トップQs
タイムライン
チャット
視点

Microsoft Windows 11

マイクロソフトのオペレーティングシステム ウィキペディアから

Remove ads

Windows 11(ウィンドウズ イレブン)は、マイクロソフトが開発するWindows NT系オペレーティングシステムである。Windows 10の後継バージョンにあたる。2021年10月5日標準時間〈STDT〉)に公開された。開発コードネームは「Sun Valley」(サン・バレー)であり[8]、正式発表前はWindows 10のバージョンの一つ(21H2の予定 / 実際は11の21H2と10の21H2が両方配布された)とみられていた。Windows 11のシステム要件を満たすパーソナルコンピューターは、2015年のWindows 10リリース時と同様に無償でアップグレードが可能[A][B]だが、当OSより32ビット(x86)版は廃止され、64ビット版(x64版およびARM64版)のみの提供となり、先代OSのWindows 10同様、バージョンやエディションによってサポート期間が異なるので注意が必要となる。なお、2025年4月現在の時点において、既に入手済みのリテールパッケージ版のWindows 10用のプロダクトキーを利用してWindows 11のライセンス認証が可能である。

概要 Windows 11, 開発者 ...
Remove ads

沿革

要約
視点

正式発表まで

2015年にリリースされて以来、Windows 10は「Windows 最後のバージョン」と見られてきた。これはマイクロソフトが社として公式に発表したものではなく、同社所属のエンジニアが技術者向けセミナーの中で「何気なく」発言したものだった。しかし、マイクロソフトがこのエンジニアの発言を特に否定しなかったことから広く既定路線と見られてきた[30]

Windows11は、Windows10の後継と思われていたが、実際にはWindows10Xの開発もされていた。Windows10Xは、途中で開発が中止されている[30]

以降、Windowsオペレーティング システムは「サービス」として、新しいアップデートが定期的(年2回)にリリースされていたが、2020年下期のアップデート(バージョン"20H2")と2021年上期のアップデート (バージョン"21H1") はいずれも2020年上期のアップデート (バージョン"2004")と比べると小規模なものに留まっており[31][32]、2021年下期にバージョン"21H2"としてリリースされるであろう開発コードネーム「Sun Valley」がユーザーインタフェース(UI)の再設計を含む大型アップデートになると報道されていた[33][34][35][36]

2021年5月25日、開発者向けイベントである「Microsoft Build 2021」の基調講演にて、サティア・ナデラCEOが次世代のWindowsについて予告した。ナデラCEOによると、数か月前からセルフホスティングしていたという。正式な発表については近日行うとした[37]。この時点では前述の"21H2"に相当するWindows 10の大型アップデートの発表であるとする意見が多数だった[33][38]

しかし、ナデラCEOの発表から1週間後、マイクロソフトは2021年6月24日午前11時(EST)に開催されるWindowsイベントの招待状の送付を開始した[39][40]

この送付時間が「11時」であること、こういった発表イベントは10時開始がセオリーな中、11時開始だったことから、ついに新しいOSとして「Windows 11」が登場するのではないかという憶測が生まれた[41]

2021年6月10日、マイクロソフトはYouTubeに歴代Windowsの起動音をスロー編集した「11分間の動画」を投稿した。この時、次期Windowsの名称についてさらなる憶測を呼んだ[42][43]

2021年6月15日、「Windows 11 のベータ版」とされるビルドのデスクトップ画面をキャプチャしたリーク画像がネット上にアップロードされ[41]、同日中に、「Windows 11」とされるISOファイル(ディスクイメージ・OS ビルド 21996)もリークされた[44][45][46][47]。リークされたスクリーンショットとビルドには、既に開発中止が発表された「Windows 10X」に似たユーザーインタフェースと[47]、再設計されたアウト・オブ・ボックス・エクスペリエンス(OOBE)と「Windows 11」の名称が見て取れる[48]。このリークビルドにおいても、システム要件として既にTrusted Platform Module(TPM) 2.0が必要とされていた。

2021年6月20日、マイクロソフトが誤って公開したサポート文書の中に「Windows 11」の記述があることが明らかとなった[49][50]

発表

マイクロソフトは米東部時間の2021年6月24日午前11時(日本時間6月25日午前0時)に行った「Microsoft Windows Event」と題するイベントにおいて、「Windows 11」を正式に発表した[C][D]

開発

2021年6月28日に初のInsider Previewが公開された[62][63]。Windows 10に比べ、丸みを帯びた特徴的なユーザーインターフェース(UI)などについては既に実装されているものの、Androidアプリの実行機能の追加はまだなされていなかった[E]。正式発表と同時に公開されたシステム要件ではインテル第8世代Core及びAMDRyzen 2000番台(APUは3000番台)以降のプロセッサとTPMの有効化が必須だった。

しかしプレビュー版では、第7世代Core及び初代Ryzenと、TPMが有効化されていない環境でも使用可能になるように要件が緩和されており[68][69]、このうちCPUの要件については今後緩和される可能があるとされており[70]、2021年8月末に一部モデルの緩和が発表された[71][72]

具体的には第7世代Coreの内、「Surface Studio 2」に搭載されている「Core i7 7820HQ」と第6世代Core XXeon Wが新たに追加されたのみとなっており、その他の第7世代CoreやAMDのプロセッサは検証されたものの追加はされていない[73][74][72]

7月22日に公開されたInsider Preview Build 22000.100Teamsチャット機能を中心とした一部機能が統合された[75][76][77]

公開

2021年10月5日に「 Windows 11 」がリリースされる予定であることが8月31日に発表され[F]、予定通り、2021年10月5日(米東部時間基準ではなく各タイムゾーンの2021年10月5日[83])に公開された[G]。同日、女優峰平朔良が出演し、アイドルグループわーすた三品瑠香が楽曲を担当したテレビCMWindows 11 の世界へ」も公開、放映され[H]富士通NECなどPCメーカー各社よりWindows 11搭載パソコンの発売も発表された[I]

電気街として知られる秋葉原では、有名な1995年のWindows 95発売時の熱狂や2015年のWindows 10の発売時とは異なる反応がみられ、店頭商品の売り切れに至るような「お祭り騒ぎ」も、互換性の問題から業務用などで従来型の環境を必要とするユーザーによる先代、先々代のOSであるWindows 10や8.1の大規模な買い漁りも起きなかった[106][107][108][109]

Windows 10のリリース時と同様、1年程かけ、一般ユーザーに向けて段階的に無償で配信されるが、対象は新しいデバイスが中心で、Windows 11のシステム要件を満たしたパソコンに限られており[J][K]Windows 7Windows 8.1などからアップグレードし、Windows 10に対応が可能だったデバイス、また、Windows 10発売後に発売された比較的新しいデバイス(概ね2015年7月 - 2019年3月までに出荷・発売されたデバイス)であっても、スペックによっては Windows 11 にアップグレードできない場合があるため、Windows 11へのアップグレードについては「システム要件」に注意が必要とされている[115][116][117][109]。Windows 11における性能要件の大幅な引き上げの理由としては、セキュリティ信頼性互換性の3つの要素で比較的新しいハードウェアの機能に依存する仕様が追加されるため、その仕様を実現できない旧式のハードウェアを切り捨てる必要があるためである[118]

性能要件を満たさないパソコンでもレジストリ操作によるTPM/CPUチェック回避というバックドアを用いてアップグレードすることはできるが、マイクロソフトとしてはサポート対象外としているため推奨されない方法である[119]。性能要件を満たさないパソコンでも一応のインストール手順は提供されているが、処理速度が著しく低下し消費電力も増える可能性[注 1],従来使えていた各種デバイスが使えなくなる可能性,Windowsの更新が行えなくなる可能性があり、依然としてWindows 11を利用するリスクは大きいままである(導入できるだけで実用的ではない可能性がある)[120]。一般的には性能要件を満たさないパソコンの買い替えが必要になる。

リサイクルショップ、あるいはアウトレットモールなどのディスカウントショップの中には、アップサイクル[注 2]をする業者も決して少なくない[121]。一般的には「インテルの第8世代以後のCoreシリーズ(厳密にはデスクトップ用、およびゲーミング向けの大型ノート用Coffee Lake以後、低電圧・超低電圧CPU搭載のノート用はKaby Lake Refresh、およびGemini Lake以後)、AMDRyzenのうち、デスクトップ用は2000番台、ノート用であれば3000番台以後が売れ筋である」という。これは古い世代だとWindows 11のインストールが不可能なためとされている。またメモリーも新製品だと16ギガバイト以上が多いが、これが主流になったのは11のリリース直後の1-2年程度のことで、中古品のノートパソコンではメモリーの増設が難しく、主に中・大型ノートパソコンの場合は8ギガバイト程度のものが大多数を占めている一方、小型・軽量なモバイルノートパソコンの場合は固定式のオンボードメモリがほとんど(概ね4ギガバイト固定、または8ギガバイト固定)で、それ以上の増設が当初から不可能となっている例も少なくない。尤も、デスクトップPCはメモリーの増設が容易であるため、標準8ギガバイトのものでも、最低16ギガバイト以上に増設する例もある[122]

Remove ads

主な機能

要約
視点

ユーザーインタフェース(UI)

正式発表前にリークされたWindows 11の開発ビルド及び、Insider Previewでは、マイクロソフトの新しいデザイン言語である「Fluent Design」のガイドラインに則ったユーザーインタフェース(UI)に変更され、半透明化のエフェクトやウィンドウの影、角が丸いウィンドウといった新しいデザインが各所に盛り込まれている[123][77][124][125]

スタートメニューも再設計され、Windows 8から10まで使われたライブタイルが廃止され、アイコンのみのボタンを配置する形となっている。なお、スタートメニューのサイズは変更不可となっている。

タスクバーも変更され、デフォルトでは「中央揃え」に配置されるようになったが[126][117][127]、オプションで従来通りの左揃えに配置することが可能となっている[48][128][125]

タスクバーの設定からは、「小さいタスクバーボタンを使う」と「画面上のタスクバーの位置」と「タスクバーボタンを結合する」という項目が廃止されたため、Windows Vista以前のような細いタスクバーの使用やタスクバーの位置を上や左右に表示させる方法やタスクバーのボタンのグループ化を解除という変更が出来なくなっている。 タスクバーの右クリックメニューからは「タスク マネージャー」の項目が消えたため、スタートボタンを右クリックしてタスクマネージャーを開く必要があったが、[129]22H2で表示されるようになった。[130]

またタスクバーの右端のデスクトップの表示のクリックではウインドウが最小化されるが、Windows 7以来のAero Peek(プレビュー)が廃止された。

エクスプローラーの変更点は、Windows 8から採用されたリボンUIが廃止され、大きなアイコンが並んだシンプルなメニューへと変更された[131][132][77]。 エクスプローラーの一覧表示のファイルの空白の間隔はWindows 10と比較するとやや大きくなっている。

デスクトップやエクスプローラー内のコンテキストメニューも刷新され、シンプルな表示のものへと変更された[77]

ショートカットキーのコマンドが無くなっているが、一番下の「その他のオプションを表示」を選択すればWindows 10以前のコンテキストメニューを使用できる[133][134][132]。また、デフォルトでWindows 10以前のコンテキストメニューを表示させることも可能。

スクロールバーはカーソルを合わせるとバーが表示されるものへと変更された[135]

Windows 10で導入された「タスクビュー」もデザインが刷新されている[77]。また、スナップ機能も導入され、スナップナビゲーターにあるオプションから自動的にウィンドウの位置調整を行えるようになった[136][77][124]

そのほかにも、新しいシステムアイコンやアニメーション、サウンド、ウィジェットといった変更点がある[137][138][77][124][139]

Windows Vista以来の起動音の刷新が行われ[140][141][142]、初期状態で有効に変更された。インタフェースやスタートメニューのデザインの多くは、開発が中止された「Windows 10X」のものを引き継いでいる[128]

Windows 11では新しいフォントである「Segoe UI Variable」が採用される[127]。このフォントでは従来のSegoe UIでは考慮されていなかった、最近の高DPIディスプレイでの拡大や縮小に適した形に改善、設計されている[143]

ウィジェット

Windows 11には、タスクバーの「ウィジェット」ボタンをクリックして開くことができるウィジェットが存在する[139]。このウィジェットには、MSNニュース、スポーツ、天気、金融などが含まれる[139]。発表前にリークされた開発者向けビルドでは、正式発表の際に紹介されたウィジェットのドラッグや並べ替えは、まだできなかった。ウィジェットを利用するには、Microsoft アカウントでのサインインが必要となる。これは、Windows 10の後期バージョンのタスクバーに登場した「ニュースと関心事項」に代わるものとして開発された[144][128]

統合されたアプリ

Microsoft TeamsはWindows 11に統合され、タスクバーからアクセスできるようになる[145][146]Xbox Game PassはOS内で配布され、Xbox Series X/SのAuto HDRやDirectStorageといった機能もWindows 11に統合される[147][148][149][146]。Auto HDR、DirectStorage機能の利用にはDirectX 12をサポートするグラフィックボードとNVMeソリッドステートドライブ(SSD)が必要となる[150][151]

また、これまでもMicrosoft Storeで提供されてきたロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)ツール「Power Automate」がWindows 11では「Power Automate for desktop」としてデフォルトで付属する[152][153]

Android アプリの利用

新しいWindows Subsystem for Android(WSA)とAndroid Open Source Project(AOSP)を使用して、AndroidアプリをWindows デバイスにインストールして実行できるようになった。ただし、Google PlayStoreを使用できないため機能面での制限が多かった。

Windows 11では、Microsoft Store内のAmazon アプリストアからAndroidアプリをコンピューターにインストールできるようになる[L]。この機能を利用するには、Microsoft アカウント、Amazonアカウント、またWindows Amazon Appstoreのインストールが必要となる[159][160][161][162]。またユーザーは、APKファイルを使用して、様々なソースからAndroidアプリをインストールできる[163]

2021年10月5日のWindows 11公開当時はAndroidアプリの実行機能は追加されていなかったが[M]、Androidの利用に関する更新時にWindows 11に実行機能を付加するとみられるマイクロソフト製のアプリ「Windows Subsystem for Android」のページが既にMicrosoft Storeに存在することが判明している[164][165]

2021年10月20日には、Windows Insider Programのベータチャネルを通して、米国在住のWindows Insiderを対象としたAndroid実行機能の提供が試験的に開始された[N]。利用には「Windows Subsystem for Android」と「Amazon Appstore」のインストールが必要となる[169][170]

「Windows Subsystem for Android」はHyper-V上でLinuxカーネルAOSP(Android Open Source Project)ベースのAndroid 11を動作させる[O]インテルと協力して開発された「インテル・ブリッジ・テクノロジー」によって、ARM版アプリであっても、Intel CoreAMD Ryzenといった一般的なパソコンのCPUでも動作させられるようになった[P]。正式公開までにテストは数か月間続くとみられている[64][168]

2024年3月5日にマイクロソフトは「Windows Subsystem for Android」の機能を廃止すると発表した。2025年3月5日で機能自体は完全終了となり[173]、今後のWindows用Androidエミュレーターの使用はBluestacksなどが必要である。

なお、Windowsにおいて、Androidアプリを活用しようとするシステムの構想はWindows 10時代より「Windows Bridge for Android / iOS」(ただしAndroid版は開発中止)が存在していた。

セキュリティ

Trusted Platform Module(トラステッド プラットフォーム モジュール) 2.0(TPM 2.0)は最小システム要件の一部とされた[174][175][176]。MicrosoftはTPM 2.0をファームウェアやハードウェアへの攻撃から保護するための「重要な構成要素」と位置づけ、さらに仮想化ベースのセキュリティ(VBS)、ハイパーバイザーで保護されたコード整合性(HVCI)、およびセキュアブートがデフォルトで有効となることを要求している[177]。サポートするインテルおよびAMDのCPUにおいてゼロデイ攻撃から防護するためのハードウェア型強制スタック保護も備えている。また、以前のWindows同様、Windows Helloを介した多要素認証生体認証もサポートしている[177]

Windows 95からWindows 10まで歴代のWindowsに標準で付属していたブラウザ「Internet Explorer」は付属せず[178][179][126][180]、最新版であるIE11も2022年6月15日にサポートが終了し、廃止されるため[181][182]、Windows 11での使用についてはセキュリティ面も含め公式的なサポートは受けられない。

マイクロソフトは後継ブラウザである「Microsoft Edge」(Chromium Edge)と、その「IEモード」(Internet Explorer モード)機能の使用を推奨している[181]が、ある設定をすればIEを起動することはできる[183][184][185]。ファイル自体は存在しているという[183]

なお、この変更によりIntel Macにおいて使用可能であったBoot Camp上ではWindows 11においては公式には使用することが不可能になった。なお、Boot Campで公式で動作しないOSが存在するのはこれが初めてであり、この状態は2021年現在、改善されていない。

Recall

ユーザーのアクティビティのスクリーンショットを自動で定期的に撮る機能[186]。ユーザーはタイムラインの表示や検索が可能[186]。プライバシーの問題が指摘され、当初2024年6月に予定されていたリリースが延期された[186]。2024年11月22日よりWindows Insider向けのリリースが開始されている[187]

Remove ads

アップデートとサポート

要約
視点
さらに見る バージョン, 一般名 ...

コマンド プロンプトで表示される内部バージョン番号はWindows 10と同じ「NT 10.0(バージョン 10)」となっている[127]。その代わり、10.0の次の桁番号(=ビルド番号)がWindows 10の「1XXXX」から「2XXXX」に変更されている。Xbox One,Xbox Series X/Sでもアップデートにより強制的にWindows11ベースのOSに交換された。

23H2から24H2にアップデートする場合はWindows Updateから自動アップデートを受信できない場合があり、この場合はマイクロソフトが配布するWindows11用インストーラーを使って手動でOS入れ替えによるアップデートを行う必要がある[194]

(製品版リリース当初のビルドは 10.0.22000.194)

システム要件

要約
視点

Windows 11は64ビット版のみの提供となり、32ビット版の提供が終了した。Basic Input/Output System(BIOS)のサポートも終了され、セキュアブートとTPM 2.0を備えたUnified Extensible Firmware Interface(UEFI)が必要となった[176]。32ビット版の提供終了とBIOSのサポート終了はWindows 95のリリース以来、サーバOS以外では初めてのケースとなる[195]

正式発表と同時にアップグレード可能な環境であるかをチェックするツール「PC正常性チェック」がマイクロソフトより配布されたが[196]、2021年6月28日(現地時間)に配布が一時停止し[197][198]、2021年9月15日に再度配布された[199][200][71]

当初このツールはどのコンポーネントが要件を満たしているのか・満たしていないのかを表示する機能が無く、ユーザーから期待されていた水準に達していなかったとして一時的に撤回されていたが、再度の配布に際し各コンポーネントの対応状況が確認できるように改良された[201]

こういった厳しいシステム要件にもかかわらず、プレリリースされたプレビュー版のWindows 11では、インストールメディアを編集することで、BIOSを搭載し、セキュアブートやTPM 2.0を搭載していないシステムにもインストールすることができる[202][203][204]。これは、新しい要件の多くがビジネス上の理由から課されたものであり、Windows 11の機能に対する実際の技術的要件ではないことを示す証拠とも見なされている[205][206]

OEMメーカーはマイクロソフトの承認があれば、TPM 2.0を備えないパソコンを出荷できるとされているが[174][207]、この措置はロシア中華人民共和国といったネット検閲が実施される国や先進国よりも廉価な機種を販売する途上国を対象にしたものとみられている[208][209][210][117]

2021年8月末にマイクロソフトは最低要件を満たしていない古いパソコンでも、Windows Updateによるアップグレードはできないものの、「メディア作成ツール」を通し、ISOイメージを用いた「手動」でのインストールであれば可能であると明らかにした[211]

一方で、要件を満たすパソコンで「99.8%」安定性が向上するのに比べ、最低要件を満たさないパソコンの場合、「クラッシュする可能性が52%高まる」としているほか[73][74]、インストール後にWindows Updateでドライバーを提供しない可能性を示唆[74][212]、「推奨」はせず[74]、あくまでシステム要件を満たさないパソコンへのインストールは「自己責任」で行うこととした[74][212]

また、10月5日の公開時にもシステム要件を満たしていないTPM 1.2以上のUEFIを搭載したパソコンについて、「レジストリ エディター」を使用してレジストリに変更を加え、アップグレード時のシステム要件の確認を「回避」することによって強制的にアップグレードを行う方法がマイクロソフトによって公開されたが、これについても「重大な問題が発生する可能性がある」として非推奨とした上で、アップグレード後の更新プログラムの配布を「保証しない」と述べており、マイクロソフトはWindows Updateを使用した、システム要件を満たすパソコンへのアップグレードを引き続き推奨している[213][203][214][215][216][204][217][218][219]

インストールメディア作成ソフト、Rufusのバージョン3.16からは、特定の設定を変更することでレジストリの改変を行わなずに要件を満たさないPCにWindows 11をインストールできるようにするインストールメディアを作成できるようになった。23H2以前(Rufus4.5以前)は作成したUSBメモリ・DVDから起動が必要であったが[220]、24H2以降(Rufus4.6以降)は作成したUSBメモリ・DVDの中のsetup.exeをWindows上で起動することでもアップデートが可能である[221]

さらに見る コンポーネント, 基本要件 ...
さらに見る 機能, 追加の要件 ...
Remove ads

問題点

2021年10月5日の公開の Windows 11 では、公開当時いくつかの不具合が存在した。

まずエクスプローラーの消費メモリが極端に多くなる「メモリリーク」によって再起動を余儀なくされるケースや特にAMD Ryzen CPUを使用するパソコンにおいてパフォーマンスが低下し、動作が重くなるといったケースが報告された[230][Q]

またWindows 11の日本語版では、一部表示の不具合が指摘されたり[247][248]レジストリへ非ASCII文字を含むキーを追加した場合にアプリが起動しなかったり、ブルースクリーン(BSoD)になるといった不具合が指摘された[249][250]

そして、USBを使用してパソコンに接続したプリンターが動作しないといった問題が指摘された[251]

一方で不具合ではないが「設定」アプリの「既定のアプリ」の構成について、変更時は各「ファイルの種類」(拡張子)やプロトコルごとに一つ一つ関連付けの設定を行わなければならず、「メール」、「マップ」、「音楽プレーヤー」、「フォト ビューアー」、「ビデオ プレーヤー」、「Web ブラウザー」としてアプリの目的、種類ごとに一括変更が可能だったWindows 10よりも煩雑となった[125]が24H2で若干の改良が実施され、登場当初のような煩雑さは幾分であるが改善されている。

Remove ads

評価

要約
視点

2021年のWindows 11 発表時、新デザインや生産性向上のための機能は一定の評価を受けた[252]。しかし、マイクロソフトは、Windows 11の最小システム要件について意図せずして混乱を招いた[253]。特に、Windows 10のサポート終了時に、ユーザーのニーズは満たしているものの、Windows 11の要件を満たしていない数百万台の古いコンピューターが大量に廃棄されることが環境に与える影響について、大きく批判されている(但し先述の通り、一部のリサイクル家電ショップでは、Windows 11に対応できるようにアップサイクルしたものを販売する例もある)[205][254][206]

当初マイクロソフトが発表したシステム要件では、Windows 10のものより条件が厳しくなり、既存のWindows 10をインストールしたコンピューターのうち、約60%がWindows 11にアップグレードできないという事態となることが予想されている[255][127]

またWindows 11 Homeエディションでは、初回セットアップ時にMicrosoft アカウントとインターネット接続が必要となっており、この要件についても批判を受けている[256][257]

既定で中央揃えとされ、スタートボタンを中央に配置する形としたタスクバー(ただし、22H2以後のバージョンより設定をカスタマイズすることにより、スタートボタンを従来の左揃えにすることが可能となった)についても[127]iPhoneAndroidといった「スマートフォン寄りのデザイン」として、古くからパソコンに慣れ親しんだユーザーからは顰蹙を買っている[258]。一部のユーザーは「Open Shell」(旧: Classic Shell)や「Winaero Tweaker」のようなサードパーティー製のアプリケーションによる機能の補完に期待している[258][259][246]

Windows 11の公開後、アメリカでも様々なITニュースサイトがWindows 11を検証、分析、評価している。

Ars Technica』のアンドルー・カニンガムは、新しいデザインである「Mica」はiOSmacOSユーザーインタフェース(UI)を彷彿とさせると評した[注 6]。パフォーマンスについてはWindows 10と同等かそれ以上であると評価し、ウィンドウ管理やその他の「有益な調整」、そしてシステム要件によって最新のPCに搭載されているハードウェアのセキュリティ機能に一般の人々がより関心を持つようになったと評価した。一方で、ウィジェットがマイクロソフトのサービスのみに限定され、サードパーティーのコンテンツに対応していないこと、タスクバーの機能やカスタマイズ性が低下していること、ウェブサイトの閲覧(ウェブブラウジング)などの一般的な作業でデフォルトのアプリケーションを簡単に選択できないこと、ファイルの種類ごとにアプリケーションを選択する必要があること、またマイクロソフトがプロセッサの互換性基準の正当性を明確にしていないことなどについて、多くの批判の声が上がっていると指摘した。

またカニンガムは「このレビューのために(Windows 11を)調べて、その内実を知るにつれ、より好感が持てるようになった」と述べつつも、このOSがWindows VistaWindows 8と同様の「世間の認識」の問題に直面していると記した。一方で、Windows 11は初期のVistaほどパフォーマンスの問題やバグが多くなく、Windows 8ほど「バラバラ」でもなかったと指摘し、アップグレードを迷っているユーザーには、次期配布される更新プログラムによるWindows 11の修正を待つか、そのままWindows 10をしばらく使い続けることを勧めた[260]

The Verge』のトム・ウォーレンは、Windows 11を「改装中の家に似ている」と評しながらも、「ここ数か月間、Windows 11を実際に使ってみたが、予想していた程響くものはなかった」と述べ、新たに変更されたユーザーインタフェース (UI) がiOSやChromeOSを彷彿とさせるモダンなものになったこと、新しいスタートメニューがWindows 10のものより「散らかっていない」と感じたこと、いくつかの純正アプリケーションの更新やSnap Assist(スナップ機能)などを評価している。一方でウィジェットパネルやMicrosoft Teamsをほとんど使用していないと述べ、Windows 10の後期バージョンで提供されていた天気表示の方が好きであること、友人や家族とのコミュニケーションにTeamsを使用していないことをその理由に挙げた。

またウォーレンは「Microsoft Store」により「伝統的」なデスクトップアプリが追加されたことも評価したが、UIの不整合によってダークモードや新しいコンテキストメニューのデザインが全てのダイアログアプリケーションで統一されていないことや、Windows 10に続き、最新のWindows 11においても「設定」アプリの特定の設定項目において従来の「コントロールパネル」のアプレットを呼び起こして使用していることなどを指摘した。そしてタスクバーの位置の変更ができなくなった[126][127]、タスクバーのボタンにファイルをドラッグして対応するアプリケーションをフォーカスすることができなくなった、マルチ ディスプレイ構成では時計がプライマリディスプレイにしか表示されないなどタスクバーの機能の「後退」や発表時に実装が「約束」された機能であるダイナミックリフレッシュレート (DRR) やユニバーサルマイクミュートボタンなどが初期バージョンには存在しなかった[261]ことなどからWindows 11は「まだ未完成であると感じている」と述べ、全体として「Windows 11へのアップグレードを急ぐことはないが、避けることもないだろう。結局の所、Windows 11にはまだ親しみやすさがあり、すべてのUIの変更の下には、何十年も使ってきた同じWindowsがそこにある」と締めくくっている[262]

PC World(英語版) はさらに批判的で、Windows 11は「個性のために生産性を犠牲にし、まとまりがない」とし、特にWindows 11 HomeではMicrosoft アカウントの取得とそれを使用したログオンが必須となること、「オフライン」のローカル アカウントを使用できないこと、タスクバーが「後退」したこと、スタートメニューが「機能的に悪い」ものになったことなどの変更点を列挙した。また Microsoft Teamsの統合は、プライバシーに関わるものであり、ユーザーに同サービスへの切り替えを強要する「策略」であること、ファイルエクスプローラーでは、一般的な機能が不明瞭なアイコンで表示されること、デフォルトのブラウザをMicrosoft Edgeから変更することをユーザーに躊躇させるために「ひどくぞんざいな行動をとる」こと、OSが「Windows 10よりも反応が悪く、遅く、重く感じられる」ことなどを挙げ、批評した。そしてWindows 11は「実用的で生産性が高いと感じるが、多くの面で先代よりも劣っている」とし、その「最良の機能」は「奥深くに隠されていること」、「特定のハードウェアを必要とすること」 (DirectStorage, Auto HDR)、「発売時には利用できないこと」(Androidアプリのサポート)のいずれかであると結論付けている[263]

Remove ads

ダウングレード

Windows 10 からWindows 11 にアップグレードした場合、「Windows.old」というWindows 10にまつわるファイルがローカルディスクに残るが、10日を過ぎると永久に削除される[R]。これは、「設定→システム→記憶域→一時ファイル」にて手動で削除することも可能で、「Windows.old」を削除した後、またアップグレードから10日以上経って自動的に削除された後でもWindows 10の時に作成した回復ドライブによる回復やパソコンの購入時に付属していたWindows 10のリカバリーディスク、マイクロソフトのホームページからダウンロードできるWindows 10の「メディア作成ツール」を用いた「クリーンインストール」によるダウングレードは可能となっている[265][268]

ただし、ドライブにあるデータが消去されるため、特にクリーンインストールを伴う方法を用いる際はWindows 11へのアップグレードの前後のみならず、Windows 10へのダウングレードの前後でも予めバックアップをとるか、32GB以上のUSBメモリを用意し回復ドライブを作成する必要がある[267][264][265][268]

  1. [設定]→[システム]→[回復]
  2. [回復オプション]→[Windows の以前のバージョン][戻る]をクリック。
  3. Windows 11をアンインストールする理由を尋ねられ、次にWindows 11をアンインストールする代わりに最新のアップデートをチェックするかどうかを尋ねられる。[行わない]をクリックして、ロールバックを続行する。
  4. 画面に表示される残りの指示に従い、[以前のビルドに戻す]を選択すると、ロールバック プロセスが開始される。
  5. あとはロールバック プロセスが完了するまで待つ。完了すると、既存のファイルが保持されたまま、Windows 10に戻ることができる。
Remove ads

大手メーカー製のWindows 11プリインストールPCにおけるダウングレード

Windows 11 Pro のOEM版および、Pro Education、Pro for Workstations、Enterprise Educationを含むボリュームライセンス版に限り、旧バージョンのWindowsへのダウングレードが認められる。

OEM(メーカー製PCのプリインストール)版の Windows 11 Pro

Windows 10 Proにダウングレード可能。

ボリュームライセンスプログラムの Windows 11 Pro および Windows 11 Pro Education / 11 Pro for Workstations / 11 Enterprise Education

Windows 10 Pro および Windows 10 Pro Education / 10 Pro for Workstations / 10 Enterpriseまでダウングレード可能。

いずれもライセンス上の規定であり、行使するには旧OSのインストールメディアおよびプロダクトキーを別途用意する必要がある。なお、ボリュームライセンス版については認証方法が通常の製品とは異なっており、専用のインストールメディアとプロダクトキーが用意されている。

2024年2月現在の時点では、法人向けPCメーカー製の一部機種でダウングレード権を適用してWindows 10 Proを初期インストールしたPCが発売されている。なお、その場合でもユーザーはWindows 10 Proのプロダクトキーを入手することはできず、当該PCに対しては、別途Windows 10 Proのインストールメディアとリテール版(ダウンロード版含む)・DSP版の各種プロダクトキー、またはWindows 11 Pro用のリテール版・オンライン版・DSP版の各種プロダクトキーを入手しない限り、プロダクトキー入力やアクティベーションが必要となるためクリーンインストールはできない。

Remove ads

脚注

外部リンク

Loading related searches...

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.

Remove ads