ネット検閲 (ネットけんえつ、英 : Internet censorship )は、インターネット 、イントラネット 、ウェブ や電子メール などのネット上の情報を対象とした政府機関 による検閲 を指す。エドワード・スノーデン 等の情報提供により、チョークポイント に海底ケーブル が収束しているのを利用し地球規模で検閲が行われていることが分かっている。検閲にかかった情報は、ウェブサイトへの掲載を禁止・削除するかウェブサイトをブロッキング して拡散を防ぐ。
国境なき記者団 によるネット検閲の評定
青:検閲なし
黄:多少検閲あり
赤:国境なき記者団の監視対象(厳しい検閲を実施)
黒:大変厳しい検閲を実施
オフライン での検閲とは別に扱われることが多いが、問題点は同様である。主な違いはオンラインの方が国境 を容易に越えやすい点にある。ある情報 を禁止する国の住民は、別の国のウェブ上でその禁止されている情報を得られる場合がある。逆に、ある資料 を管理する政府が市民がその資料を閲覧するのを妨げる場合には、その政府が世界中のインターネットサイトを監視するなどして外国人 をも制限する効果を持つことがある。
しかしながら、インターネットの基本的な分散的な技術によりインターネット上の情報の検閲を達成するのは非常に困難である。
国連の見解
2016年7月、国連人権理事会 は市民がインターネットにアクセスする権利は基本的人権 だとする決議を採択した。主に表現の自由 をめぐって、オフラインで保障されている権利は当然ながらオンラインでも保障されるべきとの国連のスタンスが、同決議により改めて強く示された。
この決議は法的拘束力を持たないため、宣言の内容を強要することはできない。しかし、インターネットへのアクセスを故意に規制している国に対する牽制になるだろうと説明があった[1] 。
オンラインで配信されている情報へのアクセスを政府が意図的に遮断したり妨害したりする措置を非難するという条項に対しては、複数の国が猛反対。その文言を削除すれば、同決議に賛同してもよいとの姿勢が示された。反対した国は中国 、ロシア 、サウジアラビア 、南アフリカ 、インド など[2] 。
よくモニター監視されるウェブサイト
当然ながら政府からの公式発表は少ないが、新聞 やマスコミ などでの事件報道を参考にすれば、次のようなサイトがモニター監視 の対象になっていると思われる。
アラブ首長国連邦 でのネット検閲の例。政府がアクセスを禁じているウェブサイトの閲覧がブロックされている。ネット検閲の程度は国によって大きく異なる。民主主義 国では一般的に検閲が行われることは少なく、あっても犯罪や暴力、反社会的行為に関わる情報の取り締まりといったもののみに限られ、国民は情報にアクセスし、公の議論に参加することがおおよそ可能である。対照的に、全体主義 に代表される自由権 が限られた政治体制 を執る国家では言論を統制し、反対意見を抑圧するためにネットへのアクセスに厳しい制限を課す傾向が強い。特に選挙や抗議活動などの重要なイベントの際には、検閲をコミュニケーションを制限し、政治や社会問題に関する議論を妨げる手段として利用している。
「インターネットの敵」
2006年11月、国境なき記者団 はネット検閲反対のキャンペーンを立ち上げるのにあたって、インターネットの検閲や接続遮断をしているという「インターネットの敵 」[注 1] 13カ国を発表した。その13カ国は次の通りである。
なお、ネット検閲を実施している国家はここで挙げられたものが全てというわけではない。
検閲事例
政府の公権力により、インターネット上での情報開示に検閲が行われている事例は次のとおり。
中華人民共和国では「网络审查 」(網絡審査)という名目でネット検閲が行われ、「防火长城 」と呼ばれる中国防火墙 (中国のネットと国外の「反中国的サイト」とを隔てるファイアウォール )を設け、世界で最も大規模なサイバー検閲システムを構築した[3] [4] 。サーチエンジン でも特定の言葉の検索結果に対してフィルタリング が行われる(→グレート・ファイアウォール 及び中国のネット検閲 を参照)。
オーストラリア ・ニュージーランド 。教育観点 。オーストラリアは汚職をもみ消そうともした。
ミャンマーでは個人によるウェブ接続やメール送信は認められず、検閲済みのサイトで構成されたミャンマー・ワイド・ウェブなるものが設けられている。現在は企業に一部開放しており、メールは政府による検閲が行われている。2021年にはミャンマー軍 によるクーデターに対する抗議活動が行われる中、インターネット接続が一時遮断されTwitter 、Facebook 、Instagram などが利用できなくなった他[5] [6] [7] 、Wikipedia も検閲された[8] 。
キューバでは許可のないインターネットの使用は違法とされている。許可を得られる例の大半は医師であり、医師の近隣住民が海外へのメール送信を依頼するが、キューバ政府はこれを制限しようとしてきた。
チュニジアでは(ポルノサイト、メールサービス、転送サービスなど)数千のウェブサイトがブロックされ、FTP やP2P の利用が禁じられている。(技術的にプロキシ に利用されるポート が封鎖されている。)
シリアでは政治的な理由から幾つかのウェブサイトの閲覧を禁止しそれらにアクセスした市民を逮捕した。
大韓民国 では「情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」により政府・情報通信倫理委員会がISP に対して強大な監督指導権限を有しており、朝鮮民主主義人民共和国に共感的と看做される様々なサイトへの接続を認めないように命令した。この他、日本の韓国支配を肯定したり、竹島 (韓国名・独島)が日本の領土であることを肯定する記述を含む21の「親日」サイトや5つのコミュニティが「反愛国的」との理由で強制的に削除されたケースも存在する[9] [10] [11] 。2012年8月下旬に大韓民国放送通信委員会 が親日サイト を制裁することを決め、削除や接続遮断などの言論統制 を行っている。2012年9月5日には親日サイトを作った13歳の少年が逮捕された[12] 。
イスラム国家 の多くではインターネット接続は政府の管理下にあり、「不道徳」とされるサイトのアクセスをブロックしたプロキシを経由して行われる。この中には露骨なポルノサイトのみならずセクシャリティ などに関する議論、議論が行われるブログのホスト、女性の下着のネット販売を含む女性の裸に関する記述のあるサイトなども含まれ、またイスラム教 と他の宗教を比較するサイトや政治的に微妙であったり、議論のある話題などもブロックされている。
トルコ では、「政治的な理由」によってYouTube 等のGoogle関連サイトを含む、約3700の外部サイトへのアクセスが政府によってブロックされている[13] 。Googleグループ#ブロック も参照。 さらに2013年6月、反政府抗議運動を抑え込むためにTwitterとFacebookまで利用制限するに至った[14] 。2017年4月には、ウィキペディアへのアクセスも完全に遮断した(2017年トルコのウィキペディア閲覧制限 )[15] 。
アラブ首長国連邦 では国内単一のプロバイダであるエティサラット を通じてセキュアコンピューティングの手法で(すべてのサイトが62のカテゴリに分類され)強制的に検閲されポルノや政治的に微妙なものなど、UAEの道徳観に反すると思われるものはブロックされる。
シンガポール ではメディア開発庁 (MDA)はインターネット行動規範(Internet Code of Practice)の遵守と自主規制および自社制度を促している[16] 。3つの主要なプロバイダによって提供されるインターネットのサービスは治安、国防、人種や宗教間の調和、公衆道徳への脅威となる材料を含むサイトを規制しブロックしており、また警察にはオンラインの通信を傍受する強い権限が与えられている。2005年に3人がブログにて反マレー人 ・反イスラム など人種差別 を煽動する書込みをしたとして逮捕・起訴され、うち中華系男性2人が扇動防止法 のもと懲役を受けた[17] 。ブログで教師を中傷する学生を訴えるという教職員組合による警告など、法的対応による脅威が増えることによる萎縮効果 が議論された。
モロッコ では2006年3月にLiveJournalなどの多くのブログサイトへのアクセスをブロックした。
タイ では非合法活動の表現を規制するために多くの労力が払われた。タイが管轄するDNSサーバ の管理やプロキシの管理によりポルノ、薬物 の使用、ギャンブル が厳しく禁じられている。また王室批判は不敬罪 で処断される。これによりそれらウェブサイトはアクセス困難になっている。政府はネット検閲を回避する方法を論じたサイトをもブロックした。
ロシアでは裁判所がYouTubeに政治的な動画をアップロードしたプロバイダ からのYouTubeへの全てのアクセスを遮断するよう命じた[18] 。ウラジーミル・プーチン 政権下でネット規制は強化されており、2017年にはLINE が使用不可となった。ロシアのSNS「テレグラム」は利用者間通信の暗号 解読鍵の当局への提供を拒否したことから、2018年4月に遮断され、首都モスクワ で抗議集会が起きた。このほかテロリズム 対策を理由として、ネット事業者が利用者情報と全ての通信記録をロシア国内のサーバ に保存するよう義務付ける法律が2018年7月から適用される[19] 。
規制事例
法的規制により、インターネット上の情報開示に何らかの制限が加えられている事例は次のとおり。
注釈
英 : Enemies of the Internet
出典
【プーチン支配】露 強まるネット規制/人気SNS遮断/監視「中国並み」懸念も『読売新聞 』朝刊2018年5月4日(国際面)。