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バージョン、ヴァージョン(英語: version)とは、元々はラテン語の「転換」の意味であり、«vertere, vers—»(回転する、向きを変える)から転じて、
- 1 (個人的なまたは特殊な立場からの)説明, 解釈, 意見, 異説〔of〕
- 2a 〔文芸作品などの〕改作, 脚色, 翻案, 〜版
- 2b 〔原型・原物に対する〕異形, 変形, 改作, 改造
- 2c 〔特定の楽曲・役に対する〕(演奏者・俳優などの独自の)解釈, 演奏, 演出
- 3a 翻訳, 訳文, 訳書
- 3b [通例 V](聖書の)訳 — 出典、研究社 新英和中辞典 第6版
などの意味で用いられる。略文は「ver.」。
「バージョン」は工業製品や創作物のような主たる固有物の本来の名称に続けて付加的に記述することで、その固有物のさらに詳しい属性を示す目的で用いられ、メタデータの1つと言える。この語の使用に関しては何らかの定義や規則が存在するわけではない。少数ながら「ヴァージョン」と表記されることもある。
現在では、利用者に対して提供された順番を明示するためにバージョンという語を用いることが多く、このように時系列順を示す目的のものは数字や時にはアルファベットで分りやすく表記されることが一般的である。特にコンピュータ用のソフトウェアでは、出版物の「版」のように機能の変更を含む改良版であることを示すことにこの語を用いることが多い。
また、時系列とは別に、1つの主たる製品名、または製品ファミリ名の下で複数の派生型を持つことで製品ラインナップを形成するものでは、各派生型がそれぞれ異なるバージョンと呼ばれる事があり[要出典]、自動車や電気製品での「グレード」などに相当する。また、このように顧客が求める機能や趣向の違いに幅広く対応させる目的とは別に、音楽のような芸術分野では同じ主題に対して異なる作品を生み出した場合の区別にもこの語が用いられることがある。
一般にコンピュータ用ソフトウェアは、単一の製品を一度だけ出荷して終了することは比較的少なく、最初の出荷時の製品に含まれていた不具合を取り除いたり、新たな機能を追加したり、既にある機能を改良したりして、そのたびに以前とは異なる版の製品を出荷することがよく行われている。このような時系列による違いを明示することで、流通や利用段階での混乱を避ける目的で、主たる製品名に「バージョン」や「リリース」、「リビジョン」という形での付加的な名称を加えている[注釈 1][1]。
バージョン間の違いはピリオド記号で区切られた数字の並びで表現されることが一般的であり、改良が進むに従ってこれらの数値が大きくなる。数字に加えてアルファベットも用いられる事がある。進んだバージョンのソフトウェアをコンピュータ上で使用可能な状態にすることを「バージョンアップ」と呼ぶ。
初回の正式提供ではまず「1.0」というバージョン番号が与えられ、次回の改良版では、その改変された程度の違いによって大きな変更時(メジャーバージョン)には「2.0」とされたり、中程度(マイナーバージョン)では「1.1」とされ、不具合修正のみなど小さな変更(ビルドまたはメンテナンスバージョン)では「1.0.1」といった具合に表現するのが一般的である[2][3][注釈 2]。また上位の数字が加えられると下位の数字はゼロに戻される(例:1.2.3→1.3.0)。 ただし、Windows OS本体および付随するマイクロソフト製コンポーネント(Win32 DLL、実行プログラム、COMコンポーネント、および.NET Frameworkアセンブリ)のように、ビルド番号は初版からの通し番号となっており、メジャー番号やマイナー番号が変更されてもリセットされずに継続的にインクリメントされる管理方式もある[4]。.NET Frameworkアセンブリの開発においては、典型例としてメジャー番号・マイナー番号に変更があった場合、コンポーネントのインターフェイス互換性が失われていることを意味する規則が提示されている[5]。
表記法は「1.0.0」のようにピリオドが2つ以上ある方式と「1.00」のようにピリオドが単一の方式があり、前者ではピリオドが複数あることから一般的な小数点表記と齟齬があるとして疑問を呼ぶことがあるが、ソフトウェアによっては「1.0.10」などのバージョン番号も存在し、必ずしも単一の実数値のようには扱われていない。
正式提供前の開発途上では、進行段階(マイルストーン)に応じて「アルファ版(α)」「ベータ版(β)」「リリース候補版(RC)」に分類され、各段階でのリビジョン番号を付して「1.0.0a1」のように表記するのが一般的である。仕様自体が未定な実験的な段階では「0.8」や「0.9」といったバージョン番号が与えられることもある。正式提供前の先行版は「プリ・リリース」(Pre-release)や暫定版を表す「プリリミナリー」(Preliminary)とも呼ばれる。
同じタイトルのソフトウェアであるが、最初から機能や価格に差異を持たせて複数の派生製品を提供する場合には、それぞれの製品は「バージョン」ではなく「エディション」(edition)と呼ぶことが多い[注釈 3]。
音楽作品の世界では、同一の楽曲を異なる歌手や演奏者が録音して発表したり、同一の楽曲を違う環境および楽器で録音したり、発表後に改変したりすることによって「バージョン」の違いが発生し、それぞれを「〜バージョン(ヴァージョン/Ver)」、「バージョン違い」などと称する。
この場合、各バージョン間には時系列的な前後や録音環境の差異はあっても、音楽作品としての価値に上下関係があるわけではない(ただし、その楽曲を収録した商業製造物としてのレコード、CDなどの販売実績、ヒットチャートでの順位等には当然差が出る)。
同じ素材(楽曲)を基にした異なる「作品」が存在するという意味である。
音楽の演奏自体は、100%コンピュータでプログラミングしたものを再生するような場合以外、寸分たがわぬものを再演するのは論理的に不可能で、ある演奏者が同一の楽曲をまったく同じアレンジ・テンポで演奏したとしても、それが複数回にわたれば微妙な違いが随所に現れ、まったく同じ演奏結果にはならない。
一般に音楽は、レコード・CD等の媒体やインターネットを通じて「記録物」として流通する状態と、コンサート会場などで演奏者によって生演奏されている状態で存在するが、音楽における「バージョン」という語彙は、一般的に記録物として発表された(繰り返し再生可能な)状態のものに適用され、生演奏におけるその個々の演奏の「出来栄え」の違い自体を逐一「バージョン違い」と称することはない。
音楽においてバージョン違いが生まれるプロセスには複数あるが、代表的なものとしては以下のとおりである。いずれも記録物として配布された時点で「バージョン」が発生する。
レゲエのシングルレコードでは、多くの場合B面にはA面曲のオフヴォーカル(いわゆるカラオケ)が収録されている。多くのジャンルでは「インストルメンタル」「バッキング・トラック」などと呼ばれるのに対し、レゲエにおいてはこのカラオケを特に「ヴァージョン」と呼ぶ。
録音スタジオで演奏者が録音を行う際、ただ1回の演奏で完全なものが録音できることはごくまれであり、プロデューサーからOKが出るまで何度か同じ楽曲の演奏・録音が繰り返されることになる。
この、完成形ができるまでの間に録音された各音源は「バージョン」とは呼ばず「テイク」と呼ばれ、「テイク1」「テイク2」など「○回目の録音」という意味で呼ばれる。
ただしこの「テイク違い」の音源が、特定作品の再リリースの際に「ボーナス・トラック」のような形で収録されて公式に発表され、作品として流通した場合には「バージョン違い」として扱われる場合もある。
特にアルバム単位で、オリジナル作品に一定の付加価値を与えて聞き手(買い手)にとってより魅力的なパッケージを制作して再リリースするような場合、「コレクターズ・エディション」、「リミテッド・エディション」などと称する場合がある(あくまでも販売戦略上レコード会社が任意で決める呼称であり、用法に定義・規則はない)。
これも広義の(楽曲単位ではなく「販売物」としてのアルバム単位での)別バージョンといえる。
この場合の付加価値とは、先に挙げたリミックス、リマスター等楽曲部分に対する音質向上措置、ライナーやブックレットなど添付物のグレードアップ、既発表音源のアウトテイクやライブ・バージョンなどの追加収録(ボーナス・トラック:作品によってはこの追加収録だけでCD1枚分もしくはそれ以上になる場合がある)、アナログ・レコード時代の装丁の復刻など、購買意欲を刺激するための様々なアイデアが盛り込まれる。
出版業などでは、発刊された書籍は(ビジネス書、実用書、文学作品などその内容を問わず)装丁を替えたり、誤植を修正したり、加筆を加えたりしながら版を重ねる。 書籍の場合一般に「第○版第○刷」といった表現が用いられ、「バージョン」という呼び方はされない。
1996年に任天堂がゲームボーイ用ソフトとして発売した『ポケットモンスター 赤・緑』が社会現象的な人気を博すと、同じ任天堂の『ゼルダの伝説 ふしぎの木の実』や他社の『メダロット』、『ドラゴンクエストモンスターズ2 マルタのふしぎな鍵』、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ4 最強決闘者戦記』、『SDガンダム英雄伝』、『クロスハンター』など、『ポケモン』の販売方法を模倣した、携帯ゲーム機でバージョン違いのゲームを同時若しくはやや遅れて発売するやり方が1990年代末から2000年代初頭にかけて流行した。
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