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裁判で確定した判決について、一定の要件を満たす重大な理由がある場合に、再審理を行うこと ウィキペディアから
再審(さいしん)とは、裁判で確定した判決(確定判決)について、一定の要件を満たす重大な理由がある場合に、再審理を行なうこと。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
日本において、民事訴訟の場合には判決に不服がある側が再審の訴えや不服申立ができるが(民訴法338・342-2・349条項)、刑事訴訟の場合には有罪判決を受けた者の利益のためにしか行うことができない。また、日本の裁判所においては再審請求が認められる事件は年平均わずか2 - 3件程度と極めて稀であり、日本の再審制度は俗に「開かずの扉」と言われている[1][2]。
再審の請求ができる理由は、刑事訴訟法および民事訴訟法にそれぞれ定められている。
刑事訴訟法第435条に定められている。有罪判決を受けた者の利益になる場合だけである[注 1]。具体的には以下の通り。
通常の刑事裁判では被告人が死亡すれば刑事訴訟法第339条により公訴棄却となるが、再審の場合は誤判で罪を着せられた人の名誉回復を図る意味から例外として、刑事訴訟法第451条第2項で死者や回復の見込みがない心神喪失者については公訴棄却の例外規定として死者や心神喪失者の裁判が認められている[3]。刑事訴訟法では死後再審に関する具体的な公判の進め方の規定がなく、実際の審理に入った場合に本来被告人が行うべき「検察側証人への反対尋問」や「被告人質問に対する答え」などをどうするのかという問題があるが、「その都度、被告(弁護人)、検察、裁判所の三者で話し合って審理を進める」「再審においては裁判所に強い裁量権が与えられている」「刑事訴訟法第451条第3項の規定から弁護人が出頭すれば開廷でき、罪状認否等は弁護人が意見を述べる形ででき、被告人がいなくても審理上の不都合はない」とされている[3]。
刑事訴訟法第448条では再審開始をした場合は刑の執行を停止することができると規定されている。また死刑判決に対する再審開始時には刑の執行停止も同時に下される(ただし、原審破棄判決がされないまま再審が終われば、刑の執行停止は解除される。また、2014年3月、静岡地裁は袴田事件の再審開始決定の際に、死刑のみならず、裁量により死刑囚の拘置の停止をすることもできるとの判断を示した)。
刑事訴訟法第442条では、再審請求が刑の執行を停止する効果を有しないことが明示されているが、死刑判決に対する再審請求中は、刑執行を避ける傾向がある。実際に、1999年12月17日の執行から2017年7月13日の執行まで、再審請求中の死刑執行がなされなかった時期がある(後述)。また、再審請求の際に延命の意図を明確に述べる弁護士もいる[4]。そのため死刑囚の中には、再審請求に必要な3つの書類を1通だけしか出さず、裁判所から書類不足の通知が来ても無視し続け、このまま出さないと請求を取り消す旨の通知が来て初めて2通目の書類を出し、これを繰り返すことによって1年以上の時間稼ぎをしたり[5]、裁判官の忌避を申し立ててそれが却下されると国会に弾劾訴追の申立てをしたりするなどし、その間に次の再審請求も準備し、請求が却下されても途切れないようにしている者もいる[5]。さらにこのような手口は、死刑囚同士の寄稿誌として1冊1000円で売買され、死刑囚間で共有されているという[5]。
法務省によれば、2019年8月2日時点で確定死刑囚111名中、82名が再審請求中であるとされる[6]。
また法律上は付審判制度(準起訴手続)および検察審査会強制起訴制度による刑事裁判の有罪確定判決も再審の対象からは排除されていない。
刑事訴訟法の再審規定の条文は19あり70年以上改正されていない。刑事訴訟法の再審規定には全面的な証拠開示の定めがなく、裁判所の勧告があっても検察側が応じる義務がない。下級裁判所が再審を認めても検察側が抗告すれば、再審の裁判は開かれない[7]。
民事訴訟法第338条に定められている。概要は以下の通り。
少年保護手続には刑事・民事手続で定められているような「再審」の規定は存在しない[8]。これは、少年審判は少年の健全育成を目的とする保護手続きであり、その処分も少年の利益になるものであって取消す必要性がない、との建前による[8]。しかし、無実の罪で保護処分を受ける不利益性はやはり否定しきれないため、少年法第27条の2第1項の弾力的解釈によって事実誤認に対する救済が図られている[8]。
しかし、この法解釈に基づく救済では、保護処分不取消決定については不服申立てが許されない、とするのが通説であり、すなわち少年審判における「再審」は実質的に一審制であった[9]。その後、1981年の柏の少女殺し事件再抗告審決定によって不取消決定に対する抗告も許可されるようになり、少年審判の「再審」についても実質的に三審制が保障されるようになった[9]。さらに、2000年の少年法改正によって「保護処分の継続中」という処分取消しの要件が撤廃されたが、不処分決定に対する不服申立てや、刑事手続にあるような死後再審の制度は認められていない[8]。
全て刑事事件に関するものである。
日本においては、1958年(昭和33年)4月12日に福岡刑務所で死刑を執行された門司幼児3人殺害事件の死刑囚K[注 2]について、福岡高等裁判所第4刑事部(柳田躬則裁判長)[注 3]が同月22日付で「請求人が死刑を執行されたため、(再審の)請求権[注 4]は消滅した」として、再審請求を棄却する決定を出した[注 5]事例がある[17](以下、原文を記載する)。
主文
本件の再審請求を棄却する。
理由
記録に編綴されている当庁、三浦書記官補作成の電話聴取書によれば、再審請求人は昭和三十三年四月十二日、すでに死刑の執行がなされたことが明らかである。
従って、本件請求権は消滅したものと認め主文の通り決定する。
昭和三十三年四月二十二日
福岡高等裁判所刑事第四部
裁判長 裁判官 柳田躬則
裁判官 青木亮忠
裁判官 尾崎力男 — 『実録・福岡の犯罪〈下〉』 (1993) [17]
その後は、再審請求中の死刑囚に対する死刑執行を回避する傾向が強かったが、2017年(平成29年)に行われた2度の死刑執行では、いずれも複数回目の再審請求中だった死刑囚計3人(うち1人は少年死刑囚)が死刑を執行された[19]。
その後、2017年12月以来の死刑執行となった麻原彰晃らオウム真理教事件の死刑囚7人に対する死刑執行(2018年7月6日)においては、死刑執行時点で土谷正実を除く6人全員が再審請求をしており、うち2人(井上嘉浩・中川智正)は第1次再審請求中だった。それに続いて2018年7月26日にも同事件の死刑囚残り6人に対して死刑執行がなされたが、広瀬健一・豊田亨・横山真人・林泰男の4人は第1次再審請求中だった一方、残る端本悟・岡崎一明の2人は再審請求をしていなかった。即ち同事件の死刑囚13人は「第1次再審請求中が6人、再審請求なしが3人、麻原含め残る4人が複数回目の再審請求中」に死刑を執行されたことになる。
いずれも重大事件について無罪を主張している事件にのみ適用されているが、量刑不当(主に死刑囚)で再審請求を出すことも可能である。ただし量刑不当で再審が認められたことは今までにない。
裁判に直接的に関係する事項ではないが、他に重要な事として、判例となった場合における再審請求の有無による社会的な取扱いの違いがある。再審請求がなされている場合は、それは裁判記録として残される事になり、また当該裁判記録を参考とした判例紹介やコンメンタール等の書籍等においてもその考察がなされる事になるが、ここでどの様な事由によって再審請求がなされているか及びどの様な理由でそれが却下されているのかは重要な情報である。
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