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主に貨物を運搬する自動車 ウィキペディアから
日本では一般にトラック(英: truck)と呼ばれる。英語圏においては、アメリカ英語ではトラック、イギリス英語ではローリー(英: lorry)と呼ばれる。また、イタリア語やフランス語などのロマン諸語圏では、大型のものをカミオン(camion)、小型のものをカミオネット(camionet)と呼び、日本の行政用語で「貨物自動車」と呼ばれているのは、主に貨物(荷物)を運ぶための自動車のことである。車体の大きさや重さ、積載可能な重量、装備の状態等により様々に分類され、汎用的な輸送が可能なもの以外に、積荷の性状に特化したものも数多く見られる[3]。
基本的に車両の後部側に貨物、あるいはクレーンといった装備を搭載し、前部に運転台を擁するキャビン(キャブ)とエンジン等の駆動系を有するが、配置には大別してボンネット型とキャブオーバー型の他、両者の中間的なセミキャブオーバー、少数派だがキャブフォワードの4種類ある[注 1]。
トラックでは、車体各部の名称は一部、独特なものが用いられる。 エンジンやタイヤとそれらを支える(一般的な)シャシーなどの走行を行い支えるための装置類全体が「シャシー」や「車台」と呼ばれる。 運転席など人間が乗る部分は「キャブ」または「キャビン」と呼ばれ、シャシーの上に乗りキャブ以外の荷台や荷室といった荷役用の部分が「ボディ」と呼ばれる[3]。
トラックのほぼ標準的なキャブやシャシーに対して、使用目的に合わせて必要な装備類を取り付けることは「架装」、装備類は「架装物」と呼ばれ、多様な架装を備えたトラックが作られている。多くの場合、架装物はボディだけを指すが、ボディ以外にもエンジン周辺や(一般的な)シャシーなどに行われる大規模な改造まで含む架装物もある。 ボディは「架装物」であり、標準的に作られる荷台など以外の特殊な架装物を備えた自動車は「特装車」と呼ばれる。特装車の多くが貨物運搬用以外の特殊用途に用いられるため「貨物自動車」ではないが、架装物以外はキャブやシャシー等を共用しているものが多く[3]、(狭義の)特装車であり貨物自動車でもある車輌の存在など、明確な切り分けは難しい。
ほとんどの小型トラックや多くの普通トラックでは、トラックメーカーが出荷時に標準的な荷台を取り付けて販売しているが、大型や中型のものや一部の普通サイズなどの輸送用トラックは、トラックメーカーではシャシーとキャブだけが付いた「キャブ付き完成シャシー」や「汎用シャシー」と呼ばれる自動車を製造・出荷している。
いわゆる「つくりボディ」は、ユーザーがトラックメーカーに対して「キャブ付き完成シャシー」の注文を入れた上で、ボディメーカーに対してボディの製造と取り付けを発注するという、いわゆるセパレート契約で発注するという物である[4]。ボディメーカーの中には、架装物としての部品だけを製造するところや、逆に製造は行わず、組立てや取り付けだけを請け負うところなど、多様な形態の会社が存在する[3]。また、大量のトラックを購入する大きな運送業者などでは、トラックメーカーから自社でキャブ付き完成シャシーを購入し、ボディメーカーにボディの製造と取り付けを発注して、大量の完成車を入手する例もある。
トヨタ自動車、日産自動車、いすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスの6社は、完成車シリーズとして直接販売している車型もある(但し、ボディメーカーや特装メーカーは指定されている)[4]。完成車シリーズは「つくりボディ」とは違い、トラックメーカーとディーラーが窓口となってユーザーからシャシーとボディが一体となったトラックの注文を受けるシステムで、注文から納車までトラックメーカーとディーラーが一元的に管理する[4]。トラックメーカーとボディメーカーにとっては、納期短縮や生産の効率化などメリットが大きい[4]。特にウイング車は完成車シリーズが多数を占めるようになっており、各トラックメーカーの指定ボディメーカーから外れたメーカーはウイングボディの製造から撤退したボディメーカーもある[4]。三菱ふそうトラック・バスの子会社であるパブコは、三菱ふそうトラック・バス、いすゞ自動車、日野自動車の指定ボディメーカーとなっている他、いすゞ自動車も出資している日本フルハーフは、いすゞ自動車、UDトラックス、日野自動車、トヨタ自動車、日産自動車の指定ボディメーカーとなっている[4]。このように、完成車シリーズの指定ボディメーカーは、トラックメーカーの系列ボディメーカーに関係なく指定ボディメーカーが定められている[4]。
貨物自動車を用いる競技として、ダカール・ラリーに代表されるラリーレイド(クロスカントリーラリー)がよく知られる。もともとは積載性の高さを買われて二輪や四輪のサポート用車両として用いられていたが、やがて貨物自動車同士で競争をするという発想が生まれ、1980年頃に一部門として成立。FIA(国際自動車連盟)のクロスカントリートラック規定も1989年に制定された。圧倒的なトルクを発生するディーゼルエンジンと大径タイヤにより高い走破性を備えているのに加え、耐久性が高く丈夫なことから、貨物自動車はラリーレイドに向いているとされる[5]。六輪、もしくは八輪での参戦事例もあるが、大多数は高速巡航性能に優れた四輪トラックを採用する。荷室部分には工具、燃料タンク、大量のスペア部品を積載する。エンジンスペックは強豪カマズ・マスターの2019年ダカール仕様を例に取ると、排気量13Lの直列6気筒ディーゼルエンジン搭載で最大1100馬力/4500Nm[6]。
また海外ではサーキットレースとして、欧州トラックレーシング選手権(ETRC)や南米のフォーミュラ・トラックが存在する。こちらはいわゆる「平ボディ」の状態である。ETCRの一戦には、1981年から毎年9月にサルト・サーキットで開催されているル・マン24時間レース(24時間カミオン)も含まれる。
ピックアップトラックや乗用車のカテゴリにはワンオフの鋼管フレームを用いているものが多いが、上記カテゴリはいずれも市販トラックに改造を施す。
トラックは一般に以下の種別で分類される。
日本における分類を以下に示す。
用途による区分表示および注意喚起が必要とされる車両の義務表示は以下のとおりである。
表示 | 用途 | ナンバー |
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運行 | 定期的に定まったルートを走行する。一般に「路線」と呼ばれるもので、発地を管轄する陸運支局に予め運行経路の届け出が必要となる。届け出の作成には「運行管理者」の資格が必要となる。 | 緑地・白字 |
一般 | 集配車や貸切(チャーター)などの汎用的(ルーチン運用でない)な仕業に従事する車両に表記される。「一般」の法的表示義務はない。 タンクローリーは限定用途だが、一般に該当する。 | 緑地・白字 |
航空 | 主として航空機を使用して輸送されるいわゆる「航空便」の集配などに使用される車両。一般的な集配と兼用するため「航空・一般」と併記している車両もある。 | 緑地・白字 |
軽貨物 | 赤帽など軽貨物自動車を利用した営業車両に表記される。 | 黒地・黄字 |
通運 | コンテナなど、鉄道を介して運ばれる貨物を発荷主→発駅、着駅→着荷主と輸送する車両である。 | 緑地・白字 |
限定 | 霊柩車、コンクリートミキサー車、家畜運搬車、競走馬輸送車など用途が限定された輸送に用いられる車両区分。 | 緑地・白字 |
自家用 | 自社配送部門などで、自社便の仕業に着く貨物車両に表示される。運送会社においては、営業担当や総務などが使用する車両を営業車両と区別するために表記する場合がある。 | 白地・緑字 |
黄地・黒字 |
表示 | 根拠法 | 目的 | 運転者か同乗者に必要な資格 | カラー |
---|---|---|---|---|
危 | 消防法 | 石油類を運ぶタンクローリーや灯油宅配車など、一定量以上の危険物を輸送する車両に義務づけられた表示。 | 危険物取扱者 | 黒地・黄字再帰反射素材 |
毒 | 毒物及び劇物取締法 | 薬品など毒物や劇物を輸送する薬品輸送車などに義務づけられた表示。 | 毒物劇物取扱責任者 | 黒地・白字 |
高圧ガス | 高圧ガス保安法 | 設備工事関係車両など、高圧ガス製品を積載した車両に義務づけられる表示(自車燃料として積載する場合を除く)。 | 高圧ガス移動監視者、化学責任者、機械責任者※いずれか | 黒地・オレンジ字 |
火 | 火薬類運送規則 | 花火や弾薬などの火薬類を積載した車両に義務づけられる表示。 | 危険物取扱者 | 赤地・白字・○囲い |
※ダンプカーについては、独自の種別表記を用いる。ダンプカーの項目参照。
運転免許による区分(参考: 道路交通法施行規則、第二条) | ||||||||
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大型車(大型自動車) | 運転には大型免許(または大型二種免許)が必要。車両総重量が11トン以上、最大積載量が6.5トン以上、又は乗車定員が30人以上の自動車であって、特殊自動車・自動二輪車のいずれでもないもの。速度超過による事故等の防止のため、最高速度90km/hの速度抑制装置(リミッタ)の装備が義務付けられている。(輸入車には標準では装備されていない。)また、助手席側ドア下部のガラス窓(一般的に安全窓と呼ばれる部分)は、法規制ではなく、国内4社の自主基準である。かつては、屋根に緑色の速度表示灯(20km/h以下・40km/h・60km/hで点灯)の装備が義務付けられていた。 | |||||||
中型車(中型自動車) | 運転には大型免許または中型免許(または、大型二種または中型二種免許)のいずれかが必要。車両総重量が7.5トン以上、最大積載量が4.5トン以上、又は乗車定員が11人以上の自動車であって、特殊自動車・自動二輪車・大型自動車のいずれでもないもの。 | |||||||
準中型車(準中型自動車) | 運転には大型免許(または大型二種免許)、中型免許[7](または中型二種免許[7])、準中型免許のいずれかが必要。車両総重量が3.5トン以上、最大積載量が2トン以上の自動車であって、特殊自動車・自動二輪車・大型自動車・中型自動車のいずれでもないもの。 | |||||||
普通車(普通自動車) | 運転には大型免許(または大型二種免許)、中型免許[7](または中型二種免許[7][8])、準中型免許[8]、普通免許(または普通二種免許)のいずれかが必要。特殊自動車・自動二輪車・大型自動車・中型自動車・準中型自動車のいずれにも該当しない自動車。 | |||||||
高速道路通行料金での区分(カッコ内は高速道路会社の区分番号) | ||||||||
特大車 | 普通貨物自動車のうち4車軸以上のものなど (3) | |||||||
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大型車 | 普通貨物自動車(車両総重量8トン以上又は最大積載量5トン以上で3車軸以下のものなど、1ナンバーで、ナンバープレート大板=大型番号標(縦220mm×横440mm))10トン車など (2) | |||||||
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中型車 | 普通貨物自動車(車両総重量8トン未満かつ最大積載量5トン未満で3車軸以下のものなど、1ナンバーで、ナンバープレート中板=中型番号標(縦165mm×横330mm))3 - 4トン車など (4) | |||||||
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普通車 | 小型自動車4ナンバー、1 - 2トン車など (1) | |||||||
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軽自動車等 | 軽トラック、ナンバーは40 - 42・48* (4) | |||||||
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車両登録上の区分 | ||||||||
普通自動車(普通トラック) | 小型でないもの。1ナンバー | |||||||
小型自動車(小型トラック) | 全長4.7m、全幅1.7m、全高2.0mまでの自動車。4ナンバー | |||||||
※冷凍車やタンクローリーなどの特殊構造の場合、8ナンバーになるものもある。 |
▲: 特種用途自動車(いわゆる8ナンバー)に当たるもの。
表示 | 区分 | ナンバー |
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建 | 建設業 | 白地・緑字 |
営 | 自動車運送業 | 緑地・白字 |
販 | 砂利販売業 | 白地・緑字 |
砂 | 砂利採取業 | 白地・緑字 |
砕 | 採石業 | 白地・緑字 |
他 | その他 ※建機レンタル、自治体など | 白地・緑字 |
大規模な戦闘部隊が陸上の戦域で活動を継続するためには大量の物資を必要とするため、陸軍では戦闘車両よりも貨物自動車が多い。
明治32年、陸軍輜重兵はフランスからガソリンエンジンによって駆動する自動車を1台購入している。明治44年5月、大阪工廠では輸送用自動車2種2両を製作し、1種は後方輸送用、もう1種は前線における糧食・弾薬輸送用であった。こののち、大正3年8月の青島戦役において自動貨車4両が参加、陸海軍重砲部隊に弾薬を輸送した。指揮は中尉クラスの輜重兵士官、操縦は輜重兵下士官による。当時の日本陸軍において自動車の操縦ができるものはごくわずかであり、運転手は特技兵であった。なお明治42年末の時点で警視庁に登録された民間の自動車台数は62台であった[10]。
自衛隊では陸海空が陸上における貨物の運搬用に多数の貨物自動車を運用しており、隊員が免許を取得するため自衛隊自動車訓練所が設置されている。
74式特大型トラック、73式大型トラック、73式中型トラック、73式小型トラックなど専用車両が大半であるが、業務トラックなど民生品と大差ない車両も使っている。近年ではコストカットのため民間の運送会社への委託も行われている。
かつては各自動車メーカーが製造していたが、OEM供給への変更や生産終了などに伴い、以下のメーカーへ集約されている。日産自動車や本田技研工業の様に、トラックからの生産から撤退してライトバンのみの製造としたメーカーや、いすゞ自動車の様にライトバンからの生産から撤退してトラックのみの生産としたメーカーもある。
下記メーカーの一覧は、シャシー・キャブの製造を行っているメーカーのみの一覧である。ボディ・特装物の架装のみを行うメーカーについてはCategory:車体架装メーカーを参照。
EU指令では、車両総重量3.5t以上7.5t未満の自動車を中型車とし、車両総重量7.5t以上の自動車を大型車としている[11]。EU指令では車両総重量3.5t以上7.5t未満の中型貨物自動車を運転するにはC1免許、7.5t以上の大型貨物自動車を運転するにはC免許が必要である[11]。
中型貨物自動車を対象とするC1免許はB免許取得後に取得手続を開始できる[11]。貨物自動車は車両総重量が大きくなるほどより高度の運転技能が必要であり、C免許と別にC1免許を設けて18歳で取得できることとしている理由は、若年での大型車の運転の危険性を踏まえつつ、若年労働者の確保などの社会的必要性に配慮するためである[11]。
EUの基準では貨物運送事業等を主たる業務として運送を行うためには一定のカリキュラムによる講習および試験を受けることが義務付けられており、免許も5年ごとの更新制で健康診断の受診や35時間以上の講習が義務付けられている[11]。
アメリカ合衆国では州ごとに運転免許制度(特に商用自動車)は異なる[11]。多くは車両総重量26,001lb(11.794t)以上が大型に区分されるが、大型を中心とする商用自動車については年齢等の基準による法規制が設けられている[11]。
アメリカ合衆国では、以下のように車両総重量により車格区分がある[12][注 2]。
中華人民共和国では、以下のように車両総重量により車格区分がある[13]。
国 | 3軸車の最大サイズ | 牽引自動車での最大サイズ | 連結トラックの最大サイズ |
---|---|---|---|
オーストラリア[14][15] | 23 t (50,700 lb) | 12 m (39 ft) | 172 t (379,000 lb) 53.5 m (176 ft) |
中国[16] | 25 t (55,100 lb) 12 m (39 ft) | 49 t (108,000 lb) 16.5 m (54 ft) | 55 t (121,000 lb) 18.75 m (62 ft) |
EU[17] | 26 t (57,300 lb) 12 m (39 ft) | 16.5 m (54 ft) | 44 t (97,000 lb) 18.75 m (62 ft) |
アイルランド[18] | 26 t (57,300 lb) 12 m (39 ft) | 30 t (66,100 lb) 16.5 m (54 ft 2 in) | 44 t (97,000 lb) 22 m (72 ft) |
スウェーデン[19] | 26 t (57,300 lb) 24 m (79 ft) | 60 t (132,300 lb) 24 m (78 ft 9 in) | 60 t (132,300 lb) 25.25 m (82.8 ft) |
イギリス[20][21] | 26 t (57,300 lb) 12 m (39 ft) | 44 t (97,000 lb) 16 m (52 ft) | 44 t (97,000 lb) 18.75 m (62 ft) |
アメリカ[22][23] (州間) | 54,000 lb (24.5 t) 45 ft (13.7 m) | 80,000 lb (36.3 t) none | 80,000 lb (36.3 t) none |
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