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日本のテレビドラマ番組 ウィキペディアから
『愛という名のもとに』(あいというなのもとに)は、1992年(平成4年)1月9日より3月26日まで毎週木曜日22:00 - 22:54に、フジテレビ系列の「木曜劇場」枠で放送されていた日本のテレビドラマ[1]。主演は鈴木保奈美。
最終回は人気を受けて、また脚本の野島伸司から「もう少し書きたいので時間を延長して欲しい」との要請もあって、当時としては異例の15分拡大版で放送された[2][注 1]。
野島伸司脚本らしいスピーディーな展開、不倫、自殺未遂、強制性交未遂、仲間の自殺、今で言うパワハラ等、トラブルや不幸のオンパレードは勿論、“ダイヤルQ2” “学歴社会” “フィリピーナのジャパゆきさん” “ゴルフ場乱開発による自然破壊” “ボランティア”といった当時の世相(バブル崩壊不況)を反映した内容、そしてストレートな理想主義的台詞(例:何かというと登場する「仲間っていいな」)などが独自の世界を形成した[3]。時代はバブル崩壊期にあたり[4]、博報堂入社2年目だったスージー鈴木は広告業界で毎日ヘトヘト。ドラマの内容が身につまされる思いで、青春の蹉跌を表現した浜田省吾の主題歌「悲しみは雪のように」の歌詞が完璧に重なったと話している[4]。
『東京ラブストーリー』(1991年)、『101回目のプロポーズ』(1991年)と続けて30%の視聴率を記録したプロデューサー・大多亮が「一本ぐらいここでこけてもいいだろう」「これだけの成果を出せば会社も文句を言えないはず(笑)」「次は好きなものを作ろう」等という余裕から本作を企画した[4][5]。大多は、1967年の森川時久監督の映画『若者たち』を観て感動し『若者たち』と岡林信康のイメージで青春群像を発案し、野島伸司に話を持ちかけた。一方、野島は野島で1985年のアメリカ映画『セント・エルモス・ファイアー』と浜田省吾のイメージでそのアイデアを膨らませた[3][5]。この4つのイメージから本作の世界観が生まれた。大多は、「青春と友情」をテーマに、作品全体を浜田省吾の世界観でくるんだドラマを作ること決めた[4]。
大多は、浜田の協力が得られないようなら、このドラマは没にする意気込みを持って[4]、主題歌交渉にあたったという[4][6]。その際に大多が希望したのは歌詞にサラリーマンの葛藤が歌われている「J.BOY」のような、新曲の制作だった。浜田がどんな曲を作って来てもそれを主題歌にするつもりでいた[4]。しかし浜田は、新曲はスケジュール的にできないが「悲しみは雪のように」だったら、ドラマのテーマに近いので使って欲しいと提案した[5][6]。テレビに出ない、タイアップもやらないという活動スタンスを持つ浜田がなぜ、タイアップを了承したかといえば[4][7]、ドラマの内容が浜田の曲と合致しているのなら、安易なタイアップにはならないと判断したといわれる[5]。また、「悲しみは雪のように」という曲に光を当てるチャンスだという読みもあったともいわれる[5]。大多もある程度、浜田を聴き込んではいたが[4]、「悲しみは雪のように」は知らなかったぐらい当時は地味な曲[4]。聴いてみるとドラマの世界観にピッタリと感じ、あえてこれを選んだ浜田のセンスに驚いた[4]。大多は「トレンディドラマはキラキラした都会を舞台にしているけれど、登場人物は地方から砂漠のような東京に出てきた若者たちがほとんど。そこで恋をして、挫折を味わう。いわば「都会の孤独」を描くトレンディドラマの世界に、浜田さんの歌詞はぴったり。また状況や設定を説明しすぎない歌詞もドラマの主題歌として輝いた理由の一つだと思う。ドラマの登場人物の誰を歌詞に当てはめても違和感がない。サビの一節"誰もが愛する人の前を 気付かずに通り過ぎてく"は自分たちが描きたかったドラマの世界そのものだった」などと述べている[4]。これを受けて大多は、ドラマ全体を“浜田省吾”で染め上げることで浜田の厚意に応えた[7]。ドラマのタイトルを浜田の曲で「愛」の付くタイトルの中から『愛という名のもとに』を選んだ他、ドラマ内でも「ラストショー」、「J.BOY」、「もうひとつの土曜日」など、浜田の曲が多く流され[4]、さらに各回のサブタイトルに第一回「青春の絆」、第四回「涙あふれて」、第八回「君が人生の時」、第九回「いつわりの日々」と、浜田の曲名をずらり並べ、まさにハマショー祭り[4][3][5]。但し、クライマックスシーンでは、岡林信康の『友よ』が流された。第十回『友よ』、最終回『私達の望むものは』は岡林信康の曲の題名。浜田のドラマタイアップは本作で最後となった[5]。浜田は、それまでマスメディアに露出することが極端に少なく、一部の熱狂的なファンに支えられている存在であったが[7]、本作での主題歌起用でファン層が飛躍的に拡大した[6][8]。しかしプロモーション等には一切協力せず[7]、"我関せず"とばかり、曲が大ヒット中も海外に逃避し[7]、その後もスタンスを変えることなく、自身の活動を続けた[4]。
主役の仲間が7人、ボート部など設定の類似があり、“1985年のアメリカ映画『セント・エルモス・ファイアー』の剽窃ではないか”という指摘がでたが[9][10]、前述したように、本作は『セント・エルモス・ファイアー』をイメージの一つとして創作されている。第1話の内容は1年前に放送された山田太一脚本『ふぞろいの林檎たちIII』〔1991年〕の第1話に酷似していた。
平均視聴率は24.5%、最終回には最高視聴率32.6%を記録。これは夜10時台の番組としては驚異的な数字であり、最高視聴率は2022年現在、木曜劇場全作品の中でも歴代1位の記録である。また、同枠では平成初期の最大のヒット作でもある[注 2]。大多は「当時のテレビ業界では大学生を主人公にしたドラマはヒットしないと言われていました。それでも『愛という名のもとに』が多くの人に受け入れられたのは、間違いなく浜田さんのおかげだと思います。素晴らしい曲を提供してくれた浜田さんには、感謝しかありません」と述べている[4]。
脚本家・野島伸司は1988年にデビューして以来コンスタントに佳作を発表してきたが、取材というものをほとんどしてこなかった。しかし、このドラマでは代議士秘書や病院関係者、環境保護団体の人、証券会社の人に取材をし、「なんでこんなに面白いこと早く教えてくれなかったのと思いましたよ(笑)。ある部分で深みが出ます、話ももちますし」と漏らすくらいに取材の意義を実感している[11]。野島は、それまで『君が嘘をついた』『すてきな片想い』『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)などの純愛を描いてきたが、本作で若者の闇を描いて以降、作風を激変させた[3]。本作以降、『高校教師』(TBS)『ひとつ屋根の下』『この世の果て』(フジテレビ系)『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(TBS)『未成年』『聖者の行進』(TBS)と、過激な設定や描写の作品を連発した[3]。この『愛という名のもとに』で、その後の社会派ドラマ(あるいは「不幸ドラマ」)路線への足がかりを得たと言われる[3][11]。
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
大学(文京大学[注 3])のボート部(漕艇部)[注 4]で青春時代を共に過ごした男女7人の仲間[注 5]。そして1989年の大学卒業から3年後。恩師(ボート部監督)の葬儀をきっかけに再会するが、新しい生活と年月による思想の変化を実感。同時に、不倫に悩んだ尚美の自殺未遂騒動を始め、各人の持つ様々なトラブルが浮上。そして健吾と貴子は婚約をし、皆から認められたと思ったのだが、政界の妻として働いて欲しいという健吾、教師の仕事を続けたいという貴子、そしてそれぞれの持つ家庭環境などの事情から暗礁に乗り上げる。その直後に大学生の頃、健吾と時男が自分を巡って争ったことがあると知ってしまった。それぞれの理想と現実のギャップに悩み、もがき苦しみながらも、前を向いて生きていこうとする彼らの「答え」はどこにあるのだろうか……[3]。
各話 | 放送日 | サブタイトル | 演出 | 視聴率 |
---|---|---|---|---|
第1話 | 1992年1月 | 9日青春の絆 | 永山耕三 | 23.1% |
第2話 | 1992年1月16日 | 夢を追って | 23.1% | |
第3話 | 1992年1月23日 | 隠された青春の日 | 21.9% | |
第4話 | 1992年1月30日 | 涙あふれて | 杉山登 | 21.9% |
第5話 | 1992年2月 | 6日決心 | 22.9% | |
第6話 | 1992年2月13日 | 見失った道で | 永山耕三 | 22.5% |
第7話 | 1992年2月20日 | 風に吹かれて | 中江功 | 22.8% |
第8話 | 1992年2月27日 | 君が人生の時 | 永山耕三 | 21.9% |
第9話 | 1992年3月 | 5日いつわりの日々 | 杉山登 | 24.4% |
第10話 | 1992年3月12日 | 友よ | 永山耕三 | 27.9% |
第11話 | 1992年3月19日 | 生きる | 中江功 | 29.0% |
最終話 | 1992年3月26日 | 私達の望むものは | 永山耕三 | 32.6% |
平均視聴率 24.7%(視聴率は関東地区・ビデオリサーチ社調べ) |
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