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口蹄疫(こうていえき、学名 Aphtae epizooticae、英語: foot-and-mouth disease、通称FMD)は、家畜伝染病のひとつである。鯨偶蹄目(豚、牛、水牛、山羊、羊、鹿、猪、カモシカ、など蹄が偶数に割れている動物)およびハリネズミ、ゾウなどが感染する口蹄疫ウイルスによる感染症である。
日本では、家畜伝染病予防法において法定伝染病に指定されており、対象動物は家畜伝染病予防法により牛、めん羊、山羊、豚が指定されているほか(家畜伝染病予防法2条)、同施行令で水牛、しか、いのししが追加指定されている(家畜伝染病予防法施行令1条)。国際獣疫事務局 (OIE) リスト疾病に指定されている[1]。
この病気は、高い伝播性、罹患した動物の生産性の低下、幼獣での高い致死率という特徴を持つ。感染が確認された場合、他の家畜への感染拡大を防ぐため、罹患した患畜は発見され次第殺処分される。また他地域の家畜への伝播を防ぐため、地域・国単位で家畜の移動制限がかけられることから、広い範囲で畜産物の輸出ができなくなる。これらによる経済的被害が甚大なものとなるため、畜産関係者から非常に恐れられている病気である。日本国内で感染の疑われる家畜が発見された場合は、各地の家畜保健衛生所が通報を受け、家畜の診断にあたる。
アジア、中東、アフリカ、南米地域を中心に毎年世界各地で発生している。日本では2000年3月12日、約92年ぶりに宮崎県宮崎市でO型の口蹄疫の発生が見られた[2]。また2010年4月20日に、宮崎県児湯郡でO型の感染が確認された[3]。
韓国においても2010年11月以降に大規模な流行が起きた。
世界各国での発生状況については、OIEのデータベース[4][5]を参照せよ。
日本国内で口蹄疫が発生した場合、対応は、家畜伝染病予防法および農林水産省の定める「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」(防疫指針)[6]に従って行われる。家畜伝染病予防法は第一号法定受託事務にあたり、国の適正な処理確保がされた状態で都道府県に委託されている(詳しくは地方分権一括法を参照)。また、同法では、農水大臣が県知事同様に殺処分等を命ずることができるなどの措置も担保している。
ピコルナウイルス科(Picornaviridae)アフトウイルス属(Aphthovirus)の口蹄疫ウイルス(foot-and-mouth disease virus, FMDV)によって発生する。ただ単に「アフトウイルス」といえば口蹄疫ウイルスを指す。アメリカ合衆国では Hoofs and mouth disease とも呼ばれることがある。
ラブドウイルス科(Rhabdovirideae)ベシクロウイルス属(Vesiculovirus)の水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus, VSV)による水疱性口内炎も口蹄疫に酷似した症状を示し、牛丘疹性口炎とともに類症鑑別が必要とされる。
1898年、ドイツの医学者フリードリヒ・レフラーとポール・フロッシュにより病原体が突き止められ、細菌より小さいことが確かめられた。これが、初めて確認された濾過性病原体=細胞内寄生体の一つである[7]。
口蹄疫ウイルスは、大きく分けてO型、A型、C型、SAT-1型、SAT-2型、SAT-3型、Asia-1型の7タイプに分類される。そして各タイプはさらに複数のサブタイプに分けられる。
病理的にはウイルス血症を起こし、外見的には発熱、元気消失、多量のよだれなどが見られ、舌や口中、蹄(ひづめ)の付け根などの皮膚の軟らかい部位に水疱が形成され、それが破裂して傷口になる。「口蹄疫」という病名はこれに由来する。ただし、水疱が形成されないケースも報告されている。基本的には口蹄疫には他のウイルス感染症と同じように不顕性感染があり、症状がまったくなくても、感染区域にいた牛・豚は感染症の媒介者になり得る。
水疱が破裂した際の傷の痛み(細菌によるその後の二次感染も含む)で摂食や歩行が阻害され、体力を消耗する。幼畜の場合、致死率が50%に達する場合もあるが、成畜では数パーセントである。しかし、上の症状に伴い乳収量や産肉量が減少するため、畜産業に対しては大きな打撃となる。
突然40〜41℃の発熱、元気消失に陥ると同時に多量のよだれがみられ、口、蹄、乳頭等に水疱(水ぶくれ)を形成し、足を引きずる症状が見られる[8]。
口蹄疫の疑似患畜の1例目に対応した獣医師が宮崎県獣医師会を通じて臨床症状等の詳細を報告している[9]。
ワクチン接種から約10日間経過した。豚で、蹄に出血、潰瘍があるものの、鼻に水疱がないものが出てきた。ワクチン接種のための症状緩和か?蹄病変は出ているものの、食欲があったりしている。当初と異なる。(5月には水疱無し、食欲不振が多かった。)
家畜の伝染病の中では最も伝染力の強い疾病でもあり、典型的な水疱形成前からウイルスが排出される。ウイルス血症を起こすことから感染動物の全て組織、分泌物、糞便が感染源となる。例えば、精液中にもウイルスが含まれるため、交配やウイルス汚染された精液を使用すると人工授精でも感染する。牛乳には水疱形成の4日程度前からウイルスが排出される。
潜伏期間は動物の種類によって異なりウシは約6日、ヒツジは約9日、ブタは約10日とされているが、実際には感染時ウイルス量と関係があり、多量であれば潜伏期間は短くなる。感染した1匹の豚は1日に4億個のウイルス粒子をまき散らし、10粒子で牛を感染させることができる[12]。
野鳥、犬、猫、ネズミは口蹄疫に感受性はなく感染しないが、ウイルスを運ぶ可能性があり、移動制限を受ける[13]。
病原体が付着した塵により空気感染もする。飼料も感染源となり、ワラに付着した口蹄疫ウイルスは夏では4週間、冬では9週間、フスマでは20週間生存すると言われており、稲藁や麦藁に付着して入ってくる可能性も危惧されている[14]。水疱が破裂した際に出たウイルスや糞便中のウイルスが塵と共に風に乗るなどして陸上では65km、海上では250km以上移動することもある。幾つかの例があるが、実際に1967年から1968年のイギリスでの感染事例では、ドーバー海峡を越えフランスから伝播した。また、1981年にデンマークからスウェーデンへと伝播している。ヨーロッパ以外では、1985年ヨルダンからイスラエルへの伝播例も報告されている。
アウトブレイクの引き金となる最も重大な感染ルートは肉製品によるものである[15]。
反芻動物では、水疱症状治癒後またはワクチン接種による免疫獲得後にもウイルスは食道や咽頭部位に長期間存在し排出が続く。したがって、免疫を獲得した反芻動物も不顕性感染状態(キャリア)となり再び感染源となる例が報告される。水牛やウシではウイルスを数年間排出し続け、ウイルスは遺伝的な変化を起こす。国際的には、4週間以上排出が続く状態を「キャリア」と定義している。ただし、豚はキャリアにならないとされている。
屠殺動物では死後硬直が最大になる頃には、乳酸により組織中のpHは5.7程度まで低下し、筋肉組織内のウイルスは減少する。pHの低下は動物によって(牛は低下が大きくブタは少ない)あるいは個体差がある。しかし、一般的には屠殺後には直ちに冷凍または冷蔵されるため、pH低下によるウイルスの減少は期待できず、脂肪、骨髄だけでなく塩漬乾燥調理を施したハム、ベーコンには不活化されていないウイルスが約180日後も残存することが報告されている。
ウイルス学の立場から、口蹄疫ウイルスは濃厚接触がある場合、感染することがある。発熱や口腔内水疱症等が主症状で輸液等で回復する[16]。また科学的に実証される死亡例は報告されていない。ヒトからヒトへの感染例は確認されていない[17][16]。感染した家畜の肉を食べて感染することはない[15]。加熱処理をしていない生乳を飲んで感染したとする報告はあるが、生乳を飲むこと自体が稀であり、また仮に飲み、そして仮に感染したとしても症状が軽いことから、公衆衛生の問題としては扱われていない[15]。イギリスの公衆衛生検査サービス(PHLS。現在は統合されて 英国健康保護局 (HPA) となっている)の David Brown は、パスチャライゼーション(低温保持殺菌及び高温短時間殺菌)ではこのウイルスを不活化できないだろうと述べている[18]。ただし、パスチャライゼーションされたミルクから感染した例は報告されていない[17]。
稀に感染しても、ヒトでの症状は、家畜での症状と違い穏やかである[17]。潜伏期間は2〜6日ほどである[17]。発熱、喉の痛みが起き、足・口内・舌に水泡ができる[17]。最後に水泡が出来た日から約1週間で輸液等だけでほぼ回復する[16][17]。ヒトでの持続感染は知られていない[16][19]。きちんと治療すれば死亡した例も知られていない[16][19]。40例以上のヒトの感染例から見つかったウイルスの型はO型が一番多く、次にC型が多い。A型は稀であった[16][17]。
感染による症状自体は問題とはならないものの、ヒトがウイルスの保有者(無症候性キャリア)となり、他の動物への感染源となる可能性がある[16][20]ため、感染源との接触は極力避けなければならない。たとえば、口蹄疫流行国からきた旅行者が、アメリカ合衆国へ入国する場合などに、空港で「過去2週間以内に家畜に触れたことがあるか、家畜の農場にいたことがあるか」等と聞かれることがある。
なお、ウイルスは単離確定されていなくても、抗体検査は信用性がある。また、1880年代には口蹄疫の抗体検査は確立していた。
農水省は、口蹄疫の報道発表文の冒頭に毎回「口蹄疫は、牛、豚等の偶蹄類の動物の病気であり、人に感染することはありません。」という文を付けている。
日本では、防疫指針に基づき、遺伝子検査による診断を行う。具体的には、農家や獣医師などが水疱などの症状によって疑いを持つと、各地方にある家畜保健衛生所に通報する。家畜保健衛生所は2時間以内に立ち入り検査し、同時に複数の個体から「血液」「水疱上皮」(水疱上皮は2cm角または合計1g以上)「水泡液」等の試料を採取する。幼獣等の死亡検体からは、心筋、リンパ節、内臓を試料として採集することもある。口蹄疫の疑いがある場合には、水疱上皮などの試料は、pH 7.2〜7.6に厳密に調製された保存液に入れ、容器の破損、内容物の腐敗、病原体の拡散を防ぐため厳重に梱包し凍結させないように冷蔵保存して農研機構に運搬する。血液や体液も冷蔵保存で運搬する。検査は農研機構海外病研究施設(小平市)において24時間体制で行われ、約6時間で判定可能な、RT-PCR法で遺伝子診断を行う。遺伝子診断全過程には約半日(輸送や行政手続きも含む。ウイルス分離には2-7日)かかる[22]。陽性となれば「疑い例 (suspected case)」となり、行政・マスコミでは「口蹄疫」として扱われるようになる。更に確定診断のためには、培養した病原体により正確な判定が可能なELISA法(血清検査。培養に数日かかる)により検査が行われ、陽性であれば「確認例、確定例 (confirmed case)」となる。この時、血清型(O型が多いが、7種類以上ある)さらにOIEの口蹄疫国際確定診断センター (WRLFMD) である英国の「パーブライト研究所 (Pirbright Laboratory)」にデータを送付する。
2010年の例では、感染拡大に伴い診断の迅速化が求められ、6月9日の都城第1例(280例)から、農水省動物衛生課の獣医師による写真判定で診断をしている[23][24]。
類似症状を呈する感染症は複数あり、確定診断のためには鑑別診断を行う必要がある。類似症状のウイルス感染は豚では「豚痘」「豚水疱病」「水疱性口内炎」「水疱疹」などがあり、牛では「趾間腐爛」「牛伝染性鼻気管炎」「牛ウイルス性下痢」「ブルータング」との鑑別が必要とされる。ただし、「水疱病」「水疱性口内炎」は日本国内での発生例は報告されていないが、臨床症状だけでは口蹄疫と区別することはできず、ELISA法や培養により判定する必要がある。
致命的な病気ではないが、本疾病に対して治療が選択されることは基本的にない。前記のとおり、偶蹄類が感染する伝染病の中でも最も伝染力が強い部類に入り、蔓延すれば畜産業界に経済的な大打撃を与えかねない疾病でもあるため、患畜として確認され次第、家畜伝染病予防法に基づき、患畜のみならず同じ畜舎に飼われる家畜も全て速やかに殺処分される。
殺処分は狂犬病のような第17条第1項による都道府県知事の権限ではなく、第16条第1項に基づく家畜保健衛生所の家畜防疫員の指示により患畜と確認され次第、直ちに行われる。この指示書も第17条第1項に基づく「殺処分命令書」ではなく、第16条に基づく「と殺指示書」という形式で発せられる(命令の内容および効力に事実上の差はない)。
2010年の宮崎県口蹄疫での殺処分方法は消毒薬(パコマ)投与、二酸化炭素ガス殺、電殺、電殺・薬殺併用法が用いられた。前者三つについての、動物福祉上の問題は下記のとおりである。
パコマ(組成:[モノ、ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン)]-アルキル (C9-15)トルエン)は逆性石鹸であり、普通石鹸との対比でこう呼ばれる。普通石鹸は水に溶けると脂肪酸陰イオンになるが逆性石鹸は陽イオンになる(陽性石鹸、陽イオン性界面活性剤とも呼ばれる)。
逆性石鹸には溶血作用、神経筋接合部におけるクラーレ様(筋弛緩)作用がある。クラーレ様作用により動物は全身の骨格筋が麻痺していき、最終的に呼吸筋の麻痺により窒息して死に至ると考えられている[25]。
従来パコマには麻酔作用があると信じられてきたが、これには組成名に「トルエン」が入っていることに由来する。しかしこのトルエンは麻酔作用のある「有機溶剤トルエン」とは異なるものであり、麻酔作用はないと考えられている[26]。
米国獣医学会の安楽死に関するガイドライン(AVMA Guidelines for the Euthanasia of Animals: 2020 Edition)は、次のように、殺処分方法としてパコマのような消毒薬を使用することを否定している。
「ストリキニーネ、ニコチン、カフェイン、洗浄剤、溶剤、農薬、消毒剤、および治療または安楽死の使用のために特に設計されていない他の毒性物質は、いかなる状況下でも安楽死剤として使用することはできない。 」
北米の科学者の集まりである Scientists Center for Animal Welfare (SCAW)[27] や日本の国立大学動物実験施設協議会の規定は、麻酔なしでクラーレ様作用を持つ薬剤を使うことを禁じており[28]、クラーレ様作用を持つパコマは、少なくとも単独使用することは禁じられている薬剤といえる。
また、OIE動物福祉規約の「防疫目的の動物の殺処分」一般原則には
と記されており、殺処分においてのパコマ使用はこれに反するとして、日本国内の動物保護団体は口蹄疫で用いられた殺処分方法を問題視している[26]。
なおパコマに併用して鎮静剤が用いられることもあったが、宮崎県口蹄疫殺処分では、「作業者の安全」を考慮して鎮静剤投与が行われており、取扱いに危害が及ばない哺乳豚に対しては「鎮静剤投与の必要がない」という考え方でパコマ単体で処置が実施された[26]。
炭酸ガスでの殺処分は生きたままの殺処分動物を埋設穴に落としブルーシートで覆いその上に板を乗せ隙間から注入したり、トラックの荷台にブルーシートを被せ隙間から注入するといった方法で行われた。これらの方法では、穴の下にいる動物が圧死したり、荷台で暴れる母豚の体重で子豚が圧死するなどの問題が起こった[26]。
都道府県の防疫マニュアルでは、炭酸ガスによる殺処分方法を、薬殺より効率よく難易度が低く、獣医師でなくても可能であるとし、国の指針である「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」第6でもこの方法を推奨している。しかし実際にはよじ登ったり頭部を高濃度帯よりもたげて曝露されない個体がでてきたり、成長区分で致死までの時間に差があること、興奮により意識消失前の酸欠が窒息死の苦痛をもたらすことなどがあり、難易度は高く獣医師でなくても可能とは言い難い方法である。
炭酸ガスによる殺処分は安楽死と表現されることがあるが、苦しむ動物の鳴き声はひどく、非常に暴れ、安楽だという証拠はない。OIE動物福祉規約は、炭酸ガスによる殺処分方法は「失神への導入が遅い・導入を嫌悪する」としており、アニマルウェルフェアが懸念されている[29]。
さらに、蘇生した個体にはパコマの注射による追加措置が行われたため、上述のような不適切な方法に苦しみが更に積み重なった可能性がある[26]。
電殺は大きな火バサミのような器具で頭を挟み高圧電流により失神させたあと、胸を挟んで心臓に電流を流すことで致死させる方法である。この方法では、処置時に苦しむ事例、処置後に生き返る事例、生きたまま埋設穴に落とされ圧死する事例が報告されている。
これらの方法について、国内の動物保護団体は、動物福祉上の問題点の検証や、留意事項を熟知した専門職の配置、実働演習の実施などを求めている[26]。
対策の基本は「検疫」、「早期発見と殺処分」、「半径10kmの移動制限区域、半径20kmの搬出制限区域」である。2010年日本の例では、2箇所の感染中心地に対し、畜産関係車両消毒ポイント(検問所)を、24時間33箇所と日中(9ないし15時間)9箇所設定している。
防疫指針が防疫線半径を原則20kmとしているのは制限は緩いのではないかという意見がある。2010年の例では、約80km離れたえびの市を除き感染は防疫線内であったが、衣服等への付着を通じてウイルスが拡散する可能性もあるため、2010年5月17日、農水省のガイドラインでは獣医師に対する指導・依頼事項として、
- b 当該農場を去る前に、身体、衣服、眼鏡その他の携行用具の消毒並びに車両の洗浄及び消毒を行い、直ちに帰宅するとともに、帰宅後は、更に車両、携行用具、衣服等の完全な消毒を行い、入浴して身体を十分に洗うこと。
- c 異常畜が本病でないと判明するまでは、偶蹄類の動物と接触しないこと。なお、本病と判明した場合は、異常畜を診断し、又は検案した後7日間は偶蹄類の動物と接触しないこと[6]。
とし、防疫作業員に対しても同様な規制を定めている。
大阪府立大准教授(獣医学)の向本雅郁は、口蹄疫マニュアル(防疫指針)は「机上の空論だった」として改訂すべきだという[31]。
迅速な判定、殺処分、広域の徹底した消毒と検問。
8月7日に曽於家畜保健衛生所管内で疑い例発生、翌日午前中に埋却予定地と防疫従事者を確保。PCR結果判明2時間前に、緊急消毒ポイント候補地と制限区域内農場のリストアップが終了した。(結局陰性)[32]
2011年1月に鹿児島県は、2010年の宮崎県における流行を踏まえ、初動防疫に重点を置いた現場で役立つ詳細なマニュアル(228ページ、概要と参考資料を含む)を作成した[33]。特徴は全頭分の埋却地を設定しているなどである。
日本国外では、感染農家だけではなく周囲家畜の処分、道路での広範囲の消毒、監視体制の強化による早期発見、軍隊の早期動員、ワクチン接種などの組み合わせが効果があるとされている[34]。
2007年には農家の通報が午前6時に直接、環境・食料・農村地域省 (DEFRA) に入り、その段階で英国内すべての牛の移動停止、検査完了が12時、殺処分完了が夜8時と、発生その日のうちにすべて完了した[35][36]。
口蹄疫ワクチン(英国メリアル社製Aftopor)は存在するが、基本的に使用しない(異なる見解あり[37])。その理由は
などである。相当程度流行した場合は考慮と議論の対象になり、法整備がされ備蓄(O型70万ドーズ、35万頭分[38])があるので利用可能である(2010年日本の例では、5月22日から10km制限区域内に殺処分前提の全頭接種が始まった)。
外国では成功例(2000年のオランダなど)と失敗例(アルゼンチンなど)の両方がある。特にオランダの場合、英国で700万頭の被害が出る流行の飛び火を押さえ込んだので印象的である。
利点は、処分が間に合っていない対策として「時間稼ぎ」できる点とされる。特に豚からのウイルス拡散量が格段に減少するとされる。しかし「地域限定での全頭殺処分」は制圧の切り札のように見えるが、農家からの拒否反応があることや、財産権や家畜伝染病予防法など法律上色々困難があり、農家や地域に与える有形無形の打撃など未経験分野であり、その対応が困難であった。(国の経済援助で解決。)また処分頭数があまりにも多くなるため(2010年の日本の例では、5月中旬の10km圏では15万頭程度)、人員・資材・機材・敷地の確保や、それらの衛生確保も難しい。さらに実行した場合にウイルスが既に広範囲・高濃度で拡散済みであるので、制圧できるか疑わしいところがある。
農水省が発表した情報を農研機構(旧動衛研)がまとめた「日本の口蹄疫情報」の中で、「口蹄疫防疫に使う消毒薬の作り方」として「4%炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)(Na2CO3)液」を挙げ、ホルマリンおよび他の消毒剤と混ぜないこと、容器は金属製、ポリエチレン製いずれでもかまわないことが付記されている[39]。また、「海外悪性伝染病防疫要領」に記載されているその他の消毒薬」として、2%苛性(カセイ)ソーダ(NaOH)(水酸化ナトリウム)、2%苛性カリ(KOH(水酸化カリウム)、10%ホルマリンを挙げている。
市販消毒薬で、口蹄疫ウイルスに対する明らかな効果が認められたものは下記の通り(濃度は外部リンク先参照)[40][41]。
2001年にイギリスで約2000件の感染が確認されることになり2001年総選挙の1ヶ月延期などの影響が出た。翌2002年に調査報告が出て政府の危機管理が問われた。その中では (1)移動禁止の3日の遅れと (2)ワクチン接種のおくれなどから、感染が広範囲に広がり、毎日50件の感染が報告されるまでに拡大した。感染家畜は殺傷されるだけでなく、感染を防ぐ為には焼却処理が施されなければならなく、これほど大規模な家畜の死体の焼却場への輸送などは役所の手に余った。最後には軍が出動して感染発生地点より半径3キロ以内の全家畜をその場で殺傷・焼却・土葬処分する処置がとられ週に80,000 - 93,000頭の家畜が処理されその焼き焦げた死体が積み上げられた姿がテレビに放映された。殺傷された家畜の総数は一千百万頭。被害総額は畜産業だけでなく検問などで交通が制限された為に観光業にもおよび8Billionポンド。当時の為替レート(1/175)で日本円に換算すると一兆四千億円ほどの経済被害を生じた[53]。
1967年の教訓は生かされなかったが、2007年に生かされた[34]。
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