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短期滞在のための有料宿泊施設 ウィキペディアから
ホテル(英: hotel;[ˌhoʊˈtɛl]、仏: hôtel[注釈 1])は、旅をしている人や観光客に宿泊、食事、その他のサービスを提供する施設[注釈 2]。
もともと旅人に寝る場所や食事などを提供していた施設である。英語のhotelは古フランス語の「hostel」から来ており[注釈 2]、このhostelの語源は中世ラテン語の「hospitale ホスピターレ」であり(あるいはhospitaliaであり)、(カトリックの巡礼の旅の途中の人々をもてなし、眠るためのベッドを提供するための)「(無償の)もてなし施設、宿」という意味。日本語では通常カタカナで「ホテル」と表記するが、あえて翻訳して、訳語を探して漢字で表現すると、結局のところ「宿」といった程度の表現に落ち着く。(日本であえて「ホテル」と言うときは、結局(日本風の旅館などではなく)「ヨーロッパやアメリカ風の様式や利用方式の宿」ということである。)
なお、ホテルは宿泊施設の一種で、1日から数日、あるいは1週間程度までの短期間の宿泊を想定して発展してきた宿泊施設である。類似する機能を持つ宿泊施設としてはユースホステル、ペンション、ベッド・アンド・ブレックファスト(B&B)、民宿などがある。数週間~数ヶ月など長期滞在するような施設(サービスアパートメントなど)とは通常は区別される傾向がある[注釈 3]。朝食を提供する機能を有しているものが多いが、食事無しの「素泊まり」のタイプもある。
国 | 収容人数(2011–12年統計)[1][2] | 1人辺りの客室数[2] | 年間の海外観光客数[1][2] |
---|---|---|---|
アメリカ合衆国 | 4,900,000 | 93 | 58,000,000 |
中華人民共和国 | 1,500,000 | 132 | 83,000,000 |
日本 | 1,370,000 | 27 | 18,000,000 |
イタリア | 1,100,000 | 32 | 29,000,000 |
ドイツ | 950,000 | 27 | 72,000,000 |
スペイン | 900,000 | 47 | 12,000,000 |
メキシコ | 660,000 | 37 | 16,000,000 |
イギリス | 650,000 | 17 | 57,000,000 |
フランス | 620,000 | 36 | 26,000,000 |
タイ王国 | 530,000 | NA | 6,000,000 |
インドネシア | 410,000 | 25 | 7,000,000 |
ギリシャ | 400,000 | 41 | 5,000,000 |
ブラジル | 400,000 | 40 | 8,000,000 |
トルコ | 330,000 | 117 | 16,000,000 |
オーストリア | 290,000 | 22 | 11,000,000 |
ロシア | 260,000 | 33 | 44,000,000 |
国際平均 | 21,000,000 | 41 | 876,000,000 |
カジノ・ホテルとは、カジノを含むホテルのこと。
「ブティックホテル」に分類されるホテルもある。デザイン・コンセプトを明らかにして工夫を凝らし設計させた個性的でモダンな設計・内装・外観を有するホテル[3]である。(日本でいう「デザイナーズホテル」に相当する。)
ホテルの分類は国ごとに異なる。各運営事業者もそれぞれ自社のホテル群を自社流に分類している。
フランスでは国がホテルを格付けし分類されている。「1つ星」から「5つ星」まである[4]。
長年に渡り、ヨーロッパの中のひとつひとつの国ごとに、格付けの基準や星の数のつけかたが異なっていたが、2009年にHotelstars Unionが設立され、国ごとの選定基準の相違点を調整・統一化することが行われるようになってきている[5]。
ヨーロッパなどに多い、中世の古城や貴族の邸宅などを改造したホテル[3]。特に大きい規模のものをシャトー・ホテルという[3]。
自然の洞窟を利用して作られたホテルであり、地下に部屋が存在する。スペインやトルコ、オーストラリアに建設されている。
湖などから切り出した氷や雪によって作られたホテルである。スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国やカナダなどで、冬季の寒さを利用して建設される。春になると溶けてしまうので基本的に冬季限定であり、毎年再建される。どのような施設が作られるかはそのホテルによるが、観光客向けのホテルであり、様々な趣向が凝らされる。
アメリカでは、「メトロポリタン・ホテル(大都市立地ホテル)」「ダウンタウン・ホテル(市街地立地ホテル)」、「コンベンション・ホテル(会議用ホテル)」、「コマーシャル・ホテル(商用)」といった分類がされている[6]。他にも「モーテル」「カジノ・ホテル」などといった分類も。 [注釈 4]
国土が広くて早くからモータリゼーションが進んだアメリカ合衆国ではモーテルが非常に普及している。 Motelの元々の意味は「自動車で旅をする人のためのホテル」であり、「Motor Lodge モーターロッジ」「Motor Inn モーターイン」などともいう。アメリカのモーテルはほとんどが高速道路(フリーウェイ)の出入り口周辺の町の郊外に立地しており、かなり小さな町にまで存在することも多く、地域の社会インフラの一つとなっている。セルフサービスを基本としたホテルであり、自力での荷物の運搬を楽にするため、宿泊棟のすぐ目の前に駐車場があり、自車を止めた場所から短い距離で客室にアクセスできる構造になっているのが特徴である。平均的な料金が一部屋で一泊40ドルから50ドル前後と比較的手ごろで、予約なしで利用できる(ただし、一部観光地などのハイシーズンを除く)ので、非常にポピュラーな宿泊施設として定着しており、客層も、たとえば移動中のビジネスマン、旅行中の家族連れ、男女のカップルなどと、さまざまである。食品の持ち込みも自由。大手チェーンのモーテルではWi-Fi完備も増えている。
日本では「#ビジネスホテル」「#シティホテル」「観光ホテル」「リゾートホテル」「カプセルホテル」「ラブホテル」などの用語で分類がされることが多い。
日本でいうビジネスホテルとは、ターミナル駅前や都市の繁華街など交通の要所にある、宿泊機能に重点を置いたホテル。シティホテルよりも客室は狭くサービスが簡素化され、そのかわりに低料金なのが特徴。シングルの客室(1人用)が中心となる。かつてはビジネスでの利用が主流であったが、近年の大手チェーンのビジネスホテルは、低料金の上、サービスも充実し、観光等での利用も増えている[7]。日本におけるビジネスホテルは、1920年9月12日に、京都にて1名1室形態の個室旅館を法華クラブが創業したことに始まる。
日本で言うシティホテルとは都市中心部や駅周辺に立地するホテル[6]。また、ウォーターフロントやシティビューなど客室からの景観を重視したホテルも多い。フィットネスジムやスパ、エステ、複数のレストラン、バーなどの館内施設やルームサービスなどが充実しているのが特徴で、宿泊料金も比較的高額[8]。また、結婚式場や大規模な宴会場を備えたホテルもある。シングルの客室は少数、または設定されていないことが一般的で、ツインルームやダブルルームがメインである。「city hotel」の語は、一応1794年にニューヨークに出来たシティ・ホテル(74室)で最初に使われ、以降、各地に普及したものの、近年の米国ではあまり使われていない。日本では都市の中心部などに立地するホテルが「シティホテル」と分類されるようになった。土地代が高い場所なので高層化する傾向があり、21世紀以降は複合ビル内のテナントとしての展開も増えている。多機能なものが多く、宴会場や料飲施設(レストラン、ラウンジ、バー)などを併設する規模の大きいホテルの呼称となっている[6]。全国規模の業界団体として、1903年創立の一般社団法人日本ホテル協会と1971年設立の一般社団法人全日本ホテル連盟があり、前者は(構造上の)シティホテルおよび同等の設備を持った都市型リゾートホテルのみが正会員であるため、ビジネスホテルとの判別の目安となる。近年はヒルトン、シェラトン、ハイアットなどの欧米のラグジュアリーホテルの日本進出が盛んになっている。
観光ホテルは、景勝地、温泉地、史跡、スキー場、ビーチ、高原・山岳地帯などの観光地・リゾート地に立地する遊覧や保養を目的とする観光客のためのホテル[9][10]。観光客向けにプールやプライベートビーチ、テニスコート、カジノなど多くの付帯施設を持つものもある[6]。一方では、ゆっくりとくつろぐことに主眼を置いた、ハウスホテルやヴィラ様式の施設も多い。
トランジットホテルは、通常、国際ハブ空港の空港ターミナル周辺や空港ターミナルビルに直結し、海外からの乗り継ぎなど、出入国手続きをせずにそのまま宿泊できる短期滞在ホテル。次のフライトを待つ間、旅行客は飛行機から降りて部屋にチェックインし、フライトの合間にリフレッシュすることができる。
日本初のトランジットホテルは東京国際空港第3ターミナルの出国エリアに位置する。
カプセル状の簡易ベッドが提供される宿泊施設。日本独自の形態のホテルである[11]。旅館業法ではホテル営業ではなく簡易宿所営業になる。ほとんどは、ビジネスホテル同様、都市の繁華街に立地する。施設としては単独のものの他、サウナ店に併設されるケースも多く、大部屋の中にカプセルが積み重ねられた形態が多い。ビジネスホテルと比べて比較的安価で宿泊できるのも特徴である。
基本的にはカップルでの利用を想定しているホテルで、性交目的に利用されると想定しており、宿泊だけでなく2時間(~3時間)程度の短時間の利用(「休憩」)も想定しているものである。他の客や従業員にできるだけ会わずに入室できる工夫がしてあり、コンドームが用意され、客室内の調度品なども一般的なホテルとは異なる。略称「ラブホ」。「ファッションホテル」「カップルズホテル」「ハッピーホテル」「アミューズメントホテル」「レジャーホテル」「モーテル」「ブティックホテル」などとも呼ばれ、和風の呼び方では「連れ込み宿」「同伴旅館」などとも呼ばれる。日本特有の形態のホテルである[注釈 5]。自動車で向かうラブホテルは高速道路のインターチェンジ周辺や幹線道路沿いに立地しており、そうでない場合は歓楽街・繁華街の駅近隣の特定地に密集して立地していることが多い。法的には風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(略称・風営法)の適用を受けるが、現状は、日本では警察庁が把握している全国のラブホテルの軒数は約7000軒で、実際にはその5倍に当たる35,000軒が存在していると推定されている。これらは営業に必要な風俗営業法の許可を受けずに一般の旅館として申請されている[12]。
アメリカにおける「ブティックホテル」の日本での呼称。デザイン・コンセプトを明らかにして、工夫を凝らし設計させた個性的でモダンな設計・内装・外観を有するホテル[3]。日本では、当初は「デザイナーズホテル」とばれていたが、最近では米国流に「ブティックホテル」と呼ぶこともある。
なお、コテージ(ヴィラ)は、近年、リゾートなどでみられる客室ごとに一戸建てにした施設[13]。フロントやレストランなども別棟となっていることが多い[13]。
オートロックは客室ドアの施錠システムの一種で、部屋(内側)からは自由に開けられるが、外側は解錠しなければドアノブが固定されて開けられないという仕組みが大半であり、外出時に施錠する必要がない。
多くのホテルではメタルキーまたはカードキーを採用している。もともとは金属製の鍵ばかりだったが、プラスチック製のカードキーを使用するホテルが増えている[14]。また2010年代後半より、スマートフォンをキー代わりにする「スマホキー(デジタルキー、スマートキーとも)」も一部で普及しつつある[15]。
ホテルには客室内の洗面台(ユニットバス内など)付近に、個別包装されたコットンや耳綿棒・化粧水・T字剃刀・櫛・歯ブラシなどのアメニティグッズが置かれるケースが多い。ただし、国によっては無償提供が法律で禁止されていたり、日本においても、2022年のプラスチック資源循環促進法施行に伴い、部屋への備え付けを止め、フロント等で希望者に配布(もしくは有償で販売)する形態に切り替えるところも増えている[20]。
ヨーロッパや米国の中程度以上のランクのホテルでは、客室にバスルームが設置されている。高級ホテルでは広いバスルームで、バスタブとトイレはかなり離れている。中程度の価格帯のホテルでは洗面台、トイレ、バスタブを同室内に設するユニットバスが主流であり、3点ユニットと呼ぶ。格安ホテルでは、バスタブが無くシャワーとトイレのみというものも多い。ヨーロッパの安ホテルではしばしば、配置が悪かったり、お湯が出なかったり、問題だらけのバスルームの割合が多い。
日本のビジネスホテルのバスルームの多くはユニットバスであるが、世界の各地域のホテルのユニットバスと比較しても特に省スペースで、洗面台・バスタブ・洋式トイレが極めて高度に一体化され、きわめて小さくまとめ上げられた形式が多い。2000年代以降は日本の一般的な家庭の浴室のようにバスタブと洗面所・トイレを分離し、バスタブに隣接して洗い場(シャワーブース)を設ける形式も増加しており、ビジネスホテルでもしばしば導入されるようになっている。
眺望も付加価値のひとつとして考慮される。海に面している部屋は「オーシャンビュー」、山に面している部屋は「マウンテンビュー」などと呼ぶ[13]。
客室への飲食物の持ち込みについては、本来は衛生管理等の理由から「ホテル内の売店で購入したものやルームサービス・ミニバーなどを除いては原則禁止」であるが、実際には部屋の中に空の冷蔵庫が置かれるなど、持ち込みを事実上容認するところが多い[21]。ただし、持ち込みOKだが手数料を支払う必要のあるホテルもあるため、詳細はホテル毎に確認することが推奨される[22]。
当日満室で宿泊できない事態を回避するため、宿泊予定が決まっていれば、事前に予約するのが一般的である。
ロンドンでは建物用途に応じた防火、耐火、給排水、省エネ等に関する建築基準があり、宿泊施設の新築・増改築、宿泊施設への建物の使用目的の変更には自治体の事前許可が必要である[25]。
パリでは都市計画の観点から建築や事業用途変更等には許認可が必要であるほか、ホテルは公衆受入施設にあたるため構造・避難設備・消火設備など建物内の安全性に係る基準を満たす必要がある[25]。
この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
日本では、外観・内装や接客が和風の旅館だけでなく、洋式ホテルも旅館業法の規制を受ける[26]。
一方で、大型のものでは、会議場やパーティー・宴会場、結婚式場やプールなどを備え、政府レベルの国際会議が開かれることもある大型ホテルがあり、他方でトレーラーハウスやキャンピングカーを駐車場に並べたような仮設ホテルまで様々ある[27]。
日本の法令上は旅館業法(昭和23年7月12日法律第138号)に規定する「旅館業」に規定される営業の一種であり(旅館業法2条1項)、「洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの」を行う施設を指す(旅館業法2条2項)。旅館業法のホテル営業は客室の形式は、洋式の宿泊施設でありベッドを備えた洋室の個室が基本となる。
ホテル営業を含め旅館業を経営しようとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区では市長又は区長)の許可を受ける必要がある(旅館業法3条1項)。許可を受ける際には申請書に営業の種別(旅館業法上のホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の種別)を記載しなければならないが、これとは別に営業施設の名称も記載することとなっている(旅館業法施行規則1条)。この営業施設の名称については原則として経営者が申請の際に自由に設定できるため、旅館業法上の営業の種別と営業施設の名称とは一致しない場合もある(営業の種別についてホテル営業として申請しているが営業施設の名称に「旅館」を名乗っている場合、それとは反対に営業の種別につき旅館営業や簡易宿所営業として申請しているが営業施設の名称としては「ホテル」を名乗っている場合など)。なお、都道府県知事の許可の際の構造設備の基準など法令の適用については、営業施設の名称にかかわらず経営者の申請した営業の種別にしたがってなされることになる。
ホテルの営業時間や料金の支払い、暴力団関係者の宿泊拒否に関する事項等、ホテルと宿泊者との間の取り決めについては、宿泊施設側が宿泊約款を策定[28] し、対応している場合がほとんどである。
ホテル営業の施設の構造設備の基準については、旅館業法施行令で次のように定められている(旅館業法施行令1条1項)。
建築基準法による用途規制により、ホテルは第一種住居地域(用途に供する部分が3000平方メートル以下に限る)、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域でのみ設置できる。
ホテルの不動産・設備の所有、経営、運営の主体と契約に関しては、主に以下のような方式がある[29]。日本では所有と運営が一体の場合も多いが、海外は所有と運営の分離が一般的である。
以上の3社は「ホテル御三家」。
2014年10月26日付の中国旅游新聞網によると、旅行会社エクスペディアのヨーロッパ12か国に対する調査で、最も歓迎する観光客は日本人で2位はアメリカ人、スイス人と続き、逆に歓迎されないのはフランス人、インド人、中国人(中華人民共和国)だった。特に日本人はチェックアウト時の部屋の状態の良さや礼儀正しさ、好奇心、現地の習慣を理解しているなどの点で観光客の模範であるとされた。調査によると、かつては無遠慮、がさつ、やかましいなどの点で評価の低かった米国人のマナーが改善され、優秀な観光客と評価され、フランス人、中国人、ドイツ人はケチな観光客と評された。またファッションセンスの良さで評価されたのは、フランス人、イタリア人、スペイン人で、身だしなみに気を使わない印象を与えたのは、旅での動きやすさや快適さを重視するドイツ人、イギリス人、アメリカ人だった[30][31]。
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