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風評被害(ふうひょうひがい)とは、根拠の不確かな噂や科学的根拠に基づかないデマ等によって被害を受けること[1][2]。辞書的な意味では主に経済的被害を指すが、一般的な意味はそれに留まらず、風評を受けた人々への差別や虐め、名誉毀損等の人権侵害も含まれる[3][4][5]。この記事では「風評加害」についても記載する。これらをまとめて情報災害とも呼ばれる。[要出典]
風評被害が起こる原因は、国内外のマスコミによる不安や怒りを煽る情報の拡散や、政治家・政党およびその支持者、市民団体や活動家などによる政治的利益を狙った発言やデモ(パフォーマンス)である[6][7][8][9][10][11][12][13]。また、科学的な安全性やメリットがいくら説明・証明されてもそれをあまり報道・拡散せず、逆に科学的な説明や根拠を軽視するマスコミの報道姿勢[14][15][16][17]や、世論への強大な影響力を持つにも拘わらず風評被害防止の責任を放棄するマスコミの当事者性の欠如[18][19][20][21]も、風評被害の原因となる[12][22][23]。
SNS等のネット上で報道への批判が起きたり[24]、政府や省庁等の行政機関が報道内容を否定したり[25]、ネット記事や週刊誌が報道を批判したり[26][27][28][29][30]することで風評被害をある程度抑えられることもあるが、これを抑えられなかった場合、時には毎年数千人の死亡を招くなど極めて深刻かつ重大な情報災害にも繋がる[31][32][33][34]。
上記のように科学的根拠の無視・無理解によるデマや不安を拡散する行為を「風評加害」[7][35]、その行為をするマスコミ、政治家や政党およびその支持者、市民団体や活動家などを「風評加害者」と呼ぶ[6]。
日本で「風評被害」という言葉が一般に使われるようになったのは、ナホトカ号重油流出事故などが発生した1990年代後半に入って以降である。関谷直也は国会議事録の初出として、1956年3月に参議院で行われた曽祢益(当時日本社会党所属)議員の「ビキニ・マグロという風評」による間接被害に関する答弁を挙げている[36]。
「風評被害には加害者もいる、一般市民もその行動次第で加害者になる」という考え[37]は東日本大震災直後から語られており、2020年代になると風評被害を広める言論人やマスメディアの加害性を重視、むしろそれらが積極的に風評を広めているとして『風評加害[38]』『風評加害者』という言葉も大きく認知された。一方でそれに対する反発も新聞記者らから語られた[39]。環境省は2022年9月1日の、 ラジエーションカレッジセミナーを開催するとの報道発表資料の表題を「伝わる表現力を試してみませんか ~風評加害者とならないために~」とした[40]。
計算社会科学者の鳥海不二夫東京大学大学院教授は、処理水放出に対する賛否と、それに伴う風評被害に対する考え方について、党派性が高い点を指摘している。鳥海は、2023年7月の日本のSNS投稿を分析し、処理水放出の賛否と支持政党の関連性を報道した。ただし、衆参で3議席を持つ「社会民主党」は調査対象外であり、その他の9つの国政政党が調査対象である[41]。
その結果、処理水放出に反対しているのは「れいわ新選組」「日本共産党」「立憲民主党」の支持者アカウントが突出しており、逆にその他のアカウントから放出反対の投稿はほぼゼロであった。さらに、立憲民主党支持の投稿を5回以上拡散したアカウントの80%以上が共産党とれいわ新選組の投稿も5回以上拡散するなど、この3党は支持者の結び付きがかなり強い(あるいは支持者が重複している)ことも判明した。そして「処理水放出賛成派」の投稿は約30%が風評被害に関して言及しているのに対し、「処理水放出反対派」は投稿の4.6%しか風評被害に関する言及がなかったため、放出反対派は福島の人々が受ける風評被害を心配しているのではなく、単に科学的根拠の無視・無理解による主張を拡散していることも判明した。この結果について鳥海は「処理水放出反対派のイデオロギーは、科学的根拠よりも強い」ことを指摘している[41]。
2011年、公正取引委員会が、東日本大震災に伴い、実害(のうち主として独占禁止法関連の事象)と共に風評被害の一部についても下請法を根拠に対処に当たった[42]。また、経済産業省の医療機器分野の研究会において、風評被害が製造物責任法と共に、製造者にかかるリスク・コストの一つとして検討された事例がある[43]。
3月11日に発生した東日本大震災を発端とした福島第一原子力発電所事故が原因で、避難民が放射能検査を要請される[52]、タクシーへの乗車を拒否される[53]、いじめに遭う[54]などのケースが発生。同様に工業製品への風評被害も存在する[55][56]ほか、被曝を恐れてトラックドライバーが(原発事故とは無縁の)被災地に入ろうとせず結果として救援物資が被災者に行き渡らないというケースがおきた。[57]また風評被害を受けたとする住民やケアセンターの従業員の苦悩ぶりが報道番組などより明らかとなり放送されたケースもある[58]。更には農作物への風評被害があったとの主張もある[59]。
2021年5月23日にオンラインで開催された「福島、その先の環境へ。」対話フォーラムにおいて、登壇者で東京大学大学院情報学環准教授の開沼博は「風評の原因になるような理屈とか言葉とか、そういったものを風評加害と呼ぶ」と発言、また同じく登壇者で環境大臣の小泉進次郎も同調して「私は風評加害者にならないこと」と発言した[60]。2021年9月3日には朝日新聞がこの「風評加害」「風評加害者」という語について論ずる記事を発表している[61]。
5月にドイツ北部を中心に起きている腸管出血性大腸菌感染事件で5月26日、ハンブルク市当局により、感染源がスペイン産のキュウリであると発表された後、その後キュウリが原因ではなかったと発表された[62]。これによる風評被害に対してホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロスペイン首相などは損害賠償を請求する意向を示しており[63]、ドイツのアンゲラ・メルケル首相はEUが財政支援を行うと述べている[64]。
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