仙石東北ライン
東日本旅客鉄道の列車運行系統 ウィキペディアから
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仙石東北ライン(せんせきとうほくライン)は、宮城県仙台市と石巻市を東北本線・仙石線経由で結ぶ、東日本旅客鉄道(JR東日本)の運行系統の愛称である。
仙石東北ラインは、東日本大震災により被災した仙石線沿線市町の復興支援を目的とする事業として2015年(平成27年)5月30日から運行を開始した。ラインカラーの表現は、青緑(■)と水色(■)を併記したものである[1]。
運行経路については、以下の各路線を走行する。
旅客案内上は、東北本線・仙石線とは別系統の路線と位置付けられている。
仙台 - 塩釜間の駅構内では、上下線ともに東北本線と仙石東北ラインがそれぞれ別路線扱いとして案内がなされている。
高城町駅 - 石巻間の駅構内では、特別快速・快速停車駅(石巻あゆみ野駅を含む)に限り仙石線と仙石東北ラインが別路線扱いとして案内がなされている。
上り始発列車と下り最終列車は石巻線の石巻 - 女川間に乗り入れている[2][3]が、JR東日本の各種ウェブサイトにおいて石巻以東は仙石東北ラインとして案内されておらず、駅構内の案内も石巻線表記のみである。
仙石東北ライン運転開始の背景として、次の点が挙げられる。
後述する仙石線・東北本線接続線は、国鉄民営化後のJR東日本誕生から間もない1991年(平成3年)から1992年(平成4年)ごろの時点で現路線と同じ経路で計画されていた。しかしながら、東北本線と仙石線の電化方式の違い(東北本線は交流電化、仙石線は直流電化)があることと、国鉄民営化から数年が経過したJR東日本の経営体力と建設費用面での折り合いがつかず、計画を継続して持ち続けていた。東日本大震災発生後、ハイブリッド気動車という新技術が育ったことと、甚大な被害を受けた沿線自治体の震災復興を目的として、沿線自治体からの長年の要望を実現するに至った。
仙石線は宮城電気鉄道により建設された元私鉄路線(戦時買収私鉄)のため、駅間距離の短さ・停車駅の多さにより列車速度が遅い線区である。加えて、多賀城駅から終点の仙台駅方面は各駅に停車する列車の利用者が多いにもかかわらず、その区間は追い越し設備(待避設備)が無いため、首都圏の多くの路線で行われているような緩急接続ができず、快速列車の増発が難しい状況であった(これは仙台駅周辺を走るJR東日本所属の路線すべてに共通する課題である)。
仙台近郊の東北本線も待避設備が無いが、同路線は仙石線に比べ駅間距離が長く、停車駅が少ないことから速達性が高い線区である。この両線を結ぶ接続線を整備することで、沿線自治体からの仙台 - 石巻間の移動を1時間以内に収めたいという要望を実現した[5]。
ミヤコーバスが現在運行している高速バス路線仙台 - 石巻線は、1998年(平成10年)の運行開始当時には仙台 - 石巻間を1日4往復運行していた程度であったが、徐々に本数を増やしていた。そして、2011年の東日本大震災により仙石線が大津波により甚大な被害を受けたのと対照的に、高速バスについては高速道路の通行規制等の影響により震災後数日間は運休したが、2011年(平成23年)3月19日には臨時便として運行を再開した。その後高速バスは仙石線の全線復旧への見通しが全く立たない中、石巻と仙台を直結する数少ない公共交通機関としての地位を確立した。急増した需要に応えるため、数度におよぶ増便を経て、2015年(平成27年)5月の仙石線復旧まではほぼ震災前の倍の回数で運行していた(高速バスの詳しい歴史は「仙台 - 石巻線」を参照)。
鉄道側も高速バスに対抗するため、東北本線・石巻線経由の「直通快速」を朝夕1往復ずつの計2往復(平日は朝の上り1本、夕方の下り1本の時もあり)が仙台 - 石巻間をノンストップで運行されていたが、石巻線のダイヤや車両運用の制約からこれ以上の増発は困難であり、利用客は100人程度に留まっていた。
そのため、仙台都市圏と石巻都市圏の主要ルートとしての鉄道の復活をアピールするため、当路線が設けられた。 なお、高速バスについては、仙石線の全線復旧および当路線の運行開始と同時に減便している。
本節では、利府町から松島町までの仙石線と東北本線の並走区間に整備した単線の連絡線について触れる。接続線の設置場所は塩釜 - 松島間で東北本線と仙石線が接近する複数地点の中でもっとも駅に近いこと・それぞれの線路の高低差が揃うこと・駅間が長く列車のスピードが速い東北本線に石巻側からなるべく早く乗り入れ可能な場所という条件から選ばれた。
元々この位置には保線車両の行き来を目的に渡り線が設置されており、接続線とは逆方向の松島 - 松島海岸間を直通できる構造であった。この渡り線は接続線工事の際に撤去されている。
総事業費は約18億円。うち、約4億4000万円を宮城県・仙台市・石巻市等の沿線自治体が、国勢調査での仙台市への通勤通学者の割合に応じて負担している[6][7]。接続線部分の輸送人員は3,000人/日を見込む[8][9]。
仙石線は直流電化区間・東北本線は交流電化区間と電化方式が異なること、立地条件の問題から無電区間が設置できないため非電化で整備され、ハイブリッド気動車HB-E210系での運行となっている[10][11]。
東北本線と仙石線の実際の分岐点は、東北本線側は塩釜 - 松島間、仙石線側は松島海岸 - 高城町間であるが、東北本線側は松島駅構内扱い、仙石線側は高城町駅構内扱いとされている[8]。
運行開始当初は接続線内で無線の切り替えを行うなどの理由により、必ず運転停車をしなければならなかった。2017年(平成29年)から2018年(平成30年)にかけて、接続線内への列車の進入をよりスムーズに行うことができるように改良工事を実施し[12][13]、2018年8月から接続線内を無停車で通過することができるようになった。
仙石東北ラインは塩釜駅と高城町駅を直結するルートで運行されているが、運賃計算上は塩釜駅 - 松島駅(全列車通過) - 高城町駅のルートを辿るものとして扱われる。
このため、特定の分岐区間に対する区間外乗車の特例が設定されており、松島以遠(愛宕方面)の各駅と高城町以遠(松島海岸または手樽方面)の各駅との相互間を、仙石東北ラインにて高城町 - 塩釜間を利用し東北本線松島駅方面の列車に乗車、あるいはその逆区間を利用する場合、塩釜 - 松島間の往復キロ程を算入せずに運賃を算出することになる。ただし塩釜駅での途中下車はできない[15]。
全列車特別快速または快速として運転し、普通列車は存在しない。おおむね1時間1本の運転であるが、石巻7・12時台発の上り列車、仙台11時台発の下り列車は設定されていない。
仙台9時台発・石巻20時台発の上下1往復は「特別快速」として運転され、仙台 - 石巻間の途中停車駅は塩釜駅・高城町駅・矢本駅のみ。全区間の所要時間は上下列車ともに49分である。
仙台7・8時台および16時以降発、女川6時台および石巻15時台 - 19時台発の列車は、種別表示色が赤(■)の快速(以下、「■赤快速」という。)として運転され、仙台 - 塩釜間は途中、特別快速と同じく塩釜駅のみに停車するが、高城町 - 石巻間は野蒜駅・陸前小野駅・矢本駅・陸前赤井駅・蛇田駅・陸前山下駅に停車する。また、一部の列車は石巻あゆみ野駅にも停車する。
仙台6時台および10時台 - 15時台発、石巻8時台 - 14時台発の列車は、種別表示色が緑(■)の快速(以下「■緑快速」という。)として運転され、高城町 - 石巻間は■赤快速と同じ停車駅であるが、仙台 - 塩釜間は各駅に停車する。
2016年8月6日から石巻6時台発および仙台20時台発の■赤快速は、石巻線に直通して女川発着で運転している[2][16]。石巻線内は各駅に停車する。
2015年8月1日に開催された石巻川開き祭りに合わせて石巻21時台発の■緑快速が[17]、2016年8月1日に開催された当祭りでは当時定期列車では通過していた東矢本駅・石巻あゆみ野駅に停車する石巻21時台発の■緑快速が臨時列車として運行された[18]。
仙台 - 塩釜 - 高城町 - 石巻 - 女川間について記述。仙石線区間は仙石東北ラインが停車する駅のみ記載。
正式路線名 | 駅名 | 営業キロ | 快速 | 特別快速 | 接続路線・備考 | 線路 | 所在地 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
駅間 | 累計 | 緑 | 赤 | |||||||
■東北本線 | 仙台駅 仙 | - | 0.0 | ● | ● | ● | 東日本旅客鉄道: 東北新幹線・秋田新幹線・北海道新幹線・■東北本線(名取方面)・■常磐線[* 1]・■仙山線・■仙石線・■仙台空港アクセス線 仙台市地下鉄:■南北線 (N10)・■東西線 (T07) |
∥ | 仙台市 | 青葉区 |
東仙台駅 仙 | 4.0 | 4.0 | ● | | | | | 東日本旅客鉄道:東北本線貨物支線(宮城野貨物線) | ∥ | 宮城野区 | ||
東仙台信号場 | - | 5.7 | | | | | | | ∥ | ||||
岩切駅 仙 | 4.1 | 8.1 | ● | | | | | 東日本旅客鉄道:東北本線支線(利府線) | ∥ | |||
陸前山王駅 | 2.3 | 10.4 | ● | | | | | 仙台臨海鉄道:臨海本線(貨物線) | ∥ | 多賀城市 | ||
国府多賀城駅 | 1.3 | 11.7 | ● | | | | | ∥ | ||||
塩釜駅[* 2] | 1.7 | 13.4 | ● | ● | ● | 東日本旅客鉄道:■東北本線(小牛田方面) | ∥ | 塩竈市 | ||
松島駅[* 3] | 10.0 | 23.4 | ∥ | ∥ | ∥ | ∨ | 宮城郡 松島町 | |||
高城町駅 | 0.3 | 23.7 | ● | ● | ● | 東日本旅客鉄道:■仙石線(松島海岸方面) | ◇ | |||
■仙石線 | ||||||||||
野蒜駅 | 7.9 | 31.6 | ● | ● | | | ◇ | 東松島市 | |||
陸前小野駅 | 2.6 | 34.2 | ● | ● | | | ◇ | ||||
矢本駅 | 4.2 | 38.4 | ● | ● | ● | ◇ | ||||
陸前赤井駅 | 2.9 | 41.3 | ● | ● | | | ◇ | ||||
石巻あゆみ野駅 | 2.1 | 43.4 | ▲ | ◆ | | | | | 石巻市 | |||
蛇田駅 | 1.4 | 44.8 | ● | ● | | | | | ||||
陸前山下駅 | 1.0 | 45.8 | ● | ● | | | 日本貨物鉄道:仙石線貨物支線 | ◇ | |||
石巻駅 | 1.4 | 47.2 | ● | ● | ● | 東日本旅客鉄道:■石巻線(小牛田方面) | ◇ | |||
■石巻線 | ||||||||||
陸前稲井駅 | 3.0 | 50.2 | ■ | | | ||||||
渡波駅 | 5.0 | 55.2 | ■ | ◇ | ||||||
万石浦駅 | 1.1 | 56.3 | ■ | | | ||||||
沢田駅 | 1.3 | 57.6 | ■ | | | ||||||
浦宿駅 | 4.1 | 61.7 | ■ | | | 牡鹿郡 女川町 | |||||
女川駅 | 2.3 | 64.0 | ■ | | |
列車種別 | 仙石東北ライン | 所要時間 (最速達) |
備考 | ||||||||||||||||||||
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東北本線 | 仙石線 | ||||||||||||||||||||||
仙台駅 | 東仙台駅 | 岩切駅 | 陸前山王駅 | 国府多賀城駅 | 塩釜駅 | 高城町駅 | 手樽駅 | 陸前富山駅 | 陸前大塚駅 | 東名駅 | 野蒜駅 | 陸前小野駅 | 鹿妻駅 | 矢本駅 | 東矢本駅 | 陸前赤井駅 | 蛇田駅 | 陸前山下駅 | 石巻駅 | ||||
仙石東北ライン | 特別快速 | ● | - | - | - | - | ● | ● | - | - | - | - | - | - | - | ● | - | - | - | - | ● | 52分[27] | 2015年5月30日開業 |
快速 | ● | ▲ | ▲ | ▲ | ▲ | ● | ● | - | - | - | - | ● | ● | - | ● | - | ● | ● | ● | ● | 58分[34] | ||
仙石線 | 各駅停車[注 5] | ○ | (仙石線経由) | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | 79分 | 2015年5月30日以後 | ||||
A快速 | ○ | ● | - | - | - | - | ● | ● | - | ● | ● | ● | ● | ● | ● | 63分[10] | 東日本大震災前の停車駅 | ||||||
直通快速 | ● | - | - | - | - | - | (東北本線・石巻線経由) | ■ | 64分[35] | 仙石線区間運休に伴う特別措置 |
ここでは、2015年(平成27年)5月30日時点における仙石東北ライン快速列車について、震災前の仙石線快速列車および震災時に運行されていた直通快速と比較した点を述べる。なお、2019年(平成31年)3月16日の時点と比較した、開業時の仙石東北ラインの大きな相違点は以下の3点である。
仙台 - 石巻間の速達列車を接続線経由で走らせることにより、10分程度の平均所要時間の短縮となる[8]。また、接続線開業に伴って、仙石線の快速列車はすべて仙石東北ライン(接続線経由)による運転となり、あおば通駅を発着する列車は各駅停車のみとなる[27]。
2022年4月現在では、仙台 - 石巻間の特別快速は所要49分で運転している。ちなみに、かつて休日ダイヤで運転されていた仙石線経由仙台 - 石巻間のノンストップ特別快速は同区間を43分で運転していたことがあり(1988年3月改正時)、現行の仙石東北ライン経由の列車はこれよりは遅い。
当接続線事業により、仙台駅と仙石線・高城町駅以東の区間の営業キロが変更[28]。これにより、運賃が値下げされた区間が発生した。なお、仙台 - 高城町間の営業キロは、仙台 - 松島(東北本線)間の23.4kmに接続線0.3kmを加えた23.7kmとなり、仙石線の当該営業キロである25.0kmから1.3kmの短縮となる。
例として、仙台 - 矢本間では、接続線事業に伴う営業キロの短縮 (1.3km) と仙石線の内陸移設に伴う営業キロの短縮 (1.2km) によって、760円(IC運賃は756円)から670円(同 669円)に、あおば通 - 石巻間では、同様に970円(同 972円)から840円(同 842円)にそれぞれ値下げとなった[36]。
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