Loading AI tools
中国の防衛組織 ウィキペディアから
中国人民解放軍ロケット軍(ちゅうごくじんみんかいほうぐんロケットぐん、簡体字中国語: 中国人民解放军火箭军、英語: People's Liberation Army Rocket Force)は、核弾頭及び非核弾頭を搭載する陸上配備型の弾道ミサイルおよび長距離巡航ミサイルを担当する中国人民解放軍の軍種(ロケット軍)である。核抑止、核反撃、通常ミサイル精密打撃[注 1]をその任務とする[3]。
|
現役総兵員数は12万人以上と推定されている[1]。予備役は、陸軍予備役、海軍予備役、空軍予備役、ロケット軍予備役で構成され、全体で約51万人と推定されているが、それぞれの兵員数の構成比は不明である[4][1]。
「ロケット軍(火箭軍)」の名称は、長距離ミサイルを主戦力としていることに由来する。前身は「第二砲兵部隊(第二炮兵部队)」であり、1966年の創設時に周恩来国務院総理によって命名されている。2015年末に「第二砲兵部隊」から「ロケット軍」に名称変更がなされた。
長距離ミサイルを装備する第二砲兵部隊は1966年に正式に創設された。第二砲兵部隊は少数ながらも人民解放軍が保有する地上配備型戦域核弾頭搭載弾道ミサイルを主装備とした。これらの第一世代ミサイルは、射程と能力の限られる洗練されていないものとして西側に評価されていた。しかしながら部隊は1960年代から1970年代にかけてますます長距離化されたシステムの開発を始め、1980年代初頭にDF-5を導入し、米国を攻撃できる最初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を誕生させ、規模と能力の両方において着実かつ漸進的に成長してきた。1980年代は第二砲兵部隊にとって2つの点で独創的な10年であった。第一に人民解放軍初の路上移動型弾道ミサイルシステムであるDF-21準中距離弾道ミサイル(MRBM)を開発したこと。第二に核弾頭搭載弾道ミサイルだけでなく通常弾頭搭載弾道ミサイルも配備するという上層の決定により、これが1990年代初頭の短距離弾道ミサイル(SRBM)、DF-11及びDF-15の導入につながったことである。発射プラットフォームの着実な多様化と能力の向上とともに、第二砲兵部隊の規模も成長してきた。
2000年から2010年にかけて第二砲兵部隊は、初の地上発射巡航ミサイルであるCJ-10や初の路上移動型ICBMのDF-31を含む、ミサイルを装備した11個もの新しい旅団を立ち上げ、部隊を増強させた。2010年から2016年末にかけて、第二砲兵部隊は13個の新しい旅団と、DF-21D対艦弾道ミサイル、より長距離でより高性能なDF-41路上移動型ICBM、核または通常弾頭の両用型のDF-26中距離弾道ミサイル(IRBM)、DF-17極超音速滑空体(HGV)などのより重要な兵器システムを追加したため、拡大のペースはさらに加速した。ロケット軍に改名後の2017年から2019年後半にかけて、人民解放軍ロケット軍は少なくとも10個の新しいミサイル旅団を新編した。29個旅団から39個旅団への前例のない増加は、わずか3年間で規模が33%以上拡大したことを意味する。これに続いて、2021年にはロケット軍のサイロ発射型ICBM部隊の大幅な増強が明らかになっている。このようにして、ロケット軍は、短距離で脆弱な弾道ミサイルを備えた小規模で洗練されていない部隊から、核兵器と通常兵器の両方の幅広い発射プラットフォームを備えた、より大規模で近代的な部隊へと進化した[5]。
ロケット軍は、中華人民共和国の国防最高意思決定機構である中央軍事委員会に直接従属している。ロケット軍の核ミサイル部隊の指揮権限はミサイル弾頭の種類および戦区の事態により変化するとされる。管理上、核戦力はそれぞれの基地に従属するが、戦時には中央軍事委員会の直接の作戦統制下に置かれる。通常弾頭ミサイル部隊の作戦統制、特に個別のロケット軍各基地に対して現地の戦区司令部(統合戦域司令部)にどの程度従属しているのかについては、あまり解明されていない。初歩的なエビデンスによれば、通常弾頭ミサイル部隊の現地戦区司令部への統合が進行中であり、現地戦区司令部がこれらの部隊に対してある程度の作戦統制を行使し、ミサイル部隊と空、陸、海の各軍種部隊との統合作戦を促進する可能性があることを示唆している[8]。
ロケット軍は9個の基地を統制しており、そのすべての指揮官が正軍級職または副軍級職のいずれかである。人民解放軍の指揮階梯の軍は西側軍隊の軍団クラスに相当する。 これらの基地のうち6個の基地、第61基地~第66基地は弾道ミサイル作戦を担当し、他の3個の基地、第67基地~第69基地は支援任務を行っている。第67基地は中央核備蓄の監督を担当し、第68基地は工学的および物理的インフラストラクチャーを担当し、最も新しく設置された基地である第69基地はよく解明されていないが、人員訓練とミサイル実験の両方を担当している可能性がある。6個の作戦基地はそれぞれ、地理的に離れたエリアをカバーしている。第61基地のミサイル旅団は中国東部と一部の南東部をカバーし、第62基地は中国南東部の残りの地域をカバーし、第63基地は中国南部内陸部をカバーし、第64基地は中国北西部と北中部をカバーし、第65基地は中国東部と北東部をカバーし、第66基地は中国中部をカバーしている。各基地には、個々の任務と戦略的ニーズに応じて、核戦力と通常戦力の独自の構成も備えている。例えば、第61基地は主に台湾を主目標とした短距離通常弾頭ミサイル旅団で構成されているが、第64基地や第66基地などの内陸の基地は主に長距離の核戦力で構成されている[8]。
2022年10月時点のロケット軍司令部の所在地は以下の通り[9]。
ロケット軍司令部の4部門1委員会は以下の通り[10]。
2022年10月時点のロケット軍参謀部の内局は以下の通り[11]。
ほか
2022年10月時点のロケット軍参謀部の主な直属部隊は以下の通り[12]。
2022年10月時点のロケット軍政治工作部の内局は以下の通り[13]。
ほか
2022年10月時点のロケット軍政治工作部の主な直属部隊は以下の通り[14]。
2022年10月時点のロケット軍後勤部の内局は以下の通り[15]。
ほか
2022年10月時点のロケット軍後勤部の主な直属部隊は以下の通り[16]。
2022年10月時点のロケット軍装備部の内局は以下の通り[17]。
ほか
2022年10月時点のロケット軍装備部の主な直属部隊は以下の通り[18]。
ロケット軍の6個の作戦基地は、標準化された構造に従っており、基地により隷下に6ないし7個のミサイル旅団と5から7個の支援連隊を備えている。標準的な構造は以下の通りである[19]。
6個の作戦基地のうち4個は上記の組織構造とまったく同じだが、第61基地と第63基地の2個はわずかに異なる。 第61基地には無人航空機の運用を担当する連隊が1個追加され、第63基地には主に液体燃料大陸間弾道ミサイルの燃料補給を担当する連隊が1個追加されている[20]。
上記のように、各作戦基地は6~7個のミサイル旅団を統制しており、各ミサイル旅団は通常、6個発射大隊(通常、それぞれ2個発射中隊で構成される)および4~6個支援大隊で構成される。標準的なミサイル旅団は次のように構成される[21]。
ミサイル旅団は、独自の通信、作戦支援、総合支援大隊を備えている。各旅団に割り当てられる発射装置の数は、ミサイルの種類に応じて大きく異なる。1個旅団当たりのミサイルと発射装置の公式かつ包括的な推定値は欠落しているが、知識豊富なオブザーバーらは特定のミサイルの1個旅団当たりの発射機数を、ICBMについては6~12基、MRBMについては12~24基、IRBMについては18~36基、SRBMおよびGLCMについては最大で36~48基の範囲で推定を行っている。各旅団には少なくとも1個、場合によっては2個の技術大隊を持っているとみられる。技術大隊は、ミサイルの装填と巻上げ、推進剤注入、発射前の試験と診断を含む一連の発射支援任務を担当する。技術大隊はミサイルの組み立てや弾頭装着にも役割を果たす可能性がある。第2の技術大隊が少数の旅団に限定された例外なのか、それとも標準なのかは不明である。これに加えて、追加の大隊が存在することは非常にまれだが存在する。たとえば、第633旅団にはテレメトリー大隊(英: Telemetry Battalion、簡: 遥测营)があり、第635旅団には電子対抗大隊(英: ECM Battalion、簡: 電抗营)があるとみられる。
2022年10月時点の第61基地の従属部隊は以下の通り[22]。
2022年10月時点の第62基地の従属部隊は以下の通り[23]。
2022年10月時点の第63基地の従属部隊は以下の通り[24]。
2022年10月時点の第64基地の従属部隊は以下の通り[25]。
2022年10月時点の第65基地の従属部隊は以下の通り[26]。
2022年10月時点の第66基地の従属部隊は以下の通り[27]。
2022年10月時点の第67基地の従属部隊は以下の通り[28]。
2022年10月時点の第68基地の従属部隊は以下の通り[29]。
2022年10月時点の第69基地の従属部隊は以下の通り[30]。
2022年10月時点のロケット軍の教育機関は以下の通り[31]。
2022年10月時点において、正連隊級職以上の部隊に与えられる5桁の部隊代号規則は以下の通り[32]。
ミリタリーバランス2023によるとロケット軍のミサイル発射装置数は以下の通り[1]。米国防総省中国の軍事力に関する2023年報告書によると、2022年には少なくとも合計300基の固体燃料式ICBM用サイロが、中国北部の哈密、玉門、楡林の三か所のミサイルサイロ複合施設に分けられて建設され、それらのサイロの幾つかには既にICBMが装填されているものと評価している[33]。
米国科学者連盟のリポートによると、2024年3月時点の中国人民解放軍の貯蔵核弾頭数は以下の通り[34]。
米国防総省の中国の軍事力に関する2023年報告書によると、中国は2030年までに1000発を超える核弾頭を保有するだろうと予測している[33]。
2016年4月に存在が公開された[35][36][37]ロケット軍装備部直属の金輪工程指揮部は、サウジアラビアへの弾道ミサイル輸出を監督する組織である。1980年代には中距離弾道ミサイルのDF-3がサウジアラビアに輸出され、王立サウジアラビア戦略ミサイル軍に導入された。運用訓練や基地建設などを監督するために、サウジアラビアに駐留してきた。中国人民解放軍の事実上の海外拠点となった最初の事例である[38]。ミリタリーバランスによると2022年末時点で、10基以上のDF-3、およびDF-21のミサイル発射装置が存在するものと評価している[39]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.