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貿易、販売を中心とした商業を扱う企業 ウィキペディアから
商社(しょうしゃ)とは、輸出入貿易ならびに国内における物資の販売を業務の中心にした、商業を営む業態の会社である。幅広い商品・サービスを取り扱う総合商社と特定の分野に特化した専門商社に区分される。広義の卸売業である。特に総合商社は日本特有の形態とされ、日本国外においても「Sogo shosha」と呼ばれる。「商社」という言葉は、幕末期の幕臣小栗忠順が英語の「company」から訳したともいわれている[1]。
商社の主な機能として、大きく分けて流通・金融・情報の3つが挙げられる。それぞれの具体的な業務内容は下記の通り。大手の総合商社を除けば、これらの業務全てを行っているわけではない。また一部の機能やビジネスについては商社が直接手掛けるのでなく、グループ会社や出資・提携・取引先に委ねるケースも多く、規模や業界などに応じて様々な業務形態がある。
歴史的には、イタリア半島にあった都市国家ヴェネツィア、ジェノヴァ、フィレンツェなどの商人・商社が次第に金融に特化したのが現在の金融業の始まり。
商業銀行と商社は業態的につながりが深い。
イギリスではマーチャント・バンクの伝統があり、これは交易商人たちが次第に金融に特化していったものである。日本の総合商社はマーチャントバンクに大変類似しているとも言われる[2]。
以前は、海外支店網とテレックスによる情報収集・伝達能力が商社の生命線といわれていた時代もあった。現在ではインターネットの進歩により、海外の情報自体は商社でなくても容易に入手できるようになってきている。このため、一般には公表されない情報の素早い入手や、情報を活用する処理能力が重視されるようになってきている。海外各国の有力政治家や実業家とのコネクションは各商社にとって重要な財産であり、また日本国にとっては「民間外交官」の役割も果たしている。情報通信技術については、メーカーや卸先との電子データ交換による受発注自動化やPOSシステム開発などを手がけるため、専門のIT子会社を持つ企業も多い。
コンビニエンスストアと総合商社は密接な提携関係を築いており、ローソンやファミリーマートは総合商社の系列企業となった。
会社名 | 売上高 (百万円) | 当期純利益 (百万円) | 純資産額 (百万円) | 総資産額 (百万円) | 平均年収 (万円) |
---|---|---|---|---|---|
三菱商事 | 19,567,601 | 1,024,828 | 5,227,359 | 23,459,572 | 1,630 |
三井物産 | 13,324,942 | 1,080,479 | 3,817,677 | 16,899,502 | 1,392 |
伊藤忠商事 | 14,029,910 | 851,923 | 2,995,951 | 14,489,701 | 1,565 |
住友商事 | 6,910,302 | 426,116 | 2,544,133 | 11,032,583 | 1,436 |
丸紅 | 7,250,515 | 482,548 | 1,515,475 | 8,923,597 | 1,451 |
豊田通商 | 10,188,980 | 340,249 | 1,196,635 | 7,059,994 | 1,100 |
双日 | 2,414,649 | 103,060 | 579,124 | 2,886,873 | 1,090 |
メディパルホールディングス | 3,558,732 | 41,474 | 736,612 | 1,799,127 | 783 |
アルフレッサ ホールディングス | 2,858,500 | 29,558 | 479,859 | 1,447,625 | 725 |
スズケン | 2,386,493 | 29,016 | 416,428 | 1,228,686 | 662 |
阪和興業 | 2,431,980 | 38,417 | 356,765 | 1,166,986 | 807 |
日鉄物産 | 2,134,282 | 33,512 | 342,828 | 1,142,057 | 833 |
三菱食品 | 2,076,381 | 22,582 | 203,869 | 794,250 | 662 |
長瀬産業 | 900,149 | 22,402 | 401,315 | 792,336 | 1,003 |
東邦ホールディングス | 1,476,712 | 20,657 | 249,437 | 773,427 | 607 |
兼松 | 985,993 | 24,586 | 176,000 | 725,347 | 902 |
キヤノンマーケティングジャパン | 545,060 | 21,997 | 345,459 | 506,604 | 830 |
岡谷鋼機 | 875,623 | 15,670 | 209,436 | 494,089 | 854 |
興和 | 422,576 | △1,028 | 112,684 | 491,117 | - |
岩谷産業 | 686,771 | 20,994 | 378,308 | 469,715 | 916 |
あらた | 796,227 | 7,191 | 82,890 | 249,712 | 538 |
「総合商社」は「ラーメンから航空機まで[注釈 2]」といわれるように取扱商品・サービスが極めて多い。この点において、日本独自の業態であると言われる。
ただし、商社冬の時代を経て、旧来のような単純な貿易・販売や商社金融業務のほとんどは現在では子会社・関係会社に移管された。総合商社本社の業務内容としては、国内・海外企業への出資、経営管理、経営層を含めた人材の派遣、ITの蓄積やシステム開発など、事業持株会社やある種の投資会社に近い機能が多くなってきている。これらの機能を活かして、総合商社自ら新規事業を立ち上げることも多い。
現在、国内で一般的・慣習的に「総合商社」と呼ばれるのは下記の7社。(売上高・純利益:2024年3月期連結。千万単位以下は切り捨て/時価総額:2021年5月30日現在。千万単位以下は切り捨て)
そもそも「総合商社」という名称は上記のように「専門商社」との対比で使われる用語で、どこまでの商社を総合商社に含めるかに関しては慣習的な部分が大きい。用語自体は1955年頃から使われるようになったものだが、戦前にも、三井物産が1890年代には「総合商社」としての形態を整えており、三菱商事、鈴木商店、岩井商店、大倉商事などがこれを追いかけた[5]。
戦後、鉄鋼系専門商社と関西系の繊維専門商社が事業領域を拡大する一方、GHQによる財閥解体で解散させられていた三菱商事と三井物産がそれぞれ大合同を果たし、さらに住友商事が新規参入した結果、1960年前後にはいわゆる10大総合商社体制がほぼ成立した[5][注釈 6]。1970年代前半までは三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅(丸紅飯田)、日商岩井(日商)、トーメン、ニチメン、兼松江商(兼松)、安宅産業の10社を「総合商社」「十大商社」と呼ぶことがほぼ一般的であった。その後、1977年の安宅産業の破綻と伊藤忠商事への吸収合併や日商岩井・ニチメンの合併(現・双日)といった企業統合が進んだ。また、この間に、大手専門商社であった豊田通商がトーメンを吸収することによって名実ともに総合商社化した。その反面、兼松はバブル崩壊後の経営が悪化し、業容を絞り込むことでその後再建を果たしたが、その代償として事業規模は大幅に縮小することとなった。
現在、総合商社とは、三井、三菱、住友、伊藤忠、丸紅、豊田通商、双日の「七大商社」を指し、更に三井から丸紅までは「五大商社」となる。この基準は取引の規模に基づく(豊田通商と双日の1件当たりの取引は上位5社よりやや小さい)。なお、商社の業界団体である日本貿易会の会長は「七大商社」の社長が持ち回りで就任し、2022年5月からは丸紅の國分文也が会長をつとめている。
専門商社とは、特定の分野、業種において商社活動、機能を果たす企業を指す。企業の数は非常に多い。海外では資源メジャーや穀物メジャーなど大手から中小まで無数に存在しており、国際的には専門商社の形態が一般的である。
総合商社やその分野の大手メーカーの子会社・関係会社であることが多く、総合商社とは違って旧来通りの物流・金融が現在でも業務の中心となっている。しかし、単純な輸出入・販売だけではなく、商品企画・マーケティングや流通ITなどの機能で付加価値を追求するようになっている。独立系の専門商社などでは総合商社と同様の投資業務に乗り出しているところもある。
取扱商品についてはあくまでも基本となる部分で、会社によっては新規分野への進出を図っているところもある。業務内容としては貿易を中心とするものと国内卸を中心とするもの、その両方を取り扱うものに分類できる。以下に日本国内の主な現存の専門商社を示す。
地域おこしを目的に、名産品の販路開拓や、道の駅運営など観光事業を幅広く手掛ける法人が「地域商社」と呼ばれるようになっている。栃木県で2008年に設立されたファーマーズ・フォレスト社が先駆けとされる[7][8]。政府は地域商社100社以上の設立支援を目標に掲げている[9]。
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