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医療施設や事故現場との間で患者を移動させるための航空輸送の利用 ウィキペディアから
航空救急(こうくうきゅうきゅう、英語: Air rescue, Aeromedical service)とは、航空機を用いた救急活動である。
航空救急では、医療用に特化したヘリコプターや固定翼機等の航空救急用航空機(英:Air ambulance)を使用し、救急医療が必要な状況や長距離輸送を行わなければならない状況、また救急車や救急隊員が地上から近づくことが困難な状況にある傷病者を、地上で待機している救急車もしくは病院まで搬送することを主な目的としている。場合によっては、行方不明者の捜索等を行うこともある。
救急車と同じく、航空救急に用いられる航空機にも人工呼吸器や心電図モニタ、心肺蘇生装置、ストレッチャー等の救急医療を行うための設備や薬品を搭載されている。これらの設備により、通常の航空機による搬送では行うことができない治療を行うことが可能となった。
軍事医療分野においては、現場から医療機関に搬送する際に応急処置程度しか行わないものを負傷者後送 (CASEVAC) 、医療行為まで行うものを医療後送 (MEDEVAC) 、医療機関からより高次の医療機関に搬送するものを航空医療後送 (AE) として区別している。また民間でも、消防防災ヘリコプターとドクターヘリが同様に分担して運用されている[1]。
航空救急には、各機関の多種多様な航空機が利用されている。離島の急患搬送には、飛行艇も利用している。
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日本の場合、厚生労働省と該当する県からの補助を得て、医療機関が事業主体となり救命救急センターを拠点病院として運営される事業である。一般市民の方から出動を要請することはできず、要請できるのは消防機関、警察、役場等の公的機関、および医療機関などである[7]。重篤な患者が発生した場所に医師と看護師をいち早く派遣して初期治療を開始し、救急搬送時間の短縮による救命率の向上や後遺症の軽減、へき地における救急医療体制の強化、災害時の医療救護活動の充実を目的としている[8]。ヘリの運航サービスは民間のヘリ運航会社に委託され、受託運航会社が所有する機材で運航される(機材整備の都合で利用できない場合は代替機が使われる)。日本においては、経済的条件や地形的・気象的条件、場外離着陸場の確保の制約などから1990年代に至るまで、離島・僻地・船舶からの急患移送は行われていたものの、ドクターヘリなど機内や事故現場での治療はあまり行われてこなかった。しかし、1990年代から実験が行われ、その有効性が確かめられてからは、各地域での導入が進められている。日本に先んじて導入されたドイツでは、国内に73機配備されており、国内何処にでも要請から15分以内に到着できる。ドクターヘリ導入後、交通事故の死亡者が1/3に激減したと言われている。
総務省消防庁は、1998年(平成10年)に「救急隊の編成及び装備の基準」を改正し、回転翼航空機、すなわちヘリコプターによる救急隊の編成について規定を置いた。1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災において消防・防災用途のヘリコプターが不足し、災害救助・救急活動に非常に支障を来したことから、以降、各政令指定都市の消防ヘリ・都道府県の防災ヘリ配置が進められていたが、1998年(平成10年)に至ってある程度の消防防災ヘリが配備されたことに伴って、法令整備されたものである。法令では、救急搬送の権限・責務を有するのは市町村消防機関のみであるため、都道府県消防・防災ヘリによって救急搬送するために、各都道府県は管内市町村とヘリ運航協定を締結している。当初は協定のみに基づいて救急搬送が行われていたが、2003年(平成15年)の消防組織法改正において、都道府県も管内市町村長の要請に応じ、航空機を用いて当該市町村の消防を支援できるとする規定(消防組織法第18条の3)が設けられ、消防・防災ヘリによる救急搬送に明確な法的根拠が与えられた。現在は山岳救助活動や水難救助活動、消火活動等と共に消防防災ヘリの重要な任務となっている。消防庁の指導により、救急救命士の搭乗が望ましいとされている。
特定の医療機関と提携して市町村から救急搬送要請があった時、消防防災ヘリに医師を同乗させ、「ドクターヘリ」的運航[注釈 1]を行う都道府県・政令指定都市[注釈 2]も増えている。
警察は日常的に救急を扱う立場にはないが、山中における遭難者捜索活動に、警察航空隊のヘリが投入されることが多い。 救助された遭難者を飛行場やヘリポートに搬送して、救急車に引き渡すことが日常的に行われており、ヘリコプター救急が業務の一部として行われている実態がある。また、警察ヘリは全都道府県に1機は必ず配備されているため、消防・防災ヘリが何らかの理由で使用できないときに、消防からの要請により、警察ヘリを使って急患搬送することもある。このような傾向は、特に消防・防災ヘリの配備数が少ない県において顕著である。現在は、ほぼ全県に消防・防災ヘリが配備されているが、以前は、警察ヘリしかなかったため、急患搬送を一手に引き受けていた県が多かった。一部の県では、依然として警察ヘリによる急患搬送の出動数が多く、警邏と並ぶ日常業務のひとつとなっている。当然、地元から寄せられる期待も高い。しかしながら、警察ヘリは主に救命を目的としたものではないため、脊髄損傷が疑われる患者の搬送や、連絡体制についてなお改善の余地がある。
海上保安庁の活動範囲(急患搬送)は原則として海上に限られている。しかし、多数の航空機・船舶を所有し24時間体制で救助活動を行えることから、遠距離または離島について海上保安庁法第2条及び第5条第16号に基づき、都道府県知事からの協力要請を受けてヘリ・固定翼機・巡視船による急患搬送が行われている。急患搬送に当たっては、航空基地や公共ヘリポートで救急車に引き継がれる。 八重山諸島では、沖縄県との協定により、海上保安庁石垣航空基地所属機に急患搬送が任されており、海上保安庁が八重山諸島の救急体制の一翼を担っている。 北海道の釧路航空基地や函館航空基地では海上保安庁のヘリのみが拠点を構えているため、奥尻島の急患搬送(函館)以外にも、要請に基づいて釧路市・函館市内の拠点病院からより医療体制が整っている札幌市内の病院まで、海上保安庁機で重症患者を病院間搬送する場合がある(陸上輸送するには遠すぎるため。丘珠空港で救急車に引き継ぎ)。新潟県中越地震などの大災害でも、陸上の急患搬送を行うことがある。一部の航空基地では、救急救命士の資格を持つ隊員が任務に当たっている。
また、航行船舶乗組員の救急医療として、1985年(昭和60年)から社団法人日本水難救済会による「洋上救急制度」が開始された。 「洋上救急」とは急患発生時に、無線または衛星電話により衛生管理者が医師の指示を仰ぐ「医療指示」及び、海上保安庁が指定した医師を速やかに患者の下へ派遣し、巡視船内の医務室やヘリ機内で医師による治療をしながら陸上の病院まで搬送する制度である。このシステムがあるのは日本だけである。 遠方海域で発生した急患を本土まで速やかに搬送するため、現場から本土までの間にヘリコプター搭載型巡視船またはヘリ甲板付き巡視船をヘリコプターの航続距離に合わせ配置し給油を繰り返しながら搬送する「飛び石搬送」を行う場合もある。
徳洲会は軽飛行機「徳洲号」を1987年(昭和62年)から運用し、那覇空港を拠点に南西諸島の離島間に医療を提供していた。8代目は「徳州ジェット」としてビジネスジェットであるHondaJetを導入し、2022年(令和4年)5月から試験運用を始め、2024年(令和6年)2月1日から八尾空港を拠点に本格運用を始めた。定期運航や島伝いの移動に制限されていた従来の定期旅客便や徳洲号と比べて、医療従事者の離島への移動速度が大幅に短縮された[5][6]。
航空自衛隊、海上自衛隊、陸上自衛隊のヘリや固定翼機による救急は、手続き上面倒であるため、陸上では決して日常的なものではないが、防災ヘリに比べて能力が優れている軍用機であるため、気象条件が厳しく、ヘリポートに夜間照明がない等、ヘリコプター救急体制に不安がある離島については、日常的に各自衛隊による急患搬送が行われている。
特に、防災ヘリがない沖縄県(沖縄本島周辺)では、県から自衛隊に対し、各自衛隊ヘリ・固定翼機による救急搬送が全面的に任されており、沖縄県の救急体制にとって不可欠の存在になっている。小笠原諸島では、硫黄島航空基地を経由した、海自救難飛行隊UH-60Jヘリと哨戒機とのリレー搬送や、厚木航空基地に派遣されている岩国第71航空隊(救難待機)のUS-2飛行艇による急患搬送が行われている。
隠岐諸島では、航空自衛隊第3輸送航空隊のC-1輸送機を使用した、救急車ごと搬送するという変わった急患搬送が行われることがある。急患搬送に当たっては、自衛隊基地や公共ヘリポートで救急車に引き継がれる。 海自救難飛行隊や空自航空救難団の救難隊といった救難専門部隊では、救急救命士、准看護師(MEDIC)資格を持った救難員(空自)、機上救護員(海自)が搭乗する。付き添いの医師も便乗することがある。
航空自衛隊は1958年(昭和33年)より、救難隊が日本で最初のエアーレスキュー(en:Air Rescue Service)として航空機による救難・救助活動や急患搬送などで50年以上の実績がある。 2006年(平成18年)10月1日、航空自衛隊の医官が指揮するC-1輸送機に「機動衛生ユニット」を搭載して機上医療を行うことを研究する航空機動衛生隊が設立された。初めての実戦投入は東日本大震災で、C130H輸送機に搭載された「機動衛生ユニット」を利用して、被災者の長距離転院に利用された[11]。航空機動衛生隊は、常時容態観察が必要な重篤患者の病院間輸送でも活用されている[12]。
日本においては、各地の地域事情に合わせた航空救急活動が各都道府県ごとに展開されている。
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佐賀県・長崎県・熊本県・宮崎県・大分県・鹿児島県は、2019年(令和元年)に防災消防ヘリコプター相互応援協定を締結し、消防組織法第44条の規定による県知事の要請を経ずに、相互に防災消防ヘリコプターの利用が可能になった[22]。
オーストラリアは国土が広大であり1928年にはドクターヘリが導入されていた[37]。
民間非営利団体RFDSは医師が添乗する24時間体制の無料ドクターヘリを運用している[37]。22か所の拠点を有する[37]。費用は公費、寄付、基金などから賄われている[37]。
ニューサウスウェールズ州は民間委託の有料ドクターヘリを運用している[37]。9か所の拠点を有する[37]。
アメリカ合衆国では1972年にドクターヘリが導入された[37]。
搬送主体は、州、警察、消防、病院、民間事業者、非営利団体など多様で、公的機関であれば公費、民間機関であれば民間保険等から財源をあてている[37]。
アメリカ合衆国では夜間飛行が全飛行時間中の1/3を占めている。そのため飛行条件が一般的なヘリコプターの飛行条件よりも悪くなりがちであり、事故も多くなる傾向がある。 「1998年から2005年までの8年間に89件の事故」があり、「うち31件が死亡事故で、死者は75人」発生した[38]
搬送主体は公的機関またはドイツ自動車連盟などの民間非営利団体である[37]。拠点は64か所[37]。ドクターヘリには医師が添乗するが主に昼間の運用である[37]。利用料は無料で搬送主体が加入している医療保険から財源をあてている[37]。
1987年、コーンウォール救急航空機(英語: Cornwall Air Ambulance Trust)は、イギリスで運用された最初のヘリコプター救急医療サービス(HEMS:helicopter emergency medical service)である。コーンウォールとシリー諸島で医療搬送を提供している。
ドクターヘリは救急医療庁(SAMU)が運用している[37]。拠点は36か所[37]。ドクターヘリには医師が添乗するが昼間のみの運用である[37]。利用料は無料で固定費用は国費、運航費用は自治体・病院・寄付等で賄っている[37]。
スイスには、スイス・エア=レスキューなど各種民間非営利団体がありドクターヘリを運用している[37]。ドクターヘリには医師が添乗しており24時間運用である[37]。ドクターヘリの利用は有料で利用者に利用料が請求される(医療保険加入者であれば医療保険から支払い)[37]。費用はほかにスイス航空救助隊の会費及び寄付等で賄っている[37]。
アグスタウェストランドではREGAの要望を受け、A109KをベースにしたA109K2やA109SをベースにしたA109SP ダビンチを開発した。A109K2は山岳地帯における救急ヘリとしてREGA以外の国にも販売されている。
ヘリコプター19機及び固定翼機3機(ボンバルディア チャレンジャー 600など)を用いて医師が同乗した航空救急活動及び航空機による救助活動、さらには国外で負傷したスイス人を国内に医療搬送する業務(インターナショナル・レパトリエーション)を行なっている。
東日本大震災ではREGAのチャレンジャー 600が日本に派遣されている。
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