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松本零士による日本の漫画 ウィキペディアから
『戦場まんがシリーズ』(せんじょうまんがシリーズ)は、松本零士の代表作の一つで、第二次世界大戦をベースにした短編漫画集。本項では、少年サンデーコミックス『戦場まんが』1 - 9集に収録された作品、およびこれらを原作としたOVA作品『ザ・コクピット』を主体に記述する。
「戦場まんがシリーズ」と呼ぶ場合、本来は小学館の『週刊少年サンデー』に不定期連載されたものを指す。少年サンデーコミックスには、『ビッグコミックオリジナル』掲載の「ザ・コクピット」シリーズや、過去に『プレイコミック』や『COM』に掲載された短編も収載されているが、それらもまとめて「戦場まんが」と名付けている。(単行本の背に「戦場まんが」と表記されたのは、第二集『鉄の墓標』からで、『スタンレーの魔女』初版にはなく、重版分から追記された)実際には「わが青春のアルカディア」以降の単行本の作品は、ほとんどザ・コクピットシリーズである。また、「戦場まんがシリーズ」作品も、後年「ザ・コクピット」のタイトルでまとめられた単行本に収載されたりしており、更には他の雑誌等で発表された第二次大戦ものを含めて、現在では「ザ・コクピットシリーズ」という形でくくられることが多く、初出による厳密な区別はほとんどされていない。
「ザ・コクピットシリーズ」として発表された作品は、掲載が青年誌(ビッグコミックオリジナル)であり、性描写がたびたび登場する。単行本は「少年サンデーコミックス」として出されているため、収載にあたっては当該部分の多くは改稿あるいは修正されており、現在も修正後のままのものが流通している。 また、「戦場まんがシリーズ」作品にも理由は不明ながら、「スタンレーの魔女」のようにページごと描き直されているものがある。
娯楽性やドラマ性を優先して、兵器の考証面には史実と多くの差異がある。これは初期作品は日本で入手できる資料が少ないころに執筆され、後期の「ザ・コクピットシリーズ」は作品オリジナルの「試作兵器」が多いためでもある。
太字のタイトルは書籍名となった作品。
タイトル | 初 出 | タイトル | 初 出 |
---|---|---|---|
アフリカの鉄十字 | 『プレイコミック』1969年8月10日号 | 成層圏気流 | 『ビッグコミックオリジナル』1977年5月5日号 |
成層圏になくセミ | 『COM』1969年10月号 | 四次元戦線 | 『週刊少年サンデー』1977年17号 |
幽霊軍団 | 『プレイコミック』1969年11月22日号 | アクリルの棺 | 『ビッグコミックオリジナル』1977年8月5日号 |
パイロットハンター | 『週刊少年サンデー』1973年10号 | 死神の羽音 | 『ビッグコミックオリジナル』1977年10月5日号 |
鉄の墓標 | 『週刊少年サンデー』1973年22号 | 双発の騎士 | 『ビッグコミックオリジナル』1977年11月5日号 |
独立重機関銃隊 | 『週刊少年サンデー』1973年28号 | 砂とスコッチ | 『ビッグコミックオリジナル』1977年11月20日号 |
晴天365日 | 『ビッグコミックオリジナル』1975年6月20日号 | 『ビッグコミックオリジナル』1977年12月5日号 | |
妖機 黒衣の未亡人 | 『ビッグコミックオリジナル』1975年7月20日号 | 雷撃艇13号 | 『ビッグコミックオリジナル』1977年12月20日号 |
成層圏戦闘機 | 『週刊少年サンデー』1973年34号 | 『ビッグコミックオリジナル』1978年1月5日号 | |
グリーン・スナイパー =緑の狙撃兵= | 『週刊少年サンデー』1973年41号 | ニケの首飾り | 『ビッグコミックオリジナル』1978年11月5日号 |
スタンレーの魔女 | 『週刊少年サンデー』1973年47号 | 銃剣戦線 | 『週刊少年サンデー』1978年13号 |
メコンの落日 | 『週刊少年サンデー』1974年2号 | 海の花 | 『ビッグコミックオリジナル』1977年10月20日号 |
零距離射撃88 | 『週刊少年サンデー』1974年8号 | 夜の蜉蝣 | 『ビッグコミックオリジナル』1978年1月20日号 |
音速雷撃隊 | 『週刊少年サンデー』1974年15号 | 『ビッグコミックオリジナル』1978年2月5日号 | |
大艇再び還らず | 『ビッグコミックオリジナル』1975年8月26日号 | 弾道トンネル150 | 『週刊少年サンデー』1977年23号 |
鉄の竜騎兵 | 『週刊少年サンデー』1974年24号 | 沈黙の虎 | 『週刊少年サンデー』1977年27号 |
戦場交響曲 | 『週刊少年サンデー』1974年29号 | 翼手龍の時代 | 『ビッグコミックオリジナル』1978年2月20日号 |
ゼロ | 『週刊少年サンデー』1974年33号 | 空白圏飛行 | 『ビッグコミックオリジナル』1978年3月5日号 |
オーロラの牙 | 『週刊少年サンデー』1975年40号 | 悪魔伝の七騎士 | 『ビッグコミックオリジナル』1978年4月5日号 |
ラインの虎 | 『週刊少年サンデー』1974年45号 | 曳光弾回廊 | 『ビッグコミックオリジナル』1978年5月5日号 |
爆裂弾道交差点 | 『ビッグコミックオリジナル』1975年9月26日号 | レッドスカル | 『ビッグコミックオリジナル』1978年7月5日号 |
衝撃降下90度 | 『ビッグコミックオリジナル』1975年11月20日号 | 低伸弾道12.7 | 『ビッグコミックオリジナル』1978年10月5日号 |
ベルリンの黒騎士 | 『週刊少年サンデー』1974年51号 | 吸血鬼の花束 | 『ビッグコミックオリジナル』1978年8月5日号 |
潜水航法1万メートル | 『ビッグコミックオリジナル』1975年10月20日号 | 断層回路 | 『ビッグコミックオリジナル』1978年9月5日号 |
亡霊戦士 | 『ビッグコミックオリジナル』1976年1月5日号 | サンタ クルーズの橋 | 『ビッグコミックオリジナル』1979年1月5日号 |
流星北へ飛ぶ | 『ビッグコミックオリジナル』1976年3月20日号 | 妖精氷河帯 | 『ビッグコミックオリジナル』1979年3月5日号 |
わが青春のアルカディア | 『ビッグコミックオリジナル』1976年5月5日号 | サンタ イザベラの首飾り | 『ビッグコミック』1981年8月25日号 |
紫電 | 『ビッグコミックオリジナル』1976年9月1日増刊号 | 迷路地図 | 『ビッグコミック』1981年11月10日号 |
エルベの螢火 | 『ビッグコミックオリジナル』1976年10月5日号 | 富嶽のいたところ | 『ビッグコミック』1981年10月25日号 |
復讐を埋めた山 | 『ビッグコミックオリジナル』1976年12月20日号 | 冬の蜻蛉 | 『ビッグコミック』1983年2月10日号 |
勇者の雷鳴 Rising Thunderbolt | 『ビッグコミックオリジナル』1977年3月5日号 | 赤の蛍 | 『ビッグコミック』1982年2月25日号 |
消滅線雷撃 | 『ビッグコミックオリジナル』1977年4月5日号 | 天使の徹甲弾 | 『ヤング・シュート』1989年11月号 |
夜のスツーカ | 『ビッグコミックオリジナル』1977年5月5日号 | 出典:『ザ・コクピット 松本零士の世界』 p106 |
※タイトルの順序は、『ザ・コクピット』1~5巻(小学館、1990年)の収録順になっています。
戦場まんがシリーズは全9巻が刊行されている。単行本タイトルと短編タイトルは次の通り。
『週刊少年サンデー』(小学館)にて1974年15号に掲載された。
第二次世界大戦末期、「人間爆弾」「BAKA BOMB(馬鹿爆弾)」と揶揄された特攻兵器である桜花と、その搭乗員、そして桜花の運用母機となった一式陸攻搭乗員たちの悲壮な戦いを描いた作品である。ただ単純に搭乗員たちの奮闘をヒロイックに表現するばかりではなく、敵役となる米軍の視点に立った描写もあり、敵味方関係なく感じられる普遍的な戦争の無常感や侘びしさを描いている。
太平洋戦争末期、沖縄に展開する米機動部隊に抗するために編成された桜花特別攻撃隊であったが、重厚な米軍の邀撃態勢と桜花そのものの運用の困難さもあって、思ったような成果をあげられずにいた。そんな中、図らずも桜花による特攻に頓挫し、ただひとり基地に生還した野中少尉は、引き続き特攻を行うため新たな一式陸攻搭乗員たちと相見える。一式陸攻の機長・山岡中尉は戦争で死んだ大勢の若者たちがあと30年生きていたらと思いを馳せるが、仲間を失った米軍の搭乗員たちも同じ思いであった。
翌日、再びの出撃となった桜花特別攻撃隊だったが、米軍の激しい迎撃に遭い、野中と桜花を搭載した一式陸攻は米艦隊に接触する以前に被弾・炎上する。桜花と自分を投棄して逃げろと懇願する野中であったが一式陸攻は飛び続け、ついに米艦隊の目視圏内まで到達することに成功し、桜花を切り離した。バラバラになって燃え墜ちていく一式陸攻を背に、野中を乗せた桜花はロケットエンジンを点火し米空母への特攻を成し遂げたのだった。
損害を受けた米空母の艦長は広島に原子爆弾が投下されたことを知り「おれたちも、きちがいか...... 敵も味方も、みんなきちがいだ...」と呟き、爆沈する米空母と運命を共にする。[注釈 1]
『週刊少年サンデー』(小学館)にて1974年24号に掲載された。
太平洋戦争後期のフィリピンの戦いを舞台に、オートバイ兵士同士の戦闘を描いた物語。「鉄の竜騎兵」とは、オートバイの兵士を指している。
1944年、フィリピン。ゼラバンカ平原。第28独立野戦重砲兵連隊は、撤退前に最後の抵抗を試みていた。砲兵隊は日本本土から持ってきていた野戦重砲を1発も撃たず撤退することはできないという理由で、20km先の米砲兵陣地を砲撃する。
その様子を見ていた古代一等兵は敵からの激しい応射が来ると予想し、仲間と共に塹壕に逃げ込む。直後、米砲兵陣地から放たれた砲弾が降り注ぎ、砲兵隊はおろか、連隊司令部もろとも焼け野原と化してしまう。
そんな中、カラケチル飛行場からの伝令として単車に乗った宇都宮一等兵が到着する。彼は、カラケチル飛行場守備隊と航空隊が米軍の攻撃で危うくなっていることを伝えるため、援軍の要請に来たのだ。
しかし、先程の砲撃で連隊司令部ごと焼け野原になってしまったことを古代一等兵から説明を受けた。第28独立野戦重砲兵連隊の生き残りは師団命令により転進命令が下され、宇都宮一等兵は日没後にカラケチル飛行場へ戻ろうしたが古代一等兵により引き止められ、そのまま眠ってしまう。宇都宮一等兵が転進命令を伝えに100km先のカラケチル飛行場に戻るにしても、単車は焼き付きやその他損傷により再始動不能となっており実質不可能であった。
宇都宮一等兵が目を覚ますと、そこには部隊が撤退したのにも関わらず残留した古代一等兵の姿があった。故障していた単車は直っており、古代一等兵いわく「自動車整備中隊の人間が壊れた単車や自動車の部品を集めて直した」と説明した。宇都宮一等兵はカラケチル飛行場に単独で戻ろうとしたが、自称「戦闘の専門家」だという古代一等兵が半ば強引に側車に乗り込んでしまう。そうして2人はカラケチル飛行場に向けて走り出したのであった。
日が登ると同時に、友軍機による銃撃を受け、憤慨した古代一等兵は軽機関銃を構えるが、友軍機は不安定な機動のまま失速しそのまま墜落する。2人は墜落現場に向かうが、大破した機体の傍らで横たわっている米兵の遺体を確認する[注釈 4]。日本軍の塗装のままで敵が飛ばし、油断した日本兵を襲っていたのだ。近くにカラケチル飛行場の他に飛行場は無いことから、飛行場守備隊が全滅したことを両者は察する。古代一等兵は「行くだけ無駄ではないか」と問うが宇都宮一等兵は「約束がある」としてカラケチル飛行場に向かうことを引き続き決行する。
見晴らしの良い平野を日中に走行していると発見される可能性が高くなるため、カラケチル飛行場まで20分の地点で野営をするが、その夜、突如米兵のパトロール隊に襲撃を受ける。古代一等兵は歩兵を手榴弾で爆殺し、宇都宮一等兵の代わりに単車に乗り込む。直後、単車に乗った米兵に発見され単車同士の撃ち合いとなる。宇都宮一等兵は古代一等兵がいつの間にか身につけたレース用ゴーグルを見て、彼もまた単車に乗っていたこと、そして自分の単車を修理したのも古代一等兵だということを理解する。このまま撃ち合っていても埒が明かないと考えた古代一等兵は側車を正面から米兵の頭部へ当て、単車から落下させることに成功する。
その後、古代一等兵は宇都宮一等兵を強制的に側車から下ろした後、自身が戦前のレース中、マシントラブルで最後までゴールできなかったことを吐露し、飛行場行きは自身にとっての最後のレースであるということを宇都宮一等兵へ心の内を明かす。そして、米兵に占領されたカラケチル飛行場を「ゴール」と称し、単身突入する。
米兵の機関銃による激しい応戦で、遂に単車は動かなくなる。宇都宮一等兵は先の敵機の襲撃時に負った銃創が原因で、最後まで単車の名を呼びながら息絶える。古代一等兵は飛行場にこそたどり着けなかったが、死ぬまでに走り抜いたことを満足し笑みを浮かべながら息絶えたのだった。
大日本帝国陸軍第28独立野戦重砲兵連隊所属の一等兵。米軍砲兵部隊からの応戦で塹壕に仲間と共に隠れていたところへ、単車に乗りやってきた宇都宮一等兵と出会う。自称「戦闘の専門家」[注釈 5]である。
カラケチル飛行場守備隊所属の一等兵。守備隊と航空隊が米軍の攻撃により危うくなっているため、伝令として単車に乗り込み100km離れた第28独立野戦重砲兵連隊へ到着する。飛行場守備隊に熊田と川上という戦友がいる。
物語終盤で登場する、単車に乗った米兵。片手にM3サブマシンガンを構え、古代一等兵らを執拗に追い回す。
『ビッグコミックオリジナル』(小学館)にて1975年11月20日号に掲載された。
第二次世界大戦末期、試作戦闘機での音速突破に挑戦するパイロットと技術者の奮闘を描く。いわゆる「戦場まんがシリーズ」の中でも代表作の一つ。シリーズ単行本第5巻の表題作である。
本土空襲が始まり日本の敗色が濃い1945年(昭和20年)夏。日本本土を襲うB-29戦略爆撃機と護衛戦闘機P-51ムスタングに対抗できる迎撃機は日本には存在せず、それらに勝つためには音速を突破できるような高性能戦闘機が必要とされていた。
しかし最早、日本ではジェット戦闘機もロケット戦闘機も開発する余力などない。使い慣れたレシプロエンジンのプロペラ戦闘機で限界までの性能を追求するべきではないのか?操縦士である台場は親友である技術者の山越が開発した試製高高度戦闘機「キ-99」にて垂直急降下による限界速度性能試験を行う。
しかし、技術や材質の限界で事故が続出、台場は重傷を負う。もはや音速を超えることなど不可能だと絶望する山越、「お前の嘘のせいで俺は手足を失ったのか」と詰問する台場。
もはや日本軍には資材も燃料も無い。撃墜されたB-29から回収した資材まで利用して最後に作製された試作3号機でテストに発進する台場。八丈島上空で彼は偶然、アメリカ陸軍のP-47の編隊に遭遇し追跡を受ける。
当時米軍一の急降下性能をもったP-47の追跡をうけながら最後の降下テストに挑む台場。そして彼が見たものとは……。
声優はラジオドラマ版(後述)のもの。
『ビッグコミックオリジナル』(小学館)にて1976年9月1日号に掲載された。第二次世界大戦中、撃墜された戦闘機パイロットによる敵への復讐を描いた作品である。
太平洋戦争フィリピン戦線にて、海軍航空隊パイロット服部中尉は紫電で任務中、P-38戦闘機の編隊に不意打ちを喰らい撃墜される。からくも落下傘降下で脱出するも地上でも機銃掃射をうけ命からがら逃げ回る羽目に。
翌年、命からがら本土に帰還した彼を待っていたのは、その時撮影されていたガンカメラの映像がニュース映画として全世界に公開されたという屈辱的な出来事であった。
彼を撃墜しフィルムを撮影したマッドウェー大尉に復讐を誓う服部中尉、しかし戦局は彼の個人的な事情など許さないほど切迫しており、彼にも特攻隊の直援隊として決死の出撃命令が下る。必死の出撃の前に彼の機体付の整備兵は激励する。「服部さん、あんたは絶対死なしまへんで!絶対!」
何度か出撃をするが、ある理由で必ず生き延びる服部。復讐のために生き残りの屈辱に耐える彼だが、やがて訪れた敗戦の報が彼をさらに打ちのめす。服部中尉の復讐は叶うのか?……
『ビッグコミックオリジナル』1977年5月5日号に掲載された。核弾頭を輸送する護衛任務を命じられたドイツ空軍パイロットの戦いと葛藤を描く。
1944年、ドイツ。ドイツ空軍パイロット、エアハルト・フォン・ラインダース大尉(以下、ラインダース)とハルトマン大尉はマルプレッケン上空をFw190A-4にて夜間飛行中に、スピットファイア3機からの襲撃を受ける。ハルトマンは被弾、炎上したため、脱出を試みるが、キャノピーが開かずそのまま空中爆発し、戦死してしまう。ラインダースは引き続き英軍機の追尾を受けるが、高度9000mの高高度での戦闘では性能に不利が生じ、振り切ることは不可能と判断したため、自ら脱出する。
脱出後は空中でパラシュートが展開しないなどのトラブルもあったが、マンハ湖へ無事着水することに成功する。直後、友軍の兵士から機体がマンハ湖近くの草原に不時着していることを知らされる。機体は不時着による地面との干渉によりプロペラの先端が曲がっている他、外傷は無かった。
基地に戻ったラインダースは、1発の銃痕もなく、また全く異常のないFw190A-4を目の当たりにした兵士達や上官から、戦闘機を戦わずして放棄したという卑怯者の烙印を押されてしまう。
基地内にて、鹵獲したB-17を見たラインダースは、ある輸送任務の護衛を任される。任務の概要はロケット実験場のあるペーネミュンデまで鹵獲したB-17で「ある積荷」を輸送するというものだった。B-17の搭乗員にはかつてラインダースが原子物理学を学んでいた時の恩師であるバフスタイン教授とその助手であり娘でもあるメルヘンナーが搭乗することになっていた。搭乗する理由を問うが機密事項だとはぐらかされる。そして護衛する際には今までのFw190A-4とは異なるTa152H-1への搭乗を言い渡される。
その夜、ラインダースはメルヘンナーから「私は護衛してもらいたくない」と任務とは意に反する言葉を聞かされる。そしてその理由をラインダースに教えるべく、メルヘンナーはラインダースを連れて、離陸までの間、監視が厳しいB-17へ潜り込む。B-17の爆弾槽内に固定してある積荷を見てラインダースは、V2ロケットに搭載する予定の核弾頭であることを理解する。ラインダースの護衛任務は核弾頭を搭載したB-17をロケット実験場のあるペーネミュンデまで護衛するというものだったのだ。メルヘンナーは「ロンドンかワシントンかモスクワか、どこかが消滅する。ドイツが造らなくてもいずれどこかが造る。でも、これを最初に人類の頭上に落とした者は、悪魔に魂を売った、血も涙もない鬼として人類の歴史に記憶されてしまう。」と語る。
夜間に、任務は開始された。核弾頭を搭載したB-17にはパイロットの他、バフスタイン教授とメルヘンナー、そしてラインダースの上官が搭乗した。ラインダースは友軍のB-17であると敵に気づかれないよう、無線封鎖を行った。予想通り、敵のスピットファイア3機が現れ、B-17に対し、攻撃態勢をとった。しかし、ラインダースはこれらの敵機を迎撃しなかった。そのため、被弾により炎上したB-17は墜落の一途を辿る。機内でバフスタイン教授はラインダースが敵機を迎撃しなかった訳を理解し、娘のメルヘンナーと共にラインダースへの感謝を伝えながら、運命を共にする。
B-17の機体が爆散したことを確認したラインダースは、敵のスピットファイアに向けて襲いかかった。Ta152H-1は高度10,000mでもスピットファイアに劣らない性能を誇り、高火力を以て全機を撃墜する。
そして、ラインダースは卑怯な振る舞いを二度侵した、哀れな戦闘機パイロットとして永久に卑怯者の烙印を押されてしまうのだった。
第4巻の「わが青春のアルカディア」では宇宙海賊キャプテンハーロックの主人公であるハーロックの先祖(ファントム・F・ハーロック2世)が登場。ハーロックの愛機でもあるアルカディア号や、親交のあった台場についても描かれている。同名のアニメ映画「わが青春のアルカディア」ではこの話がストーリーに織り込まれているが、ハーロックの相手役が台場ではなく、大山トチローの先祖(大山敏郎)に変更されている。また第一巻「スタンレーの魔女」でのファントム・F・ハーロック1世のエピソードも織り込まれているが、ハーロック1世の声を演じたのが石原裕次郎であり、当時その高額なギャラが話題となっている(わが青春のアルカディア参照)。
1993年に『ザ・コクピット』(THE COCKPIT)として、オムニバス形式のアニメ作品(OVA)として映像化された。制作はマッドハウス、ジャコム、ビジュアル80。映像化された作品は「成層圏気流」、「音速雷撃隊」、「鉄の竜騎兵」の3本。
原作は第6巻「悪魔伝の七騎士」収録の第4話「成層圏気流」。原子爆弾輸送機の護衛任務を命じられたドイツ空軍パイロットの戦いと葛藤を描く。
1978年、ニッポン放送により「キリン・ラジオ劇場 ザ・コクピット」が製作され、後にLP化された。
LPの収録はラジオドラマ2編、インストゥルメンタル3曲、イメージソング1曲である。
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