貫井徳郎
日本の文学者 ウィキペディアから
(ぬくい とくろう、1968年2月25日 -)は、日本の小説家・推理作家。東京都渋谷区生まれ[1]。東京都立青山高等学校を経て[4]、早稲田大学商学部卒業[1]。
経歴
高校一年生のときに小説を書き始め、初めて書いたミステリ(『鬼流殺生祭』の原型)を第4回横溝正史賞に応募する。当時ミステリを書いたのはその一作だけで、その後は伝奇SFを早川書房のハヤカワ・SFコンテストや講談社の小説現代新人賞に応募するも、予選を通過することはなかった[5]。
1992年12月31日付で、勤めていた不動産会社を退社。1993年、失業期間に書いた『慟哭』が第4回鮎川哲也賞の最終候補作となる(受賞作は近藤史恵『凍える島』)[6]。受賞は逃すが、予選委員の北村薫と編集者の戸川安宣の激賞を受け、東京創元社から黄金の13の一作として刊行され作家デビュー。2002年、北村薫が『慟哭』の創元推理文庫版の帯に「題(タイトル)は『慟哭』書き振りは≪練達≫読み終えてみれば≪仰天≫」というコメントを寄せたことがきっかけとなり[7]、50万部を超えるヒットとなる[8]。
長く文学賞受賞とは無縁であったが、2010年、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞を、『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞(同時受賞に飴村行『粘膜蜥蜴』)。『後悔と真実の色』は、著者みずから「推協賞(日本推理作家協会賞)を目指して書いた」と語った作品であったが、版元の幻冬舎が推薦作リストに入れ損ねるという不手際により、候補にすらなることが出来なかったが、『乱反射』で同賞を受賞[9]。推協賞選考後の記者会見で、選考委員の北村薫は「『乱反射』に与えないようなら、推理作家協会賞の存在意義はない」。なぜなら『乱反射』は「小説という衣の下に、本格の鎧を隠した作品」だからと受賞理由を語った[10]。
文学賞受賞・候補歴
太字が受賞したもの
ミステリ・ランキング
- 週刊文春ミステリーベスト10
- 1999年 - 『プリズム』20位
- 2001年 - 『神のふたつの貌』13位
- 2010年 - 『灰色の虹』12位
- 2012年 - 『微笑む人』19位
- 2019年 - 『罪と祈り』19位
- このミステリーがすごい!
- 1994年 - 『慟哭』12位
- 2000年 - 『プリズム』18位
- 2011年 - 『灰色の虹』20位
- 本格ミステリ・ベスト10
- 1999年 - 『鬼流殺生祭』18位
- 2000年 - 『プリズム』6位
- 2002年 - 『神のふたつの貌』11位
- 2003年 - 『殺人症候群』30位
- 2004年 - 『被害者は誰?』14位
- 2005年 - 『追憶のかけら』23位
- 2010年 - 『後悔と真実の色』9位
- ミステリが読みたい!
- 2011年 - 『後悔と真実の色』18位
作品
要約
視点
単行本
症候群シリーズ
→「症候群シリーズ」を参照
明詞シリーズ
シリーズ外
- 慟哭(1993年10月 東京創元社 黄金の13 / 1999年3月 創元推理文庫)
- 烙印(1994年10月 創元クライム・クラブ)
- 天使の屍(1996年11月 角川書店 / 2000年5月 角川文庫 / 2009年2月 集英社文庫)
- 修羅の終わり(1997年2月 講談社 / 2000年5月 講談社文庫 / 2017年7月 講談社文庫【新装版 上・下】)
- 崩れる 結婚にまつわる八つの風景(1997年7月 集英社 / 2000年7月 集英社文庫 / 2011年3月 角川文庫)
- 光と影の誘惑(1998年8月 集英社 / 2002年1月 集英社文庫 / 2010年11月 創元推理文庫)
- 収録作品
- 長く孤独な誘拐(東京創元社『創元推理4』1994年4月号)
- 二十四羽の目撃者(書き下ろし)
- 光と影の誘惑(東京創元社『創元推理8』1995年3月号)
- 我が母の教えたまいし歌(書き下ろし)
- 収録作品
- 転生(1999年6月 幻冬舎 / 2003年2月 幻冬舎文庫)
- プリズム(1999年10月 実業之日本社 / 2003年1月 創元推理文庫 / 2022年6月 実業之日本社文庫)
- 神のふたつの貌(2001年9月 文藝春秋 / 2004年5月 文春文庫 / 2021年4月 文春文庫【新装版】)
- 被害者は誰?(2003年5月 講談社ノベルス / 2006年5月 講談社文庫)
- さよならの代わりに(2004年3月 幻冬舎 / 2005年1月 幻冬舎ノベルス / 2007年8月 幻冬舎文庫)
- 追憶のかけら(2004年7月 実業之日本社 / 2006年12月 実業之日本社 ジョイ・ノベルス / 2008年7月 文春文庫)
- 【改題】追憶のかけら 現代語版(2022年8月 実業之日本社文庫) - 作中作を現代語に変更
- 悪党たちは千里を走る(2005年9月 光文社 / 2008年9月 集英社文庫 / 2011年6月 幻冬舎文庫)
- 愚行録(2006年3月 東京創元社 / 2009年4月 創元推理文庫)
- 空白の叫び(2006年8月 小学館 / 2010年6月 文春文庫)
- ミハスの落日(2007年2月 新潮社 / 2010年3月 新潮文庫 / 2016年9月 創元推理文庫)
- 収録作品
- ミハスの落日(新潮社『小説新潮』1998年10月号)
- ストックホルムの埋み火(新潮社『小説新潮臨時増刊 警察小説大全集』2004年3月号)
- サンフランシスコの深い闇(新潮社『小説新潮』2004年10月号)
- ジャカルタの黎明(新潮社『小説新潮』2006年4月号)
- カイロの残照(新潮社『小説新潮』2006年10月号)
- 収録作品
- 夜想(2007年5月 文藝春秋 / 2009年11月 文春文庫)
- 乱反射(2009年2月 朝日新聞出版 / 2011年11月 朝日文庫)
- 後悔と真実の色(2009年10月 幻冬舎 / 2012年10月 幻冬舎文庫)
- 明日の空(2010年5月 集英社 / 2013年4月 創元推理文庫)
- 灰色の虹(2010年10月 新潮社 / 2013年10月 新潮文庫)
- 新月譚(2012年4月 文藝春秋 / 2015年6月 文春文庫)
- 微笑む人(2012年8月 実業之日本社 / 2015年10月 実業之日本社文庫)
- ドミノ倒し(2013年6月 東京創元社 / 2016年6月 創元推理文庫)
- 北天の馬たち(2013年10月 角川書店 / 2016年9月 角川文庫)
- 私に似た人(2014年4月 朝日新聞出版 / 2017年6月 朝日文庫)
- 我が心の底の光(2015年1月 双葉社 / 2018年4月 双葉文庫)
- 女が死んでいる(2015年3月 メディアファクトリー / 2018年8月 角川文庫) - 単行本は藤原一裕のグラビアを併録したビジュアルブックで、「女が死んでいる」のみの収録
- 壁の男(2016年10月 文藝春秋 / 2019年11月 文春文庫)
- 宿命と真実の炎(2017年5月 幻冬舎 / 2020年10月 幻冬舎文庫) - 『後悔と真実の色』の続編
- 罪と祈り(2019年9月 実業之日本社 / 2022年10月 実業之日本社文庫)
- 悪の芽(2021年2月 KADOKAWA / 2024年1月 角川文庫)
- 邯鄲の島遙かなり(2021年8月 - 10月 新潮社【上・中・下】)
- 紙の梟 ハーシュソサエティ(2022年7月 文藝春秋)
- 龍の墓(2023年11月 双葉社)
アンソロジー
「」内が貫井徳郎の作品
- 孤愁(1994年12月 角川書店)「清洲橋」
- 奈落(1995年8月 集英社文庫)「怯える」
- 推理小説代表作選集 1995年版(1995年6月 講談社)「崩れる」
- 【改題・再編集】犯行現場にもう一度 ミステリー傑作選33(1997年11月 講談社文庫)
- 推理小説代表作選集 1997年版(1997年6月 講談社)「子を思う闇」
- 【改題・再編集】殺ったのは誰だ?! ミステリー傑作選36(1999年11月 講談社文庫)
- 大密室(1999年6月 新潮社 / 2002年1月 新潮文庫)「アレナル通り殺人事件」(単行本にまとめる際「ミハスの落日」に改題)
- 「ABC」殺人事件(2001年11月 講談社文庫)「連鎖する数字」
- 本格ミステリ03 2003年本格短編ベスト・セレクション(2003年6月 講談社ノベルス)「目撃者は誰?」
- 【改題】論理学園事件帳 本格短編ベスト・セレクション(2007年1月 講談社文庫)
- エロチカ(2004年3月 講談社)「思慕」
- 決断(2006年1月 新潮文庫)「ストックホルムの埋み火」
- 気分は名探偵 犯人当てアンソロジー(2006年5月 徳間書店 / 2008年9月 徳間文庫)「蝶番の問題」
- 9の扉(2009年7月 マガジンハウス / 2013年11月 角川文庫)「帳尻」 - 北村薫、法月綸太郎らとのリレー短編集
- 午前零時(2009年11月 新潮文庫)「分相応」
- 文豪さんへ。(2009年12月 MF文庫ダ・ヴィンチ)「あるソムリエの話」
- 探偵Xからの挑戦状! season3(2012年5月 小学館文庫)「殺人は難しい」
- 痛み(2012年5月 双葉社)「見ざる、書かざる、言わざる ハーシュソサエティ」
- 【増補・改題】警官の貌(2014年3月 双葉文庫)
- Wonderful Story(2014年10月 PHP研究所)「犬は見ている」
- サイドストーリーズ(2015年3月 角川文庫)「オレンジの水面」
- 自薦 THE どんでん返し(2016年5月 双葉文庫)「蝶番の問題」
- 推理作家謎友録 日本推理作家協会70周年記念エッセイ(2017年8月 角川文庫)※エッセイアンソロジー「この十年のマイベストミステリ『ミンコット荘に死す』レオ・ブルース」
- 平成ストライク(2019年4月 南雲堂 / 2020年10月 角川文庫)「他人の不幸は蜜の味」
- Day to Day(2021年3月 講談社 / 2021年3月 講談社【愛蔵版】)「4/29 ランプの魔神」
- 新本格ミステリはどのようにして生まれてきたのか? 編集者宇山日出臣追悼文集(2022年3月 星海社)「宇山さんの思い出」
その他
著者名本未収録短編
- 歪んだ三角(東京創元社『創元推理』1993年秋号)
- 清洲橋(角川書店『野性時代』1994年5月号)
- そして天使は微笑む(講談社『別冊小説現代』1994年7月号)
- トラブルシューター(東京創元社『創元推理』1994年夏号)
- 子を思う闇(講談社『小説現代』1996年1月号)
- 母性という名の狂気(講談社『小説現代97年8月号)
- 齟齬(光文社文庫付録『文庫のしおり』1998年6月号)
- 連鎖する数字(講談社文庫『「ABC」殺人事件』2001年11月刊行) - 吉祥院先輩シリーズ
- 双飛の翼(文藝春秋『オール讀物』2002年9月号)
- 思慕(講談社『小説現代』2003年7月号)
- 長い片思い(文藝春秋『オール讀物』2004年7月号)
- あり得たかもしれない未来、今ぼくがいる場所(講談社『小説現代』2004年8月号) - 『さよならの代わりに』番外編
- 蝶番の問題(産業経済新聞社『夕刊フジ』2005年9月29日号 - 10月28日号) - 吉祥院先輩シリーズ
- 着信音(新潮社『週刊新潮』2006年2月2日号 - 2月23日号)
- 窃視症(文藝春秋『オール讀物』2006年5月号)
- あと一歩(文藝春秋『オール讀物』2006年7月号)
- 分相応(電子書籍サイト『Timebook Town』2006年8月 - 9月配信)
- 仔猫(文藝春秋『オール讀物』2007年3月号)
- あるソムリエの話(ニンテンドーDS用ソフト『DS文学全集』2008年1月配信)
- 追懐の島(新潮社『週刊新潮』2008年10月16日号)
- 帳尻(マガジンハウス『ウフ.』2009年1月号)
- 思い出の中の新宿(新潮社『週刊新潮』2009年2月26日号)
- 犬嫌い(文藝春秋『オール讀物』2010年7月号)
- 愛猫家(新潮社『小説新潮』2010年7月号)
- 男女の友情(双葉社『小説推理』2011年1月号)
- 公立殺人クラブ(新潮社『小説新潮』2011年7月号)
- オレンジの水面(JTウェブサイト『ちょっと一服ひろば』2014年7月5日 - 7月31日配信) - 『北天の馬たち』番外編
- 犬は見ている(PHP研究所『Wonderful Story』2014年10月刊行)
連載
- 慕情(集英社『小説すばる』1999年11月 - 2002年5月号、連載終了)
- 接点 慕情一九七七年(集英社『小説すばる』1999年11月号)
- 予兆 慕情一九八五年(集英社『小説すばる』2000年5月号)
- 別離 慕情一九八一年(集英社『小説すばる』2000年11月号)
- 敵意 慕情一九八九年(集英社『小説すばる』2001年5月号)
- 衝突 慕情一九九三年(集英社『小説すばる』2001年11月号)
- 慕情 慕情一九九〇年(集英社『小説すばる』2002年5月号)
- 氷の明日(文藝春秋『本の話』2007年1月号 - 2008年5月号、連載中断)
- 歩き続ける君へ(実業之日本社『月刊J-novel』2010年5月号 - 8月号、連載中断)
- 不等辺五角形(東京創元社『紙魚の手帖』vol.15 FEBRUARY 2024 - )
解説
メディア・ミックス
映画
テレビドラマ
- 長く孤独な誘拐(2004年2月2日、TBS系「月曜ミステリー劇場」で放送、主演:上川隆也)
- 殺人は難しい(2011年4月21日、NHK「探偵Xからの挑戦状!」で放送)
- 世にも奇妙な物語 2011年 秋の特別編「憑かれる」(2011年11月26日、フジテレビ系、主演:松下奈緒)[17]
- 灰色の虹(2012年5月19日、テレビ朝日系、主演:椎名桔平)[18]
- 悪党たちは千里を走る(2016年1月20日 - 3月23日、全10話、TBS系「水ドラ!!」で放送、主演:ムロツヨシ)[19]
- 犯罪症候群 Season1(2017年4月8日 - 5月27日、全8話、東海テレビ・フジテレビ系「オトナの土ドラ」で放送、主演:玉山鉄二、原作:失踪症候群・誘拐症候群)
- 犯罪症候群 Season2(2017年6月11日 - 7月2日、全4話、WOWOW「連続ドラマW」で放送、主演:谷原章介、原作:殺人症候群)
- 乱反射(2018年9月22日、名古屋テレビ・テレビ朝日系、主演:妻夫木聡・井上真央)[20]
- 微笑む人(2020年3月1日、テレビ朝日、主演:松坂桃李)[21]
漫画
- 見られる(画:秋乃ななみ、秋田書店『サスペリアミステリー』2011年12月号)
- 追われる(画:秋乃ななみ、秋田書店『サスペリアミステリー』2011年12月号)
- 壊れる(画:北川玲子、秋田書店『サスペリアミステリー』2012年8月号)
メディア出演
脚注
関連項目
外部リンク
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