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ジャパンブリーディングファームズカップ(Japan Breeding Farms' Cup)は、日本のJBC実行委員会が中心となって開催する競馬の持ち回り開催による統一グレード競走デー。略称はJBC。ただし、JBC実行委員会では告知・宣伝など一貫して「JBC」を用いており、「ジャパンブリーディングファームズカップ」の名称が使われることはない。この名称は「JBC」の略号を使い続けるための名目的なものである(事情は後述)。
1984年から開催されているアメリカのブリーダーズカップを参考に生産者が企画・運営するダート競馬の祭典として、2001年に創設。複数の統一JpnI競走が原則として同一日(2006年の第6回のみ2日間)に施行される。
当初はジャパンブリーダーズカップ(略称JBC)という名称で開催する予定だった(競走名はジャパンブリーダーズカップ・クラシックとジャパンブリーダーズカップ・スプリント)が、アメリカのブリーダーズカップ協会からクレームが来たため、ジャパンブリーダーズカップは使うことができなくなった。その結果、JBCの名称およびロゴは変更せずJBCの意味するものをジャパンブリーディングファームズカップとした。それぞれの競走はJBCクラシックとJBCスプリントが正式名称となった。以後、従来は略称であったJBCを告知・宣伝などで用いている[1]。なお、地方競馬情報サイト英語版においては、JBCの説明として、Japan Breeding Farms' Cupの表記がなされている[2]。
基本的にはアメリカのブリーダーズカップと同じく全国の競馬場を毎年持ち回り開催とする方針で、2001年の第1回は大井競馬場で開催された。原則的に中央競馬(JRA)の競馬場に属さない地方競馬の競馬場で開催されるが、2018年は中央競馬の京都競馬場で開催された。
2005年の第5回(名古屋競馬場)、2006年の第6回(川崎競馬場)はフサイチの冠名の競走馬を多数保有してきた関口房朗が代表を務める株式会社FDOが協賛した。第5回は「フサイチネットJBC」として開催されている[3]。
賞金は当年の主催者、日本中央競馬会(JRA)、一般社団法人ジャパンブリーダーズカップ協会(JBC協会)の3者が拠出している[3]。また「生産牧場賞」と「種牡馬登録者賞」があり、JBC協会から賞金の5パーセントに相当する額が該当者に支給される[4]。2010年の第10回は優勝馬の騎手にチャンピオンリングが贈呈された[5]。
開催競馬場は、前年(2014年の開催なら2013年)に開かれるJBC実行委員会で決定する[6][7][8]。
創設当初はJBCスプリントとJBCクラシックの2つのJpnI競走が施行されていた。2011年(第11回)よりダート牝馬路線の重賞競走としてJBCレディスクラシック(3歳以上牝馬限定、施行距離は基本ダート1800m、1着賞金4000万円以上)が新設された[9]。ダートグレード競走としての格付けは新設から2012年まで付与されず[注 1]、2013年よりJpnIに新規格付けされ、日本の競馬では初めて同日に3つのJpnI競走が施行される。また2020年より北海道2歳優駿を発展させJBC2歳優駿(JpnIII)を新設、JBC競走として2歳馬の競走を実施することとなった。2020年からのJBC2歳優駿はJpnIの3競走とは別に門別競馬場で行われ、同日に2場で開催される(後述)[10][11]。
基本的に、JBCスプリントはダート1200m、JBCクラシックはダート2000m、JBCレディスクラシックはダート1800mで施行されるが、持ち回り開催が故に競馬場の形態により基本コースが合わず、基本距離から前後して開催する場合もある(詳しくは下記の表を参照)[注 2]。2006年の第6回ではJBCスプリントにおいて、距離が1600mとなることから名称をJBCマイルとした。
インターネット投票の楽天競馬、SPAT4[注 3]、オッズパーク[注 4]のほか、日本中央競馬会の即PAT、IPAT[注 5]に加え、全国の主たる地方競馬場を含む地方競馬の馬券発売施設における窓口投票も実施されている。
(2020年度)[12]
北米では1970年代から1980年代にかけてサラブレッド市場が拡大期に入り、生後数ヶ月の幼駒や数回出走しただけの2歳馬が高値で取引されたり、将来の繁殖馬候補としてシンジケートが組まれるなど、生産者だけのマネーゲームの様相を呈していた。その一方で、各競馬場は入場者数や発売額が伸び悩み、大衆の支持を失いつつあった。このことは生産者にも危機感として現れることとなった。競馬は直接・間接的に関与している大衆の支持(興行収入=賭けとしての参加)によって支えられているものであり、その大衆から見放されてしまえば、どんなに高価な馬であっても、その必要がなくなってしまうからである。「沈滞した競馬を救うために生産者も何かをしなければならない」という発想が、生産者自ら発案し主導するレースである「ブリーダーズカップ」創設の原点となった[13]。
ブリーダーズカップ創設時の北米と全く同様には至っていなかったものの、日本の生産者もまた危機感を抱えていた。日本では競走馬の供給先として中央競馬のほかに地方競馬があるが、一時期には多くの地方競馬が経営不振に陥り、存廃が議論されるようになった。また、賞金の減額によって馬の価格が低下したり、売れ残りが発生する現状は既に生産者にも打撃を与えており、生産者として抱いている競馬の現状に対する危機感や、自ら立ち上がるべきという決意は、北米とも共通するものがある[13]。
生産者の発案・主導によるレースを創設し、競馬を幅広い層にアピールし大衆の娯楽、スポーツとしての支持を集めるという思想に基き、とくに地方競馬の窮状を打開することによって日本競馬全体の発展を図る意味合いから、主に地方競馬で行われているダート競走において「チャンピオンデー」を設けることとして計画が進められ、ダートの選手権距離である2000mで行う「JBCクラシック」、優秀馬の生産に不可欠な要素であるスピード能力を問うため1200mで行う「JBCスプリント」の2競走が、2001年に創設された[13]。
競馬は、その主役である「馬」という存在により、単にスポーツと賭け事というくくりを超え、様々に幅広い関わりを受け入れてきました。馬と人間のパートナーシップという長い歴史背景と、馬という生き物自体が備える人間の心を捉えて離さない魅力は、競馬に特別の趣きを与え、例えばそれは、競馬が美術や文学のモチーフでさえある理由のひとつとなっているかもしれません。
同時に、馬が主役であることは、競馬がその背後に生産という産業的な広がりを持っていることを意味します。この生産との密接な結びつき、これが競馬をより多面的なものとしている大きな要因でしょう。
競馬において、競走と生産は理想の競走馬の追求という目的を共有することでその関係を成立させています。競走にとっての生産はそうした馬の供給源であり、生産にとっての競走は、その追求の成果を確認する場であるとともに、さらなる理想へ向けての生産資源を選定する場となっています。そして、この共通の価値観に基づく選定、例えば「チャンピオンの決定」と表現されるでしょうか、これが両者にとって最大の支持者たる大衆に訴えかけ、その共感を得ることができる最大の魅力となっているのです。
競走と生産、そして大衆の支持の良好な関係、これが競馬の発展を生んでいると言えるでしょう。
— JBC特設サイト2014【JBCについて】[13]
回 | 施行日 | 共催団体 | 競馬場 | 開催形態 | 施行距離 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
JBC クラシック | JBC スプリント | JBC レディス クラシック | JBC 2歳優駿 | |||||
1 | 2001年10月31日 | JBC実行委員会 特別区競馬組合 | 大井 | ナイター | 2000m | 1200m | ||
2 | 2002年11月4日 | JBC実行委員会 岩手県競馬組合 | 盛岡 | 昼間開催 | ||||
3 | 2003年11月3日 | JBC実行委員会 特別区競馬組合 | 大井 | 薄暮開催 | 1190m | |||
4 | 2004年11月3日 | ナイター | 1200m | |||||
5 | 2005年11月3日 | JBC実行委員会 愛知県競馬組合 冠協賛:フサイチネット | 名古屋 | 昼間開催 | 1900m | 1400m | ||
6 | 2006年11月2・3日 | JBC実行委員会 神奈川県川崎競馬組合 冠協賛:フサイチネット | 川崎 | ナイター 昼間開催 | 2100m | 1600m (JBCマイル) | ||
7 | 2007年10月31日 | JBC実行委員会 特別区競馬組合 | 大井 | ナイター | 2000m | 1200m | ||
8 | 2008年11月3日 | JBC実行委員会 兵庫県競馬組合 | 園田 | 昼間開催 | 1870m | 1400m | ||
9 | 2009年11月3日 | JBC実行委員会 愛知県競馬組合 | 名古屋 | 1900m | ||||
10 | 2010年11月3日 | JBC実行委員会 千葉県競馬組合 | 船橋 | 1800m | 1000m | |||
11 | 2011年11月3日 | JBC実行委員会 特別区競馬組合 | 大井 | ナイター | 2000m | 1200m | 1800m | |
12 | 2012年11月5日 | JBC実行委員会 神奈川県川崎競馬組合 | 川崎 | 2100m | 1400m | 1600m | ||
13 | 2013年11月4日 | JBC実行委員会 石川県競馬事業局 | 金沢 | 昼間開催 | 1500m | |||
14 | 2014年11月3日 | JBC実行委員会 岩手県競馬組合 | 盛岡 | 2000m | 1200m | 1800m | ||
15 | 2015年11月3日 | JBC実行委員会 特別区競馬組合 | 大井[14] | |||||
16 | 2016年11月3日 | JBC実行委員会 神奈川県川崎競馬組合 | 川崎[15] | 2100m | 1400m | 1600m | ||
17 | 2017年11月3日[16] | JBC実行委員会 特別区競馬組合 | 大井[17] | 薄暮開催 | 2000m | 1200m | 1800m | |
18 | 2018年11月4日[18] | JBC実行委員会 日本中央競馬会 | 京都 | 昼間開催 | 1900m | |||
19 | 2019年11月4日[19] | JBC実行委員会 埼玉県浦和競馬組合 | 浦和 | 2000m | 1400m | |||
20 | 2020年11月3日 | JBC実行委員会 特別区競馬組合 | 大井[10] | 薄暮開催 | 1200m | 1800m | 門別1800m | |
JBC実行委員会 ホッカイドウ競馬 | 門別 | - | ||||||
21 | 2021年11月3日 | JBC実行委員会 石川県競馬事業局 | 金沢[20] | 昼間開催 | 2100m | 1400m | 1500m | |
JBC実行委員会 ホッカイドウ競馬 | 門別 | - | ||||||
22 | 2022年11月3日 | JBC実行委員会 岩手県競馬組合 | 盛岡[21] | 薄暮開催[22] | 2000m | 1200m | 1800m | |
JBC実行委員会 ホッカイドウ競馬 | 門別 | - | ||||||
23 | 2023年11月3日 | JBC実行委員会 特別区競馬組合 | 大井[23] | 昼間開催 | 2000m | 1200m | 1800m | |
JBC実行委員会 ホッカイドウ競馬 | 門別 | - | ||||||
24 | 2024年11月4日 | JBC実行委員会 佐賀県競馬組合 | 佐賀[24] | 薄暮開催[25][26] | 2000m | 1400m | 1860m | |
JBC実行委員会 ホッカイドウ競馬 | 門別 | - | ||||||
25 | 2025年11月3日 | JBC実行委員会 千葉県競馬組合 | 船橋[27] | 1800m | 1000m | 1800m | ||
JBC実行委員会 ホッカイドウ競馬 | 門別 | - |
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
JBC当日は注目を集めるために、JBCの他にも重賞が組まれる[要出典](ただしJRAでの開催時を除く)。以下は主なアンダーカードとして行われた競走を挙げる。
回 | 競馬場 | 競走名 | 格 | 距離 | 出走資格 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 大井 | 武蔵野オープン | オープン特別競走 | 1600m | 3歳以上 |
2 | 盛岡 | 第3回オパールカップ | 重賞 | 芝1700m | 3歳・地方全国交流 |
3 | 大井 | '03TCKディスタフ | 準重賞 | 1800m | 3歳以上牝馬・地方全国交流 |
4 | 第1回TCKディスタフ | G3 | |||
5 | 名古屋 | 第44回ゴールドウィング賞 | SPI | 1600m | 2歳 |
6 | 川崎 | 第17回ロジータ記念 | G2 | 2100m | 3歳牝馬 |
第6回ローレル賞 | G3 | 1600m | 2歳牝馬 | ||
7 | 大井 | 第4回TCKディスタフ | SIII | 1800m | 3歳以上牝馬・地方全国交流 |
8 | 園田 | 第47回楠賞 | 重賞1 | 1700m | 3歳 |
第5回兵庫クイーンカップ | 3歳以上牝馬・北陸・東海・近畿・中国地区交流 | ||||
9 | 名古屋 | 第48回ゴールドウィング賞 | SPI | 1600m | 2歳 |
10 | 船橋 | 第56回平和賞 | SIII | 2歳・地方全国交流 | |
12 | 川崎 | 第12回ローレル賞 | 2歳牝馬・地方全国交流 | ||
13 | 金沢 | 第1回百万石ジュニアカップ | 重賞 | 1500m | 2歳 |
14 | 盛岡 | 第46回不来方賞 | 2000m | 3歳 | |
秋嶺賞 | オープン特別競走 | 芝1700m | 3歳以上 | ||
16 | 川崎 | 第16回ローレル賞 | SIII | 1600m | 2歳牝馬・地方全国交流 |
20 | 門別 | 第8回ブロッサムカップ | H3 | 1700m | |
22 | 盛岡 | 第24回ジュニアグランプリ | M1 | 芝1600m | 2歳 |
第24回岩手県知事杯OROカップ | 芝1700m | 3歳以上 | |||
24 | 佐賀 | 第2回ネクストスター佐賀 | 重賞 | 1400m | 2歳 |
2024九州産グランプリ | 1800m | 3歳以上・地方全国交流・九州産馬限定 |
JBCの前哨戦は大きくトライアル競走である「Road to JBC」とJBC指定競走の2本立てで構成され、出走馬は上記JBC3レースの出走権をかけて争う。
以下に示した競走の当該年度優勝馬には、所属を問わず表記の競走に対する優先出走権が与えられる。
2024年の対象競走は以下の通り[28]。
競走 | 格付 | 競馬場 | 距離 | 優先出走権付与対象競走 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
日本テレビ盃 | JpnII | 船橋 | 1800m | JBCクラシック | |
ジャパンダートクラシック | JpnI | 大井 | 2000m | 3歳牡馬牝馬限定 | |
東京盃 | JpnII | 1200m | JBCスプリント | ||
レディスプレリュード | 1800m | JBCレディスクラシック | |||
マリーンカップ[注 6] | JpnIII | 船橋 | 3歳牝馬限定 | ||
マイルチャンピオンシップ南部杯 | JpnI | 盛岡 | 1600m | JBCクラシックまたはJBCスプリント |
※コースはすべてダート。
地方競馬各地区の有力馬を選定するための指標となる競走として指定されており、優勝馬への優先出走権はないものの、選定にあたってその成績が重要視される。
2024年の対象競走は以下の通り[28]。
※コースはすべてダート。
2018年の第18回は開催地として、JRAの京都競馬場が選ばれた。JRAの競馬場での開催は創設以来初のことで、理由として「JBCの魅力をより広く、多くのファンに伝えるため、訴求力の高いJRAの競馬場で実施を要請するべき」としており、全国公営競馬主催者協議会がJBC実行委員会に提案、JBC実行委員会も「JBCの発展に寄与する提案」と判断しJRAに要請した結果、JRAも「ダートグレード競走の魅力を知っていただく契機になる」と要請を受諾し主催した[32][33]。なお、2018年については、JRAでの開催となったため、「農林水産大臣賞典」ではなく、「農林水産省賞典」として行われていた[34]。
なお、中央競馬においては2010年以降、新設重賞を除く全ての平地重賞競走が国際競走として国際格付番組企画諮問委員会(IRPAC)の承認を受けたグレード(G1~G3)を付与しており、IRPACの認定を受けていない独自グレードであるJpn1~Jpn3を付与した重賞競走が開催されなくなってから久しく、2018年のJBC3競走(Jpn1)の開催時は番組表など一部刊行物・公式ウェブサイトを除き競馬場・ウインズ等での掲示物・場内放送・映像においてグレードの表記をせず「Jpn1(ジーワン)」といった案内や呼称も行われなかった[注 9]。
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