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マクロスシリーズの登場兵器 ウィキペディアから
VF-1 バルキリー(ブイエフ ワン バルキリー、Valkyrie)は、1982年から1983年にかけて放送されたテレビアニメ『超時空要塞マクロス』および、それをもとに制作された作品群「マクロスシリーズ」に登場する架空の兵器。ファイター(戦闘機)とバトロイド(人型ロボット)、両者の中間形態であるガウォークの3形態に変形する可変戦闘機(ヴァリアブル・ファイター=VF)。
『超時空要塞マクロス』では主人公「一条輝」が所属する地球統合軍の主力機として登場し、敵陣営であるゼントラーディ軍と戦う。以降に制作されるシリーズ作品でもさまざまな改良機・後継機が登場し、VF-1はこれらの機体の始祖としてあつかわれる。
愛称(ペットネーム)の「バルキリー」は、北欧神話に登場する女性の半神ワルキューレ (独: Walküre) の英語名。実在の試作戦略爆撃機XB-70から、作中でVF-1の愛称に引用された。デザインモチーフは、同じく実在するアメリカ海軍の戦闘機F-14 トムキャット。以降のVFシリーズも慣例的に「バルキリー」と総称されるが、本項目ではVF-1とそのバリエーション機のみについて記す。
人型に変形するアニメのロボット兵器のなかでも、実在の航空機に近いファイター形態と、そこから手足を展開したガウォーク形態という斬新さから、視聴者に人気を博した。当時のロボットアニメでは、主人公機はワンオフで強いのが当然だったが、VF-1は形状や色の違いこそあれ、基本的には大量生産された量産機であるという設定も斬新だった。
物語や設定を一部変更した劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』では、宮武一貴によってディティールアップを始めとする設定のリニューアルがなされた。
根強い人気をもつ機体で、放送開始から28年が経過した2010年に『マクロスエース』で行われた人気投票でも、VF-1Jが3位、VF-1Sが4位を獲得した[1]。2019年にNHK BSプレミアムで放送された『発表!全マクロス大投票』のメカ部門では、テレビ版『超時空要塞マクロス』でロイ・フォッカーが搭乗するVF-1Sが第2位となり、ほかにもテレビ版・劇場版に登場する機体がベスト10以内に3機ランクインしている[2]。2021年3月20日から4月2日にかけて「ねとらぼ調査隊」が実施したアンケート「あなたが一番好きな『マクロス』のVFシリーズは?」では、VF-1が2874票中800票(20.6%)を得て第1位となった[3]。
「マクロスシリーズ」のメインクリエーターであるスタジオぬえの頃の河森正治が、宮武一貴の協力で約2年をかけてデザインした。原案は「飛行形態を持つ変形パワードスーツ」、つまり衣服や鎧の延長線上の位置づけで進められており、初期デザインの「ブレストファイター」まではアニメロボットらしい角張ったデザインであった。
しかし、当初スタジオぬえによるハードSFアニメ企画『ジェノサイダス』を通すためのダミー企画として用意され、パロディ・ギャグ色の強かった『マクロス』の原型となる企画が本命となったことにともない路線が変更され、舞台となる宇宙戦艦(のちのマクロス)の腕部に用いられるのが本物の空母という設定になり、これに合わせてブレストファイターのデザインもリアル志向に転じた[4]。
そして両腕の収納法をF-14から閃いたことをきっかけに、きわめて現用機に近いフォルムに至った。一般的に「F-14をモデルにロボットへの変形をデザインした」と表現されることが多いが、実際は「ロボットからリアルな戦闘機形態を生みだした」アプローチであったといえる。
さらに、玩具の試作過程では『ジェノサイダス』で日の目を見なかった二足歩行兵器(ガウォーク)のアイデアも導入され、かつてない3段変形のメカニックデザインが誕生することになった。
しかし、完成したデザインもスポンサーのタカトクトイス受けは悪く「飛行機と宇宙戦艦は売れたためしがないので、やめてくれ」と却下される。困った河森は、渡辺技研の協力で実際に変形するモックアップを製作する。この出来が非常に良かったため、スポンサーからの承諾を得ることに成功する[5]。
VF-1が変形することは放映開始直前のアニメ誌(9/1発売『アニメック』や9/26発売『月刊OUT』など)の記事でも三形態の設定画が掲載されており、一部で流布されている「放送まで伏せられていた」という説は事実とは異なる。
この「リアルな戦闘機がロボットに変形する」というコンセプトは、続編やゲーム版などに登場する後継機種に受け継がれ、河森のライフワークともいえるものになっている。けれん味と兵器的なリアリティーという相反する要素を備えたVF-1の変形機軸は、ロボットアニメのデザイン史上に画期的な功績を残し、多数のロボットアニメに影響を与えた。
さらに、従来のロボットアニメになかった要素として、追加アーマーとミサイルポッドを装備したアーマードバルキリーがデザインされた。また、VF-1はF-14と似ているため、独自の形状の機体を作りたいということから、スーパーバルキリーがデザインされた。アーマードバルキリーでは変形ができなくなったため、その反省からスーパーバルキリーでは変形機構を阻害しないよう、デザインされている。これらの追加パーツは、タカトクトイスからバルキリーの可変トイの試作品が届いた段階で、河森が発泡スチロールを用いて作成することにより、実現した[6]。
本編の作画に入っても一部のデザインが上がってこず、作画監督の板野一郎が現場でデザインを起こし、あとから設定画が仕上がったものもあった[7][要ページ番号]。
VF-1 バルキリー | |
---|---|
分類 | 可変戦闘機 |
所属 | 地球統合軍 |
開発 | ストンウェル・ベルコム、新中州重工、センチネンタル |
生産形態 | 量産機 |
全高 | 3.84m(ファイター) 8.7m(ガウォーク) 12.68m(バトロイド) |
全長 | 14.23m(ファイター) 11.3m(ガウォーク) 4m(バトロイド) |
全幅 | 14.78m(主翼展張時) 8.25m(主翼後退時) 7.3m(バトロイド) |
空虚重量 | 13,250kg |
エンジン | (主機)新中州重工/P&W/ロイス FF-2001 熱核反応タービン×2 (副機)液体ロケットブースター×3 |
推力 | (主機)11,500kg×2 (副機)8,333kg |
最高速度 | M2.81(高度10,000m) M3.87(高度30,000m以上) |
武装 | マウラー RöV-20 11mm対空レーザー機関砲×2(J) ハワード GU-11 55mm3連ガトリングガンポッド×1 |
選択式装備 | AMM-1 対空対地ミサイル×12 UUM-7 マイクロミサイルポッド×4 RMS-1 大型対艦反応弾 他多数 |
オプションパック | GBP-1S プロテクターウェポンシステム SP スーパーパック 他 |
乗員人数 | 1名(複座型あり) |
搭乗者 | 地球統合軍パイロット(A型)一条輝(A型、J型、S型、D型、VT-1) ロイ・フォッカー(S型) 柿崎速雄(A型) マクシミリアン・ジーナス(A型、J型、S型、D型) ミリア・ファリーナ(A型、J型、S型、D型) 熱気バサラ(VT-1C) ミレーヌ・フレア・ジーナス(J型) ガムリン・木崎(J型) ハヤテ・インメルマン(EX型) ミラージュ・ファリーナ・ジーナス(EX型) |
ゼントラーディ軍との第一次星間大戦において活躍する地球統合軍(のちの新統合軍)の主力可変戦闘機。航空機型のファイター、鳥型のガウォーク、人型のバトロイドの3形態に変形するVFシリーズの初代量産機であり、優れた汎用性と発展性から傑作機として高く評価されている。
外観は20世紀後半に配備された艦上戦闘機「F-14 トムキャット」に似ているが、バトロイド形態の全高 (12.68メートル) に合わせて設定されたため[注 1]、ファイター形態時の全長も、デザイン元となったF-14(18.87メートル)より5メートル近く短縮されている。F-14と同じく、主翼には速度に応じて最適の揚抗比を得られる可変後退翼を採用。これは、飛行時に有用なだけでなく、ファイター形態時には主翼を後退させ垂直尾翼を折り畳むことで艦内収容における占有容積を減らし、バトロイド形態時には被弾面積を減らす利点もある。可変翼特有の空力重心の変化には、機体パネル(バトロイド形態時の胸部)上のスリットから境界層流を吸い込むことで調整を行う。推力偏向二次元ノズルで上下方向の機動制御を行うため水平尾翼は不要となった。操縦系には4重デジタル・フライ・バイ・ライト(DFBL)を採用し、機首は宇宙空間での生存率向上を図り、胴体から分離しサバイビングセルとして機能する。これは、パイロットの他に、高価で貴重なアビオニクスとデータの回収も目的としている。分離した機首は、ガンポッドのようにバトロイドの腕部に装着することが可能で、ファイターやガウォーク形態への変形にも支障なく、そのままの空輸送が可能となっている。腕部には小型の補助マニピュレーターが内蔵され、自機や友軍機の自動修理プログラムを備えている。
航空機用の小型熱核反応タービンエンジンの開発の成功により、機体内部に燃料を積載する必要の無くなったVF-1は、従来機や小型熱核反応タービンエンジンが未完成ゆえに肥大化がやむを得なかったVF-0に対し、本来の計画どおり、機体の大幅な小型化(F-14の70%の空虚重量)を達成している。機体の小型化は、機体の軽量化となり、高い推力重量比と運動性を与え、製造・維持を容易にし、それらのコストを下げ、また場所を取らないので、大型機よりも艦載機数を増やせる、などの様々な利点がある。その反面、機体内部に余裕や冗長性がほとんどなく、宇宙戦闘機でもありながら、宇宙用の推進剤を積載するスペースもほとんど無い。そのため、開発当初より、必要と用途に応じて、機体外部にコンフォーマル・タンクやブースターや各種外部兵装(これらが一体となった物を、ファストパック、スーパー/ストライクパーツ、スーパー/ストライクパック、等と呼称)を取り付けるという形で、高い拡張性が与えられている。
主機の熱核反応タービンエンジン「FF-2001」は、VF計画の全領域性能の根幹となる新技術であり、推進剤を熱核エンジンにより高熱圧縮して噴射するため、空気が推進剤となる大気圏内では、理論上は、ほぼ無限ともいえる航続性能を可能にする(ただし、熱核反応剤の積載量の限界があるため、約700時間とされている)。また、ガウォークモードでのホバリング用マキシマムパワーの連続使用時間は、耐久性の問題から、最大420秒までとされている。機体内部に可燃物である燃料を積載しないので、案外被弾に強く、VF-1Dの一条機やVF-1Sのフォッカー機など、ファイターモードの胴体部(胸部)を敵機の攻撃で穴だらけにされても、不時着・帰還した例がある。一方、大気のない宇宙空間では水素などを強制推進剤とするが、変形機構に機内容積を圧迫されたため積載量は少なく、作戦行動時間は高機動モードで約1分、通常でも約10分ときわめて短い。そのほかの機動装備として、ガウォーク・バトロイド形態時の背部パックに液体ロケットブースターを3基、機首や脚部や主翼端など機体各所に姿勢制御スラスターを内蔵する。
エンジン出力および空戦能力はVF計画発動当時の通常戦闘機レベルだが、新素材導入により大気圏再突入も可能な耐熱性と機体強度を保持する。それでも陸戦兵器としては、火力・装甲の弱さとエンジンの大出力のアンバランスさが運用面のネックとして疑問視されていた。航空機としては破格の強度だが陸戦兵器としては脆弱、というVF-1のこの耐弾防御性能は『超時空要塞マクロス』オンエア当時の各種メディア[8]では公式設定としてあつかわれており、アーマードバルキリーも防御力および余剰出力問題の解決策であるとされていた。しかし、その後の続編で、バトロイド形態時には余剰推力を用いた「エネルギー転換装甲」で格闘戦への備えが図られているという設定が後付けされ、VF-1やその原機VF-0の装甲脆弱問題はなかったことにされており、この問題が言及されることはなくなった。
操縦系はバトロイド形態とファイター / ガウォーク形態とで系統が異なっている。ファイター / ガウォーク形態は従来の戦闘機に近い有視界コクピットで、メインコンソールは3つの全面モニターを備えたグラスコクピットになっている。またガウォーク形態用の腕部操作グリップが設けられている。劇場版に登場する後期生産型では一面モニターとなり、ほかに照準や敵機シンボルなどが視界に直接3次元投影されているほか、バトロイド形態も加えてサイドスティックとスロットルレバーが腕部操作にも用いられる。
一方バトロイド形態ではキャノピーが防弾・防熱カバーに覆われ、視界はすべて頭部カメラ映像のモニター表示に頼ることになる[注 2]。コクピットが機体前面の真正面に位置するため、格闘戦闘では生存性に難がある。なお、バトロイド形態におけるパイロットの乗降・脱出の際は、頭部が前方に折れ曲がったあとにシートがせり上がるようになっている。
バトロイド形態ではほぼ人間と同様の動作が可能で、ブリタイ艦に乗り込んだマクシミリアン・ジーナス機がゼントラーディ兵から奪った軍服を着て歩き回り、そのままガウォークに変形する場面がある。
上記のほか、敵ミサイルの誘導を撹乱させて回避するためのフレアディスペンサーを備えている。なお、巨大異星人との至近戦闘を想定して開発されたにもかかわらずバトロイド形態での白兵戦装備はないが、ガンポッドのフレーム強度が高いため、上記の通り鈍器としての使用も可能である。
変形操作はテレビ版と劇場版では異なる。テレビ版では「B」「G」「F」と書かれた形態選択レバーを下げることでバトロイド、ガウォーク、ファイターに変形する。ただし、これでは変形を行うためにはコントロールスティックから手を離す必要があるという欠点があった。劇場版ではHOTAS(Hands On Throttle And Stick)概念が導入され、一体型のコントロールスティックが変形操作も兼ねるようになっている。コントロールスティックを直立させた状態ではバトロイドに、斜めの状態ではガウォークに、倒した状態でファイターに変形する。変形は全自動で行われ、各可動部の高速パルスアクチュエータが熱核反応エンジンからのエネルギー伝導により、加減速Gや空気抵抗に逆らい機体各ブロックの移動・組み換えを行う。通常ファイターからバトロイドへの変形所要時間は約3秒。作中ではアクション演出により、ほぼ瞬間的(0.5秒以下)に変形するように描写されている。その一連の変形プロセスは以下のとおり。
後継機に比べVF-1の変形プロセスは洗練されておらず、所要時間も戦場において実戦的とは言いがたい。しかし、用法次第ではドッグファイト戦術に新たな可能性が開けることが、歴戦のエースパイロットたちによって証明されている。
ファイター/ガウォークからバトロイドへの変形時の脚部移動は、設定どおりに再現すればいわゆる「組み替え変形」になるが、独自解釈により取り外すことなく変形できる玩具も多い。
1999年、地球に落下した宇宙戦艦(のちのSDF-1 マクロス)から、身長10メートル強の巨大異星人の存在が判明する。オーバー・テクノロジー (OTM) を用いた対抗兵器のひとつとして、空軍・海軍・海兵隊は高機動力と格闘能力を兼ね備える全領域可変戦闘機=VF (Variable Fighter) 計画を発動した。艦隊防空・地上支援・特殊任務などあらゆる用途を検討した結果、航空機と人型ロボットを融合する奇抜なコンセプトが創出された。
航空メーカーのストンウェル社とベルコム社の共同による本機の設計チームは、陸軍系のデストロイドよりも早く2001年2月に結成されたが、前代未聞の新兵器であるために開発は難航した。動力系の新中州重工と陸軍系のセンチネンタル社の協力で、2007年2月に試作機VF-X1が初飛行を迎える。当初、変形モードはファイターとバトロイドのふたつで、ガウォークは変形中に無防備になることを防ぐためのVTOL着陸用の形態として想定されていたが、テスト中に偶然ホバリングによる陸上での高速移動と、優れた安定性によるパイロットの負担軽減という有用性が見出され、急遽機体設計に盛り込まれることになった[10]。
2008年7月にはマヤン島沖のプロトカルチャー遺跡争奪戦において、限界までチューンした従来型エンジン(ターボファンエンジン)を装備した[注 4]先行量産機「VF-0 フェニックス」が実戦投入され、反統合同盟側の可変戦闘機SV-51と交戦し、その実戦データはVF-1の開発にも大きく貢献することとなる[注 5]。
制式採用型VF-1のロールアウトは2008年11月、マクロス進宙式のわずか4か月前だった。生産1号機にはデモカラーが施され、統合軍の新型戦闘機として発表されたが、当初は人型に変形することは公表されなかった。1号機はその後、頭部やエンジンを交換し、S型の1号機となった。オーバー・テクノロジーによる超高性能ゆえ、1機あたりデストロイド20機分という陸上兵器としては問題外の超高価格となったが、航空兵器の範疇で見ればさほど常識外とは言えないために量産の妨げとはならず[11]、複数のメーカーで並行生産され、マクロス進宙までに1,000機以上が実戦配備された。むしろ、在来機からの機種転換が課題となり、バトロイド形態の操縦に戸惑うパイロットたちが多かった。
作品世界での設定では、2007年から2009年にかけてストンウェル (Stonewell) とベルコム (Bellcom) が合併し、ストンウェル・ベルコム (Stonewell & Bellcom) として、本機の開発を推進したとされている。ストンウェル・ベルコムと新中州重工の航空機部門が合併したことで、2012年には新星インダストリーが誕生したとされており、第一次星間大戦後は同社がVF-1の製造・改良を行ったと設定されている。
2009年2月、第一次星間大戦が勃発すると、SDF-1マクロスにはフォールド事故に巻き込まれた攻撃空母プロメテウス所属の航空部隊が配備される。おもに防空迎撃任務に就き、一条輝、ロイ・フォッカー、マクシミリアン・ジーナスといったパイロットの活躍で、マクロス捕獲をはかる敵艦隊や機動兵器の襲来を退ける。大戦末期には宇宙戦用の追加パーツを装備したスーパーバルキリーが投入され、最終決戦の「リン・ミンメイ作戦」では、反応弾を装備した、300機を越えるスーパーバルキリーによる対艦一斉攻撃で多大なる戦果を挙げる。
戦後は新統合軍下で治安維持活動などに従事。主力機の座を「VF-4 ライトニングIII」に譲り2015年に生産終了となるが、VF-4が大気圏内領域を苦手としていたこともあって10年以上現役機として運用される。2020年以降は退役が進み、民間へ払い下げられスポーツ・レジャー用とされた例も多いが、アップデートにより2060年代まで配備されている機体もある。
また、VF-4や「VF-5000 スターミラージュ」などの後継機もVF-1の基本設計をベースに開発され、汎用機という思想も2030年以降の正統な後継機「VF-11 サンダーボルト」に受け継がれることになる。50年後、AVF(次世代可変戦闘機)計画以降の高性能機が現われるころになっても、VF-1はもっとも愛された機体として抜群の知名度を持ち、愛称の「バルキリー」はVFシリーズの代名詞として一般に定着している。
基本設計を同じにし、カラーリングや頭部の違いでキャラクターごとの登場機体の個性を出すという手法でいくつかの派生型(バリエーション)が設定された。商品の好調なセールスも手伝い、玩具・プラモデル展開において膨大な商品が発売されることとなった。劇場版制作時には細部の設定やデザインをリニューアルしており、テレビ版と劇場版の違いを合理化するために[要出典]、「生産ブロックの違い」という後付け設定がなされた。
マクロス進宙に部隊配備が間に合うよう各社で並行生産されたため、同じ生産時期、ブロックでも仕様に相違があり、主な生産型は、A型・J型・S型である。ブロック1から4までの初期型(TV版の機体)と、ブロック5以降の改良型(劇場版の機体)に大別され、ブロック5以降は大気圏外戦闘を主目的として、アビオニクスおよびコックピットの大幅改造が行われている。ブロック4までの変形レバーは操縦系とは別個に設置されており、一瞬とはいえ戦闘中の変形にタイムロスを発生させる要因となっていた。ブロック5以降の改良型の操縦系は変形モードがスロットルレバーと統合され、容易に瞬時の選択が可能となり、キャノピー内面に識別表示が立体投影される。
また、訓練用(D型、VT-1)、偵察用(VE-1)などの派生型もある。
劇場の大スクリーンでの鑑賞に堪えるようにディティールアップされている。コクピットの設定も変更されている。指が角ばったものになっており、タッチセンサーが設置されている。
美樹本晴彦による漫画『超時空要塞マクロス THE FIRST』ではテレビ版と劇場版の設定を踏まえつつ、設定のリニューアルがなされている。なお、どの型もコクピットは劇場版と同様のデザインになっている。
2040年が舞台のOVAおよび劇場版『マクロスプラス』では、VF-11 サンダーボルトなどの後継機が登場し、VF-1は退役が進んでいる。同作品では標的機として使用される機体として登場する。
2045年を舞台とするテレビアニメ『マクロス7』においても後継機のVF-11が軍の主力となっており、VF-1はおもに民間への払い下げ品として登場する。
『マクロス30 銀河を繋ぐ歌声 』の舞台となる辺境の移民惑星ウロボロスでは、移動や作業用に民間のVFが多数流通している。一方で、これらを悪用するバンデットと呼ばれる者があとを絶たず、新統合軍やS.M.Sのほかにも、ライセンスを付与されたハンターと呼ばれる自衛組織もVFを使用している。2060年、惑星の各地に存在するプロトカルチャー遺跡の異変によりさまざまな時代からバルキリーが召喚される。そのほか、惑星ウロボロスのS.M.S支社にはプロトカルチャーの工場衛星があり、設計図とパーツがあれば歴代のVFを開発・生産できるようになっている。オプションパックとしてスーパーパック、ストライクパック、ダブルストライクパックが登場する。
西暦2067年を舞台とする『マクロスΔ』に登場。
書籍『ヴァリアブルファイター・マスターファイル』シリーズ独自の派生型(オリジナルバリエーション)。
VF-1は運用の柔軟性を拡げた結果、作戦ごとの要求性能を満たさない点が課題となった。このため、開発当初から脱着・使い捨て式のサブシステムが計画され、新中州重工によって開発された。これらの追加装備を受け、VF-1は真のマルチロールファイターとして評価されるに至った。
FAST Packとは現用戦闘機F-15のコンフォーマル式燃料タンク(Confomal Fuel Tank)の別名で、FASTとは英語で“Fuel And Sensor Tactical”の略で「燃料、および戦術センサー」を意味する。従来型航空機の燃料を宇宙空間で必要となる推進剤(プロペラント / propellant)に置き換え、追加装備の印象から劇中追加装備の命名として引用したものである。「スーパーパーツ」または「スーパーパック」とも呼ばれる。
キャラクター商品としてもバリエーション展開が豊富で、放映当時イマイ、アリイの2メーカーから発売されたプラモデルも高い人気を得たが、特にタカトクトイスの1/55変形玩具は高学年層にも支持され、シリーズ累計100万セットを超える大ヒット商品となった。これらの魅力から、後続の「超時空シリーズ」をはじめとする変形メカブームが起こり、ロボットアニメの主流である日本サンライズ系作品においても、番組後半から飛行形態をもつ変形主役メカが登場するパターンが見られた(『聖戦士ダンバイン』のビルバイン、『重戦機エルガイム』のエルガイムmk-II、『機動戦士Ζガンダム』のΖガンダム)。元バンダイデザイナーの野中剛は、タカトクの競合企業バンダイが1980年代半ばに多用した閉じた状態から開く変形パターンの玩具[注 7]についてバルキリーからの影響を指摘している[19]。
21世紀に入り、複雑なメカニックデザインが多くなってからもVF-1の流麗なフォルムは人気を保ち、玩具・模型(ガレージキット)などでプロポーションと変形の完全再現を目指した商品化が続いている。2000年にはスケールモデルのハセガワがキャラクターモデル進出に際してファイター形態をキット化、後にスーパーバルキリーに続きバトロイド形態もキット化された。日本国外においても『ロボテック』の登場メカとして人気があり、Toynami社から各種商品が発売されている。
2013年6月29日にはバンダイより可変とプロポーションを両立したVF-1 バルキリーのプラモデルが発売された。河森は最も実機に近いVF-1とコメントしている。
また、テレビ版や劇場版に登場しないオリジナルバリエーションも展開されている。以下、オリジナルのバリエーション機。
タカトクトイス時代に本商品のプロモーションとして、ルービックキューブの開発者であるエルノ・ルービックが河森付き添いのもとで本商品第一弾であるVF-1Jの市販商品の変形(ファイターからバトロイド)に挑んだものの、脚部変形以降へ進めなかった。
2019年12月下旬より、航空自衛隊と『超時空要塞マクロス』のコラボレーションとしてコンピュータグラフィックスで描かれたVF-1S バルキリー(ロイ・フォッカー機)と自衛隊の現用機による編隊飛行を描いた啓発ポスターが限定掲示された[20]。「F-2」と「F-15」の2バージョンが作成され、「コミックマーケット97」の企業ブースではこれらをA4サイズに収めた「ミニポスター」が無料配布された[20]。
2024年4月20日には、タカラトミーより『超時空要塞マクロス』とのコラボレーションとして、トミカの大人向けシリーズ「トミカプレミアムunlimited」で河森監修によるVF-1J一条輝機、VF-1Jマクシミリアン・ジーナス機、VF-1Sロイ・フォッカー機が発売された[21][22]。
米国版『ロボテック:マクロス・サーガ (英: Robotech: The Macross Saga) 』では、VF-1の改良型として「VF-1R」が設定されている。テレビ版第32話の1カットに作画ミスから頭部レーザー砲が3門あるA型が登場するが、『ロボテック』版ではこれを「R型」と命名し、漫画には「ジャック・アーチャー」(Jack Archer)という独自のパイロットを登場させた[23]。
のちにトイナミ (Toynami) 社から完全変形玩具も発売されている。改造母体はVF-1AだがVF-1Jの電子装備を基本に、主砲として頭部中央に新設計のウェスティングハウス・エレクトリック 社製・粒子ビーム・パルスカノン砲を1門、副砲として従前のマウザー社[注 8] RöV-20 対空レーザー砲2門を装備。なお、中央のパルスカノンのみ自動追尾照準機能(オート・トラッキング)システムで、パイロットの操作とは関係なく独立して稼動し、レーダーに入ってくる敵機またはミサイルを自動捕捉可能。
2003年に刊行された ワイルドストーム (英: Wildstorm) 社版の漫画『星界から (英: Robotech: From the Stars) 』では、反乱ゼントラーディ人の待ち伏せ攻撃で危機に陥ったウルフ飛行小隊(ウルフパック、英: Wolf Pack, Wolf squadron)ジャック・アーチャーの指揮官機として登場し[注 9]、リック・ハンター(英: Rick Hunter、一条輝に相当)のVF-X4(あるいはVF-X-4、VF-4のプロトタイプ機)に救われる。
1984年にハズブロ社の玩具展開で始まった「トランスフォーマー」シリーズのラインナップとして、タカトクトイス製のVF-1Sの金型を流用した「Jetfire」という名のキャラクターが、ごく短期間ながら日本国外のみで販売されていた。このJetfireはアニメ版『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』にも「航空防衛戦士スカイファイアー」(日本国外でもアニメ版ではSkyfireに変更されている)の名で登場するが、デザインは頭部を中心に大きく変更されており、作中での登場期間も短い。登場の経緯などは「スカイファイアー」の項目を参照。
日本での「トランスフォーマー」の玩具は一部を除いてほとんどがタカラ製であり、ハズブロが販売していたもののタカラ製でないスカイファイヤーは日本で販売されなかったが、のちのシリーズで同名キャラクターの登場やリメイクは続いており、2008年から展開された玩具シリーズ「変形!ヘンケイ!トランスフォーマー」にもアニメ版準拠のデザインでラインナップされている。この玩具はガウォークへの変形はできないが、バルキリーの頭部をイメージしたバトルヘルメットが付属している。
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