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マッスルミュージカル(筋肉ミュージカル/MUSCLE MUSICAL)は、日本のオリジナルミュージカル作品である。
基本コンセプトは「筋肉で音楽を奏でる」であり、歌と芝居によって物語が進行するミュージカルではない、ブックレスミュージカルである。
高さ3メートルを超える巨大な跳び箱(モンスターボックス)の飛越、身体を叩いて奏でる壮大なリズム音楽(ボディスラップ)、超高速の腕立て伏せや連続側転、舞台上に設けられた水槽での水中アーティスティックスイミングといった演目が定番であり、歌や台詞は皆無に等しい。
演者の驚異的な身体能力を最大の武器として、舞台演劇に融合させた珍しい形式の舞台である。
出演者は、体操競技、新体操、トランポリン、アーティスティックスイミング、MTB(マウンテンバイク)、チアリーディングなどさまざまなスポーツの国内外チャンピン(オリンピック経験者を含む)やアスリートまたはギネス記録保持者が中心で、ダンサー、ジャグリング、ヨーヨー、一輪車などのパフォーマーも多数出演している。
これまでの主な出演者は、池谷直樹(跳び箱世界記録保持者)、武田美保(アーティスティックスイミング・オリンピック銀メダリスト)、中田大輔(トランポリン世界チャンピオン)、有薗啓剛(MTB世界チャンピオン)、稲田亜矢子(新体操・オリンピック団体5位)、Capliore(ダブルダッチ世界チャンピオン)、TOMMY(ヨーヨー世界チャンピオン)らの他、佐藤弘道、諸星和己、照英、永井大、金子昇、西山浩司、ボビー・オロゴン、水野裕子、小笠原大晃らのタレントもいる。
2004年、横浜に開設した専用劇場「マッスルシアター」を拠点とし、2007年からは東京・渋谷に移転。 2006年と2007年には『NHK紅白歌合戦』に出演し、ショー・ビジネスの本場であるラスベガスでも公演している(2006年、2007年、2009 - 2011年)。
また、4歳児から小学校3年生までを対象として、出演者が子供達に直接体操やダンスなどを指導するマッスルスクールも開校していた。
マッスルミュージカルが生まれるきっかけはTBS系テレビ番組『ケイン・ザ・マッスル』と『筋肉番付』である。
発案者は番組に出演していた照英とされているが、実際には番組スタッフの発案で、プロデューサーの樋口潮は反対していたという。
構成・演出・振付を中村龍史、リーダーを照英とする1回限りの公演として、2001年12月9日「TRY OUT」を彩の国さいたま芸術劇場で開催することが発表されると、前売りチケットは5分で完売し公演そのものも大好評だったため、継続的に上演され、地方公演もスタートすることになった。
11月に樋口潮がTBSを退社して独立。マッスルミュージカルの企画・制作は樋口が1997年に立ち上げた「有限会社デジタルナイン」(2006年に株式会社に商号変更)が請け負い、樋口を総合プロデューサー、TBSを興行の主催者として公演が続いた。
2004年4月、横浜赤レンガ倉庫近くの市有地を借り受けて専用劇場「マッスルシアター」を建設し、24日にこけら落とし公演(50公演)がおこなわれた。
2005年からはフジテレビでテレビ番組「海筋肉王 〜バイキング〜」が放映開始されたことで興行主催者はフジテレビに切り替わったが、公演を重ねるごとに人気は高まり、チケット入手も困難になるほど観客動員数がピークを迎えた。
2006年3月 - 4月、選抜メンバーをラスベガスへ送り、『リビエラ・ホテル&カジノ』で59公演を開催。日本のオリジナルミュージカルとしては史上初であった。
2006年9月に横浜マッスルシアターが閉館した後の2007年4月21日、渋谷のSHIBUYA-AX隣に新たな専用劇場「渋谷マッスルシアター」がオープンした。オープニング公演「Jungle」(63公演)初日には、多数の芸能人や著名人が来場している。
しかし、観客動員数の増加とはうらはらに、演者たちが過酷な状況に陥っていたことを表す事態が公になっていた。
テレビ収録中に演者が負った怪我(左膝靱帯断裂)の労災認定を求めて数名の出演者が労働組合を結成し、労働基準監督署に運営側への指導をもとめた。演者とマッスルミュージカルとの契約は有期限の出演契約であり雇用契約ではないため労災は適用されないのが普通であるが、労働組合側は、年間2,000時間近い拘束時間やマッスルミュージカル側に絶対服従を強いられる関係は雇用同然だと主張した。
この案件は1年8か月の論争ののち、2009年2月に労災認定が下されることで決着するが、華やかな舞台裏で起きていた生々しい実態が露呈され、最高責任者である樋口に対する批判は一部のファン層にまで広がった。
更には2007年夏公演を最後に、これまで構成・演出を手がけてきた中村龍史が退任すると、公演が終わる度に、中村を追うように人気演者が次々と降板する。のちに中村は「方向性の違いで辞めた」と公言し、降板したパフォーマーたちと別団体「中村JAPANドラマティックカンパニー」を立ち上げている。
2011年は地方公演から始まったが、3月11日、東日本大震災が発生した。マッスルミュージカルの一行は12日の鳴門市公演に備えて徳島県に入っており、現地における震災の影響は殆どなかったことから舞台は予定通り上演されたが、以降の地方公演のスケジュールはキャンセルとなった。
大震災の影響によりイベントやコンサート、演劇の公演自粛・中止・延期が次々と発表されていた3月25日、マッスルミュージカルは渋谷で新作「SONGOKUH」を上演することを発表した。韓国のアイドルグループ3組との共演作品で、コンサート「K-POPライブ」も並行して開かれる予定であった。4月27日の初日から7月3日までの47公演が予定され、前売りチケットの販売もはじまった。初日まで2週間を切った4月14日、震災による放射能拡散の影響を懸念した韓国側およびそのファンに配慮したという理由で公演の延期が発表され、4月29日から10周年記念「GW特別公演」(9公演)を上演することが併せて発表された。
GW特別公演の最中である5月2日、延期されていた「SONGOKUH」および「K-POPライブ」の上演決定が発表された(5月25日から7月3日まで。韓国アイドルグループの出演は2組に変更)。4月に延期された公演のチケット払い戻しはまだ完了していなかったが、5月9日には新たなチケットの販売がはじまった。
ところが初日5日前の5月20日、渋谷マッスルシアターに防災上の問題点が指摘され、使用を禁止されたことで公演の中止が発表された。その後、経緯の説明も改修工事を行なったという発表もなく放置され、そのまま閉鎖となった。
前述のトラブルや大震災の影響により、運営会社のデジタルナインおよびモンスター・ナインの経営が窮地に追い込まれる中、6月4日と5日に「SONGOKUH」の縮小バージョンと思われる「GOKUH」(2公演)が世田谷区民会館で上演された。
いっぽう2009年7月31日に初日を開けたラスベガス公演は、2年間で通算604公演を上演して2011年7月13日に千秋楽を迎えた。
マッスルミュージカルは「GOKUH」公演以降しばらく中断するが、2011年12月14日に崇城大学市民ホールで、“九州学院創立100周年記念”として上演されるJAPANツアーの前売りチケットが、マッスルミュージカル側からの事前発表がないにもかかわらず、9月3日に販売が開始された。
そして2011年11月11日、資金繰りが悪化していたことなどを理由に、運営会社のデジタルナインおよびモンスター・ナインは、東京地方裁判所に自己破産を申し立て、破産手続きを開始した。負債は2社あわせて35億6600万円。
予定されていた熊本公演は関係者の尽力によって無事に上演され、これをもってマッスルミュージカルは完全終了となった。
なお、閉鎖後のマッスルシアターは、女性向けアパレルブランドとパズルゲーム雑誌出版の会社である「アイア」が購入し2012年9月に「アイアシアタートーキョー」としてリニューアルオープンし、2018年末まで運用されていた。
マッスルミュージカルの終了後も、かつての出演者たちがそれぞれの場所で、同様のコンセプトの筋肉パフォーマンス公演を行っていた。
2015年、筋肉番付のかつての構成作家の一人川野孝弘が、自身の放送作家事務所「Ring」で、マッスルミュージカルの商標権を取得。
かつての出演者である池谷直樹が率いる筋肉パフォーマンスミュージカル「サムライロックオーケストラ」の公演として、『マッスルミュージカル〜ふしぎの国のアリス〜』のタイトルで、2016年天王洲 銀河劇場で上演。主演は浅田舞[1]。
2018年2月18日には「マッスルミュージカル2018」[2]として1日限定復活。元AKB48の梅田彩佳、俳優の中村誠治郎、お笑い芸人の安藤なつらをパフォーマーに迎える[3]。
50音順・★は2011年の出演者
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