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日本の小説家、評論家 (1953-2009) ウィキペディアから
(くりもと かおる、1953年2月13日 - 2009年5月26日)は、日本の小説家、評論家。日本SF作家クラブ会員、日本推理作家協会員、日本ペンクラブ会員、日本文藝家協会員、日中文化交流協会員。
ペンネーム | 栗本 薫、中島 梓、京堂 司 |
---|---|
誕生 |
今岡 純代(旧姓:山田) 1953年2月13日 東京都葛飾区 |
死没 | 2009年5月26日(56歳没) |
職業 | 作家・評論家 |
国籍 | 日本 |
教育 | 学士(文学) |
最終学歴 | 早稲田大学第一文学部文芸科 |
活動期間 | 1976年 - 2009年 |
ジャンル | SF、ファンタジー、ミステリーなど |
文学活動 | やおい、ボーイズラブ |
代表作 |
『グイン・サーガ』シリーズ 『魔界水滸伝』 『伊集院大介』シリーズ |
主な受賞歴 |
群像新人文学賞評論部門(1977年) 江戸川乱歩賞(1978年) 吉川英治文学新人賞(1980年) 日本SF大賞特別賞(2009年) 星雲賞日本長編部門(2010年) |
デビュー作 |
評論:パロディの起源と進化 小説:ぼくらの時代 |
配偶者 | 今岡清 |
ウィキポータル 文学 |
代表作は『グイン・サーガ』、『魔界水滸伝』、『伊集院大介』シリーズなど。『グイン・サーガ』は序盤が英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロシア語、韓国語に翻訳されている。
また、(なかじま あずさ)名義で、評論活動や作詞作曲、ピアノ演奏、ミュージカルの脚本・演出なども手がけた。
夫は『S-Fマガジン』第6代編集長を務め、天狼プロダクションを経営する今岡清。母方の又従兄弟(祖父の姉の孫)に 梶原一明(経済評論家)がいる。父親は石川島重工業の重役をへて、石川島建機の社長となった実業家[1]。
20代前半の1977年に群像新人文学賞評論部門を、翌1978年に江戸川乱歩賞を受賞した[注釈 1]。当時、早稲田大学に創設されたばかりの「文芸科」出身の小説家としても話題となった。同時期デビューに見延典子がいる。また、分野ごとに中島梓、栗本薫両名義を使い分け、乱歩賞受賞直後には『平凡パンチ』誌上で中島梓と栗本薫の1人2役対談が企画された。
約30年間の活動で、新刊だけで約400冊の作品を発表した。その中には1年間に20冊以上の新刊を発表した年も4年あり、晩年も年間10冊以上の新刊を発表していた。
多作の半面で、刊行された自作を読み返すことをしないことで知られた。『天の陽炎-大正浪漫伝説』の原稿が一部欠けたまま2007年に刊行されていたことが、『傑作電子全集』の編集過程で判明し、補足した完全版が配信された。遺品のパソコンから欠落箇所を見つけた今岡は「栗本は推敲もせずに一気に書き、校正もほぼしない」と回想している[2]。)
SF、ファンタジー、伝奇・時代小説、ホラー、ミステリ、耽美小説など、作品が極めて幅広いジャンルに渡っていることも大きな特徴である。特に1980年代には、それぞれの分野で人気を博し、様々なベストセラー作品を生み出すと同時に、各ジャンルの数多くのアンソロジーに作品が収録された。
「文学における物語性の復権」を唱え実践する姿勢は、デビュー当初、非常に高く評価された[3]。新たなジャンルの先駆者として後の創作者たちに影響を与えた功績も大きいが、その一方で、様々なジャンル・フィクション(漫画含む)の愛読家であった栗本には、過去に読んだ小説・漫画などの影響が強い作品が多く、その作品のオリジナリティが低いという指摘もある(ただし、必ずしも批判的な指摘ではない)[4]。栗本自身、その創作活動においてオリジナリティに全く重きを置いておらず、そのことを自身の著作『小説道場』(中島梓名義)の中で公言している[5]。
ミステリーに対しては謎解きや理論よりも文体や雰囲気に、SFに対しては現実に対するフィクションのアプローチとしてのSF的手法に興味の中心があると述べている。
作品には、森茉莉の影響を受け[6]、同性愛傾向が見られるものも多い。1978年の耽美小説誌『JUNE』の創刊にも深く関わっており、創刊号には第二のサガンと評された20歳のフランス人女性小説家という架空の経歴で、ジュスティーヌ・セリエの名でフランスを舞台にした耽美な作品『薔薇十字館』を発表し(日本人女子大生あかぎはるなの訳となっているが、これも栗本の筆名。挿絵は竹宮惠子)[7][8][9]、フランスでの大学生活などの架空の近況報告を行いつつ、セリエ名義では4作品を発表した[7]。1979年に刊行された『真夜中の天使』は、1975年にTBSテレビで放送された沢田研二主演のテレビドラマ『悪魔のようなあいつ』の男性登場人物たちの関係性に触発され草案を練ったものだという。現在のボーイズラブに繋がる源流的な作品として、ジャンルの創始に一役買った作品でもあるとされる[6]。『JUNE』誌上では栗本薫、中島梓の他、ジュスティーヌ・セリエ、あかぎはるな、神谷敬里、滝沢美女夜、沙羅、アラン・ラトクリフなど、様々な名義で作品や評論を提供、あかぎはるな名義では『comic JUN』に掲載されたブックガイド記事「世界JUN文学全集 西洋篇」「世界JUN文学全集 日本篇」の監修なども行い、読者の少女たちを楽しませるだけでなく、「男性同士の性愛」を軸に文化・教養を紹介することに尽力した[7]。『JUNE』で連載された『小説道場』門下からも、秋月こお、江森備、柏枝真郷、榎田尤利など、同ジャンルの作品を手がける多数の作家を輩出している。また、『JUNE』休刊後は直接に小説術を伝授する「中島塾」を主宰していた。
中島梓名義の評論作品は、相対的には作品数が少ないが、『コミュニケーション不全症候群』は、現代の日本人のコミュニケーション薄弱な生活を鋭く分析しており、笠井潔などから高い評価を得ている[10]。
幼少時より創作活動を行っていたが、元々は小説家よりも漫画家志向が強かった。漫画雑誌『COM』の愛読者であり、同誌主催のコンテストに何度か応募し、また、『S-Fマガジン』誌主催のコンテスト・イラスト部門へも応募したが、いずれも落選した[11]。栗本の描いたイラストや漫画はほとんど発表されていないが、『S-Fマガジン』1987年1月臨時増刊号にイラスト集「グイン・イメージ・ボード」が、『別冊小説現代』1985年WINTER号に漫画「D介日記 日々是好日」が掲載されている。
小説執筆活動も学生時代から活発に行っていた。跡見学園高等学校時代には文芸部の部長を務め、早稲田大学ではサークル「ワセダミステリクラブ」に名目のみながら2年間所属していた[11]。その当時の作品を収録した短編集として『接吻』が刊行されている。他にも『真夜中の天使』や『トワイライト・サーガ』など、商業誌デビュー前に書かれた作品がのちに出版された例が多くみられる。また、安部公房、大江健三郎、サルトル、筒井康隆などを論じた卒業論文「想像力の構造」を、早稲田大学で師事した平岡篤頼が『朝日新聞』紙上で激賞したことをきっかけとして、評論活動を本格的に行うようになった。栗本の商業誌デビュー(『別冊新評 筒井康隆の世界』)も、平岡の一文を見た同誌編集長の依頼によるものである。
4歳時からピアノを習っていたこともあって、音楽への傾倒も強く、音楽大学への進学を志した時期もあったという[11]。早稲田大学では、音楽サークル「ハーモニカ・ソサエティ」に参加した。デビュー後もハードロック系バンド「パンドラ」でキーボードを担当していた。作曲を始めたのは「パンドラ」時代であり、その後開始したミュージカル創作活動では、数多くの劇中曲の作曲を手掛けることとなった。バンド活動は晩年まで続けていたが、その方向性は次第にジャズへと移行した。
1979年9月から1986年6月まで(1982年11月 - 1983年9月は産休のため一時降板)、テレビのクイズ番組『象印クイズ ヒントでピント』(テレビ朝日)に女性軍キャプテンとしてレギュラー出演した。同番組のメインである「16分割クイズ」においては、わずか2〜3枚開いただけで正解に導くことも多々あり、司会の土居まさるからは「16分割の姫」と番組内で言われた。
長唄、小唄、清元、津軽三味線の名取でもある[12]。また、短歌集『花陽炎春之巻』を自費出版し、2本の歌舞伎脚本も手掛けている。日常的に着物を着用する着物愛好家としても知られており、着物に対する愛着を綴ったエッセイ『着物中毒』を著している。
作品の多くに「あとがき」を付し、デビューからまもない一時期は、「あとがき作家」などとも名乗っていた。『グイン・サーガ』正伝の各巻にも必ずあとがきが付されており、シリーズの初期にはキャラクター人気投票やファンレター紹介などが行われていたが、次第に作者の近況報告が中心となっていった。
今日泊亜蘭の最後のSF長編『我が月は緑』(『光の塔』の30年後を描いた作品)に「白百合楽劇団」を主宰する“栗名梓”として登場する[14]。
近年、栗本薫がBL執筆に向かったのは早大在学中に遭遇した川口大三郎事件で虐殺糾弾運動に参加できなかった屈折を執筆で解決しようとしたため、という説が照山もみじによって提起されている[15]。
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