芝居を鑑賞したみつえは笑顔を取り戻す。後日、家庭劇は、道頓堀の人々の応援を受けながら全国巡業公演へ出発する。
3年後、大山社長から「鶴亀新喜劇」としての再結成を命じられ一座は帰阪。万太郎が喉の癌で声を失ったことを知った千之助は、万太郎の最後の舞台に協力。千之助と息の合った芝居を見せた万太郎は、拍手喝采を浴びながら舞台を去った後、周囲の人々に笑顔で見守られながら永眠する。新喜劇に3人の座員が加入し始動した頃、寛治が帰還。満州で酒と博打で溺れるなかヨシヲと出会ったこと、ヨシヲからガラス玉を渡され千代に届けるよう託されたこと、ヨシヲは逃げ遅れた女性を庇い死去したことなどを涙ながらに報告した寛治を、千代は感謝を口にしながら抱きしめる。同じ頃、一座の旗揚げ公演で主役となった千之助は、老いでセリフを忘れアドリブも出来なくなったことに役者人生の終焉を悟り、千代を代役に立てる。そして迎えた本番で、観客を沸かせた主役の千代と一平を舞台袖で見届けた千之助は、終演後の舞台に深々と頭を下げ、役者を引退する。
1年後、劇団の活動は順調なものの、一平は脚本の筆が進まずにいた。そんな彼を千代は黙って見守るある日、劇団の若手女優・朝比奈灯子が突然退団を申し出で、一平と灯子の不倫関係が発覚する。千代は憤り頑なになるが大山社長に説得され、当事者3人で話合い和解しようとした矢先に灯子の妊娠が判明し、怒りに任せ一平を家から追い出す。一方一平は、灯子から女手ひとつで生まれてくる子供を育てる決意を聞き、千代から離婚届を渡され、苦悩の末に千代と離婚し灯子と一緒になる決断をする。千代は傷心を堪え、謝罪する灯子を寛容し、そつなく一平との舞台共演を続けるが、千秋楽中に一平との思い出が頭を過り、セリフが詰まり涙が溢れ観客を騒つかせる。その日以来千代は、道頓堀から姿を消す。
千秋楽後、打ちひしがれる千代は、突然現れた栗子に京都の自宅へ招かれる。そこで幼い頃の仕打ちを謝罪し、体調が思わしくない自身に代わり両親を失った孫の水野春子の面倒を見て欲しいと懇願された千代は激怒するが、春子と打ち解けたことと、栗子も幼い頃から小学校に行けない程の苦労をしたであろうと気づき、和解し一緒に暮らし始める。
1年後。前出の一平のスキャンダルが世間に知れ、新喜劇の活動に暗い影を落としていた。その頃、NHKでは人気芸人・花車当郎主演のラジオドラマ『お父さんはお人好し』の企画が上がり、当郎は相手役に千代を要望する。人知れず京都で暮らす千代の元に、番組スタッフ、当郎、脚本家の長澤誠が次々と出演交渉に訪れるが、離婚や最後の舞台での辛い経験で引退したことを理由に、千代は断り続ける。しかし、苦手を克服した春子の話が後押しとなり仕事を引き受け、密かに千代の女優活動を応援し続けていた栗子の思いを知り、女優を続ける決意を固める。放送開始後、千代は会う人々からドラマの役柄である「お母ちゃん」と呼ばれるほど番組は人気となり、特別1時間放送も決定。共演者同士ドラマ同様に家族のような関係を築いていく。そんな千代の様子に不安を抱いた栗子だったが、千代の口から春子と栗子は大切な家族、一生守る旨を聞き感涙する。特別放送は、長澤の入院というアクシデントを乗り越え成功。週間最高視聴率を記録し、千代に宛て沢山のファンレターが届く。程なく栗子が死去。千代は残された春子を養子に迎え、二人は親子となる。
千代が道頓堀を離れ2年経ち、長年の知り合いで劇場支配人の熊田が千代を訪ねる。定年退職を迎える彼から新喜劇への再出演を望まれた千代は躊躇しつつ、春子を連れて道頓堀へ帰る。そこで人々から暖かく迎えられて安堵し、一平夫婦と対面しても動揺しなくなったことを自覚し、春子に自身の喜劇を見せたい気持ちもあり1日限りの再出演を決める。迎えた本番、千代の復帰に人々は感動し、以前と変わらぬ一平との息の合った共演は会場を沸かせる。劇中に笑みを浮かべ「生きるっちゅうのは、ほんまにしんどうて、おもろいなあ」との台詞を言い終えた千代が客席に目を向けると、テルヲとサエとヨシヲが幻となって現れ拍手喝采を送る。更に、観客のお茶子時代世話になった人々やラジオドラマ関係者たちからも喝采を受けた千代は、目から一筋の涙が流れる。こうして舞台は大盛況で幕を閉じ、春子は千代の様に人々を元気にする看護婦になる夢を誓う。千代の新喜劇での様子を見た長澤は「お父さんはお人好し」の映画化と舞台化に向け動き出す。一平は劇団員とともに「これからも、ほんまもんの喜劇を作り続ける」と意気込む。そして朝の出勤前、笑顔で青空を見上げ「今日もええお天気や」と昔からの口癖を漏らした千代は、登校する春子と手を繋ぎ笑顔で歩き出すのであった。
十二人の子供[82]の名前は東海道本線の駅名から採られている(次女には駅名の漢字が入っていないが、大津(おおつ)→おつ→乙となっている)。熱子と豊子は双子である。
土曜の本放送及び総合での再放送は1週間の振り返り(『朝ドラ1週間・おちょやん第○週』)。
2020年9月28日から2021年3月26日までの放送予定であったが[1]、感染症による収録中断で計画が遅延[19][20]し、2020年11月30日から放送[2][93]を開始し、当初の予定より2週短縮の2021年5月14日までの全115回放送となった[3]。
前作の『エール』は6月29日から放送を休止して9月14日に再開、11月27日(土曜日の1週間振り返りも含めると同月28日)に放送終了した。
2020年12月28日から2021年1月1日と2021年1月2日の1週間振り返り回は年末年始特集編成のためいずれも放送休止。ただし、12月28日は本来の時間帯で「連続テレビ小説『おちょやん』よいお年を!」と題したミニ特番が放送された。
週 | 回 | 放送日 | サブタイトル | 演出 | 週平均視聴率 |
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1 | 1 - 5 | 2020年11月30日 - 12月 | 4日うちは、かわいそやない | 梛川善郎 | 17.8%[94] |
2 | 6 - 10 | 12月 | 7日 - 12月11日道頓堀、ええとこや〜 | 18.2%[95] | |
3 | 11- 15 | 12月14日 - 12月18日 | うちのやりたいことて、なんやろ | 18.2%[96] | |
4 | 16- 20 | 12月21日 - 12月25日 | どこにも行きとうない | 盆子原誠 | 18.0%[97] |
5 | 21- 25 | 2021年 | 1月 4日 - 1月 8日女優になります | 梛川善郎 | 17.5%[98] |
6 | 26- 30 | 1月11日 - 1月15日 | 楽しい冒険つづけよう! | 盆子原誠 | 17.9%[99] |
7 | 31- 35 | 1月18日 - 1月22日 | 好きになれてよかった | 大嶋慧介 | 18.0%[100] |
8 | 36- 40 | 1月25日 - 1月29日 | あんたにうちの何がわかんねん! | 盆子原誠 | 17.6%[101] |
9 | 41- 45 | 2月 1日 - 2月 5日 | 絶対笑かしたる | 梛川善郎 | 17.8%[102] |
10 | 46- 50 | 2月 8日 - 2月12日 | 役者辞めたらあかん! | 中泉慧 | 17.4%[103] |
11 | 51- 55 | 2月15日 - 2月19日 | 親は子の幸せを願うもんやろ? | 大嶋慧介 | 17.6%[104] |
12 | 56- 60 | 2月22日 - 2月26日 | たった一人の弟なんや | 盆子原誠 | 17.4%[105] |
13 | 61- 65 | 3月 1日 - 3月 5日 | 一人やあれへん | 梛川善郎 | 18.1%[106] |
14 | 66- 70 | 3月 8日 - 3月12日 | 兄弟喧嘩 | 小谷高義 | 16.9%[107] |
15 | 71- 75 | 3月15日 - 3月19日 | うちは幸せになんで | 梛川善郎 | 16.9%[108] |
16 | 76- 80 | 3月22日 - 3月26日 | お母ちゃんて呼んでみ | 盆子原誠 | 16.8%[109] |
17 | 81- 85 | 3月29日 - 4月 2日 | うちの守りたかった家庭劇 | 原田氷詩 | 16.6%[110] |
18 | 86- 90 | 4月 5日 - 4月 9日 | うちの原点だす | 小谷高義 | 16.5%[111] |
19 | 91- 95 | 4月12日 - 4月16日 | その名も、鶴亀新喜劇や | 梛川善郎 | 15.9%[112] |
20 | 96 - 100 | 4月19日 - 4月23日 | 何でうちやあれへんの? | 盆子原誠 | 16.3%[113] |
21 | 101 - 105 | 4月26日 - 4月30日 | 竹井千代と申します | 梛川善郎 | 17.7%[114] |
22 | 106 - 110 | 5月 3日 - 5月 7日 | うちの大切な家族だす | 佐原裕貴 | 17.0%[115] |
23 | 111 - 115 | 5月10日 - 5月14日 | 今日もええ天気や | 梛川善郎 | 18.4%[116] |
期間平均視聴率:17.4%[116](ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯・リアルタイム) |
「わたしの晴れ舞台」として募集した発表会、学園祭、結婚式など自分や家族が輝く「晴れ舞台」の写真を、週間総集編を送る土曜を含め各回のエンディングで紹介した[117](週間総集編の最終回のみ、「鶴亀新喜劇」メンバーの集合写真であった)。
『ドラマ名』 終 制作・著作 NHK(大阪)の表示は、現時点で同作品が最後となっている。
本作に登場する芝居茶屋「岡安」、芝居茶屋から楽器店兼喫茶店に転身する「福富」、シズとみつえが戦後に開業するうどん店「岡福」は、道頓堀に実在するうどん店「今井」がモデルとされている[128][129]。
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