Loading AI tools
ウィキペディアから
『蘇える金狼』(よみがえるきんろう)は、大藪春彦が1964年に発表したハードボイルド小説。
1962年から1964年にかけて、「アサヒ芸能」に連載され、1964年に同社から単行本が「野望篇」、「完結篇」の二分冊で刊行。のちに角川書店などからも出版され、現在は電子書籍化されている。 また、映像作品も多数制作されている。
株式会社東和油脂に勤める29歳のサラリーマン、朝倉哲也は上司や同僚からの信頼が厚い、真面目で実直な社員である。しかし、彼にはある計画があった。夜ごとにボクシングジムに通い肉体を鍛える彼は、トンネル会社などを利用して私腹を肥やし会社を食い物にする重役たちの姿を垣間見る。自分もその一人になる野望を抱いた朝倉は、2年の準備期間をかけて作戦を練り、計画を実行した…。
この節の加筆が望まれています。 |
刊行本は二分冊構成。
1979年8月25日に封切り公開された日本映画。主演:松田優作、監督:村川透。フジカラー・ビスタサイズ。131分。製作:角川春樹事務所、配給:東映洋画、興行:東宝(丸の内東宝系)。地方では『金田一耕助の冒険』と2本立てで公開[3]。
夜明けの街中で、1億円強奪殺人事件が発生する。犯人の朝倉哲也は、資本金15億円を擁する東和油脂の経理部に所属し、表向きには夜間大学卒・補欠入社の風采のあがらない社員を装っていたが、銃の扱いに長け、ボクシングジムで鍛練を重ねる裏の顔を持ち、ひそかに東和油脂の乗っ取りを企てていた。
朝倉は東和油脂の内部事情を入手するため、経理部部長・小泉の愛人である京子に接近し、麻薬とセックスで籠絡する。さらに奪った1億円を一旦安全なヘロインに換えるため、麻薬の元締めである市会議員の磯川と接触。朝倉は、自身の素性を疑う磯川が差し向けた刺客たちを難なく始末し、末端価格1億円分のヘロインを手に入れた。
ある朝、何食わぬ顔で出勤した朝倉は、桜井という男が東和油脂役員たちの横領を証明する裏帳簿や経理次長・金子の不倫をネタに、5000万円のゆすりを仕掛けている事実をつかむ。桜井は背後に自身の伯父で政財界のフィクサー・鈴本が控えていることをちらつかせていた。役員たちは探偵の石井率いる興信所を使って証拠の強奪をはかるが失敗。一方、京子から情報を得た朝倉は、桜井と石井の対決に乗じ、東和油脂が桜井へ渡した内金の2500万円を強奪した。内金を東和油脂に奪い返されたと思い込んだ桜井は、要求金を2億円につり上げる。だが桜井が鈴本の事業と直接関係ないことを調べあげた東和油脂社長・清水らは、石井に命じて桜井と愛人の雪子を始末させた。
ところが石井は東和油脂を裏切り、清水を恐喝して1億円を要求。この話を盗み聞きした朝倉は、社外からボクシングジムのトレーナーを装って自身の上司・金子に電話をかけることで、役員たちに自らの裏の顔を示唆する。保身をはかる清水は朝倉を社長室に呼んで、「会社のために石井一味を始末してくれれば重役に昇進させる」と唆し、拳銃を手渡す。約束通り石井一味を始末した朝倉だったが、清水の別荘へ向かう途中で金子に消されかける。朝倉は金子を痛めつけ、役員たちの集まる清水の別荘に乗り込み、「検察庁に真相をバラす」と脅して東和油脂の株券・200万株(時価8億円相当)をせしめる。さらに、清水の末娘・絵里子と婚約する。その折、京子は朝倉の正体を知る。
そんな中、鈴本が朝倉に接触し、死んだ甥・桜井の復讐のために東和油脂を乗っ取るべく、朝倉の200万株を時価の3倍・24億円で買うと迫ってきた。勝ち目がないと踏んだ朝倉は渋々ながらオファーを承諾。会社乗っ取りの野望がついえた朝倉は、小泉にヘロイン1.3キログラムを1億3000万円で売り渡して資金を作り、京子との海外逃亡を計画する。
朝倉に利用されつづけたことに絶望した京子は、朝倉が逃亡を切り出すために会いに来た日、彼の真意を知らぬまま、朝倉の腹にナイフを突き刺す。とっさに首を絞められた京子は、朝倉の胸の中で息絶えた。致命傷によろめきつつも、ひとりで国際便の旅客機に搭乗した朝倉は、乗務員に支離滅裂な言葉を口走りながら静かに力尽きた。
クレジットなし
本作は、角川春樹の「アクション映画の傑作を作りたい」との考えにより制作が始まった[4](詳しくは後述「エピソード」の欄)。学生時代に1度目の大藪春彦ブームを経験していた角川は、『白昼の死角』の映画製作を終えると、徳間書店の社長だった徳間康快とオフィス・アカデミーの社長だった西崎義展に、2度目の大藪春彦ブームを起こそうと、キャンペーンを持ち掛ける。その後3人は帝国ホテルで揃って記者会見し、角川が『蘇える金狼』(1979年公開予定)を、徳間と西崎が『汚れた英雄』(1980年公開予定)と『傭兵たちの挽歌』(1981年公開予定)を続けて映画化し、角川と徳間で大々的な書店フェアをやる発表を行ったが、間もなく西崎は映画から撤退、徳間も経営する大映が苦しくなったため、大藪ブームは角川単独で仕掛けることになり、角川は原作者の大藪と話し合いの末、徳間書店で扱っていた大藪の作品を、全て角川文庫に移した上で、本作の映画化に着手する[5]。
原作小説とはストーリーの一部(結末を含む)、時代設定(1964年東京オリンピック直前→公開当時の現代)、一部の固有名詞(東洋経済研究所→東亜経済研究所[6]など)、キャラクター設定が変更されている。
作中の朝倉の愛車は白いマセラティ・メラクSS、BMWアルピナB6 2.8、赤いランボルギーニ・カウンタックと変遷していく。主人公が神宮外苑をランボルギーニで走るシーンは、印象的な映像となった[4]。
本作の拳銃に関して、主人公はリボルバーの名作であるコルト・パイソンを使用し、他にも(ジェームズ・ボンド」の愛銃である)ワルサーPPKも登場している[4]。
風吹ジュン・結城しのぶ・吉岡ひとみは本作でヌードを披露している。特に風吹と松田との大胆なラブシーンは、公開当時話題となった[4][7][8]。風吹は事務所移籍問題等でスキャンダル中だったが[7][8]、渋谷のラブホテル「O」で撮影された松田との濡れ場は前貼りも付けず[8]、風吹が「どうせ撮っても使えないわよ」とスチールカメラマンを怒らせたため、撮影に立ち会ったのは監督・カメラマン・照明の3人だけ[7]。フルヌードで激しいファックシーンを自然に演じた[8]。監督の村川は「彼女のかわいらしい顔に隠された情熱や哀しさが上手く出た。女優として、彼女自身の中に変化があったんだと思う」と称賛した[8]。 カメラの仙元誠三は「少女的な雰囲気の中に大人の色気が出てるというか、カッコいいね彼女は。しかし前バリもないから映倫に引っ掛からないように撮らなきゃならないから、オレはちゃんと見れなかったよ」などと話した[7]。松田はマネージャー佐藤祀夫を通じて「映画に全力投球するため一年間ずっと待っていた。あくまで映画の一シーン、そこだけ取り上げられるのは不本位だ」とマスメディアに伝えた[7]。東映宣伝部は「スタッフ一同、風吹ジュン側に非常に気を使っておりました。風吹ジュン二十七歳、全裸も辞せずの心意気、女優としての意気込み、ってこれ絶対書いて下さいね」とマスメディアにアピールした[7]。
坂本役の今井健二が朝倉に銃で脅されるシーンで「女房はいるのか」と問われて「いるいる、いっぱいいる」と答える台詞はアドリブである[9]。
前野曜子が主題歌を歌った経緯は、音楽プロデューサーの高桑忠男と東映宣伝部の福永邦昭が中学の同級生で[10]、ジャズが好きな二人が前野の唄い方に注目して推薦し、角川が起用を決めた[10]。前野はペドロ&カプリシャス在籍中に黒人を追ってアメリカに失踪した後、本作で本格的に日本の芸能界にカムバックした[10]。
2009年(平成21年)には松田の没後20年を記念してBlu-ray化され、2012年に改めて「角川ブルーレイ・コレクション」の一作品として再発売。2014年11月には松田優作没後25年に併せ、新たに4Kスキャニングマスターを使用したリマスター版ブルーレイディスク(2Kダウンコンバート)がリリースされた。これに伴い、過去のソフトではカットされていた製作会社のロゴマークや協力企業のクレジットなどが復元された。2021年5月にはiTunes storeにてピュア4K版が販売及び「MOVIE WALKER FAVORITE」のサブスクリプションでリリースされている。2022年11月25日にはHDRグレーディングを施したUltra HD Blu-ray(ピュア4K)が発売。
角川によると本作の最大の売りはガンアクションで、特に主人公とヤクザとの銃撃戦は最も見応えのあるシーンとしている[注釈 1]。
角川によると「本作公開前の日本映画界では、『拳銃には時代劇の刀のような美学はない』と思われていた。このため映画の中では、銃はただ殺すための道具として描かれていた」という[4]。これに違和感を感じていた角川は、ハリウッド映画の『フレンチ・コネクション』(1971年)や『タクシードライバー』(1976年)のように、拳銃の確かな魅力を備えた映画を作ることを決意[4]。
キャスティングに際し、角川は「銃に馴染みがない日本人には、ガンアクションをするのは簡単ではない」と考えた。そこで拳銃を扱う主人公には、俳優として並外れた肉体を持つ松田優作の起用を決めた[4]。角川は撮影前に、松田とテクニカルアドバイザーのトビー門口に1週間ハワイで銃を約5000発撃つ訓練[注釈 2]を受けさせた[注釈 3]。
角川によると、それまでの角川映画はほとんどがハッピーエンドで終わるようにしていたが、本作でそれをやると物語として中途半端になると思ったという。角川は、「本作は勧善懲悪のつもりで制作したわけではないが、悪は悪のままで物語を終わらせるためにあのエンディングにした」とのこと[4]。公開後、本作について映画評論家たちの評判は芳しくなかったが、観客は熱狂した[4]。
ちなみに作中で角川は、ボクシング経験者である角川はボクシングジムのシーンで共演した松田のパンチについて以下のように評している。「意外にも優作のパンチ力はなかった。でも空手をやっていたから、パンチを“力強く見せること”が上手かった」[注釈 4]。
1998年公開。ギャガ・コミュニケーションズ配給、配給協力ゼアリズ。
1999年4月17日から6月26日まで毎週土曜日21:00 - 21:54に、日本テレビ系の「土曜ドラマ」枠で放送された。主演はSMAPの香取慎吾。
朝倉哲也の名はあるが、原作とは異なる年齢・性格等の独自設定となっている。他にも、テレビドラマのオリジナル設定が多数見られる。
長年フジテレビ系列ドラマの演出・監督を務めてきた本広克行が演出を手掛けており、前々年に本広が演出した『踊る大捜査線』に出演しているいかりや長介、小野武彦、甲本雅裕らがこのドラマでも出演している。
オープニングのタイトルバックは最初は多くの主要キャストが登場しているが、彼らが演じる登場人物のドラマからの退場に合わせて徐々に登場するキャストが削られる形になっている。
4月、新東和信販(ファイナンス)に、朝倉哲也・石原学らが入社、業務部カード推進第3課に配属される。哲也が新東和に入社したのは、新東和の社長に就いていた腹違いの兄・富士木和正が自殺未遂と思しき状況で発見され、長期の入院加療を余儀なくされたが故であった。
和正の恋人であった冴木ユリと哲也は和正が自ら死を選ぶ筈はないと信じ続けていた。そして、茂義コーポレーションといういわゆる「乗っ取り屋」の社長である茂義敬雄が、ウラで和正を排除しようと彼の殺害を図ったことを悟った哲也は、和正が愛する会社と社員達を守るため、素性を隠して新東和に入社したのだ。
新東和を守るためには、新東和の発行済み株券を購入し、株主としての発言力を持たねばならない。そのために、哲也は敬雄の一人娘である茂義有梨沙と、和正に代わり新東和の社長を務める結城鉄治を利用し、敬雄から億単位の身代金を要求・成功したのを手始めに、広域暴力団・宝竜会からも金を搾取する。しかし、その過程で、有梨沙は哲也に不思議な感情を懐いていく。
一方、和正の近辺をうろつく男がいた。情報屋の甘木公次である。哲也は当初甘木の存在をいぶかるが、打倒茂義と言う共通点を見出し、二人の間には奇妙な友情が芽生え始める。
が、ついに、和正は殺されてしまう。和正の殺害・さかのぼって和正を自殺に見せかけ殺せと指示した、と敬雄から聞き出すことが出来たユリだが、敬雄はユリをも殺そうとする。間一髪で哲也に命を救われ、甘木の手配により、暫くユリは「地下」で広木典明らに守られることとなる。
和正の死を知った新東和の社員一同は、悲しみと無念さを心に持つ。カード推進第3課の課長・長嶋保、社員の愛染洋子らは悲嘆にくれるが、それらの動きをスパイする男がいた。石原である。
甘木は新東和の秘書である古池真弓をスパイとして新東和の内部情報を入手、一気に茂義を倒そうと企むが、それは新東和の破滅も意味する。甘木は哲也と交換条件をし、真弓から入手した裏情報の素っ破抜きを1日遅らせ、新東和の壊滅という最悪の事態を切り抜けさせる。
その後の役員会で発言権を得た哲也は、和正を殺したのは敬雄だと告発。地下に潜んでいたユリも現れ、敬雄は一気に追い詰められることに。
そして、哲也は敬雄と銃撃戦に。敬雄は撃たれ、入院。半ば隠居生活をしていた敬雄の父・茂義賀津夫は、哲也・甘木の抹殺を指示する。加え、警察とマスコミを使い、邪魔な存在となった新東和の営業停止を図る。
不意打ちを喰らい賀津夫に拉致された甘木は、警察に拘束されている真弓の釈放・茂義コーポレーション会長の後継・そして哲也の殺害を条件に解放される。甘木の営むバーに向かった哲也、銃で哲也を狙う甘木。甘木の靴底に盗聴器を仕掛け、2人の様子を盗聴していた賀津夫、そして長嶋らがとった行動とは。
各話 | 放送日 | サブタイトル | 演出 | 視聴率 | |
---|---|---|---|---|---|
第一話 | 1999年4月17日 | 愛と復讐の闘いが今始まる! 悲しく孤独な男の熱い叫びを聞け | 本広克行 | 21.4% | |
第二話 | 1999年4月24日 | 本当の敵は誰だ!? 娘の誘拐に反逆の刃が迫る! 愛に飢えた野望が暴走する | 17.7% | ||
第三話 | 1999年5月 | 1日狼に恋した少女の切ない決意!? 残虐な陰謀が愛する兄に忍び寄る!! | 大谷太郎 | 13.1% | |
第四話 | 1999年5月 | 8日あなただけは汚さない! 命を賭けた哀しい逆襲を迎えうつ罠!! | 10.2% | ||
第五話 | 1999年5月15日 | 目線を合わさず心を通わせる哲也と有梨沙 | 佐藤東弥 | 12.8% | |
第六話 | 1999年5月22日 | 罠にはめられ銃撃される…。 そしていよいよ反撃に出る! | 本広克行 | 11.9% | |
第七話 | 1999年5月29日 | 正体はばれていると確信した哲也は核心に入り込む。 | 大谷太郎 | 15.4% | |
第八話 | 1999年6月 | 5日正体をばらした哲也と甘木の関係は。 | 佐藤東弥 | 14.6% | |
第九話 | 1999年6月12日 | 友の死に贈る怒りの銃弾!! | 本広克行 | 15.9% | |
第十話 | 1999年6月19日 | 娘の死 生き残るのはどっち 人間に戻ったら、オレはオマエをモノにする | 大谷太郎 | 14.3% | |
最終話 | 1999年6月26日 | 最終回 怒りの最終決戦! 生か死か | 佐藤東弥 | 14.2% | |
平均視聴率 14.7%(視聴率は関東地区・ビデオリサーチ社調べ) |
演劇ぶっく社よりシナリオ集が出版されている。ただし、収録されているのは第一話から第六話までで、第七話以降は出版されていない。
日本テレビ系 土曜ドラマ | ||
---|---|---|
前番組 | 番組名 | 次番組 |
君といた未来のために 〜I'll be back〜
(1999.1.16 - 1999.3.20) |
蘇える金狼
(1999.4.17 - 1999.6.26) |
新・俺たちの旅 Ver.1999
(1999.7.3 - 1999.9.11) |
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.