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漁業に用いる漁網の一種 ウィキペディアから
投網(とあみ)とは、漁網の一種である掩網/被網(かぶせあみ)の一種[1]。岸辺や船上から魚がいると思われる水域に人の手で投げ入れて面で魚を獲る漁具である。
日本語では、投げ網/投網(なげあみ)[2]、打ち網/打網(うちあみ)[3]、唐網(とうあみ)ともいう[4][5]。中国語では「投網(簡体字:投网)」という。英語(事実上の国際共通語)では "cast net(日本語音写例:キャスト ネット)" といい、時に "throw net(日本語音写例:スロー ネット)" ともいう。
投網を投げることは「投網を打つ」と表現する。一方、網打/網打ち(あみうち)という場合は、投網で魚を獲ること、および、その人を意味する[6][7](※『転用』も参照のこと)。投網による漁は投網漁(とあみりょう)という。また、投網を思うように投げるべく構えるその動作を指して、手取り(てどり)、または、拵え(こしらえ)という。
主要な漁具として世界各国の漁師に使われているのみならず、学術的な調査・研究でも広く用いられるメジャーな漁具である。
漁撈において、漁具に沈降力を与える目的で用いる錘(おもり)のことは、沈子(いわ、ちんし)といい[8][9][10]、英語では "sinker(日本語音写例:シンカー)" というが[11]、漁網を沈下させる沈子のことは特に網石(あみいし)といい[10]、古くは網石(あみのいわ)と呼んだ[12]。 漁網の下端部の、つまり網口(あみぐち)の、ちょうどスカートなどの裾(すそ)のようになっている部分は、網裾(あみすそ)といい、略して裾(すそ)ともいう[13]。投網でもそれらは同じ。一般的な投網では、網裾は紐で吊り上げられて袋状になっており、魚はこの袋に入り込むことによって捕らえられる。ただし、袋のない投網も存在する。投網には、等量の網石が網裾に均等な幅で数多く取り付けられている。上端部には手綱(たづな)が付いていて、これを握って投網を打ち、手繰り寄せる。
しかるべき技術を身に着けた者が投網を打つというのは、現象面から言えば、網裾が大きな面を捉える形で水平に広がって水面に落下するよう正しい動作で投擲することであり、そうやって打たれた投網は、円錐状あるいは釣鐘状に広がって水面に落下し、網石の重さで沈下するように作られている。 漁獲対象を点ではなく面で捉えたまま、広がった網裾は自然に沈下して水底にまで達するため、囲われた面の内側にいた魚群は、水中であれ水底であれ、この囲いに一旦は閉じ込められる。網の周辺部は袋状になるよう作られているため、網の囲みから逃れようとする多くの魚はその袋に入り込んでしまう。しかし、袋に入ることなく網石の下をくぐり抜けて逃げる魚も少なくない。投網で漁獲できる魚は、袋に入ってしまうか、網目に頭を突っ込んで逃げられなくなった いわゆる“首括り(くびくくり)”の魚である。 アユ(鮎)などは袋に入ることは稀で、川底の石と網石との隙間を見つけてそこから逃げたり、川底の石の隙間でしばらくじっとしていて網を引き上げた瞬間に網石の下から逃げたりと、くぐり抜けの上手い魚として知られている。そのため、首括りでの漁獲を重視して獲れる魚のサイズにあった目合いの網を選ぶことが重要となる。網目の大きさを目合いといい、縦に伸ばした網 5寸(約152ミリメートル[* 1])の間にいくつ結び目があるかを節(せつ)という単位で表す。また、網目の1辺もしくは1目(1辺×2)の長さを「分」「厘」で表す地方もある。網の大きさは、円周(裾回り)の長さを尋(約1.8メートル[* 2])で表したり、すぼめた状態での網の長さを尋で表す。
一枚の帯状に作られている投網もあり、これは投刺網/投げ刺網(なげさしあみ)という。この場合、網を打ったらすぐに魚を網のあるほうに追い込まなければならない。和歌山県の茜屋流(あかねやりゅう)で有名なのは、刺し網を投網のように投げる漁法の「小鷹網(こだかあみ[14])(こたかあみ[15][16])」である。
日本では、以下の2つに大別される。
日本語の概念では、投網の打ち方は、まず、打つ場所によって2種類に大別される。1つ目は「徒歩(かち)で打つ」を意味する「徒打ち(かちうち)」で、岸から打つ、または、水の中を歩いて移動しながら打つことを指す。2つ目は「舟打ち(ふなうち)」で、船で移動しながら船上から打つことを指す。英語にはこういった区別は無く、どこから打とうが "casting net(日本語音写例:キャスティング ネット)" である。一方、投網を打つ技術を表すのには "net casting" もしくは "net throwing" という語を用いる。
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魚体に傷が付きやすく、魚によっては捕獲後に放流しても生存率が下がるため、捕獲するだけで生態系に悪い影響を与える可能性を否定できない。先進国の多くは、ほとんどの河川で投網の使用を規制しており、無許可で投網を打つことは禁止されている。日本においても多くの河川で漁業権が設定されているため、投網漁を行うには遊漁券の購入が必要である場合が多いほか、地方によっては都道府県の内水面漁業調整規則によって内水面での投網漁が禁止されているところも存在する(京都府など)。
季語・季題としての投網(とあみ)は[* 3]、夏の季語(三夏の季語)である[20]。分類は行事/人事/生活[* 4]。川狩/川狩り(かわがり、歴史的仮名遣:かはがり。意:川で魚を獲ること)を親季語とする子季語の一つで[* 5]、他の子季語には、瀬干/瀬干し(せぼし。意:流れを堰き止めて行う川狩)[21]、川干/川干し(かわぼし、かわほし、歴史的仮名遣:かはぼし、かはほし。意:瀬干)[22]、掻え掘り(かえぼり、歴史的仮名遣:かへぼり。意:池や堀の水を汲み出して干して行う川狩。掻い掘り)、毒流し(どくながし。意:毒物を使った川狩)[23]がある[20]。
網打/網打ち(あみうち)とは、第1義には、投網で魚を獲ること、および、その人をいうが[6][7]、第2義には、相撲の決まり手の一つである[6][7]。これは、漁師が投網を打つように、相手力士の差し手を両手に持ちながら、土俵外へ放り投げる技であることに由来する[6][7]。第2義については別項「網打ち」に詳しい。
漁具の網を相手に投げることで包み絡め行動力を奪う捕具として利用されることもあった。
現代でも人間や小型無人航空機を絡め取るのに使う例がある。
レーティアーリウス(長音省略音写例:レティアリウス、ラテン語:rētiārius、cf. en, wikt:en)は、古代ローマの剣闘士(グラディアートル)の一種で、投網を使って敵を絡め取るという独特な闘い方をする者をいう。retiarius の語構成[ la:rēti〈= en:of net、jp:網の〉+ -ārius〈= en:男性用の-er、jp:…男〉]に基づき、日本語では意訳で「網闘士(あみとうし)」と呼ばれ、時に「投網闘士(とあみとうし)」「投網剣闘士(とあみけんとうし)」などとも呼ばれる。鉛入りのレーテ(rēte、網)と、トリデーンス (tridēns) とも呼ばれるフッキナ(fuscina、三叉槍)、もしくは銛(もり)を主要武器とし、対戦相手にとどめを刺すためのプーギオー(pūgiō、短剣)を携えた軽装の闘士である。他の剣闘士と違って兜は被らず、また、盾の代わりに「肩ガード」を意味する「ガレールス (galērus, cf. en)」と呼ばれる青銅製防具を利き手でないほうの肩に装着して闘った。三叉槍を主要武器とするのは、海神ネプトゥーヌス(※古代ギリシアのポセイドーンと同一視された海神)の得物であることに由来するという。
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メダマグモ科のクモは、自ら分泌する粘着性が高く丈夫な糸で蛛網(ちゅもう。蜘蛛の作る網)を作り、獲物に被せて絡め取るという極めて特殊な待ち伏せ型の狩りをする。8脚のうちの4脚の脚先に蛛網の端を引っ掛けておいて四方に引き伸ばすと正方形の伸縮自在な網の罠を仕掛けたことになる(■右列に画像あり)。この体勢で待ち伏せ、獲物が近くを通りかかると全身を伸長させて襲いかかり、4脚で張った蛛網を獲物に覆い被せて動きを封じる。その後は普通のクモと同じように新たに分泌する糸で完全に絡め取ってしまう。
日本語にはこのクモ類を投網と関連付ける名称が無いが、英語では "Net-casting spider(日本語音写例:ネットキャスティング スパイダー)" といい、まさに「投網を打つ蜘蛛」という意味の名で呼ばれている。また、先述した「網闘士」になぞらえた "retiarius spider(日本語音写例:ラティアリアス スパイダー)" という別名もある。
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