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2023年に発生した2番目の台風 ウィキペディアから
令和5年台風第2号(れいわ5ねんたいふうだい2ごう)は、2023年5月に発生した台風である。国際名は「Mawar」[注 1]。日本列島に接近し、各地に線状降水帯が発生したことで大雨が降った。
台風2号は2023年5月20日15時にグアムの南東で発生した台風である[2][3][4]。台風は発生後しばらく北上したが、グアム島近海でほぼ停滞。その後しばらく西進し、26日には中心気圧が905hPaまで低下。最大風速60m/s(115kt)の猛烈な勢力となった。中心気圧905hPaは、5月の台風としては昭和46年台風第5号以来、過去2番目の勢力となっている[5][6][注 2]。
その後フィリピンの東に至ると、北寄りに進路を転向。宮古島のすぐ東を通過し、6月3日15時に伊豆諸島付近で温帯低気圧に変わった[7][8]。台風としての寿命は14日0時間であり、統計開始史上11番目の寿命の長さとなった[9][注 3]。
なお、台風が梅雨前線に熱帯由来の湿った空気を長時間送り続けた結果、29日には九州北部・四国・中国・近畿・東海地方が、30日には九州南部が梅雨入りした。中でも近畿・東海地方では平年より8日早い梅雨入りとなった[10][11][12]。
また、台風は5月26日にフィリピン責任地域(PAR)に入っており、フィリピン大気地球物理天文局(PAGASA)はフィリピン名「ベティ(Betty)」を付与している[13]。
5月17日にグアムの南東で低圧部が発生。19日21時になると同海域で熱帯低気圧となった[14]。
気象庁はこの熱帯低気圧が24時間以内に台風に発達する恐れがあると発表した[15]。
JTWCは、20日9時に熱帯低気圧とし、02Wを付番した。
20日15時に、カロリン諸島(北緯6.6度、東経148.9度)で台風2号となった[16][17][18]。発生当初は北上する予報だった。
北上するとともに発達し、21日15時には暴風域が発生[19]。翌日3時には強い勢力になった。22日15時から23日15時にかけては、中心気圧を40hPa下げ935hPaとなり、非常に強い勢力となった[20][21]。
22日頃からはグアム島の一部で停電が発生し、22日夜~23日にかけては太平洋高気圧の張り出しが予想以上に強かったことから、ほぼ停滞。その後ゆっくりと西に進み、24日には非常に強い勢力で島を通過した[22][23]。その際、島内では最大瞬間風速76~83m/sを記録したとされているが、風速計が破壊されたため正式な記録ではない[24] 。報道によれば、台風の強さは「シンプソン・スケールでカテゴリー5相当」とされている[25]。
台風はその後も発達を続け、26日には中心気圧905hPa、最大風速60m/sとなり、最盛期を迎えた[26][27]。台風の勢力は5月26日がピークとなり、翌27日には衰退し始め、27日9時には非常に強い勢力となった。台風の勢力は弱まったものの、強風域が広がり、同日15時には大型の台風となった[28]。 その後も勢力を弱め、29日18時には強い勢力にまで弱まった[29]。 6月1日3時には強い勢力ではなくなり[30]、同日15時には暴風域が消滅した[31][32]。同日、政府は官邸危機管理センターに情報連絡室を設置し、谷公一防災担当大臣の下で関係省庁災害対策会議を開催した[33]。
気象庁は、高知、和歌山、奈良、三重、愛知、静岡県で線状降水帯が発生したと発表している。線状降水帯が連続して6県で発生するのは初めてのことである[34]。また、和歌山県湯浅町では1時間降水量83.5mmを観測し、観測史上最高を更新した[35][36]。海水温が低かったために雨雲は大きく発達せず記録的短時間大雨情報や特別警報の発表は行われなかった。
その後台風はスピードを上げて、3日15時に伊豆諸島近海(北緯32.0度、東経141.0度)で温帯低気圧になった[37][38]。
なお気象庁の事後解析では、最低気圧が905hPaから900hPaへと上方修正され、温帯低気圧になった時刻が6時間早まって3日9時に修正された[39]。
政府は、梅雨前線による大雨を含めた台風2号の被害について、6月7日までに茨城県取手市、埼玉県草加市・越谷市・松伏町、静岡県磐田市、和歌山県海南市の5市1町に災害救助法の適用を決定した[40][41][42][43][44]。
人的被害 | 住家被害 | |||
---|---|---|---|---|
死者 | 7人 | 全壊 | 24棟 | |
行方不明者 | 2人 | 半壊 | 509棟 | |
負傷者 | 重傷 | 5人 | 一部破損 | 121棟 |
軽傷 | 44人 | 床上浸水 | 2,379棟 | |
程度不明 | 床下浸水 | 7,243棟 | ||
合計 | 58人 | 合計 | 10,276棟 |
前線による大雨の影響でJR東海は、東海道新幹線を上下線ともに東京駅から新大阪駅の間で運転を見合わせた。 日本航空は、計117便の欠航を決めており、約9000人に影響が出た[46]。
JR西日本は、大雨の予報により大糸線の南小谷駅~糸魚川駅間と、小浜線の敦賀駅~東舞鶴駅間、城端線の高岡駅~城端駅間、氷見線の高岡駅~氷見駅間、越美北線の福井駅~九頭竜湖駅間、高山本線の猪谷駅~富山駅間、舞鶴線の西舞鶴駅~東舞鶴駅間、姫新線の佐用駅~新見駅間、因美線の智頭駅~津山駅間、伯備線の新見駅~上石見駅間、芸備線の新見駅~備後落合駅間で6月2日分の運転を取りやめた[47]。
JR東日本は、常磐線特急列車の品川駅~取手駅間と普通列車の品川駅~勝田駅間で運行本数を大幅に減らしたが、この影響により特急の上下52本に遅れと運休が出た。水郡線の常陸大宮駅~常陸大子駅間で3日始発から11:30頃まで運転を見合わせ。鹿島線は3日始発から昼まで運転を取りやめた[48]。
グアムに被害を与えた台風としては過去 20 年間で最も強いものであった。現地では一時外出禁止令が出された[66]。大雨により、住宅の浸水の被害が報告された。
暴風の中泳ぎに出かけた18歳の少年と男性のうち、18歳の少年が高波にさらわれ行方不明となった。また、16歳から19歳の少年6人が高波にさらわれ、うち3人が自力で岸に戻り、1人が救助されたが、1人が死亡した[67] 。
暴風により、木が根こそぎ倒され、建物の屋根が剥がされた。更に電線が切れたことによってグアム島内では全世帯の約98%が停電し、場所によっては24時間降水量が24.5インチ(約620mm)にも達した[25]。5月29日にはジョー・バイデンアメリカ大統領が、今回の台風の被害についてアメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)の支援対象とすることを承認した[68]。
グアムではこの台風で交通にも影響を与えた。グアムを発着する旅客機が欠航や遅延が後を絶たず、現地に滞在していた観光客が帰国できないなどの影響も出た[66]。
6月1日に沖縄県竹富町大原で最大瞬間風速30.1m/sを、与那国町所野では最大瞬間風速27.8m/s、石垣市盛山で最大瞬間風速25.7m/sを観測し、いずれも6月の観測史上最大となった。
最大瞬間風速 | ||
地点 | 最大瞬間風速 | 観測日 |
---|---|---|
南城市糸数 | 32.9m/s | 6月1日 |
うるま市宮城島 | 32.7m/s | 6月1日 |
渡名敷村渡名敷 | 31.8m/s | 6月1日 |
石垣市盛山 | 31.4m/s | 5月31日 |
那覇市那覇 | 31.3m/s | 6月1日 |
宮古島市宮古島 | 31.0m/s | 5月31日 |
石垣市石垣島 | 30.5m/s | 5月31日 |
渡嘉敷村渡嘉敷 | 30.4m/s | 6月1日 |
石垣市伊原間 | 30.5m/s | 5月31日 |
南大東村南大東 | 30.3m/s | 6月2日 |
竹富町大原 | 30.1m/s | 6月1日 |
名護市名護 | 29.3m/s | 6月1日 |
那覇市安次嶺 | 29.3m/s | 6月1日 |
宮古島市下地島 | 29.3m/s | 5月31日 |
那覇市鏡原 | 28.8m/s | 5月31日 |
与那国町所野 | 27.8m/s | 6月1日 |
国頭村奥 | 27.5m/s | 6月2日 |
久米島町久米島 | 26.4m/s | 6月1日 |
北大東村北大東 | 26.2m/s | 6月2日 |
石垣市伊原間 | 26.1m/s | 5月31日 |
竹富町波照間 | 26.1m/s | 5月31日 |
久米島町北原 | 25.2m/s | 6月1日 |
多良間村仲筋 | 24.2m/s | 5月31日 |
竹富町西表島 | 23.6m/s | 5月31日 |
伊是名村伊是名 | 22.7m/s | 6月1日 |
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