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日本の東京都港区にあるラーメン店 ウィキペディアから
ラーメン二郎(ラーメンじろう)は、東京都港区三田に本店を構えるラーメン店、およびそこからのれん分けした店。
創業は1968年で、東京都目黒区の東急東横線・都立大学駅近くに当初『ラーメン次郎』の名前で開店した。これは開店前年の1967年1月にエースコックから発売されて人気となっていたインスタントラーメン『ラーメン太郎』を捩ったものとされている[4][5][6]。
創業者の山田は大田区大森にあった料亭『松浅本店』の和食料理人で、ラーメンについては全く知識がなかった。最初は「ラーメンぐらい何とかなるか」とたかをくくってラーメン店を出店したが、開店当初から半年間は1日あたりの売上が昼前から深夜まで営業しても20杯以下と低迷していた。様子を見かねた近所の中華料理店店主が自分の中華料理店で修業するようにすすめ、山田はその勧めに応じて3か月間の修行をした。また、近隣にあった雪印乳業の社員子弟学生寮に住んでいた北海道出身の客から受けた助言を参考にし、独自の味を作り出した。提供するラーメンのボリュームと味付け、山田の人柄が学生に受けたことから店は繁盛した[4][5]。
1970年代には慶應義塾大学三田キャンパスのある東南の角に当たる交差点脇での営業を開始。1970年代前半、目黒区による呑川の河川改修工事のために店舗を移転することとなり、客として来ていた慶應義塾大学の学生から情報提供された三田通りの元洋食屋店舗にて営業を再開した。ここは慶応大学三田キャンパス東南の角に当たる慶應仲通りに通じる交差点脇であり、最寄りの鉄道駅(田町駅や三田駅)と三田キャンパス正門との導線上にあった。ここへの移転の際、ペンキ屋が新店舗の看板の「次郎」とすべきところを間違えて「二郎」と書いてしまったことから、以降はそのまま「ラーメン二郎」表記で通している[4][5]。
1986年4月発売の山本益博『東京味のグランプリ〈1986〉』で山本は飲食店を星の数で評価した際、ラーメン二郎は無星の評価だった[7][8]。1986年発売の『週刊少年マガジン』50号掲載の『ミスター味っ子』「焦がしネギの風味」の扉絵でぶたダブルが描かれており、慶應大学出身者である作者の寺沢大介が「ラーメンの帝王」というフレーズを使った紹介文を添えている[9]。1996年4月20日発売の『島耕作の優雅な1日』では、作者の弘兼憲史がラーメン二郎について取材した内容をイラスト入りでレポートしていた[10]。
1990年代に三田通りの拡幅計画が実施される見通しとなり、これによって二郎も影響を受けることが判明したため、山田は店を閉めることを考えた。しかし、常連客は店の継続を望み、地元慶應義塾大学の学生有志は当時改装が予定されていた慶應義塾大学西校舎学生食堂へ誘致の署名活動を1990年代前半に行ったが「学内の食堂に塾生以外の外部の客行列ができるのはまずい」など諸般の事情で実現に至らず、三田通りの店舗は1996年(平成8年)2月末に閉店した。同年6月から桜田通り沿い(慶應義塾大学正門近く)に移転し、営業を再開したのが現在の三田本店である[4][5][11]。
2003年には「ラーメン二郎」の名称が商標登録され、権利者は「山田拓美」、区分は「ラーメンを主とする飲食物の提供」で、登録日は2003年(平成15年)3月14日である[2][注釈 1]。
2009年(平成21年)には、イギリス『ガーディアン』紙の「世界で食べるべき50の料理」に選ばれている[12][注釈 2]。
2019年(平成31年)には、創業店主の山田拓美の長年の功績を称え、「慶應義塾特選塾員」に表彰された[13]。
2022年(令和4年)3月30日、ラーメン二郎と創業者の山田拓美の実像に迫るドキュメンタリー番組 NONFIX『ラーメン二郎という奇跡 〜総帥・山田拓美の“遺言”〜』がフジテレビにて放送。本来ラーメン二郎は取材拒否の店だが、2019年2月に慶應義塾大学から特選塾員に選任されたことを記念し、山田拓美の人柄と功績を形に残すことを目的として、特別に番組が制作されることとなった。よって、「ラーメン二郎」は、今後も取材については従来通りお断りするという[14]。
2023年4月19日(日本時間)に発表された国際メディアコンクール「ニューヨークフェスティバル」にて、ドキュメンタリー・BIOGRAPHY/PROFILES(人物/伝記)部門で、NONFIX『ラーメン二郎という奇跡 〜総帥・山田拓美の“遺言”〜』が銅賞を受賞した[15]。
店舗名看板は黄色に黒文字と赤文字でラーメン二郎と表記されていることが多いが、黒文字のみの店舗も存在する。(京都店は開業当初は二郎標準のものであったが、のちに京都府の景観条例の関係で白色で黒字及び赤字に差し替えられている[16])、カウンターは赤色である事が多い。前払いの食券制(プラスチック製札式。一部の店舗は感熱紙チケット方式)であり、麺量・豚量・トッピングによって色分けされている[17][18][19][20][21]。社訓があり、店内に掲出、また従業員が社訓をあしらったシャツを着ている店舗がある。[22]。
提供されるのは豚骨ベースの醤油味のラーメンが主であり、メニューは麺の量とチャーシュー(「ブタ」または「ぶた」と表記される)の量の組み合わせで構成されている[18][19][23]。
ラーメン二郎では基本的に、通常のラーメンのことを小(しょう)、大盛りラーメンのことを大(だい)と呼んでおり、中や普通、並といったメニューはない。また、小といっても一般的なラーメンに比べると、小で普通のラーメンの特盛かそれ以上、大で普通のラーメンの大盛り2杯分相当と量が多い。
三田本店以外の店舗では、味噌味・塩味・カレー風味、つけ麺や汁なし(油そばに似たメニュー。タレに背油や辛味、ネギなどを加え、少量のスープで伸ばしたものを麺に絡めて食べる。)、つけ味(スープにつけ麺のつけ汁を使用したメニュー)などのメニュー、あるいは生卵や生姜、チーズなどの有料トッピングも取り扱っている(実施内容や期間、価格は店舗により異なる)[18][19][23]。また、小サイズより更に少ないサイズを選択できたり、チャーシューの枚数を調整できる店舗も存在する。
店内でビールを提供する店舗も存在する他、店の前には烏龍茶を主として多く扱う自販機があり、そこで購入した飲み物に限らないが飲み物を持ち込めることが多い。[要出典]。
基本、トッピングはニンニクのみ。店員が客に向けて「ニンニク入れますか?」などと声を掛けるので、入れるか否かを答えるだけで注文が完結する。[31]。
トッピングを聞かれた際に「ヤサイ」「ニンニク」「アブラ」「カラメ」の4つを無料で変更することが大抵可能である[19][18][21][32][33]。「ニンニク」は、みじん切りないしおろし状にされた生ニンニクが丼に入れられる。「アブラ」は、スープを作る際に煮込まれた粒状の背脂であるが、店舗によっては別途醤油などで味付けされた背脂の塊りが丼内や別皿で供される。「カラメ」は、ラーメンで使用するタレを上から回しかけ、さらに濃い味に調製することである。常連から始まった加減の要望が一般化し、独特の注文の仕方からインターネット上では呪文(「ヤサイマシマシニンニクカラメスコシ」等)と呼ばれる。
麺量については、食券提出時あるいは食券確認時などに「麺少なめ」「麺半分」などといった要望を告げれば受け付けてくれる。食券を提示する際に申し出れば基本のラーメンより「味薄め」「麺かため」「油濃さ薄め」「背脂少なめ」などと、基本量や麺の茹で始めのタイミングで加減をしてくれる店舗もある。
下記の条件のいずれかに該当する一部のラーメン二郎ファンを「ジロリアン」と表現することがある[21][33][22][34][35][36]。
ライターの速水健朗は、彼らの多くが「二郎のラーメンが特別に美味しいわけではないが、食べずにいられない」「二郎はラーメンではなく二郎という食べ物である」といった価値観を持っていることを指摘し[37]、ラーメン二郎を食べることを修業とし、巡業のように何度も訪れたり各地を回る「信者」のようだと考察している[38]。また、ラーメン二郎は他の多くのラーメンチェーン店と違って店舗ごとに味が異なるため、様々な店舗を訪れてその味の違いなどの情報交換をインターネット上(ブログなど)で行ってコミュニケーションの素材として楽しんでいる[38]。このようにジロリアンはラーメン二郎を「勝手なルールを元にしたゲーム」のように消費している面があるという[39]。
ラーメン二郎創業者こと山田拓美氏のことを指す。
ラーメン二郎でスープと麺を、持参した鍋で持ち帰ること。極少数の店舗によって行われている。過去、三田本店では列に並ばず、裏口から金額を自己申告すれば鍋に盛ってもらうことができたが全面禁止となった。
前述の鍋二郎とは別に、一部の店舗において長期連休前や何らかの企画(チャリティーイベントなど)において、生麺、豚を販売する事があるが、2020年4月以降の新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるテイクアウト需要の増加により、店舗において生麺、豚肉、調理済みスープがセットとなった(基準。店舗によっては具の野菜がつく)のを販売を開始した。店舗によっては2021年に入っても継続して販売しているが、常時販売している店舗のほか、曜日及び時間限定で不定期に販売する店舗が存在する。
ラーメン二郎のファンが、その味の再現を目指して自宅で作る二郎風ラーメンを意味する語[40](テイクアウト専門店や通販などで購入できる二郎風ラーメン、あるいは二郎を模した即席めん類をそのように、あるいは「ジェネリック二郎」と呼称することもあり、前述の「鍋二郎」とは区別される)。
スープから麺を引き上げ、盛られたトッピング(主に野菜)を代わりに沈める動作のこと。二郎の中華麺は非常にスープが染み込む特徴があり、スープから引き上げることで麺のかさが増えることを防ぐ効果があるとされる。また、液面より上に盛られた野菜にスープの味が付く。箸とレンゲを使って丼の中身を反転させる様子から名付けられたと思われる。なお店舗によってはレンゲが常備されていない店があるため、この動作がし難い場合がある。
三田本店以外にもラーメン二郎と名乗る店舗が複数存在する。基本的にのれん分けによるもので、三田本店で修行した人(弟子)や、それらの弟子が開店した二郎直系店で修行した人が「ラーメン二郎」の名称を使用して出店している[17][41][42][43][44][45][46]。
各店舗、営業時間中は修行を経験した責任者が厨房に立つ鉄則に従っており、経営はそれぞれ独立して行っている[44][42][注釈 6]。いわゆるフランチャイズ形態と呼べるものであり、三田本店に対して「加盟登録料」と定額のロイヤルティーを納める形態となっているものの、山田拓美の「お客さんだけではなく店主にも世間並みかそれ以上の幸せになってほしい」との考えから、これらの費用は一般的なフランチャイズチェーンに比べて破格に抑えてあるという[47]。
他に、ラーメン二郎に似たラーメンを提供する「二郎系」「二郎インスパイア系」[注釈 7]と表現される店も複数存在している[注釈 8]。
インスパイア系の中には過去「ラーメン二郎」を名乗っていながら実際には三田本店とは無関係の店舗もあったが、ラーメン二郎の商標登録に伴い店舗名を変更している[49]。また、かつてはラーメン二郎を名乗っていたが、後に独自の屋号へ変更した店舗も存在する[50]。近年、インスパイア店は関東以外の地方でも増加傾向にある[17][43][51][52]。「二郎インスパイア」系店舗については元々山田拓美も容認していたが、取り組みが酷い店舗に対しては不正競争防止法に基づく民事訴訟も辞さないスタンスに移行しつつある[47]。
フーズ系(かつて1980〜90年代よりラーメン二郎 堀切・虎ノ門・新橋・神田・蒲田支店と名乗っていた店)は上述の通り此処に含まない
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