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脊椎動物のうち四肢動物を除外した動物 ウィキペディアから
魚類(ぎょるい)は、脊椎動物亜門 Vertebrataから四肢動物を除外した動物群。日本語の日常語で魚(さかな、うお)[注釈 1]と呼ばれる動物である。
基本的に一生の間水中生活を営み、えら(鰓)呼吸を行い、ひれ(鰭)を用いて移動する。体表はうろこ(鱗)で覆われている。
ほとんどの種は外界の温度によって体温を変化させる変温動物である。マグロやカジキ、一部の軟骨魚類は奇網と呼ばれる組織により、体温を海水温よりも高く保つことができる。
魚類は地球上のあらゆる水圏環境に放散し、その生息域は熱帯から極地、海洋の表層から深層、また内陸の淡水域まで多岐におよぶ。その生態や形態も実に様々である。魚類全体の種数は2万5,000 - 3万近くにものぼり、脊椎動物全体の半数以上を占めている。
大きさは種により大きく異なる。現生種で最大のものは体長13.7メートルに達するジンベエザメである。また化石種を含めると、約1億6,500万年前のリードシクティス・プロブレマティカスに、推定の仕方に違いがあるが28メートル以上もしくは16.7メートルの個体が発見されている。一方、現生種で最小のものはパエドキプリス・プロゲネティカであり、成魚でも7.9ミリメートルにしかならない。
冒頭文の定義では煩雑な表現をとったが、これは現在の系統学の立場からこの群を定義する他の方法が無いからである。古くは単に魚と考えればひとくくりに出来る感覚であり、20世紀半ばまではそれらを魚綱として一つにまとめ、その下に無顎類、軟骨魚類と硬骨魚類の三群を置くのが普通であった。これらは脊椎や頭部、脊髄と脳などの脊椎動物の基本構成の体制を持ち、鰓裂を鰓として持ち、鰭があって水中を遊泳するのに都合のいい構造をもっている。だが、これらはすべて、脊椎動物のきわめて祖先的形態にすぎない。
現在の分類学的観点からすると古典的な魚綱という群は単系統群ではなく側系統群であり、互いにかなり異質な系統を包含している。たとえば硬骨魚類は四肢動物とともに軟骨魚類や無顎類と別の単系統群を構成するし、そもそも硬骨魚類と軟骨魚類はともに無顎類とは別の単系統群である顎口上綱を構成する。そのため、最古の魚類であるミロクンミンギア、ハイコウイクチスから現代に生息している種までを一つの概念としてまとめようとした場合、このような表現にならざるを得ないのである。
進化の観点から言えば、ヒトを含む陸上脊椎動物の遠い祖先も魚類である。脊椎動物は水中で多様な群に分化し、その一部から陸上進出が行われ、それらがさらに分岐し多様な進化を遂げた。現在の魚類はこれらのうち、水中段階にとどまっているもの(上陸後に水中に戻ったものを除いて)をまとめたもの、といってもよい。ある意味でやはり陸上進出によって多様化した群の中で原始的構造をとどめたものをまとめたものであるシダ植物という群の位置づけに近い。
なお、定義に関連していえば、日本語の基礎語彙としての「魚(さかな)」と学術用語である「魚類」とは別語である。後者が分類学の手法でしか定義されないのに対し、前者は元来、生物学の知識の全くない人でも扱うことのできる語彙で、それで差し支えない範囲の中において用いられるものであった。
解剖学的に見ると、魚類の体は水の特徴(空気に比べて粘性が高い、溶存酸素が少ない、光を吸収し透過しにくいなど)に適応したものだと言える。近年まで脳の構造上痛みを感じないといわれたが、魚類の痛覚には諸説あり、ニジマスの痛覚実験で痛覚受容体が存在するとした論文も掲載されている為、魚に痛覚があることも大いに考えられる[1]。
水の抵抗を受けにくい流線型である種が多い。活発に泳ぎ回る種に多い。
体は頭部、胴部、尾部の3つに分けられる。
頭部に含まれるものは、眼から上あごの先端部までの吻部、えら蓋、頬部(眼から前鰓蓋骨まで)および下あごである。頭には長いヒゲやトゲを持つものもいる。鼻孔には様々な形や深さのものがあるが、多くの場合には、前鼻孔と後鼻孔とが皮下で連結したU字型の管になっており、鼻孔と口腔とは繋がらない。吻の前部にある前鼻孔から入った水は、そのまま後部にある後鼻孔から流出するようになっている。
胴部は頭部以降から肛門の位置までで、外見上は臀鰭の前までである。消化器官は全てここまでに含まれる。
尾部は肛門以降、尾びれまでである。背面の筋肉が胴部から尾部へと連続的に発達しているので、外見上は尾の区別がはっきりしない。つまり、胴部から尾部をまとめて運動に使用しているとも言える。尾部の比率は比較的高く、多くの種で3割以上、ウナギ目の魚などは7割以上が尾である。
水中の少ない溶存酸素を利用するために、えら(鰓)という器官を発達させている。魚類の属する脊索動物門の鰓の基本構造は、口から咽頭に吸い込んだ外界水を排出する鰓裂(さいれつ)というスリット、スリット間の鰓弓(さいきゅう)という支柱、鰓弓に生じた鰓弁(さいべん)というガス交換器官から成っている。硬骨魚類では、これらの基本構造のセットが頭部の後方にある1対の鰓蓋骨(さいがいこつ、いわゆるえらぶた)で覆われていて、弓上の骨に支えられた鰓弓が4対存在する。鰓弓からは一次鰓弁が何本も伸び、さらに一次鰓弁上には表面積を拡げるための二次鰓弁が多数存在して、ガス交換に用いられる表面積を著しく拡大している。鰓弁には血管が高密度に通っており、外界(海水、淡水)と直接ガス交換を行う。そのためえらは赤く見える。えらはガス交換の他にも、塩類細胞によるイオンの排出・取り込みや窒素排泄物であるアンモニアの排泄を行っている。鰓弓を挟んで鰓弁の反対側にはしばしば鰓耙(さいは)というくし状の突起が発達し、口から吸いこんだ水や堆積物の中から食物をより分けたり漉し分けて食道へと送る機能を持っている。
ひれ(鰭)は体から突き出した薄膜状の構造である。基部には骨格や筋肉があり、動かせる。泳いだり、海底や地上を這ったり砂に潜ったりするのに使われる。
ひれは体につく位置により次のように分類される。
胸びれと腹びれは左右1対あり、これらを対鰭(ついき)、それ以外を不対鰭(ふついき)と呼ぶ。また背びれの数は1基、2基、3基と数え、前から順に第1背鰭、第2背鰭、第3背鰭と呼ぶ。
ひれの形態は、軟骨魚類、肉鰭類、条鰭類で大きく異なる。
ひれが遊泳以外の目的に進化している場合もある。また進化の過程で、一部のひれが退化していることも多い。
うろこは1つ1つは小さな板や棘(とげ)のような形のもので、これが多数集まって体の表面を覆う。外部の衝撃から皮膚や筋肉、内臓を保護する役割を担う。種によって大きさや形は異なり、うろこを持たない種もいる。硬骨魚類のうろこには樹木の年輪に相当する模様が刻まれており、年齢を知るのに役立つ。
うろこは大きく4種類に分けられる。現存する硬骨魚類の多くは円鱗(えんりん)あるいは櫛鱗(しつりん)を持つ。ヒラメのように体の部分によって円鱗と櫛鱗を有する種類もいる。
鰾は主に条鰭類が持つ器官である。浮き袋とも呼ばれる。
魚類の体は海水より比重が大きく、何もしなければ沈降してしまう。そこで、簡単に浮力を得るために鰾を発達させている。鰾は伸縮性に富む風船のような器官で、ガスを溜めたり抜いたりして浮力調節を行う。
原始的な鰾は消化管から枝分かれしており、水面に口を出して空気を出し入れする開鰾(有気管鰾)である。しかし一部の種は消化管から分離した閉鰾(無気管鰾)を持ち、鰾の周囲にある奇網からガス腺と呼ばれる細胞を介してガスを取り込む。
鰾は四肢動物やハイギョの肺と相同である。かつては鰾が肺に進化したと考えられていたが、現在では肺から鰾が進化したと考えられている。初期の硬骨魚類は、淡水生活の中で空気呼吸の必要から肺を発達させたが、水中生活へ適応した条鰭類では肺が鰾となった。そのため、硬骨魚類が肺を獲得する前に分岐したサメ・エイなどの軟骨魚類には鰾も肺もない。軟骨魚類では鰾の代わりに肝臓に脂質を蓄積することで浮力を得ている。条鰭類が肺を鰓に変化させる前に分岐した肉鰭類は、鰾の代わりに肺を持つ。ただし例外的に、現生シーラカンスのラティメリアは脂肪で満たされた鰾を持つ。
条鰭類でも一部の原始的な種では、鰾は肺の機能を残しており、鰓呼吸とは別に肺呼吸を行う。また、底生魚類や深海魚の中には、鰾を二次的に喪失したか非常に小さくなったものが多い。
魚類の目は哺乳類の目とは異なり、4種類の錐体細胞を持ち、紫外線領域の視覚をも持つ。このため、人の目にはオスとメスの区別がほとんどできない種でも、紫外線の反射率がオスとメスで大きな差があることから、魚自身には両者の視覚上の差は明瞭である可能性がある。
歯を持たないもの、細かい歯をもつもの、牙状の歯、甲殻類などをかみ砕きやすい丸い歯を面状に並べた歯など食性によって様々なタイプがある[2]。
ウツボなどには喉の奥に咽頭顎という第二の顎を持つ[3]。また、コイ科やサッカー科などでは、あごや口内に歯がなく喉の奥に咽頭歯を持つ[4]。
魚類は水中生活である。分布は世界中に渡り、その環境によって異なった種が見られる。
生活している塩分環境によって、海で生活する海水魚と河川や湖沼など内陸の淡水で生活する淡水魚に大別される。しかし、海水と淡水の混じり合う河口などの汽水域で生活する汽水魚や、海水・淡水どちらでも生きられる魚もおり、海水魚と淡水魚の区別は厳密でない。また、海水魚は塩湖に生息する魚も含めて塩水魚と呼ばれることもある。
海では海岸線から外洋、深海まであらゆる所に生息する種がある。特に水深200メートル以深の深海に生息するものを深海魚という。インド洋から太平洋に多くの種があり、大西洋には種数が少ない。これは大西洋が比較的新しく生じた海であるためである(ボトルネック効果)。
陸水では湖や池、川に多くの種があり、洞窟の中だけに見られる魚や地下水に生息するものもいる。陸水は陸と海水によってそれぞれ孤立しているので、淡水魚には地域による種分化が見られることが多い。しかし、上位分類群はごく広い分布域を持つものが多い。これは魚類の進化の多くが大陸移動以前から起こってきたためである。
ほとんどの魚類は水が無い環境では生活できない。これには陸上で体を支えるしくみを持たないこと、水中でしか呼吸できないことが大きい。一部には、体の下面にあるひれで体を支えて移動したり、肺・腸・皮膚などで空気中でも呼吸できるものもあり、干潟や湿地などの陸上である程度生活できる種もある。しかしこれらの大部分も主な生活は水中であり、トビハゼのように水中より陸にいる時間が長いような種も、皮膚の乾燥には耐えられないし、生殖や仔魚・稚魚(幼魚)の生活は水中である。
乾期に干あがる河川で魚類が生息している事がある。これはほとんどの場合は、水がある時期に外から侵入してくるためである。しかし、一部の種は乾燥期を特殊な方法で乗り切る。たとえば肺魚には泥の中に繭を作ってそこにこもり、水がない季節を耐える。カダヤシ目のノソブランキウスなどは、卵が土の中で生き延び、水が入ると孵化する。しかし、節足動物のアルテミアのように完全に乾燥した状態に耐えるものはない。
繁殖形態は卵生および胎生(卵胎生)である。卵は卵黄(栄養分)の割合が比較的多く、卵割は盤割を行うものが多く、小さな胚が大きな卵黄にくっついたような状態で発生がすすむ。孵化した仔魚は卵黄を抱え、しばらくは卵黄の栄養分を使って成長する。サメ類、エイ類、カダヤシ、カサゴ、ウミタナゴなどの仲間には、体内で卵を孵化させて子供を産む卵胎生のものもいる。
繁殖習性も様々である。卵胎生のものは体内受精だが、大多数は体外受精を行う。その際に多数が集まって抱卵放精を行うものから、雌雄一対によるものまで様々な配偶行動が見られる。
大部分の魚類(無顎類以外)の幼生は、すべて魚類の体制を備えて孵化する。その点では直接発生的である。しかし、種によっては成長するにつれた見かけ上の姿が大きく変わるものもある。
とくに真骨魚類は生まれたばかりの幼生を仔魚(しぎょ)、少し成長した幼生を稚魚(ちぎょ)といって区別する。両者の間には明確な形態的変化があり、これを変態と呼ぶ。稚魚は体の大きさこそ小さいが、成魚と同じ形質を備えている。それに対して仔魚は成魚と形態的にもかなり異なっている場合が多い。いくつかの種では「〜幼生」と名前がついているが、そういうものは、発見時に親とは別の種だと思われて付けられた名前の名残であるもの多い。ただし、全ての種が変態を行うわけではなく、仔魚・稚魚の区別がはっきりしない種もある。
仔魚期に特徴的な形態をとるのは、多くの場合は浮遊生活への適応のためである。まだ十分な遊泳力を持たないため、水平方向に泳げないばかりか、そのままでは海底に沈んでしまう。そこで体に大きな棘や糸状の構造物を生やしたり、ひれを大きくしたりして浮力を得ている。棘は捕食に対する抵抗でもある。また、外見からは分からないが、体液の代わりに比重の軽い水や油、気体を溜めて沈降を防いでいる場合もある。
無顎類であるヤツメウナギは、幼生はより単純なアンモシーテス幼生の時期を持つ。アンモシーテス幼生は両眼を欠き、砂泥の中で生活する。アンモシーテス幼生をナメクジウオに対応させる考えもある。
近年の動物の苦痛の研究は、軟体動物、甲殻類、魚などのさまざまな水生動物が、苦痛を認識している可能性を示している[7]。多くの科学者たちは魚が情感を備えると認めており、魚は不安を経験していると推測されている[8]。例えば、アメリカの海洋生物学者のシルビア・アリス・アール博士は次のように述べている。
「魚は痛みを感じるか?それは科学者にとっては常識だ。魚には神経系があって脊椎動物としての基本的な機能を持っている。彼らは私たちが考える以上に、感じることができる。人に触覚があるように、魚には側線という器官がある。側線で水の微妙な動きを感知して、群で泳ぐことを可能にしている。『彼らは痛みを感じないから、恐怖を感じないから何をしてもいい』という人は魚のことを分かっていない。罪なき生き物への卑劣な行為を正当化したいだけ。そうでなければ魚をあんなに野蛮に扱う説明がつかない。」—映画「SEASPIRACY」
また魚は、人間同様「うつ」になるとも考えられている。自然界にはないストレス(過密、他の魚からの攻撃、人間による扱い、ワクチン接種など)にさらされた養殖のサケが、深刻なうつ状態にあることが示唆される研究[9]や、ゼブラフィッシュにエタノールを2週間与え続けたあとでその供給をストップして強制的にうつ状態にさせたあと、抗うつ剤をゼブラフィッシュに与えるという研究では、エタノールの供給を絶たれて動きが緩慢になり底のほうに停滞するゼブラフィッシュが、抗うつ剤投与で水槽の上から下へと泳ぎ回りはじめる様子が観察されている。この研究では「うつ状態」のゼブラフィッシュは、うつの人々と同じように、食べ物、おもちゃ、探検など、ほぼすべてに興味を失う様子を見せた[10]。
魚にとって、生活環境は重要で、小石や植物など飼育環境に工夫を施した水槽か、何もない水槽かのどちらかを選択するように提示されたゼブラフィッシュは、一貫して前者を選択する。水槽に有害な酢酸 (酢) を注入してもこの選択が持続した[11]。
魚は痛みを感じる[12]。情動をつかさどる大脳辺縁系にあたる部分が魚類にもあることがわかっており、ダメージや損傷があった時の魚の行動は、注意散漫になったり、損傷部分をかばったり、異物を取り除こうとしたり、食欲が低下したりする。そして、痛みを和らげるモルヒネを投与すると、注意力を取り戻し、通常の行動を取ることが可能になる[13]といった人間が痛みを感じた時と同じ反応を示す。
認知能力については、ホンソメワケベラは鏡に映った自分の姿を観察したり、自分の体につけられた斑点を鏡をみてこすり落とそうとするなど鏡像認知し[14][15][16][17][18]、メダカは相手の顔を識別し[19]、タラは音で会話する[20]。
魚類の中ではマンタ(オニイトマキエイ、ナンヨウマンタ)が最も脳化指数が高い種類の一つとされ大型の哺乳類と同等の知性を持っているとされており、脳のサイズはジンベエザメの10倍あり脳の対比は魚類の中では最大である[21]。また、マンタは鏡像認知をした可能性が高い生物にも数えられている[22]。また、マンタは少なくとも一種は特定の個体を識別し友情を築くことが判明した[23][24]。
魚の認知能力や感受性についての世論は一致しており、 9,000 人のヨーロッパ人を対象とした 2018 年の調査では、79% が魚の福祉は他の家畜の福祉と同じくらい保護されるべきだと考えていることがわかった[25]。また、2021年にオーストラリア、バングラデシュ、ブラジル、チリ、中国、インド、マレーシア、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、スーダン、タイ、英国、米国の14か国の市民を対象に行った調査では、いずれの国でも60%以上が「魚が痛みや感情を持っている」ことに同意している[26]。
このような、魚の情感に対する認知の広がりを背景に、イギリス大手のスーパーマーケット セインズベリーが、魚の飼育密度の規定や体の切除の禁止、屠殺方法などの動物福祉基準を設けたり[27]、スロバキアでは生きた鯉の販売はクリスマスの伝統の一部であったが、2021年以降、小売業者Kaufland、テスコ、 Billaが、2022年以降スロバキアでの生きたコイの販売を終了することを約束[28]したりするなどの魚に配慮する動きが近年見られる。また、イタリアのモンツァ市、ボローニャ市が球形の金魚鉢での金魚の飼育を禁止し[29]、またベルギーでも「表面積の小さい球形の金魚鉢は魚にストレスを与える」として、丸いボウルの販売禁止法案が検討中である(2022年3月時点)[30]。
2018年(平成30年)現在、魚類の系統仮説は以下の通りである[31]。なお下表では魚類ではない四肢類を太字で表した:
脊椎動物 |
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知られている中で最古の脊椎動物であり魚類は、カンブリア紀のミロクンミンギア類である[32]。次のオルドビス紀で無顎類が発達し、シルル紀に汽水域で活動できるようになり、顎を持つ顎口類が登場した[33]。
魚類は世界中で食物として利用される。獣肉を食べることを禁じられていた仏教徒の多い国ではより重視される。
魚類を捕らえる方法として代表的なのは
魚を取ることをまとめて漁、仕事としては漁業という。また、食用の魚種を飼育することを養殖という。
四方を海に囲まれた日本でもなじみ深い食材である。「不味い魚」「美味しい魚」という実用的な観点から魚の種類への関心が高い。貝類や甲殻類とあわせて魚介類と言うことも多く、それらは魚屋で扱われる。そのような文化もあり、生物の和名には肉の色が採用されることが多い。
焼いたり煮たり、あるいは揚げたりと様々に料理される。日本の刺身などでは生で食べるが少数派である。傷みやすいものが多く、保存のために塩漬けや干物、燻製、あるいは油漬けなど処理される例も多い。直接的な食品でない例としては鰹節や魚醤がある。
食料の他に肥料や飼料・加工品の原料などとして使われる。また、釣りや熱帯魚鑑賞は趣味として広く親しまれている。各地に水族館が建てられ、世界中の魚を見ることができる。日本は周りを海に囲まれていることもあり、世界有数の魚大国である。
魚には、エイコサペンタエン酸 (EPA) やドコサヘキサエン酸 (DHA) などのω-3脂肪酸である多価不飽和脂肪酸が多く含まれる。魚に含まれるDHAの多くは、ラビリンチュラ類の1属であるSchizochytrium属などのような海産の微生物によって生産されたものが、食物連鎖の過程で魚の体内に濃縮されたものである。
ω-3脂肪酸の摂取は心臓病の予防に良いと言われている[34]。脳や網膜など神経系の発達にも関与するといわれている。流行歌のおさかな天国には「魚を食べると頭が良くなる」というフレーズがあるが、上記の健康影響を考えると無根拠とも言えない。
村落単位で見た生活習慣では、労働が激しく、魚又は大豆を十分にとり、野菜や海草を多食する地域は長寿村であり、米と塩の過剰摂取、魚の偏食の見られる地域は短命村が多いことが指摘されている[35][36][37]。
魚介類の脂肪酸にて、魚介類100グラム中の主な脂肪酸について解説。
魚は世界の水系に排出される化学物質を取り込み濃縮させる。PCBやダイオキシン、水銀、鉛、DTTなどがある。魚はPCBの最大の摂取源であると指摘される[8]。
脂肪の多い魚は、オメガ3脂肪酸の豊富な供給源であり、アルツハイマー病の人々の脳に有害な塊を形成するタンパク質であるベータアミロイドの血中濃度の低下に関連している。このため、少なくとも週に2回は魚を食べること。ただし、鮭、タラ、ライトマグロの缶詰、ポラックなど、水銀の少ない品種を選択すること。魚に過敏な場合は、オメガ3サプリメントの摂取について医師に相談するか、亜麻仁、アボカド、クルミなどの陸生オメガ3ソースを選択すること[38]。
20世紀半ばまでは、魚類は魚上綱(ぎょじょうこう)として1つの綱に分類されていた。これは日常用語における「魚」に対応する分類群であった。魚上綱には、軟骨魚綱、硬骨魚綱、絶滅した板皮綱および棘魚綱が含まれていた。
現在[いつ?]では、魚綱は単系統群ではなく側系統群であるとされる。例えば、マグロ・メダカなどの典型的な魚を含む条鰭綱は、サメなどの軟骨魚類やヤツメウナギなどの無顎類よりも、ヒトなどの四肢動物(両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)により近縁である。このような分類は人為的であるため、現在では魚綱は生物の分類としては用いられない。
ただし、漁業などの実用的な分野では、現在[いつ?]でも魚類が用いられる。
本稿では無顎類も示すこととする。また全体の分類体系はNelson の分類に従った。
魚類を分類するにあたって使用される特徴のうち、特に注目されるのが鰭の形態である[39]。背鰭の数、胸鰭と腹鰭の位置、脂鰭の有無などが、分類上の重要な形質となる。例として、系統的に古い魚類(コイ目など)では腹鰭は体の中央付近に位置するが、比較的高等な魚類(スズキ目など)ではずっと前方に移動し、胸鰭のすぐ下であったり喉の位置にあったりする。胸鰭と腹鰭を近づけて連動させることで、より効率の良い運動が行えるようになったものと見られている。また条鰭類の魚類では、各々の鰭が何本の棘条と軟条で構成されているかによって、系統的に近い種類・遠い種類を見分けることができる。これらの鰭の構成は分類上極めて重要な要素であるため、専門的には略号を用いて「D.XII,9; A.III,8; P1.26〜28; P2.I,5」のように表し、これを鰭式(きしき)と呼ぶ。アルファベットは鰭の種類(D:背鰭、A:臀鰭、P1:胸鰭、P2:腹鰭)を、ローマ数字・アラビア数字はそれぞれ棘条・軟条の数を表している。
分類に用いられる形質として、骨格や鱗もまた重要な要素である。より進化した高等な魚類では、骨の癒合・省略が進み、全体の数が少なくなる傾向がある。これは脊椎動物全体に見られる特徴で、ウィリストンの法則と呼ばれる[40]。鱗は上述したような形態の区別の他、側線を基準に計測した鱗の数(側線鱗数や横列鱗数)が分類形質となる。
魚類は様々な体型や体色をしており、これらは見た目にわかりやすい特徴ではあるが、少なくとも目のレベルでの分類に使用されることは少ない。体型や体色は系統よりもむしろ環境への適応を色濃く反映している。科・属・種などの下位分類では、発光器の数と位置(ハダカイワシ類)、交接器の形態(アシロ類)など多種多様な形質が分類に用いられている。
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