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世界戦略車(せかいせんりゃくしゃ)とは、主として自動車メーカーが、自らの製品の、企画、開発、生産、販売について説明する際等に用いる用語である。ワールドカー(World car )、グローバルカー(Global Car )などと呼ばれる場合もある。
同じ「世界戦略車」という用語を用いても、その意味はメーカーよって異なり、明確な定義は定まっていない。「多くの国あるいは地域で販売している、基本的に同じ仕様の製品」を指す場合もあれば、「基本的に同じプラットフォームから、各国、各地域向けに特化して開発した製品群」を一まとめにして総称して言う場合もある。
前者の場合「国内専用車」とは対極の意味であるが、後者の場合「国内専用車」も「世界戦略車」である場合がある。
日本やヨーロッパ、または韓国などの主要自動車メーカーは元々輸出に力を入れており、一部の国内向け専用車を除けばその製品は基本的にすべて「世界戦略車」だと言うことが可能である。アメリカ合衆国のメーカー、特にゼネラルモーターズ(GM)とフォード・モーターは、元来輸出に積極的ではなく、輸出の代わりに現地法人の設計・生産する車種にてその需要をまかなうという手法を取ってきた。ただし近年では右ハンドル仕様の生産など、輸出(世界戦略車としての設計)に力を入れるようになっている。
日本の各メーカーは日本国内向けと輸出向けの仕様とをはっきり区別する場合が多いが、最近では輸出向けを念頭に設計された車種や海外での現地生産車を、国内向けに手直しした上で販売するケースもある。
法規制や消費者の趣向が異なる様々な地域で販売される性質上、車体パーツ共有化による弊害が出る場合がある。例えばナンバープレートの取り付けスペースを横長形状(欧州式)前提にしていると、2代目プジョー・308のように日本やアメリカなどのナンバープレートを取り付けた際に上下に飛び出す。かといってどちらにも対応しようとすると、XD系ヒュンダイ・エラントラのようにナンバーポケットが大きく取られ、どちらを装着しても隙間ができる。[1]中にはAE100系トヨタ・カローラセダンのようにナンバープレートのサイズに合わせてパネル類そのものを変更して対応している例もある。 これが機能部品である場合、問題はさらに大きくなり、S13系日産・240SX(シルビア)のヘッドライト[2]のように同一車種でありながら特定の地域で仕様を大きく変更しなければならない場合もある。
ゼネラルモーターズ(GM)は世界各地にグループ企業を持つが、1960年代までは同じクラスであっても各地で全く違う製品を開発、生産していた。しかしこれではコスト的に無駄が多く、グループのスケールメリットが生かされていないと考えたGM本社が1970年代初頭に提唱したのが「グローバルカー構想」であり、簡単に言えば「基本的なプラットフォームを共用し、そこから各地の国情に合わせた製品を派生させる」という戦略である。
最初の計画は大衆車クラスの「Tカー」で、ドイツのオペルが中心となって開発したプラットフォームから、オペル・カデット(C、1973年)、いすゞ・ジェミニ(初代モデル、1974年)ボクスホール・アストラ(1975年、イギリス)、ホールデン・ジェミナイ(ジェミニの豪州読み)[3]、シボレー・シェヴェット(1973年、ブラジル/1976年、北アメリカ)などが派生した。
次の計画は、ミドルクラスの「Jカー」で、これは基本となるプラットフォーム自体を各社で分担して共同開発し、ここからオペル・アスコナ(C、1982年)、ボクスホール・キャバリエ(1982年、イギリス)、いすゞ・アスカ(1983年)、ホールデン・カミーラ(1982年、オーストラリア)、シボレー・モンザ(1982年、ブラジル)の他、ポンティアック・J2000、シボレー・キャバリエ、オールズモビル・フィレンザ、ビュイック・スカイホーク、キャデラック・シマロン(いずれも1982年、アメリカ合衆国)などが派生した。
この計画では、プラットフォームの共用化により、開発費を削減しながらより良い製品を造ることが目的であったが、最終的な製品は各地の事情に合わせて開発されており、同じ「Tカー」や「Jカー」であっても、全車を通じての互換性は少なく、製品そのものは国際商品というよりは「国内専用車」に近いものである。また各社で分担した設計のすり合わせに手間と時間がかかり、最終的に各国の事情に合わせることが開発の2度手間、3度手間になること、更にはモデルチェンジの方法や時期の相違など問題も多く、開発費の削減もGM本社が期待した程ではなかったためか、「Jカー」以降はGMグループ内でも、このような世界的規模の共同開発は行われていない。ただし2国間、2社間程度の共同開発、プラットフォームの共用は現在でも広く行われている。
ここで言う「世界戦略車」とは「世界の多くの国、あるいは地域で、基本的に同じ仕様で販売される車種」を指す。
日産自動車広報によると、日産において日・米・欧で販売される車両は「グローバルカー」であり、世界戦略車として定義されるには、さらに中国などのアジア諸国やロシア、その他の新興国など幅広い地域で販売されていることが条件となる[5]。セレナなどの日本市場をメインとして発売されるものも、香港市場などで発売されている(これはトヨタ・ノアなども同様である)。
なお日産はほとんどの車種を日本以外でも発売しており、日本のみで販売しているのは軽自動車などのOEM車のみである。日産自動車のプレスルームで世界戦略車とされているのは以下。
またムラーノのように本来は北米専売車種として開発されたものが最終的に全世界で販売される例も存在する[5]。また、明言されてはいないが、ティーダ/ティーダラティオなども日産における世界戦略車の定義に当てはまり、さらにリヴィナ・リヴィナジェニスについては現在日・米・欧・露では販売されていない。
当時の日産の輸出は、車体の関係上「ダットサン」と称した都合などから現在の日産ではなく当時は「DATSUN」と称していた。1983年の日産統一化以前までの輸出記号は以下のとおりとなる。
海外に多数の工場を持ち、現地で生産する車種も多い。
三菱自動車では軽自動車以外のほとんどの車種を世界で発売している。そのため、ほとんどの車は世界戦略車といえる。最近では、エアトレック→アウトランダーの例に見られるように、モデルチェンジの際に日本独自であった車名を世界共通の車名へ変更することもある。
また長らくの間クライスラーの小型車部門を支えていた時期があり、以下のような車種が販売されていた。
2019年以降、現行モデルはマイナーチェンジの際、日本独自の車名を世界共通の車名へ変更している。
スズキの場合は、世界市場をターゲットに開発されたモデルを世界戦略車と位置づけている。その第一弾がスイフトであり、以後グランドビターラ(エスクード)、SX4、スプラッシュ、Aスターなどが順次発表されている。欧州では、同じGMグループに属するオペルとフィアットへOEM供給して販売している。フォレンツァ、ヴェローナなどは逆にGM大宇の製品をOEM供給してもらい、スズキブランドで販売している。
過去には乗用車も生産しており、現在も一部の熱狂的ファンは存在する。現在はトラック・バス・SUVのみとなった。
1970年代からGMの欧州拠点(オペル)で開発したモデルを世界的に展開させてきていたが、2000年代に入り、韓国のGM大宇(GMDAT、現・韓国GM)が開発したモデル等も世界戦略車のラインナップに加わっている。
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