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(かさい きよし、1948年11月18日 -)は、日本の小説家、推理作家、SF作家、評論家。
東京都中央区月島出身[1]。神奈川県立横浜翠嵐高等学校を1年で中退[2]、和光大学除籍。学生運動に関わり、構造改革派系の共産主義労働者党の学生組織であるプロレタリア学生同盟のイデオローグだった。 当時「黒木龍思」の筆名を使用しており、「黒木」はルカーチ主義者の福本和夫が日本共産党内で用いていた変名に由来する。その後、連合赤軍事件をはじめとして新左翼各派が内ゲバに転じていくのに失望し、思想的に転向する。
1974年から2年間のパリ滞在を経て、その期間中に草稿を書いた『バイバイ、エンジェル』を1979年に発表。同作が第6回角川小説賞を受賞[3]し、小説家としてデビューする。小説執筆と平行して、SF・ミステリー小説への評論活動をする一方で、『ユリイカ』などへの寄稿も行っている。
小説家としての仕事と並行して思想家・哲学者としての仕事も旺盛に展開する。 『テロルの現象学』でマルクス主義と完全に決別し、以後「マルクスに依拠しない左翼思想」を模索しつづけ、思想史には「マルクス葬送派」(小阪修平、長崎浩)と呼ばれる思潮に属する。この思潮を発展させ、1995年の『国家民営化論』では、反資本主義ではなく、逆に資本主義を徹底化させて国家を解体させるというアナルコ・キャピタリズムの思想を明確に打ち出した。 また、1990年代から「純文学の終焉」を唱え、これに反対する立場の笙野頼子からの反発を招いた。1980年代のポストモダン思潮の中心人物であった蓮實重彦の物語批判論を厳しく批判したことでも知られる。
新本格ミステリ勃興後は、その運動に共鳴して「本格ミステリ第三の波」と呼び、高く評価。それと平行して本格ミステリ評論活動を活発に行い、「本格ミステリの大量死体験理論」(本格ミステリが発生するには、その国が、直前に人間性を無視した、総力戦による『大量死』を経験する必要がある、という理論)を提唱する。 また、当時ライトノベルを中心に書いていた米澤穂信や桜庭一樹らを、新本格派ミステリー作家を多く輩出する東京創元社に紹介する[4]など、後進の育成にも取り組んでいる。
美少女ゲームにも関心があり、シナリオライターである奈須きのこの小説『空の境界』の解説を手がけている。他には、『ヴァンパイヤー戦争』・『サイキック戦争』の(講談社文庫版の)イラストは、主に美少女ゲームを手がけるイラストレーター(武内崇・中央東口)が起用されている。また息子の笠井翔は美少女ゲームのクリエイターや制作会社の代表となっている。
また、若手の本格ミステリ評論家たちと「探偵小説研究会」を結成。しかし、『容疑者Xの献身』を巡る論争において、自身が「標準的な出来栄えの初心者向け本格」と評する同作を高く評価する他の評論家たちを批判。また、同会の選出による2007年の「探偵小説評論賞」優秀作に、山本悠『「戦後」探偵小説論批判』が選ばれたことに抗議して退会。以後は、ジャンルを超えた若手批評家たちとの「限界小説研究会」に参加している。
かつては日本SF作家クラブ会員でもあり[5]、笠井の提案によりSF評論の新人賞「日本SF評論賞」が創設されたが、のちに退会。
スキーが趣味であり、ミステリー作家を誘ってスキー合宿をしていた他[6]、スキーのインストラクターが主人公の小説やスキーに関する書籍もある。
推理小説としては、現象学を駆使する哲学者的な探偵矢吹駆が登場する矢吹駆シリーズが著名。同シリーズには、デビュー作となった『バイバイ、エンジェル』や、第3回本格ミステリ大賞の受賞作『オイディプス症候群』がある。
「矢吹駆シリーズ」における笠井の推理小説の書き方は、フョードル・ドストエフスキーの小説における、人物間の思想的な対話のように、推理する探偵と真犯人との対決の中に思想を盛り込ませるものである。各作品には実在の思想家をモデルとした人物が現れ、それらモデル人物と矢吹の対話を通して、モデルとなった哲学者の言説に作者流の批判を加える体裁をとっている。実際にモデルとなった人物は永田洋子ら連合赤軍の論客(ある意味では彼女達が論理的主柱としたカール・マルクスらも含まれる)、シモーヌ・ヴェイユ、ジョルジュ・バタイユ、マルティン・ハイデッガー、ミシェル・フーコー、ジャック・ラカン、ジュリア・クリステヴァなど。 ちなみに、シリーズの番外編的な『熾天使の夏』は、作者の自己批判的側面を持ち得ており、講談社文庫版によせたあとがきにいわく、埴谷雄高の『死靈』の影響もあるという。 その他には、評論に『<戯れ>という制度』、『秘儀としての文学』、『テロルの現象学』、『機械じかけの夢』、『探偵小説論序説』(第3回本格ミステリ大賞を受賞)などがある。
作家の藤田宜永とはフランス滞在中から交友があり、笠井は『バイバイ、エンジェル』の草稿を、当時フランスミステリーの翻訳を手がけていた藤田に見せた事がある[要出典]。
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