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日本の歴史学者 ウィキペディアから
古田 武彦(ふるた たけひこ、1926年(大正15年)8月8日 - 2015年(平成27年)10月14日[1])は、日本の思想史学者・古代史家。元昭和薬科大学教授。専門は親鸞等の日本中世思想史。
福島県喜多方市生まれ。旧制中学の英語教師をしていた父親の転勤にともなって、広島県に育つ。旧制広島高校を経て、1945年(昭和20年)、東北帝国大学法文学部日本思想史学科に入り村岡典嗣に師事する。1948年(昭和23年)に大学卒業。
大学卒業後は公立高等学校教員(地方公務員)となり長野県松本深志高等学校教諭、神戸森高等学校講師、兵庫県立湊川高等学校教諭、京都市立洛陽工業高等学校教諭として国語科・社会科を教える。在職中から、親鸞に関する研究で知られた。家永教科書裁判では、親鸞に関する記述について、原告(家永三郎)側証人となった。
1969年(昭和44年)、『史学雑誌』に邪馬壹国説を発表。1970年(昭和45年)に教職を離れ、以後研究に専念する。九州王朝説を中心とする独自の古代史像を提示し、学界の通説に再検討を迫る。
このなかには神武天皇実在説など「記紀」の内容を信用したうえでの説があるため釈古派や右翼とも言われている。また好太王碑の改竄否定説を主張。1985年には自説を証明するために好太王碑の現地調査を行い「碑文に意図的な改ざんは認められない」と結論付けるなど[2]、自説証明のために積極的に活動したため学界からも一定の評価を得た。古田の論文は史学雑誌や史林にも掲載されたこともあり学会の注目を受けたほか、初期はマスコミからも取り上げられることは少なくなかった[注釈 2]。
それにより、多くの支持者・賛同者を集めるとともに、自説を巡って安本美典[注釈 3]など多くの研究者と論争を繰り広げた[注釈 4]。一時は高校教科書の脚注に仮説(邪馬壹国説、また親鸞研究時代の内容)が掲載されたこともある。賛同者・読者の会として「市民の古代研究会」が組織され、1979年(昭和54年)より雑誌『市民の古代』が刊行された。
親鸞研究でも注目を集め、1975年(昭和50年)に偽書説が定説であった三夢記の真作説を唱え、学界での論争のキッカケとなった[3]。1979年(昭和54年)度、龍谷大学文学部非常勤講師。1984年(昭和59年)4月より1996年(平成8年)3月まで昭和薬科大学(文化史研究室=歴史学)教授[注釈 5]。
『東日流外三郡誌』などの和田家文書と出会い、その内容を肯定的に評価した[4]。さらに後年、同書に対して「偽書ではないか」との強い疑念が提出されて以降も[5]、所蔵者の和田喜八郎を支持する姿勢を貫き、昭和薬科大学の「紀要」に論文を記載するなど、積極的な研究をしていた。それをきっかけとして、市民の古代研究会の分裂を招くに至り、運営に当たっていた関西を中心とした一部の会員が古田から離れた[注釈 6]。ただし、神代文字や和田家文書以外の古史古伝一般については充分な研究が必要として扱うのに消極的だった。
1996年(平成8年)3月に昭和薬科大学を定年退職した後、京都府向日市に戻り、執筆・講演活動を続けた。2006年(平成18年)5月には雑誌『なかった 真実の歴史学』を創刊し、直接編集にあたった。
昭和薬科大学の文化史研究室は、古田の退職後廃止された。市民の古代研究会は古田から独立した研究会としてしばらく存続したが、雑誌は終刊となり、2002年(平成14年)12月に解散した[注釈 7]。古田を支持して脱退した人々は「古田史学の会」「多元的古代研究会」など複数の研究会を結成し、連合して年刊の雑誌『新・古代学』を発行していた。この中で古田は、和田家文書偽書派の主張に対して反論を行っている[6]。
2007年(平成19年)、古田は『東日流外三郡誌』の「寛政原本」を発見したと主張し、翌年にはその写真版を出版した[7]。この書籍には、笠谷和比古(国際日本文化研究センター研究部教授)による鑑定文が収録されている[8][9][注釈 8]。一方、和田喜八郎の筆跡と一致しているとする主張[10][11][12]や、表紙は和田喜八郎の筆跡で中身は僧侶が漢詩をつくるための覚書(おそらくは寺院からの流出物)と思われるものであるとする主張がある[13]。
2009年(平成21年)、国記と天皇記からの引用を和田家文書の中から発見したと主張した。それと同時に『なかった』を休刊する[14]。
2010年(平成22年)から、『「邪馬台国」はなかった』『失われた九州王朝』『盗まれた神話』[注釈 9]以下、古代史関係の著作をミネルヴァ書房より「古田武彦・古代史コレクション」として復刊。また、2011年(平成23年)9月10日にミネルヴァ日本評伝選として『俾弥呼(ひみか) 鬼道に事え、見る有る者少なし』を発刊した。
『東日流外三郡誌』否定派の論文は反共雑誌『ゼンボウ』にも掲載された。最大の論敵[要出典]安本美典は新しい歴史教科書をつくる会賛同者であった[注釈 13]。一方で、古田は共産党系雑誌である「文化評論」に論文を掲載したことがある[27]。また、古田と親交のあった藤田友治は、「大阪唯物論研究会哲学部会」のイデオローグでもあった[28]。
しかし、古田はいわゆる左翼思想家ではないとする見方もある。
2010年(平成22年)から、絶版になり入手が困難になっていた古田武彦の古代史関係の著作を新装版の形で再刊する「古田武彦・古代史コレクション」企画が、ミネルヴァ書房より刊行を開始した。これに含まれる書目には、1970年代から1980年代にかけて角川文庫で、また1980年代から1990年代にかけて朝日文庫に収録されたもののすべてが含まれているため、最大で4度目の再刊になるものもある。各巻とも「日本の生きた歴史」が補章として書き加えられている。
番号 | 書名 | 副題 | 初版出版社 | 初版 刊行年月日 |
角川文庫版 刊行年月日 |
朝日文庫版 刊行年月日 |
刊行年月日 | ISBN | 備考 |
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1 | 「邪馬台国」はなかった | 解読された倭人伝の謎 | 朝日新聞社 | 1971年11月11日 | 1977年10月10日 | 1993年1月 | 2010年2月 | ISBN 978-4-623-05178-6 | 古田古代史三部作第一弾 |
2 | 失われた九州王朝 | 天皇家以前の古代史 | 朝日新聞社 | 1973年8月 | 1979年3月 | 1993年2月 | 2010年2月 | ISBN 978-4-623-05184-7 | 古田古代史三部作第二弾 |
3 | 盗まれた神話 | 記・紀の秘密 | 朝日新聞社 | 1975年2月 | 1979年6月 | 1994年1月 | 2010年3月 | ISBN 978-4-623-05185-4 | 古田古代史三部作第三弾 |
4 | 邪馬壹国の論理 | 古代に真実を求めて | 朝日新聞社 | 1975年10月 | 無し | 無し | 2010年6月 | ISBN 978-4-623-05216-5 | |
5 | ここに古代王朝ありき | 邪馬一国の考古学 | 朝日新聞社 | 1979年6月 | 無し | 無し | 2010年9月 | ISBN 978-4-623-05217-2 | |
6 | 倭人伝を徹底して読む | 無し | 大阪書籍 | 1987年11月20日 | 無し | 1992年8月 | 2010年12月 | ISBN 978-4-623-05218-9 | 朝日カルチャーブックス76 |
7 | よみがえる卑弥呼 | 日本国はいつ始まったか | 駸々堂 | 1987年10月20日 | 無し | 1992年6月 | 2011年9月 | ISBN 978-4-623-06055-9 | |
8 | 古代史を疑う | 無し | 駸々堂 | 1985年10月21日 | 無し | 無し | 2011年12月 | ISBN 978-4-623-06056-6 | |
9 | 古代は沈黙せず | 無し | 駸々堂 | 1988年6月10日 | 無し | 無し | 2012年1月 | ISBN 978-4-623-06057-3 | |
10 | 真実の東北王朝 | 無し | 駸々堂 | 1990年6月19日 | 無し | 無し | 2012年3月 | ISBN 978-4-623-06058-0 | |
11 | 人麿の運命 | 無し | 原書房 | 1994年3月3日 | 無し | 無し | 2012年4月 | ISBN 978-4-623-06059-7 | 古田万葉論三部作第一弾 |
12 | 古代史の十字路 | 万葉批判 | 東洋書林 | 2001年4月20日 | 無し | 無し | 2012年6月 | ISBN 978-4-623-06060-3 | 古田万葉論三部作第二弾 |
13 | 壬申大乱 | 無し | 東洋書林 | 2001年10月25日 | 無し | 無し | 2012年8月 | ISBN 978-4-6230-6061-0 | 古田万葉論三部作第三弾 |
14 | 多元的古代の成立 上巻 | 邪馬壹国の方法 | 駸々堂出版 | 1983年3月 | 無し | 無し | 2012年12月 | ISBN 978-4-6230-6453-3 | |
15 | 多元的古代の成立 下巻 | 邪馬壹国の展開 | 駸々堂出版 | 1983年4月 | 無し | 無し | 2012年12月 | ISBN 978-4-6230-6454-0 | |
16 | 九州王朝の歴史学 | 多元的世界への出発 | 駸々堂出版 | 1991年5月 | 無し | 無し | 2013年3月 | ISBN 978-4-6230-6455-7 | |
17 | 失われた日本 | 古代史以来の封印を解く | 原書房 | 1998年2月 | 無し | 無し | 2013年9月 | ISBN 978-4-6230-6456-4 | |
18 | よみがえる九州王朝 | 幻の筑紫舞 | 角川書店 | 1983年1月 | 無し | 無し | 2014年3月 | ISBN 978-4-6230-6665-0 | 角川選書40 |
19 | 古代は輝いていた 1 | 風土記にいた卑弥呼 | 朝日新聞社出版局 | 1984年11月 | 無し | 1988年4月 | 2014年4月 | ISBN 978-4-6230-6666-7 | 古代通史第一弾 |
20 | 古代は輝いていた 2 | 日本列島の大王たち | 朝日新聞社出版局 | 1985年1月 | 無し | 1988年5月 | 2014年5月 | ISBN 978-4-6230-6667-4 | 古代通史第二弾 |
21 | 古代は輝いていた 3 | 法隆寺の中の九州王朝 | 朝日新聞社出版局 | 1985年3月 | 無し | 1988年6月 | 2014年7月 | ISBN 978-4-6230-6668-1 | 古代通史第三弾 |
22 | 古代の霧の中から | 出雲王朝から九州王朝へ | 徳間書店 | 1985年12月 | 無し | 無し | 2014年9月 | ISBN 978-4-6230-6669-8 | |
23 | 古代史をひらく | 独創の13の扉 | 原書房 | 1992年9月 | 無し | 無し | 2015年3月 | ISBN 978-4-6230-6670-4 | |
24 | 古代史をゆるがす | 真実への7つの鍵 | 原書房 | 1993年11月 | 無し | 無し | 2015年7月 | ISBN 978-4-6230-6671-1 | |
25 | 邪馬一国への道標 | 無し | 講談社 | 1978年5月18日 | 1982年6月 | 無し | 2016年1月 | ISBN 978-4-6230-6672-8 | |
26 | 邪馬一国の証明 | 無し | 角川書店 | 1980年10月 | 1980年10月 | 無し | 2019年6月 | ISBN 978-4-6230-8586-6 | 角川文庫 白 252-4 |
27 | 古代通史 | 古田武彦の物語る古代世界 | 原書房 | 1994年10月 | 無し | 無し | 2020年12月 | ISBN 978-4-6230-6674-2 | |
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