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アメリカの垂直離着陸機能を有する航空機 ウィキペディアから
V-22は、アメリカ合衆国のベル・ヘリコプター社とボーイング・バートル(現ボーイング・ロータークラフト・システムズ)社が共同で開発した航空機(垂直離着陸機)である。愛称はオスプレイ(英: Osprey[注 1][注 2][2][3])。タカ目の猛禽類の一種である「ミサゴ」を意味する[4]。ティルトローター機であり、ヘリコプターと同様に垂直離着陸能力を持ちながら、それを上回る高い航続性や速度能力を有する。
回転翼軸の角度を変更するティルトローター方式を採用することで、飛行中でも固定翼機とヘリコプターの特性を切り替え可能な垂直離着陸機である。従来方式のヘリコプターに比べ、高速かつ航続距離に勝る特性がある[5]。FAA(Federal Aviation Administration, アメリカ連邦航空局)においては、パワード・リフト機に分類されている[6]。
1980年代初頭より開発が開始され、技術的困難や冷戦の終結に伴う予算の削減などで開発・量産および配備計画は当初の予定より大幅に遅延したものの、2000年代よりアメリカ海兵隊を始めとして海軍や空軍へも配備が始まっており、2013年からはアメリカ合衆国大統領随行要員の搭乗機としても運用されている。
アメリカ海兵隊においては、中型輸送機として、CH-46の後継機材として導入された。その能力は、速度約2倍、航続距離約5.6倍、行動半径4倍、輸送兵員数2倍、飛行高度約3.5倍、物資積載量約3倍となっている[4][7][注 3]。
アメリカ軍以外では、陸上自衛隊が2020年より部隊配備を開始しているほか[9]、またインドネシアへの売却報道が出ている[10]。
UH-1Y | UH-60M | MV-22B[注 4] | CH-47F | CH-53E | |
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画像 | |||||
全長[注 5] | 17.78 m | 19.76 m | 17.5 m | 30.1 m | 30.2 m |
全幅[注 5] | 14.88 m | 16.36 m | 25.54 m | 18.3 m | 24.1 m |
全高 | 4.5 m | 5.13 m | 6.73 m | 5.7 m | 8.46 m |
空虚重量 | 5,370 kg | 4,819 kg | 15,032 kg | 10,185 kg | 15,071 kg |
積載量 | 3,020 kg | 5,220 kg | 9,070 kg | 10,886 kg | 13,610 kg |
最大離陸重量 | 8,390 kg | 10,660 kg | 27,400 kg | 22,680 kg | 33,300 kg |
乗員数 |
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動力 | T700-GE-401C×2 | T700-GE-701D×2 | T406/AE 1107C×2 | T55-GA-714A×2 | T64-GE-416/416A×3 |
出力 | 1,828 shp (1,360 kW)×2 | 2,000 hp (1,500 kW)×2 | 6,150 hp (4,590 kW)×2 | 4,733 hp (3,529 kW)×2 | 4,380 shp (3,270 kW)×3 |
最大速度 | 304 km/h | 295 km/h | 565 km/h | 315 km/h | 315 km/h |
巡航速度 | 293 km/h | 278 km/h | 446 km/h | 240 km/h | 278 km/h |
航続距離 | 648 km | 2,200 km | 3,590 km | 2,252 km | 1,833 km |
ヘリコプターは、垂直離着陸・ホバリング(空中停止)・超低空での地形追従飛行ができるが、速度が遅く航続距離も短い欠点がある。対して通常の固定翼機は、高速移動や航続距離の面では優れているものの、離着陸のために2,000-3,000m以上の滑走路が必須な上、垂直離着陸もホバリングも超低空での地形追従飛行もできなかった。
もしヘリコプターの利点である垂直離着陸・ホバリング・超低空での地形追従飛行をこなしつつ、通常の固定翼機のように高速移動かつ長い航続距離が可能ならば、戦略上非常に有用なことであるため、アメリカ軍は第二次世界大戦直後から両者の利点を併せ持つ航空機を求め研究を開始した。
V-22の2代前にあたる実験機"XV-3"は、アメリカ陸軍・空軍共同で進めていた「転換式航空機計画」に米ベル社が加わって開発された。ベル社では1940年代からティルトローター方式の航空機を研究しており、この成果が3つの設計案となって提示され、この内の1案が採用されて開発が進められた。
1955年8月11日にXV-3は初めてホバリングを行い、1956年7月11日にプロップ・ローターを傾けての飛行に成功した。XV-3のエンジンは、胴体の中に搭載されており、ドライブシャフトを介してプロップ・ローターを駆動するようになっていた[11]。XV-3は計250回以上の合計125時間の飛行を行い、最大高度3,570m、最大水平飛行速度115ktを記録した。本機は操縦性が悪く、固定翼モードでの機動を行うとプロップローターが激しいフラッピングを起こすなど、直ちに実用化できる状況ではなかった[12]。
XV-3での研究は結局、実機の生産へと結びつかなかったが、1971年にアメリカ陸軍とNASAが共同で「垂直および短距離離着陸機研究」によってティルトローター機の研究を開始し、米ベル社ではティルトローター式の"Model 300"開発案を提示して採用され、1973年4月にはそれに若干改良を加えた"Model 301"が「ティルトローター研究機」(TRRA)という名称となって"XV-15"の製造計画が決定された。
XV-15は、1977年5月3日に初めてホバリングに成功し、1979年5月5日にはエンジンとローターを前方に5度だけ傾けての飛行に成功した。1979年7月24日には完全に前方の水平方向に傾けての飛行に成功した[12][注 6]。
1981年12月にアレクサンダー・ヘイグ国務長官から、国防総省が4軍(陸海空と海兵隊)が使用する航空機を開発すると発表され[注 7]、1982年12月には、先進の垂直離着陸可能な航空機とする統合軍運用要求(JSOR)として提示された。これに基づいて4軍共同の「統合垂直離着陸研究」(JVX, Joint-service Vertical take-off/landing eXperimental)という名称の計画で新型機の開発が始められた[12]。JVXはヘリコプターの特性と固定翼機の性能を持ち合わせる航空機の開発計画であり、ティルトローターである必要はなかったが、当時はティルトローター以外の選択肢は現実的では無かった。当初は陸軍を中心とした計画であったが、後に4軍の要求を統合し海軍の主導で進めることとなった。
1982年12月に初期設計のための提案要求(RFP)が提示され、アエロスパシアル、ベル、ボーイング・バートル、グラマン、ロッキード、ウエストランドが関心を示した。ティルトローターの実験機を以前にも開発していたベルと、CH-47などの大型ヘリを開発していたボーイング・バートルがパートナーシップを結び、1983年2月23日、ベルXV-15をベースとする設計案を海軍に提出した[14]。ベル・ボーイング以外に設計案を提出する企業はなく、1983年4月25日、海軍は、ベル・ボーイングとJVXの設計などに関する契約を締結することを発表した[15]。
1985年1月にはJVXで開発する機体の名称が"V-22 Osprey"(オスプレイ)と正式に決定され、米海兵隊向けをMV-22、米空軍向けをCV-22とした[16]。航空母艦(CV)との重複を避けたため、本来の用途とは名称が反対となっている。
1986年5月2日には全規模開発(FSD)が認められ、6機のMV-22試作機が製造されることとなった。開発は電子機器や胴体部分をボーイング・バートルが、ナセルや駆動系を含む主翼部分と尾翼部分をベルが担当した。1・3・6号機[注 8] がベル、2・4・5号機がボーイング・バートルで組み立てられることとなった。
初飛行は1989年3月19日であった。当初は1988年に初飛行を行い、1991年頃に量産型の引渡しが予定されていたが、SDI計画や先進戦術戦闘機計画(後のF-22)などに比べ優先度が低く、予算の削減が行われた影響で計画が遅れた。
1989年12月には、国防長官であったディック・チェイニーが予算削減の一環として開発の中止を発表するが、その後の審査の結果、計画は続行されることとなった。その後何度か計画の中断が予定されたが結局中止となることはなかった。
試作機段階では2回の重大な航空事故もあったが、技術的問題はほとんど解決されたとの結論に至っており[17]、V-22は1994年に量産が認められた。軽量化や製造の効率化などの製造費用の削減を含む再設計が行われ、1995年量産試作機(EMD)が4機製造された。最初の7号機の初飛行は1997年2月5日に行われた。
1997年4月には低率初期生産(LRIP)が承認され、まず5機の生産が決定し、2000年度までにさらに25機の生産が認められた。1999年4月には量産初号機が初飛行し、2000年までには艦上運用試験などが実施され、空軍仕様のCV-22BもEMD7号機と9号機を改修して試作試験が開始された。
大きな3枚の「プロップローター」(Prop-roter)と呼ばれる回転翼がエンジンと共に固定主翼の両端に備わっている。このプロップローターを駆動するターボシャフトエンジンは、減速ギアや補機などと共にエンジンナセル内に収められ、固定翼の両端に取り付けられている。このポッド状のエンジンナセルとプロップローターは一体となって、固定翼内端部の転換アクチュエーターの油圧機構によって前方から上方へ向きを変更できる[18]。この全体が「ティルトローター・システム」と呼ばれる。左右の転換アクチュエーターは、左右共に角度が同調するようになっている。転換アクチュエーターによる角度変更は毎秒8度で動くため、90度の変更には11秒程度かかる[注 9]。
左右のエンジン(ロールス・ロイスT406)は片発停止となってもすぐには機体が墜落しないように、左右の駆動出力軸が固定主翼内部のクロスシャフトで連結されており、左右のプロップローターを駆動させることができる。1基だけでの飛行時には、エンジンの最大定格出力4,586kWであるところを、短時間ながら緊急時最大出力5,093kWを得ることができる[19]。エンジン吸気口にはEAPS(エンジン空気/粒子セパレータ)が、排気口にはIRサプレッサー(赤外線排出抑制装置)が備わっている。
直径11.61mのプロップローターの3枚のブレードは、ブレード長が4.90m、翼弦長は付け根部で87.1cm、先端部で66.9cm[注 10]であり、42度の捻り下げが付いている。この回転翼は長いために、地上に降着した状態でローターを前方に向けて回転させるとブレード先端が地面に接触してしまうので、保守点検時のような特定の状態を除けば地上で固定翼モードの角度までティルトすることは避け、約45度で固定する。プロップローターはピッチ可変式のハブを持つ。
プロップローターは左右に互いに逆回転するため、カウンタートルクを打ち消しあうようになっている。地上駐機時や輸送時での占有スペースを小さくするために、ローターのハブが定位置に止まり、ブレードが自動で折り畳めるようになっている。同様の機能を持つ他のヘリコプターと異なり、左右の3枚のブレードの内の各2枚のブレードはハブより少し離れた位置で折れ曲がる折り畳み機構を持っているが、残り各1枚のブレードは折り畳み機構を持っていない。つまり、折り畳み可能な2枚のブレードは、折り畳み不可な1枚に沿うよう折り畳まれる。
固定翼機での主翼に相当する高翼配置の固定主翼はわずかな上反角といくぶん前進翼である点を除けば単純な矩形翼であり、地上駐機時の占有スペースを小さくするために、中央取り付け部を中心に右方向へ90度回転するようになっている。ブレードを内側に折り畳み、ナセルも水平に倒した状態で右に90度回転するため、ローター半径などをそのまま加えた通常の幅25.78m[注 11]、長さ17.48m、高さ6.73mから、幅5.77m、長さ19.20m、高さ5.56mにまで小さくできる[22]。
主翼後端部には内外に2分割された広いフラッペロンが付いており、固定翼モードでの操縦翼面として機能すると同時に、ヘリコプター・モードでは垂直下方へ大きく折れ曲がることで、固定翼の(回転翼のダウンウオッシュを遮る)面積を減じるようになっている。固定主翼内部には片側に4個に分かれた燃料タンクが収められており、そこにクロスシャフトやTGAB用のリンク、それに配管類が走っている。
尾翼はテールブームの先に1枚の水平尾翼とその左右に2枚の垂直尾翼がH型に取り付けられており、それぞれには水平安定板と垂直安定板の後端部に動翼として昇降舵と方向舵が取付けられている。
固有の燃料タンクは、主翼内に左右各4個と降着装置のあるスポンソン前部に左右各1個の計10個のタンクがある。さらに、主翼内の一番外側にフィード・タンクと呼ばれるエンジンに燃料を送るためのタンクがあり、これを加えると総容量は6,513リットルになる[注 12][注 13]。これらは自己防漏対策が施されており、12.7mmの徹甲弾の貫通までは燃料漏れを起こさない[24]。
また、キャビン内に任意補助タンク(MAT)を搭載することで搭載燃料を増やすことができる。空中で燃料を捨てる必要が生じれば、右主脚部のベント口から毎分303リットルの割合で空中投棄できる[12]。
降着装置は、前脚式の3脚すべてが二輪横並びのタイヤを持ち、油圧による完全引込式になっている。左右に各75度まで操向できる前脚は、後方へ畳んで格納され、胴体左右二本の主脚は前方へ畳んでスポンソン内に格納される。油圧が失われれば窒素ボトルによって19.3MPaの空気圧で脚下げを行う。各脚柱には通常時で3.7m/secまで、交換修理を受容する前提でのクラッシュランディング時には7.3m/secまでの着地衝撃から機体を守る衝撃緩衝装置が組み込まれている[25]。
グラスコックピットが採用されているが、一部の機体においては、予備姿勢指示器などにアナログ式の計器が用いられている[26]。
操縦席の計器類は、各正面に15.2x15.2cmのカラー液晶による多機能表示装置(MFD)が左右に並んで2枚配置されている。中央パネルには、正面左にMFDより小型の単色液晶画面の予備飛行表示装置が、正面右にアナログ式の予備姿勢指示器、予備対気速度計および予備気圧高度計の組み合わせ、またはカラー液晶画面の予備計器のいずれかが配置されている[26]。中央パネルの下部3分の2以上には、15.2x20.3cmの横長単色液晶によるEICAS/CDU表示画面1つと多数の操作キーが並んでいる[注 14]。各2面のMFDには、機体姿勢や飛行諸元といった一次飛行表示や、航法情報、センサー画像情報、搭載システム情報が自由に表示できる。
航法装置としては、軽量慣性航法装置(LWINS)、AN/ARN-147全方位無線標識/計器着陸装置(VOR/ILS)、マーカービーコン装置、OA-8697/ARC VHF/UHF自動方位測定装置(ADF)、VHF FMホーミングモジュール、AN/APN-194(V)電波高度計、AN/APN-153(V)戦術航法装置(TACAN)、小型航空機搭載全地球測位システム(MAGR)が備わっている。
LWINSは3重の冗長性を備え、加速度、速度、位置、高度、磁方位、真方位についての情報を得る。
各軍共通の装備として、下方全方位へ指向できる赤外線センサとしてAN/AAQ-27A(mid-wavelength infrared(MWIR)imaging system)[27] を備える。このMWIRは機首下面に搭載される。
米海軍型と米空軍型は地形追随および地形回避機能を持つAN/APQ-174レーダーを備える。米空軍では低高度での地形追随機能を高めたAN/APQ-186レーダーの搭載も進めている。レーダーは機首部左に搭載される[12]。
アビオニクスが充実しているため従来のヘリコプターよりも配線類が多く、整備側には負担がかかるという[28]。
機長席はヘリコプターと同じく右座席である。
飛行操縦システムは、自動飛行操縦システム(AFCS)を含む3重のデジタル式フライ・バイ・ワイヤによって構成されている。AFCSは、ピッチ安定、ロール安定、ヨー安定、機首方位維持、自動旋回調整、昇降速度補正といった機能を有している。フライ・バイ・ワイヤを採用してもバックアップ用として油圧やワイヤーなど機械的なリンクを有する航空機もある[注 15] が、V-22では特殊な操縦特性(後述)を実現するため予備系もフライ・バイ・ワイヤとなっている。
主にピッチとロールの操作を行うサイクリック操縦桿は両足の間に位置しており右手で操作する。ヨー操作は足先左右のラダーペダルで行う。プロップローターの推力の調整は推力制御レバー(TCL)で行う。通常のヘリコプターにあるコレクティブピッチレバー(後方に引き上げると推力が増加し、前方に押し下げると推力が減少する)と異なり、TCLは、固定翼機のスロットルレバーと同様に前方に動かすと推力が増加し、後方に動かすと推力が減少する[29]。エンジンナセルの角度調整は、TCLのグリップ内側の回転式ノブ「ナセル制御スイッチ」で制御する[12]。並列複座式の固定翼機ではスロットルレバーは機体中央にあるため機長(左座席)は右手、副操縦士は左手で操作するが、V-22では両座席の左側にTCLが設置されているため、両操縦士の操作は『足と右手で操舵、左手で出力調整』となる。
操縦翼面は、ピッチ可変式プロップローターとフラッペロン、エレベータ、ラダーが存在する。フラッペロンはロール操縦時にはエルロンとして機能し、揚力が必要な場合には高揚力装置のフラップとして機能する。エレベータとラダーは通常の固定翼機と同じ機能を果たす。
輸送機であるためミサイルやロケット弾などは搭載しないが、後部ランプの左脇に銃架(ドアガン)を設置出来るほか、自衛用として以下の装備が用意されている。
ハイドラ70ロケット弾や各種機関銃などを装備してガンシップ化することも検討されており、既に実証試験が行われているという[31]。
戦闘捜索救難や特殊作戦用として、隊員の降下や回収に利用できるホイストをキャビンの後部隔壁直前の天井部に設置できる。長さ76.2mのワイヤーで最大272kgまで吊り下げられ、停止から最大1.14m/secでの上下無段階の速度制御が行える。
ホイストは銃座の上部にあるため同時使用は出来ない。
降着装置や燃料タンクが機体底部のスポンソンに、主翼構造全体が機体の最上部に位置しており、機内は最前部の操縦室に続いて左右に分かれた電子装置収容区画と通路があり、その後ろに貨物室/客室となるキャビンがある。乗降はキャビン右側前方の乗降口と最後部の貨物扉から行える。貨物室は非与圧である。当初はNBC防護が要求されていたが、初期の運用テストにおいて気密シールに多大な問題が発生し、キャビンの圧力を維持できなかったことから、システムが使用できず最終的にNBC防護の要求は取り下げられた[33]。そのため、高高度を飛行する際は酸素マスクが必須であり、また機内ヒーターについても外気より10度高くすることができる程度であることから低体温症にも注意が必要である[34]。
胴体下面の前後に計2個のカーゴフックを備え、機内に搭載できない貨物類を吊り下げて運搬することができる。
カーゴフック容量は4,536kg×2である(ただし、2つのフックを合わせた機外吊り下げ最大容量は6,804kgである)[12]。
V-22は固定翼機の特性を持つ『固定翼モード』、ヘリコプターの特性を持つ『垂直離着陸モード』、その中間の『転換モード』の3つのモードを切り替えて飛行する[35]。
同じインターフェイスで固定翼機とヘリコプターを操縦することになるため、操縦桿やスロットルレバーはAFCSを介し対応するモードに合わせた操作として機体に伝達される。
この記事は中立的な観点に基づく疑問が提出されているか、議論中です。 (2012年7月) |
ティルトローター機であるV-22の最高速度は300 kn (556 km/h)を超える。これは、現在米軍が採用している同規模のヘリコプターCH-53E(170 kn (315 km/h) 自重15t)と比べて実に130 kn (241 km/h)ほど高速である。速度に特化した高速ヘリコプター(最大速度200 kn (370 km/h)程度)と比べても1.5倍の速度差であり、シコルスキー社が開発した実験機シコルスキー X2の225 kn (417 km/h)程度)よりも速い。
回送時(貨物積載無し)の航続距離は1,940 nmi (3,590 km)あり、空中給油が可能であるためさらに延長できる。これはCH-53Eの倍近い距離となっている。垂直離着陸をした場合には航続距離は短くなる[40]。
固定翼を併用するために、回転翼だけよりエンジンの単位出力当たり大きな揚力を得られる。また、回転翼機よりも上昇限度が高い。またローターと主翼は折りたたむことが可能であり空母だけでなく強襲揚陸艦でも運用できる。例としてサン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦ではヘリコプター甲板に4機・格納庫に1機の積載とヘリコプター甲板から同時に2機の発着が可能とされている。
アメリカ国防総省では458機のV-22を調達することを計画していた。内訳は海兵隊用の輸送機MV-22が360機、アメリカ特殊作戦軍向けの空中突撃用機CV-22が50機、海軍向けの戦闘捜索救難、特殊作戦用機HV-22が48機であった。特殊作戦軍の調達については空軍からも予算が支出される[41]。
低率初期生産(LRIP)段階では2000年に2回の重大な航空事故が発生したものの、それ以降は大きな問題も発生せず、2005年に運用評価を完了した。2005年9月19日にCV-22量産1号機が空軍に引き渡された。2005年10月28日に国防調達会議は全規模量産(FRP)の開始を承認した。2007年6月13日に米海兵隊のMV-22Bが初期作戦能力(IOC)を獲得した[1][42] 。2007年12月からイラク西部の戦闘作戦に初めて参加し、初のヘリボーン作戦は、2008年3月18日にMV-263所属の2機のMV-22Bがイラクにおいて行った。2009年3月16日に米空軍のCV-22Bが初期作戦能力(IOC)を獲得した[42]。
FY2010までに216機が調達されている(内訳はMV-22が185機、CV-22が31機)2008年3月28日に結ばれた契約ではFY2008からFY2012までに167機を104億ドルで調達することが取り決められた[41]。
アメリカ陸軍は、UH-60 (航空機)UH-60とCH-47で十分任務を果たせるとしてV-22を採用していない[43]。
2015年1月17日、アメリカ海軍は、C-2艦上輸送機の後継をV-22にすると発表。44機の導入を予定している。2016年2月3日には正式名称をCMV-22Bと決定した。2018年の生産開始を予定している[44]。
2020年6月10日、通算400機目のV-22が納入された[45]。この機体は空軍特殊作戦コマンドに所属するCV-22である。
2023年12月8日、アメリカ合衆国政府はオスプレイの生産ラインを2026年に閉鎖させる方針を示した、ただし、運用は2050年代まで継続の模様[46]。
以下に2015年時点の配備状況と配備予定を示す。
在日米軍の再編で沖縄県宜野湾市の普天間飛行場の移設に伴う代替施設(名護市辺野古)への配備が計画されていることが、米軍作成資料から明らかになっているが、日本国政府は承知していないとしていた。しかし、2008年4月22日、外務大臣(当時)の高村正彦は、参議院外交防衛委員会で山内徳信議員の質問に対して「配備の可能性がある」との認識を日本政府として初めて示した[48]。
その後、鳩山由紀夫内閣下で普天間基地移設問題が混乱し、2014年までの普天間飛行場移設が困難となったため、2011年6月6日、米国防総省は2012年後半に、MV-22を沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に配備すると正式に発表した。それを受けて2011年6月13日、北澤俊美防衛大臣は、沖縄県庁で仲井真弘多知事と会談し、米軍普天間飛行場へのMV-22配備を説明した。2012年7月23日にはMV-22Bが岩国飛行場に搬入され、9月21日に日本国内初の試験飛行が山口県沖や福岡県沖で行われた[49]。9月27日は日本の政府関係者を載せて飛行を行った。10月1日に、6機、2日には3機が普天間飛行場に移され、4日午前に訓練飛行が行われた。これに対し仲井真弘多沖縄県知事は、「これだけ県民が反対しているものを使い出すのは、非常にむちゃな話だ」と批判した[50]。
アメリカ合衆国連邦政府は2015年5月8日、2017年から空軍向けの特殊作戦型CV-22を横田基地に10機配備する方針を決め、日本政府に伝えた。2017年後半に3機、数年以内にさらに7機を配備する予定であり[51]、2018年4月4日には輸送船で運ばれた最初の5機が、横浜港の米軍施設である横浜ノースドックに到着して陸揚げされ、翌日の2018年4月5日に横浜ノースドックから離陸して、横田基地に到着にしている。この5機は数日で一旦日本を離れて「地域の安全保障の訓練」を行い、夏頃に横田基地に戻り、正式に配備される予定である[52]。
防衛省は2015年10月30日、国際入札により沖縄駐留海兵隊のオスプレイの定期整備拠点が、千葉県の陸上自衛隊木更津駐屯地に決まったと発表した。整備は富士重工業(現・SUBARU)が行い、陸上自衛隊が導入する機体も同地で共同整備される[53]。2017年1月30日13時10分頃、木更津飛行場に普天間基地第262海兵中型ティルトローター飛行隊 (VMM-262)所属MV-22Bオスプレイ1機目(機体番号:8006)が修理予定で飛来[54]。2018年6月25日昼過ぎには同じく普天間所属2機目(機体番号:8220)のオスプレイが飛来しているが[55]、1機目が2019年2月まで整備期間が長引き、同月26日に格納庫外で試験飛行が確認され[56]、同年3月5日に木更津から出発(機体番号:8006)が確認された[57]。
1990年12月に閣議決定した03中期防の策定過程で、海上自衛隊は中期防に直接盛り込む装備とは別に「将来構想」として当時開発段階にあったV-22を救難機として導入する計画を提案していた[59]。元統合幕僚会議議長の佐久間一によれば、海上自衛隊はV-22を「UV-22」として計画しており、航空救難を行う救難機として導入しようとしていたが、アメリカ海軍での開発が遅れたことが原因で、UV-22を断念し、代わりにUS-1Aを1機追加購入することになったという。佐久間はV-22について、「将来、アメリカ海軍が本当に実運用して安定した運用をするようになると、海上自衛隊ももう一度注目しなきゃいけない」と述べている[60]。
防衛省は、平成25年(2013年)度予算案にオスプレイ調査費を計上し、災害救援や輸送など自衛隊の活動目的に照らすとともに、離島対処に対する運用を研究することとなった[61]。日本国内での取り扱いは三井物産エアロスペース株式会社が担当している[62]。日本の導入価格は2012年12月時点で一機当たり約100億円と見られていた[63]。
2015年5月5日、アメリカ合衆国国務省が17機のV-22BブロックC及びエンジンや赤外線前方監視装置、ミサイル警報装置各40基と乗員の訓練費用を含む、推定30億ドル(約3600億円)分の装備を日本に売却する事を承認し[64][65]、同年7月14日、平成27年(2015年)度予算分の最初の5機を3億3250万ドル(約410億円)で購入する事に日本が合意したと発表した[66][67]。これはアメリカ以外への初めて導入であり、対外有償軍事援助による販売も初となる[68]。
2015年12月24日、平成28年(2016年)度予算案にてオスプレイの残り12機分を1321億円で一括購入する案が見送られた[69]。
2016年12月2日、防衛省は陸上自衛隊が導入する予定のV-22について、国内での修理にかかる技術援助契約を締結する修理事業者を富士重工業(現SUBARU)に決定したと発表した[70]
2017年8月26日、テキサス州アマリノにあるベル・ヘリコプター社の施設内において、日本向け初号機が地上でのエンジンテストが行われているのが確認されている。機体には日本向けのカモフラージュ塗装を施している[71]。
救難機ではなく汎用輸送機として陸上自衛隊が運用する。佐賀空港に新規の駐機場を開設する予定だったが、用地取得の遅れや自衛隊機の事故で地元との調整が滞っているため木更津駐屯地に暫定配備されている。[72][73]。
フライトシミュレータはアメリカ海兵隊が導入したコンテナ型の飛行訓練装置(FTD)を採用するとした[74]。動揺装置を搭載した模擬飛行装置(FFS)よりも10億円ほど安く、移動可能なため暫定配備した木更津駐屯地から佐賀空港へ移設する際にも有利とされる[75]。
2018年12月21日、防衛省はV-22の教育訓練を2019年3月から2020年5月までの間アメリカノースカロライナ州のニュー・リバー海兵隊航空基地で行うことを発表した[76][77]。
2019年7月に公開された日本向けの機体は上面が灰色、下面が白の2色迷彩となっている[28]。
2020年3月26日、V-22とCH-47J/JAを運用する部隊として第1ヘリコプター団に輸送航空隊が新編された。本部とV-22の部隊は前述の木更津駐屯地にて編成された。
2020年5月8日、アメリカ海兵隊は日本向けのオスプレイが岩国基地に到着したと発表した[78]。
2020年7月10日、陸上自衛隊用V-22の1機目(機体番号:91705)が木更津駐屯地に到着し、輸送航空隊に配備された[79]。7月16日には、2機目(機体番号:91701)が到着した[80]。
2022年3月末時点での陸上自衛隊の保有数は13機[81]。
遭難救助機としての採用を検討していたが[85]、UAEはアグスタウェストランド社のAW609を選択[86]、V-22の採用は見送られた[87]。
イスラエル政府は現在導入が決定しているCH-53Kと共に特殊作戦、および遭難救助能力強化のため、V-22数機を導入することに強い関心を示している[88][89]。
2011年には海軍が建造中であった空母「ヴィクラント」での運用を想定して、ボーイング社とアメリカ海兵隊主催の実機を用いた説明会に参加した。現在運用中のKa-31早期警戒ヘリコプターの後継機として取得を検討している[91]。
2020年7月6日、アメリカ国務省はインドネシアへMV-22BブロックCオスプレイ8機のFMSによる輸出を承認した[92]。機体や予備の部品、サポートなども含めて総額で約20億ドルの契約となる[93]。この8機はインドネシア陸軍に配備され、島嶼の多い同国での様々な作戦に用いられることになる。ただしこの承認はあくまでもアメリカ側の手続きであり、インドネシア国防省はMV-22の導入計画を否定している[93]。
2019年10月初旬の時点において、アメリカ海兵隊、空軍および海軍が合計375機を保有しており、その総飛行時間は、50万時間を超えている[94]。
2007年7月10日、イギリス海軍の空母「イラストリアス」への着艦を行った。これは、アメリカ以外の国の艦船への初めての着艦となった[95]。
2007年9月17日、強襲揚陸艦「ワスプ」が第263海兵中型ティルトローター飛行隊(VMM-263)の10機を搭載し、イラクに向けて出航した[注 26]。派遣された機体は、2007年10月からイラクの自由作戦に参加し、イラクのアンバール県において、奇襲・強襲作戦、偵察、要人輸送、物資空輸、患者後送、救難活動などを行った[97][注 27]。2009年4月までの間の出撃回数は6、000回以上、飛行時間は約10,000時間、輸送人員は4,500名以上、運搬した資機材は約998トン以上にのぼった[99][注 28]。この間に携帯対空火器や小火器による攻撃を複数回にわたって受けたものの、1機も失われることがなかった[101][注 29]。
2009年11月、第261海兵中型ティルトローター飛行隊(VMM-261)がアフガニスタンに派遣され、不朽の自由作戦に参加した。2014年までに、この作戦に参加した機体の総飛行時間は14,000飛行時間を超え、148,000人以上の人員と5,000,000ポンド (2,300,000 kg)以上の貨物を空輸した[104][注 30][注 31][注 32]。
2009年12月4日、コブラの怒り作戦(Operation Cobra's Anger)において、初めての攻撃戦闘任務を遂行した。CH-53Eとともに1,000名のアメリカ海兵隊および150名のアフガニスタン軍兵士をアフガニスタン南部のヘルマンド州ナウザットバレーまで空輸し、タリバンの作戦遂行を阻止した。
2010年1月、ハイチ地震の発生に際し、ハイチに派遣され、統合対処作戦(Operation Unified Response)に参加した[109]。この作戦に参加した機体は、370キロメートルを超える長距離の物資空輸、492名におよぶ要員の人員空輸、各施設間の任務・警備要員の人員空輸、水や約6トンの食料と医薬品の物資空輸などの任務を遂行した[110]。
2011年3月、オデッセイの夜明け作戦において、強襲揚陸艦「キアサージ」から飛び立った2機が、墜落したアメリカ空軍のF-15E戦闘機のパイロットを救助した[111][112]。
2011年5月2日、ネプチューン・スピア(海神の槍)作戦 が終了した後、国際テロ組織「アルカーイダ」の創立者であるウサーマ・ビン・ラーディンの遺体をアラビア海の空母「カール・ヴィンソン」まで空輸した[113]。
2013年6月14日、カルフォルニア州の沖合で海上自衛隊の護衛艦「ひゅうが」に着艦した。日本の艦船に着艦したのは、これが最初である[114]。東シナ海に於いては普天間基地所属の第265ティルトローター飛行隊(VMM-265ドラゴンズ)のMV-22オスプレイを佐世保を母港とする強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」に初めて搭載。
2013年8月11日、第1海兵ヘリコプター飛行隊(HMX-1)に所属する2機が、ケープコッド沿岸警備隊航空基地からマサチューセッツ州のマーサズ・ビィニヤード島まで、シークレット・サービス、ホワイトハウスのスタッフおよび記者を初めて空輸した[115]。
2013年8月2日から5日にかけて、2機が空中給油を行いながら、これまでで最も遠い目的地まで移動した。2機のKC-130空中給油機と一緒に沖縄県の普天間海兵隊航空基地から離陸し、8月2日にフィリピンのクラーク空軍基地まで、8月3日にオーストラリアのダーウィンまで、8月4日にオーストラリアのタウンズビルまで飛行して、8月5日に目的地である強襲揚陸艦ボノム・リシャールに着艦した[116]。
2013年、台風ハイヤンによる被害の発生に伴い、第3海兵機動展開旅団の12機がフィリピンに派遣され、災害派遣活動を行った[117] 。
2014年1月、フランスの強襲揚陸艦に着艦した。フランスの艦船に着艦したのは、これが最初である[118]。
2014年、リベリアにおけるエボラ出血熱の流行に際し、危機対応特別目的海兵空地任務部隊が、1,200名の人員と78,000 lb (35 t)の貨物を空輸するなどの緊急支援活動を行った [119]。
2015年3月23日、アメリカ海軍佐世保基地の赤崎貯油所に、普天間基地第262海兵中型ティルトローター飛行隊(VMM-262)の2機が初飛来。
2015年3月26日、韓国の揚陸艦「独島」に着艦した。韓国の艦船に着艦したのは、これが最初である[120]。
2017年1月、イエメンにおけるヤクラ襲撃(Raid on Yakla)に際し、2機が地上部隊救出作戦に参加した。1機がエンジンの不具合によりハード・ランディングし、2名の搭乗員が負傷した。機体は、爆撃により破壊された[121]。
2018年12月、メラニア・トランプをアナコスティア・ボリング統合基地からラングレー・ユースティス統合基地を経由して空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」まで空輸した。これは、ファースト・レディによる初めての搭乗になった[122]。
2007年10月4日、カートランド空軍基地から離陸し、捜索救難活動を行った。これは、初めての実任務となった[123]。
2008年11月、フリントロック演習を支援するため、第8特殊作戦飛行隊の4機がマリに派遣された。これは、初めての海外派遣となった[124]。この派遣は自己展開により行われ、フロリダ州のハルバート飛行場からマリ共和国のバマコまでの約9800キロメートルを空中給油を行いながら無着陸飛行した。派遣された機体は、多国間訓練における機動・輸送手段として用いられた。その主要な任務は、各国の特殊作戦部隊を潜入および撤収させるための長距離空輸任務であった[125]。
2009年6月、ホンジュラスにおいて、第8特殊作戦飛行隊が 43,000ポンド (20,000 kg)の人道支援物資を孤立した村落まで空輸した[126]。
2013年12月21日、クーデター未遂事件が発生していた南スーダンのボルにおいて、3機編隊でアメリカの民間人を救出しようとしたところ、小火器による射撃を受け、被弾した。編隊は、任務を中止したのち、500 mi (800 km)離れたウガンダのエンテベに向かった[127][128]。3機の機体は、合計119発の銃弾に被弾し、4名の搭乗員が負傷し、操縦系統および油圧系統が損傷するとともに、燃料漏れを発生していた。漏れた燃料を補うため、複数回の空中給油を行いながら飛行した[129]。この事件の後、空軍特殊作戦部隊は、オプションで装着できる装甲フロア・パネルを開発した[130]。
2014年7月3日、デルタ・フォースをISIL過激派がアメリカ人などの人質を拘束していたシリア東部のキャンプまで空輸した。過激派の掃討には成功したが、人質はすでに別な場所へ移されてしまっていた[131]。
2023年11月29日、嘉手納基地の第353特殊戦航空群所属のCV22が屋久島沖に墜落した。乗員は8名で1名が発見されたが死亡が確認された。また、一部機体の残骸が発見されている。[132] アメリカ空軍の特殊作戦司令部は29日、第353特殊作戦群に所属する横田基地のオスプレイが8人を乗せて屋久島沖で定期的な訓練を行っていたところ、事故に巻き込まれたと明らかにした。[133]
事故に関してはV-22の事故を参照。
操縦系統が3重化されるなど強固な安全対策が施されているが、アビオニクスの操作量が増えるためパイロットの訓練に時間がかかるという意見もある[28]。
ベルがティルトローター機の研究をスタートした時点では先例がなく、研究成果のほとんどはベルが行っていた研究と開発過程で得られたデータを元にしている。研究のスタートから60年近くが経過しV-22の量産が始まった時点でも他社のティルトローター機は試験・研究段階にとどまっており、初の民間機であるAW609もベルがV-22の開発により得られた成果で完成している。
AW609が登場するまで民間機としての申請もないため連邦航空局はティルトローターやティルトウイングなどの『転換式航空機』の区分を明確にしていなかったが、V-22の量産が決定された1997年に『パワード・リフト』というカテゴリーを設置した。なおこの基準は軍用機には適用されないため、V-22の運用には直接関係しないが、V-22が民間空港や軍民共用の飛行場を利用する際には管制からパワード・リフトとして扱われる。
飛行中に3種の操縦方式を切り替えるというパイロットにとって経験のない機種であったため、試作段階では事故が多発し『タイム』誌は2007年10月8日号において、同機を「空飛ぶ恥(Flying Shame)」と紹介した[141]。
在日米軍基地に配備が予定されているアメリカ海兵隊所属のMV-22[142] の10万時間当たりの平均事故率は、2012年4月11日の事故後に1.93となっている。事故前は1.12であり、いずれも米海兵隊所属の飛行機平均の2.45を大きく下回っていた[143]。配備期間の短さを考慮する必要はあるものの、現在、MV-22の事故率はヘリコプターより低い(在日米軍に配備されているCH-53D(米国内配備開始:1969年)の事故率は4.15である)。しかし事故率は年々上昇し、2011年10月~2016年9月における10万飛行時間当たりのクラスA事故率(被害総額が200万ドルを超えるもしくは死者を出したなどの重大事故)は3.41であり、同時期の米海兵隊航空機全体のクラスA事故率平均値2.83を上回っていることが各社より報道された[144]。これをうけて日本政府も2017年10月30日菅義偉官房長官が記者会見し、事故率は「あくまで目安」としながらも、これまで事故率が「低い」との強調から軌道修正ととれる発言を行なった[145]。
アメリカ空軍向けの特殊作戦型であるCV-22の事故率は2012年6月15日の時点で13.47[143] でMV-22よりかなり高いものの、同種の任務に使われるヘリコプター、MH-53 ペイブロウの十年間平均の事故率が12.34であり、これと比べてCV-22の事故率が特段に高いとはいえない。また、CV-22は前述のとおり特殊作戦型であり、危険な任務につくことが多いためMV-22と比較して事故率が高いのは当然であるといえる。なお、当初CV-22は在日米軍基地に配備される予定はなかったが、2015年5月8日に横田基地に配備される方針が米政府から日本政府に伝えられた。その際、米政府は第一候補として沖縄嘉手納基地を想定していたが海兵隊普天間基地移転問題や同基地に配備されている系列機MV-22以外に同県にこれ以上の負担をかけられないとする日本政府との協議で横田基地に落ち着いたとされている。
また、V-22自体が耐空証明が取得できないため、民間機としては飛行できないという報道もある[146][147] が、そもそも計画当初から民間用に販売する予定がないため耐空証明などを取得する必要がない。なお、オスプレイの開発経験を基にベル社がアグスタウェストランド社と合弁で開発に着手したBA609はFAAの形式証明を取得し、民間向けに販売する予定である(名称は後にAW609に変更)。
2008年7月22日、次期大統領候補のバラク・オバマ上院議員(当時)がイラク電撃訪問の際に搭乗した[148]。
アメリカ合衆国大統領を輸送する専用ヘリコプターであるマリーンワンとして用いられているVH-3の後継機として、EH101、S-92などとともにV-22も候補に挙げられた。後継機には EH101の派生型VH-71の採用が決定したが、その後予算超過を理由としてVH-71の調達計画はキャンセルされた。ボーイングでは仕切り直しとなったマリーンワン後継機の選定にV-22を再度提案すると報道されたが[149]、2014年5月7日S-92の派生型VH-92が採用された[150]。
2012年、大統領に随行するホワイトハウスのスタッフや報道陣を搭乗させる輸送機として利用されることが決定した[151]。
2013年8月10日、大統領専用機仕様のオスプレイによる随行要員輸送が実際の運用として行われた。
2018年12月12日、メラニア・トランプ大統領夫人が、米海軍の原子力空母「ジョージ・H・W・ブッシュ」を訪問する際に搭乗した[152]。
回転翼モードで飛行中に両方のエンジンが停止した場合、技術的にはオートローテーションを行うことが可能であるが、安全に着陸することは困難である[136]。2005年、アメリカ国防省のある試験機関の高官は、 1,600フィート (490 m)以下の高度でホバリング中にローターの駆動力を喪失した場合、「機体を損傷せずに着陸できる可能性は低い」と語っている。ただし、あるV-22パイロットは、そういった場合でも「固定翼モードに転換して、C-130と同じように滑空着陸を行うことができる」と述べている[153][注 20]。また、連結駆動シャフトにより、片方のエンジンで両方のプロップローターを駆動することが可能であり、片方のエンジンが停止しただけではローターの駆動力が失われないようになっている[155]。
1992年に発生した死亡事故は、ボルテックス・リング・ステートが原因であった。政府説明責任局 (GAO)は、その報告書において、この機体は、「ボルテックス・リング・ステートに陥った場合の対応が困難」であると述べた[156]。また、ボルテックス・リング・ステートに関する試験の一部が、実施されていなかったことも指摘した[157]。ただし、その後実施された飛行試験により、通常のヘリコプターよりもボルテックス・リング・ステートに入りにくいことが判明している[124][注 19]。また、パイロットがボルテックス・リング・ステートを認識し、それから回復するために必要な訓練が実施されており、かつ、ボルテックス・リング・ステートを回避するための運用限界が設定され、その状態に近づいたことを警告する機器の導入も行われている[159][160]。
いずれにせよ、政府としては、過去に火災が発生していることから、米国政府に対して、我が国においてMV-22を運用する場合はなどといった運用措置・手順を追求することにより、排気ガスによる火災発生のリスクの更なる低減を図り、安全な運用の確保に万全を期すよう、しっかりと申し入れてまいりたい。 — 一川保夫防衛大臣、防防日第15061号 23.12.19 『MV-22オスプレイ配備について(回答)』
- パイロットに義務付けられている排気デフレクタの作動確認および同装置の継続監視の遵守を徹底すること
- 排気デフレクタを含めた機体システムに故障などが発生しないよう確実な整備を行うこと
- 着陸している時間を制限すること
2010年、ジャーナリストの田岡俊次は、エンジン出力の大きさから、V-22は海兵隊のCH-46輸送ヘリコプターより騒音が大きいと主張していたが[162]、調査では垂直離着陸モードで同程度、固定翼モードではV-22の方が若干低いという結果が出た[163]。
2016年10月に防衛省が木更津駐屯地で行った陸上自衛隊のCH-47JA輸送ヘリコプターとの比較では、飛行中の騒音は全てMV-22の方が低い一方で、ホバリング中の近距離での騒音はMV-22が上回っていた[164]。
事故の危険性などを理由として、日本国内の米軍基地や自衛隊駐屯地への配備中止を求めるデモ活動や妨害行為が配備先などにおいて行われている。
侵略を防ぐための抑止力になるなどの理由から、佐賀空港への誘致を推進する運動も行われている。
V-22などのティルトローター(ティルトウィング)機は、見た目にも明快に「ヘリコプターの進化系」とも取れる形状であるため、特に近未来を描いたフィクション作品などではV-22、およびそれをモデルにした架空機体が描写される事が多い。
以下はV-22そのものとして登場した作品を挙げている。
OVA第3巻にて登場。偉人要塞の突入口を探すために飛行していたが、撃墜された。
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