エア・インディア

インドの航空会社 ウィキペディアから

エア・インディア英語: Air India, ヒンディー語: एअर इंडिया)は、インドの航空会社。デリームンバイを本拠地としている航空会社であり、インドのフラッグ・キャリアである。機体に書かれているデーヴァナーガリー文字の社名をそのままカタカナに変換すると、「エーアル・インディヤー」になるが、日本の報道機関では「エア・インディア」の表記が使われている[1]。かつては国営企業として運行していたが、多額の負債を抱え、「タタ・グループ」に買収された。タタ・グループの買収以降は、順調に規模を拡大している[2]

歴史

要約
視点

設立

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エア・インディア本社(ムンバイ)

イギリス植民地下にあった1932年に、実業家で飛行家としても知られるジャハンギール・ラタンジ・ダーダーバーイ・タタによって「タタ航空」として設立された。

当初はイギリス製のデ・ハビランド プス・モスなどを使用し、国内線を運航した。

1946年に現在の社名となり、独立後の1948年にタタ・グループを離れ、インド政府との半官半民体制になった。

拡張

独立後は、ロッキード スーパーコンステレーションなどの新鋭機を導入し国際線へ進出、アジア域内路線を皮切りに、ヨーロッパアメリカ路線の運航も開始した。その後ボーイング707を導入し、ジェット化を進めた。

日本路線

1955年昭和30年)5月7日にムンバイからロッキード スーパーコンステレーション機によって羽田空港に乗り入れを開始した。また、日本に就航している外国航空会社の中では最も早い時期から日本人客室乗務員を採用している(乗務開始は1960年代から)。

2013年11月以降、日本路線は東京/成田 - デリー線、大阪/関西 - 香港 - デリー線の両路線をボーイング787-8型機[3]にて運航中[4][5]。日本人の客室乗務員が乗務している。成田国際空港においては全日本空輸など他のスターアライアンスメンバーの航空会社が第1旅客ターミナル南ウイングを使用している中でエア・インディアのみ唯一第2旅客ターミナルを使用している。

現在

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インディアン航空との合併まで使用された旧塗装
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旧ロゴ

2007年インディアン航空(Indian Airlines:同じく国有会社で国内線及び近距離国際線専門)と対等合併し、インドの国際線、国内線に就航する最大の航空会社となる。新会社名はインド国有航空会社(National Aviation Company of India Limited)となり、「エア・インディア」はブランド名として使用されている。 合併後機体の塗装リニューアルが進められていた中、国内線においてはしばらくAIとIC(旧インディアン航空)の2種類の便名が併用されていたが、現在はAIに統一されている。

2007年12月には、スターアライアンスへの加盟が承認され[6]、加盟準備が進められていたが、2011年7月31日、エアインディアが契約合意した加盟条件を満たさなかったため、加盟が保留となった[7][8]。その後、2013年12月に加盟手続きが再開され[9]、2014年6月24日には、同年7月11日にスターアライアンスに加盟すると発表され[10][11]、7月11日に予定通り加盟した[12]

国営企業としての非効率性は累積債務を生み、2020年段階で80億ドル以上の赤字を抱えている。インド政府は、2020年1月、債務のうち約32億6000万ドルを引き受けることを条件に全株式の売却に向け入札を行った[13]

2022年1月27日、タタ・グループがインド政府から、エア・インディアの株式100%、同子会社の格安航空会社エア・インディア・エクスプレス(AIXL)の株式100%、そして空港のグランドハンドリング事業を行うエア・インディアSATSエアポート・サービシズ(AISATS)の同社保有株式50%を、総額1,800億ルピー(約2,700億円、1ルピー=約1.5円)で買収したことが発表された。これによりエア・インディアは同社を創業したタタ・グループに再び戻ることになった[14]

2022年11月2日、エアアジア・インディアを買収すると発表し[15]、同月29日にタタグループ主導でエア・インディアにビスタラも合併すると発表し、ビスタラ出資しているシンガポール航空はエア・インディア株式を保有するとしている[16]。なお、ビスタラが運航していた羽田発着枠はエア・インディアが引き継ぐ見込み。

2023年8月に新塗装を発表。デーヴァナーガリー文字の表記をやめ、「AIR INDIA」のローマ字表記がスターボード・サイド及びボードサイドに表記される。初号機はエアバスA350型機で、以降の受領機から新塗装となる[17]

2024年11月12日、ビスタラとの合併を完了した[18]

保有機材

要約
視点

エア・インディアが発注したボーイング社製航空機の顧客番号(カスタマーコード)は37で、航空機の形式名は747-437、777-237ER、777-237LRなどとなる。
タタグループによるエアアジア・インディアビスタラとの統合により保有機材転籍の可能性が報じられ[19]、2023年2月にエアバスから250機(A320neo:140機, A321neo:70機, A350-900:6機, A350-1000:34機)[20]、ボーイングから220機ほかオプション70機(737 MAX 8/10:190機, 777-9:10機, 787-9:20機)[21]という800億ドルの大型契約を締結したと発表した[1]

さらに見る 機種, 保有数 ...
エア・インディア 運航機材一覧(2024年11月現在)[22]
機種 保有数 発注数 乗客数 備考
F C W Y
エアバスA319-100 8 - - 8 - 114 122
エアバスA320-200 7 - - 12 - 138 150
- 180 180
エアバスA320neo 101 90[23][24][25] - 8 24 132 164 3クラス164席仕様に改装中[26]
VT-CIOはマハトマ・ガンディー特別塗装機
VT-EXOはスターアライアンス塗装機
12 - 150 162
- 180 180
186 186
エアバスA321-200 13 - - 12 - 170 182
エアバスA321neo 10 195[23][24][25] - 12 24 152 188
- 180 192
- 232 232
エアバスA321LR 4 - - 12 24 152 188
エアバスA350-900 6 19[23][24][25] - 28 24 264 316
エアバスA350-1000 - 25[23][24][25] 未定
ボーイング777-200LR 8 - 8 35 - 195 238 VT-ALGはマハトマ・ガンディー特別塗装機
- 28 48 220 296
ボーイング777-300ER 19 - 8 40 - 280 322 VT-ALJはスターアライアンス塗装機
VT-ALNは"Celebrating India"ステッカー機
4 35 303 342
ボーイング777-9 - 10[27] 未定
ボーイング787-8 27 - - 18 - 238 256 VT-ANPはマハトマ・ガンディー特別塗装機
VT-ANUはスターアライアンス塗装機
241 259
ボーイング787-9 7 20[27] - 30 36 226 292 20機のオプション付き[27]
21 248 299
エア・インディア・エクスプレス
エアバスA320-200 24 - - - - 180 180
エアバスA320neo 5 - - - - 186 186
ボーイング737-800 26 - - - - 186 186
189 189
ボーイング737-8 MAX 35 155[27] - 8 - 154 162 50機のオプション付き[27]
168 176
4 174 178
- 184 184
ボーイング737-10 MAX - 未定
合計 300 514
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過去の保有機材

ギャラリー

就航路線

さらに見る エア・インディア 就航都市 (2016年1月 現在) ...
エア・インディア 就航都市 (2016年1月 現在)
都市 空港 備考
南アジア
インドの旗 インド デリー インディラ・ガンディー国際空港 ハブ空港
ムンバイ チャットラパティー・シヴァージー国際空港
コルカタ ネータージー・スバース・チャンドラ・ボース国際空港
チェンナイ チェンナイ国際空港
ベンガルール(バンガロール) ケンペゴウダ国際空港 焦点都市
アフマダーバード アフマダーバード空港
ハイデラバード ラジーヴ・ガンディー国際空港
他、アンダマン・ニコバル諸島1都市、アーンドラ・プラデーシュ州3都市、アッサム州5都市、ビハール州5都市、チャンディーガル(インド北部の都市)、ラーイプルマディヤ・プラデーシュ州6都市、マハーラーシュトラ州4都市、ウッタル・プラデーシュ州6都市、ジャンムー・カシミール州3都市、ケーララ州3都市、ゴア州タミル・ナードゥ州2都市など合計52都市。
バングラデシュの旗 バングラデシュ ダッカ シャージャラル国際空港
モルディブの旗 モルディブ マレ イブラヒム・ナシル国際空港
ネパールの旗 ネパール カトマンズ トリブバン国際空港
スリランカの旗 スリランカ コロンボ バンダラナイケ国際空港
アフガニスタンの旗 アフガニスタン カーブル カーブル国際空港
東アジア
日本の旗 日本 東京 成田国際空港
大韓民国の旗 韓国 ソウル 仁川国際空港
中華人民共和国の旗 中国 上海 上海浦東国際空港
香港の旗 香港 香港国際空港
東南アジア
マレーシアの旗 マレーシア クアラルンプール クアラルンプール国際空港
インドネシアの旗 インドネシア ジャカルタ スカルノ・ハッタ国際空港
ミャンマーの旗 ミャンマー ヤンゴン ヤンゴン国際空港
シンガポールの旗 シンガポール シンガポール・チャンギ国際空港
タイ王国の旗 タイ バンコク スワンナプーム国際空港
西アジア
バーレーンの旗 バーレーン マナーマ バーレーン国際空港
クウェートの旗 クウェート クウェートシティ クウェート国際空港
オマーンの旗 オマーン マスカット マスカット国際空港
サラーラ サラーラ国際空港
カタールの旗 カタール ドーハ ハマド国際空港
サウジアラビアの旗 サウジアラビア リヤド キング・ハーリド国際空港
ジェッダ キング・アブドゥルアズィーズ国際空港
ダンマン キング・ファハド国際空港
アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦 ドバイ ドバイ国際空港
アブダビ アブダビ国際空港
アル・アイン アルアイン国際空港
シャールジャ シャールジャ国際空港
オセアニア
オーストラリアの旗 オーストラリア シドニー シドニー国際空港
メルボルン メルボルン空港
ヨーロッパ
イギリスの旗 イギリス ロンドン ロンドン・ヒースロー空港
バーミンガム バーミンガム国際空港
フランスの旗 フランス パリ シャルル・ド・ゴール国際空港
ドイツの旗 ドイツ フランクフルト フランクフルト空港
イタリアの旗 イタリア ローマ フィウミチーノ空港
ミラノ ミラノ・マルペンサ空港
北アメリカ
カナダの旗 カナダ トロント トロント・ピアソン国際空港
バンクーバー バンクーバー国際空港
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ニューヨーク ジョン・F・ケネディ国際空港
ニューアーク・リバティー国際空港
ロサンゼルス ロサンゼルス国際空港
シカゴ シカゴ・オヘア国際空港
アフリカ
 ケニア ナイロビ ジョモ・ケニヤッタ国際空港
タンザニアの旗 タンザニア ダルエスサラーム ジュリウス・ニエレレ国際空港
休・廃止路線
日本の旗 日本 大阪 関西国際空港 香港経由 2019年9月17日をもって運休
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特徴

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長年マスコットとして使用されている「マハラジャくん」

客室乗務員サリーを着用、機内食はインドカレーを提供、機内映画インド映画を多く上映するなど、フラッグ・キャリアとしてインド人の利用者向けのサービスを前面に出している[28][29]

機内食のカレーはインディカ米を使いヒンドゥー教徒が食べられる鶏肉と菜食主義者向けが設定されているなど、本格的なものである[29][28]。2017年にはエコノミー席の機内食で肉類を提供しないことを決定した。乗客の中心であるインド人には菜食主義が多いため、肉の廃棄率が高いことを受けての措置という[30]。和食や中華などカレー以外の料理が非ベジタリアン向けに設定されている[28]。大半の乗客がカレーを選択することや、カレーの一部は菜食主義者向けのベジタブルカレーであるため、路線によってはカレーが足りず選べないこともある[28]。またドリンクとしてチャイが提供されているが、路線によっては選べないこともある[28]。インドで食事後に口直しとして出されるフェンネル・シードも付いてくる。

マハラジャくん」と通称されるマスコットキャラクターがおり、ヘッドレストのカバーなどにプリントされている[28]

機内食の提供後は一定時間客室の電源を落とすため、787では電子シェードが操作できないなどの不便な点もある[28]

2018年時点では、機体外部やエコノミー席では客室内の清掃やエンターテインメント設備の補修が行き届いていない機体もある[28]。なおエコノミー席では空いている席の設備を利用できるため、使う際だけ移動することが可能である[28]

エピソード

1966年不二家らとのタイアップで『オバケのQ太郎』の絵を描いてデンマーク、ケニアへ行こうという懸賞企画[31]に参加していたことがあり、高い注目を浴びたことがあった。

コードシェア

2024年5月現在、以下の航空会社とコードシェア提携を行っている[32]。※はスターアライアンス加盟会社

系列会社

事件/事故

参照

関連項目

外部リンク

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