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列車内で主に飲食物を販売すること ウィキペディアから
車内販売(しゃないはんばい)とは、列車やバスの車内において物品を販売するサービスのことである。専任の販売員が車内を巡回して販売する形態に対して称されることが多い。略して車販(しゃはん)ともいう。食堂車とともに、列車内の供食サービスの一つである。
日本では1934年、食堂車が連結されていない列車で弁当類販売の要望があったため、鉄道省では試験的に販売したところ好評であった。このため列車内乗込販売手続を制定し、1935年11月より開始した[1]。
主に新幹線や特急列車などの優等列車に専門の要員もしくはアテンダント(客室乗務員)が乗務し、各車両の通路を定期的に巡回して、乗客の要望に応じて物品(主として飲食物)を販売する。乗客は席に座ったままでサービスを受けることができる。特急列車以外の普通列車(快速列車なども含む)でも、首都圏のJR線(東海道線、横須賀線、総武快速線、宇都宮線、高崎線、常磐線、湘南新宿ライン、上野東京ラインのグリーン車)など一部の線区で車内販売員が乗務している。なお、2024年度末以降は、中央線快速にもグリーン車を導入する予定だが、その路線の車内販売については未定。
これ以外に車内で物品を販売する形態は以下のものがある。
日本ではバスの車内で専門要員が車内販売を行う例はない。神奈川中央交通グループでは子会社の湘南神奈交バスなどにおいてセルフサービスによる車内販売を行っていたが、これは運賃外収入によるバス路線の維持を目的としていた。また、バス事業者によっては車内で回数乗車券[3]や一日乗車券[4]のほかにも傘などの雨具[注釈 1]などを販売していることがある。停車中に運転手に申し出ることによって購入する事が出来るが、運転手による金銭のやりとりが伴うため近年は縮小傾向にある。回数乗車券や一日乗車券についても運転手の負担軽減のため運賃箱を利用した販売方法に切り替えたり、車内販売を取りやめる事業者も増えている[5]。
など
販売員はまず所定の駅で販売品が積み込まれたワゴンを列車内に持ち込むか、車内販売の材料を車内に持ち込み、車内に格納されているワゴンに積み込む(新幹線の場合に多い)。新幹線や特急列車には販売員の車内販売業務の拠点となる部屋が設けられていることが多く、この部屋を車販準備室(しゃはんじゅんびしつ)という。以前は食堂車の厨房を拠点としていた(当時は弁当やサンドイッチなども食堂車で調製していた)が、食堂車が廃止されたためこのような部屋が設けられるようになった。車販準備室には簡単な作業を行うための空間や、飲料の保温用ポット・保冷用冷蔵庫・アイスクリーム用冷凍庫などが備えられているのが通常であるが、車両によっては通常車掌が使用する乗務員室(業務用控室)をそのまま利用し、このような設備を持たない場合もある。
発車後、車掌による案内放送の後に車内販売の案内を行い、車内を巡回する。列車の運行中に車販準備室へ出入りしつつ何度か巡回し、終点近くになると案内放送で営業終了の旨を放送し、車販準備室で後片付けや集計などを行い、車内販売の乗務スケジュールに定められた駅で下車する。
列車内の巡回は、販売員が販売品を積んだワゴンを押して移動するワゴンサービスが一般的だが、2階建車両やハイデッカーでワゴンによる移動が困難な場合や販売品の量が少ない場合には、販売品を入れたカゴなどの容器を手で携えて巡回する。新幹線E4系電車「Max」や近鉄50000系電車「しまかぜ」ではデッキ付近に車内販売ワゴン用のエレベーターがあり、これでワゴンを移動させている。
車内販売のある列車を運行する鉄道事業者は車内販売専門の子会社を持っていることが多く、販売員はその子会社に所属しているのが普通であるが、正規従業員ではなく派遣・契約やアルバイトといった非正規雇用で採用しているケースも少なくない。また、駅弁屋などの業者が特定の列車を担当することがあり、自社の商品(駅弁など)の販売に従事する。なお、食堂車を営業している列車においては、車内売員も食堂車のクルーの一員として扱われ、食堂車の接客と車内販売を兼務するケースもある。
JR時刻表では、車内販売が乗務する新幹線には記号(○印)をつけている。東海道・山陽新幹線では、2003年9月30日までは旧国鉄時代から食堂車・ビュフェがあった時代の名残で通し乗務を行っていたが、現在は新大阪駅で全て交代している[注釈 2]。一方、2015年3月14日に開業した北陸新幹線においては、全区間通しでJR東日本の関連会社が車内販売を担当している。なお、ともに2019年3月15日限りで車内販売を廃止した九州新幹線(2011年3月12日全線開業)と北海道新幹線(2016年3月26日開業)においては、九州新幹線ではかつて実施していた車内販売は直通運転をしている山陽新幹線との境界駅である博多駅で全て交代していたが、北海道新幹線では北陸新幹線同様、JR東日本の関連会社が通しで車内販売を担当していた。
利用客の多い駅を中心に、駅構内でも売店以外にコンビニエンスストアや駅ナカと呼ばれる商業施設が充実してきている現状では、乗車前にそれらで予め商品を購入するケースが多くなっている[7][8]。その一方、車内販売では取り扱い品目が限定され年々利用客は減少しており、採算が取れなくなっていること、相次ぐ離職で人員確保が難しくなってきているという事情もある[7][8]。そのためJR・私鉄問わず、近年の車内販売は縮小傾向にある[7][9]。JR各社での車内販売の売り上げは2000年前後がピークで、2010年代後半には半分以下に減っている[10]。
対面販売以外でも、車内の自動販売機の営業も縮小傾向にあり、東海道・山陽新幹線では700系やN700系(16両編成)の自動販売機は営業休止のち撤去され、山陽新幹線・九州新幹線用N700系(8両編成)でものちに2か所あるうち7号車のものを営業休止(3号車は販売を継続)とした。同様にJRの在来線でも営業休止とするケースが増えている。一例を挙げると、近畿日本鉄道でも2020年3月9日以降は、「アーバンライナー」などでの車内販売をとりやめた[11]。同年3月14日から登場した「ひのとり」では、両端の先頭車にコーヒーメーカーと小型のスナック・オリジナルグッズの自動販売機からなるカフェスポットを設置している[11]。
利用客の多い東海道新幹線であっても車内販売は採算が取れていないのが実情で、「こだま」では2012年3月までに全廃された。「のぞみ」および「ひかり」に関しては、車内販売を担当するパーサーに緊急事態時における乗客の避難誘導など安全要員としての役割も与えているため、2019年時点では当面継続する意向であると伝えられていた[8]が、最終的に2023年10月31日をもって1964年の開業以来続けられてきたワゴンサービスによる車内販売を終了することになった。翌11月1日からは「こだま」を除いたグリーン車の利用客を対象として、座席に設置されたQRコードを乗客がモバイル端末で読み取って注文し、パーサーが直接商品を届けるサービスを提供する形態に移行した[12][13]。
山陽新幹線における車内販売は2000年代までに「こだま」で全廃され、2022年3月のダイヤ改正以降は東海道新幹線に直通する定期列車の「のぞみ」を除いて全廃され[14]、更に2024年3月より16両の「のぞみ」「ひかり」のグリーン車利用客を対象とした、上記の東海道新幹線で実施されているパーサーが直接商品を届けるサービスのみの営業に縮小された[15]。
JR東日本・北海道・九州の各社でも既に車内販売を全廃または縮小している。JR東日本では「なすの」「たにがわ」などで2015年3月13日限りで全廃し[16]、2024年3月時点では盛岡以北に運行する東北新幹線「はやぶさ」の東京-盛岡、新青森間、上越新幹線「とき」の東京-新潟間、北陸新幹線「かがやき」「はくたか」の東京-金沢、敦賀間、秋田新幹線「こまち」の東京-盛岡間、山形新幹線「つばさ」の東京-山形間で実施している。定期列車で全区間、一部区間非営業の列車もある。
JR北海道では2019年3月15日をもって北海道新幹線の車内販売(NREに委託)を終了した[7]。JR九州でも2019年3月15日限りで九州新幹線での車内販売を終了した[17]。
JR東海・JR西日本の両社は、2015年3月までに在来線特急列車での車内販売を全廃した。寝台特急列車においては、最後の定期列車である「サンライズ出雲」にて廃止された[注釈 3]後は、臨時列車「カシオペア」「北斗星」で残るのみとなっていた。
JR北海道では2015年3月31日までに一部の特急列車での車内販売を終了し[18]、最終的に2019年2月28日をもって在来線列車での車内販売を全廃した(「大雪」1・2・4号、「オホーツク」1号、「サロベツ」1・4号で期間・区間を限定して行われる沿線特産品の販売のみ継続[19])。JR九州でも同日をもって、一部分の観光列車を除き在来線特急列車での車内販売を全廃した[20]。
JR東日本では2019年3月15日をもって一部の特急列車の車内販売を終了し、車内販売を継続する列車においても販売品目の見直しが行われた。弁当、軽食類の販売を終了し、飲み物、菓子類のみの販売となった[21]。2024年3月現在、常磐線特急ひたち、中央線特急あずさの定期列車で車内販売を実施している。
JR四国では2003年(平成15年)10月に車内販売を全廃した[22](代わりに一部の特急列車で飲料の自動販売機を設置)が、2009年3月19日から予讃線・土讃線の特急での試験的な再開を経て、同年8月1日より予讃線の丸亀・高松駅 - 観音寺間の「しおかぜ」「いしづち」の一部列車と土讃線の丸亀 - 琴平間「南風」の一部列車で正式に復活した[23] [24]。その後、車内販売の営業をしていたJR四国の子会社である高松駅弁の解散に伴い、2014年5月31日で一旦営業を休止するも、JR四国の子会社であるステーションクリエイト東四国が車内販売の営業を引き継ぎ、2014年6月21日から「しおかぜ」の一部列車と「南風」の日中を中心とした一部列車で丸亀駅 - 観音寺駅・琴平駅間などのごく短区間に限って再開された[25]。しかし、これも2019年3月15日をもって再度全廃となった[26]。
一方、首都圏JR線の普通列車グリーン車では、客室乗務員「グリーンアテンダント」(JR東日本サービスクリエーションが担当)が車内改札を兼ねて片手で持てるバケットに商品を詰め込み、車内販売を行う形態が継続されている。
近畿日本鉄道では古くから日中を中心に特急列車で車内販売が行われていたが、2002年3月をもって一旦全廃された。ただ、伊勢志摩への観光客誘致の一環として、2006年(平成18年)11月から土曜・休日ダイヤの伊勢志摩ライナーを使用する伊勢志摩方面特急において4年ぶりに車内販売を再開したほか、2007年(平成19年)10月8日より同じく土曜・休日ダイヤの名阪甲特急(当時はアーバンライナーplusとアーバンライナーnext)においても早朝・夜間を除き車内販売を再開した。しかし名阪甲特急においては2020年(令和2年)3月8日をもって[27][11]、「伊勢志摩ライナー」については2020年4月5日をもって終了した[28]。なお、観光列車である「しまかぜ」、「青の交響曲」、「あをによし」では車内販売を継続し、供食サービス(しまかぜ:カフェ車両、青の交響曲:バーカウンター、あをによし:販売カウンター)も連結している。詳細はこちらも参照のこと。
小田急電鉄ではロマンスカーで長年、シートサービスを含む車内販売営業(走る喫茶室)を行っていたが、2016年にシートサービスを廃止、2021年3月13日のダイヤ改正をもってワゴンサービスも廃止された[29]。
この節の加筆が望まれています。 |
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西欧諸国では長距離列車の車内に売店(イートインスペースも設けている場合が多く、日本の鉄道におけるビュッフェに近い)がある場合が多いが、乗客が売店に買いに行く方式が主流であり、車内販売を実施する列車は少ない。
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