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果物 ウィキペディアから
キウイフルーツ(英: kiwifruit)は、マタタビ科マタタビ属の雌雄異株の落葉蔓性植物の果実である。また、マタタビ属のActinidia deliciosaを指して特にキウイフルーツともよばれる。温帯の果樹で、秋に果実が実る[2]。果実は産毛のような細かい毛が生えていて、ビタミンCを多く含む。野生種のサルナシの近縁にあたり、中国に分布するオニマタタビ(シナマタタビ)からニュージーランドで改良されて作出された栽培品種であり、ニュージーランドの国鳥キーウィに因んで名をつけられている[3]。
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 255 kJ (61 kcal) |
14.66 g | |
糖類 | 8.99 g |
食物繊維 | 3 g |
0.52 g | |
飽和脂肪酸 | 0.029 g |
一価不飽和 | 0.047 g |
多価不飽和 | 0.287 g |
1.14 g | |
トリプトファン | 0.015 g |
トレオニン | 0.047 g |
イソロイシン | 0.051 g |
ロイシン | 0.066 g |
リシン | 0.061 g |
メチオニン | 0.024 g |
シスチン | 0.031 g |
フェニルアラニン | 0.044 g |
チロシン | 0.034 g |
バリン | 0.057 g |
アルギニン | 0.081 g |
ヒスチジン | 0.027 g |
アラニン | 0.053 g |
アスパラギン酸 | 0.126 g |
グルタミン酸 | 0.184 g |
グリシン | 0.06 g |
プロリン | 0.044 g |
セリン | 0.053 g |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(1%) 4 µg(0%) 52 µg122 µg |
チアミン (B1) |
(2%) 0.027 mg |
リボフラビン (B2) |
(2%) 0.025 mg |
ナイアシン (B3) |
(2%) 0.341 mg |
パントテン酸 (B5) |
(4%) 0.183 mg |
ビタミンB6 |
(5%) 0.063 mg |
葉酸 (B9) |
(6%) 25 µg |
ビタミンB12 |
(0%) 0 µg |
コリン |
(2%) 7.8 mg |
ビタミンC |
(112%) 92.7 mg |
ビタミンD |
(0%) 0 IU |
ビタミンE |
(10%) 1.46 mg |
ビタミンK |
(38%) 40.3 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 3 mg |
カリウム |
(7%) 312 mg |
カルシウム |
(3%) 34 mg |
マグネシウム |
(5%) 17 mg |
リン |
(5%) 34 mg |
鉄分 |
(2%) 0.31 mg |
亜鉛 |
(1%) 0.14 mg |
マンガン |
(5%) 0.098 mg |
セレン |
(0%) 0.2 µg |
他の成分 | |
水分 | 83.07 g |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 出典: USDA栄養データベース |
商業流通の歴史は浅く、1906年にニュージーランドが新しい果樹のキウイフルーツとして、中国原産のActinidia deliciosaやActinidia chinensisの品種改良に成功、1934年頃から商業栽培を開始し[4][5]、世界各国で食べられるようになった果物である。
「キウイフルーツ」という名称は、ニュージーランドからアメリカ合衆国へ輸出されるようになった際、ニュージーランドのシンボルである鳥の「キーウィ (kiwi)」に因んで1959年に命名された(果実と鳥の見た目の類似性から命名された訳ではない)[6][7]。カタカナでは「キーウィーフルーツ」「キーウィフルーツ」「キウィフルーツ」などの表記も使用される。
日本へは1966年(昭和41年)に[2]、アメリカ合衆国から果菜(ベジタブルフルーツ)の一種として輸入され出回るようになった[7]。また、日本でも栽培や独自品種の開発が行われており[8]、花期は5月頃。耐寒性があり冬期の最低気温-10℃程度の地域でも栽培が可能である。産地は温帯から亜熱帯で、熱帯果実ではない。
Actinidia deliciosa の最も一般的な栽培品種であるヘイワード種の果実は、鶏卵程度の大きさを持つ楕円体で、皮が茶色く毛状の繊維に覆われている。この植物および果実自体もキウイ(またはキーウィー、キーウィ、キウィ)と略して呼ばれる場合がある。マタタビに近縁であることから、幼木や若葉はネコ害を受けることもある。
その他のマタタビ属の近縁種も「キウイ」という名称を利用して流通している。例: オニマタタビ(A. chinensis、ゴールドキウイ、ゴールデンキウイ)、サルナシ(A. arguta、ベビーキウイ、ミニキウイ)、シマサルナシ(A. rufa、ミニキウイ)など。
中国原産のオニマタタビ(鬼木天蓼、学名: Actinidia chinensis、別名:シナサルナシ)が[9]、南半球のニュージーランドで改良されたもの[10]。果樹としてなじみがあり、庭木としても見られる落葉性のつる性木本[10]。つるは全体的に褐色の粗い毛が多く、太くなると樹皮は縦にひび割れる[10]。枝の随には隔壁がある[10]。花期は5 - 6月(日本の場合)[10]。冬芽は褐色の毛に覆われていて互生し、隆起した葉痕上部の中に隠れて、先端だけが少し見えている半隠芽である[10]。葉痕は円形や半円形で、維管束痕が1個つく[10]。
種としてのキウイフルーツは、以前は Actinidia chinensis (標準和名:オニマタタビ)という単一の種の下に変種がいくつかあるとされていたが、1980年代に Actinidia deliciosa、Actinidia setosa、Actinidia chinensis の別々の種に分類された[11]。A. deliciosa と A. chinensis の主な差異は植生の形態、花および果実の形態、染色体の数である[11]。
A. deliciosa の果実は表面が粗毛に覆われており、緑色果肉品種である。最も一般的に市販されているヘイワード種は A. deliciosa 種である。一方、A. chinensis の果実表面は軟かい疎毛で覆われ(果肉は黄色いことが多いが、黄緑色や赤色が混じるものもある)、2000年より販売の始まったゴールド・キウイ(ゼスプリ ゴールド、ホート16A種)は A. chinensis 種である。
キウイフルーツ果実の食品科学的な特徴としては、ビタミンC(アスコルビン酸)の含量が多いことや、[12]果実としては珍しくクロロフィルを含むことなどが挙げられる。これらの果実成分の含量は、キウイフルーツの品種によって大きく異なっている。
日本での商業栽培は温州ミカンなど柑橘類の余剰対策の転作作物として始まった[4]。
専門知識がなくても比較的簡単に栽培ができ、苗は一般向けにホームセンターなどの園芸コーナーで容易に入手できる。雄雌を1株ずつ植え、藤棚を使い蔓(ツル)を上手くはわせて栽培すれば、10月から11月頃には果実が収穫できる。よく成長した株の場合、一株から約1000個もの収穫を得ることもしばしばであるが、大量の結実は糖度が下がり酸が増加することで食味を低下させてしまう。表年・裏年もあるので、人工授粉と実の大きさがピンポン球大の頃に、摘果を行うことが望ましい。収穫後は30 - 60日程度の追熟をさせると食べられる。
中国が原産地であるが、ニュージーランドで多くの新しい品種が作られた[2]。主な産地として以下がある。
ニュージーランドにとっては外貨が獲得できる貴重な農産物であり、首相が自ら店頭でPRするなど国を挙げた販売戦略を行っている[15]。日本で出回っている輸入キウイフルーツの9割以上はニュージーランド産である[7]。
日本ではニュージーランド産やチリ産、アメリカ産の輸入品が通年流通しているが国産品もあり[2]、量が多くないが愛媛県、福岡県、和歌山県、香川県などで栽培されている[7][2]。国産は11 - 4月ごろに出回る[2]。
なお、シマサルナシが、紀伊半島東南部を東限として、四国の太平洋岸、淡路島東南部、九州の沿岸地域、山口県の島嶼部、南西諸島に自生分布しており、国外では朝鮮半島南部の島嶼部、台湾にも一部自生が報告されている[16]。絶滅危惧種に指定されており、キウイフルーツには無いポリフェノールを含有していることから、三重県熊野市や御浜、紀宝両町では、新たなご当地フルーツとして産地化を図っている[17][18]。
2015年の全国収穫量は2万7800トン[19]。農林水産省の調査品目(果樹)の一つであり、日本では1970年代、ミカンの過剰生産による価格大暴落を受けて、愛媛県を発端として、ミカン農家や関連農協により、転作作物として全国に広まった経緯がある。そのため、生産上位県はミカン産地を兼ねていることが多く、また地形、気候条件などによりミカンよりキウイフルーツの方が栽培に適していた産地(ミカンと比較すると耐陰性、耐寒性が高く、耐乾性、耐塩性に劣る)では、安価な極早生種栽培より安定した収入が得られたため、主産地として発展していった。また、産地によっては蒟蒻芋(群馬県)、桑(栃木県)、ブドウ(山梨県)栽培からの転作例もある。尤も、このキウイフルーツ栽培も、1990年代にオレンジ輸入自由化に伴って、転作が急激に進行したために生産過剰気味になって価格が暴落し、耕作放棄地や作物転換が増加した。後に産地が連携して安定供給を図ったことで、2000年以降は価格も生産量も安定し、現在に至っている。国内生産の主な品種はヘイワードで、その他、各県がオリジナル品種を開発している。また、ニュージーランドのゼスプリによる「ゴールデンキウイ」などのライセンス品種を、愛媛県と佐賀県で栽培しており、宮崎県都農町にも大規模な農園を開発中である。尚、主力輸入先のニュージーランドが南半球に位置するために収穫時期が国内産と重ならないことで、海外輸入品と競合することが少なく、生産を相互補完している。 2018年の輸入量は10万6,082トンで輸入金額は409億5,179万円である。
熟した果実の皮を剥くか、半分に切りスプーンなどで果肉を抉るかして、食用にする。ただし、ベビーキウイのように果皮が薄く産毛も少ない品種の場合は皮ごと食用にする[7]。サラダ、デザートなどへの利用もされる。かたいものは未熟なので、常温において追熟させる[2]。
ビタミンCやビタミンEが豊富で強い抗酸化力を有し、食物繊維やカリウム、ミネラルも豊富である[7][12][2]。たんぱく質分解酵素アクチニジンが果皮付近にあり、肉類と一緒に摂ることで消化促進や胃もたれを防止する効果がある[7][2]。
キウイフルーツはマタタビ科マタタビ属の植物であり、マタタビラクトンがネコの鼻の奥にある「鋤鼻器」というフェロモンを感じる器官を通じ、ネコを興奮させるため、キウイフルーツの木にはしばしばネコが集まる。マタタビラクトンを嗅いだネコの反応は、床を転げまわる、走り回る、攻撃的になる、よだれを垂らす、眠くなるなどがある。特に去勢前のオスネコは、過剰に反応を起こすことがある。市販されているキウイフルーツに含まれるマタタビラクトンは微量であるため、キウイフルーツを食べてマタタビと同じ反応をするネコと、全く反応しないネコもいる[31]。
キウイフルーツ果実にソラレンという光毒性物質が含まれるとする記事がネット上に散見されるが、これはメディアが拡散した何の根拠もないデマであり、現在では否定されている。この誤情報の大本は、2011年に三空出版から刊行された一般向けの書籍であった。三空出版では、この記述に根拠がなかったことを認め、書籍中の記載を削除するとともに、ホームページ上に公式にお詫びと訂正を掲出している[32]。
この誤った情報を、2015年7月27日に放送されたTBSのバラエティ番組がエビデンスの確認を怠ったまま紹介したため、ウェブサイト等を通じて一気にデマが拡散した。その後、日本テレビやテレビ朝日、その他のテレビ局の番組でも、やはりエビデンスの確認を行わないまま同様の情報を紹介したため、誤情報がさらに広まった。この経緯については、駒沢女子大学のサイトに詳しく記されている[33]
キウイフルーツにソラレンが含まれることを示す学術的な資料はどこにも示されていない。唯一それらしい記載がされていた(寺尾純二(2016), p. 526)の記述についても、日本ビタミン学会は正式にその誤りを認め、2021年発刊の同雑誌第95巻第5・6号の前付け(iiページ)において、ソラレンを含む果物から「キウイの記載を削除する」との訂正がなされている。
さらに、主要な商業栽培品種であるグリーンキウイ(ヘイワード種)やサンゴールドキウイ(ZESY002種)の果実を用いた実験によって、これらの果肉からも果皮からもソラレン類(ソラレン、5-メトキシソラレン、8-メトキシソラレン、アンゲリシン)が一切検出されないことが報告されている[34]。
キウイフルーツ(キーウィーフルーツ、英語: kiwifruit)の名はニュージーランドで生まれたものである。
ニュージーランドで栽培が開始された当初、この果物は原産地の名をとってチャイニーズグースベリー(Chinese gooseberry)と呼ばれた。販売促進を狙い、現地の輸出商社によってキーウィフルーツ(kiwifruit)の愛称を与えられたのは、1959年のことであったとされる。古い名称は、ニュージーランド産とオーストラリア産のものを区別したいときにわずかに使用されることがある。
北アメリカでは単にkiwiと呼ぶことが多い。ニュージーランドではkiwiはあくまでも鳥の名およびニュージーランド人(キーウィ (人))、または「ニュージーランドの」という形容詞のことであり、kiwifruitをkiwiと呼ぶことはしないため、注意が必要である。
「キウイフルーツ」「キーウィーフルーツ」「キーウィフルーツ」「キウィフルーツ」などと表記され、それらを略した「キウイ」などという表現も使用される。
食物アレルギーの原因となることがあるので、この果物を使用した加工食品では、それを表記することを厚生労働省の通知により「特定原材料に準ずるもの」として推奨されている。その厚生労働省の通知では、「キウイフルーツ」と表記されている。
原産地の中国では、古くから自生のシナサルナシ(支那猿梨)を指す語としては「獼猴桃」(びこうとう。拼音: ミーホウタオ)が一般的であり、李時珍の『本草綱目』に収載されるなど、生薬の名としても使われた。現在でも中国本土では、栽培品のキウイフルーツもこの語で指すのが一般的である。「獼猴」はアカゲザルを意味し、サルが好んで食べる果実という命名である。
一方、香港や台湾で栽培品のキウイフルーツを指す語は、kiwifruit の音訳である「奇異果」(広東語: ケイイークオ、台湾語: キーイーコー。中国語: チーイーグオ 拼音: )が一般的であり、台湾では「幾維果」(拼音: ジーウエイグオ)の名もある。ほかに「陽桃」(「羊桃」「楊桃」とも。拼音: ヤンタオ。スターフルーツまたはヤマモモを指すこともある語)、「毛梨」(拼音: マオリー)、「藤梨」(拼音: トンリー)の語がある。
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