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日本のテレビドラマ番組、メディアミックス作品、その主人公たる架空のヒーローの名前 ウィキペディアから
『イナズマン』は、1973年10月2日から1974年3月26日までNET系で毎週火曜日19時30分から20時00分に全25話が放送された、石森章太郎原作東映製作の特撮テレビ番組。また、それに登場する架空のヒーロー。
本作品が放映された当時は超能力やUFOなどのオカルトものが一大ブームを起こしており、主人公が超能力者、主人公に協力する「少年同盟」も超能力を持つ少年少女によって構成されている、など本作品にも随所にそれらの要素が盛り込まれている[1][2][3]。
主人公はサナギマンからイナズマンへの二段変身能力を持っているが、これは蛹から蝶への羽化からイメージされたものである。蝶をモチーフとしたイナズマンのデザインは、蝶と超能力者をかけた言葉遊びからのアイデアであると言われている[2]。
東南大学三年生・
気がついた五郎は別の場所におり、その前には先ほどの女性と少年、数人の少年少女たちがいた。彼らは事情を説明する。「自分たちは超能力を持つミュータント・少年同盟であり、帝王バンバの率いる新人類帝国と戦っている」と。
さらに五郎の前に少年同盟の盟主・キャプテンサラーが現れる。彼は「五郎も超能力を持っている」と言い、それを覚醒させる。五郎の超能力とは2つのスタイルを持つ超人への変身能力、すなわちサナギマン、そしてイナズマンに2段変身するというものだった。五郎は少年同盟と共に新人類帝国のミュータンロボットと戦うことを決意する。
第24話・第25話(最終話)はファントム軍団との最終決戦であると同時に新たな敵・デスパー軍団の登場編でもあり、物語はそのまま(第25話の最後に「つづく」とある)『イナズマンF』へと続く。
少年同盟とは、キャプテン・サラーが悪の超能力者を倒すために作り上げた秘密組織である。メンバーは全員超能力を持った少年少女であり、卵形の飾り[注釈 1]が特徴のオレンジ色の制服とヘルメットを着用しており、「スパーッ!」の叫びとともに空高くジャンプして一回転することにより、私服姿から少年同盟の制服姿に瞬時に変わる。その基地は都内の地下深くに作られており、電話ボックスが入口。同盟員はエレクトロボーイ号[注釈 2]という自転車でパトロールを行い、ピットと呼ばれる鳩型のバッジを通信機や投擲武器として使用する[注釈 3]。第11話以降、少年同盟のコスチュームは着用されなくなり、組織自体も有名無実化した[1]。
帝王バンバが結成した悪の超能力者集団。超能力者(ミュータント)を新たな人類であると考え、食糧危機や人口増加によって危機的状況を迎える50年後の地球を見据え、超能力を持たない不要な旧人類を奴隷化あるいは抹殺し、悪の心を持ったミュータントのみの世界を作り上げようとしている。秘密基地を全国各地に持つ。帝王バンバと彼に盲目的に従うミュータンロボット、ファントム兵士によって構成された冷酷非情の独裁組織だったが、新組織デスパー軍団の策謀によって組織は内部分裂を起こし、孤立無援となったバンバはイナズマンに倒されファントム軍団は壊滅した。
第24話からイナズマンらの前に姿を現した組織。ファントム軍団にクーデターを仕掛け壊滅寸前に追いやった。帝王バンバがイナズマンに敗れファントム軍団が壊滅した直後、本格的に活動を開始した。
出典:『イナズマン大全』[13]
本作品のBGMおよび主題歌・挿入歌は全て渡辺宙明が作・編曲した。一部、『人造人間キカイダー』から流用されたBGMもある。
本作品は、東映動画で『サイボーグ009』などを担当したプロデューサーの旗野義文が1972年[14]に立案したアニメーション企画『ミュータントZ』が源流である[1]。企画書では『仮面ライダー』のヒットによって巻き起こっていた当時の「変身ヒーローブーム」に対抗するため[14]、アニメーションならではの自由な発想による超能力者の活躍が強調されていたが、実現には至らなかった[1]。しかし、企画書が東映本社のプロデューサーだった平山亨の目に留まり、実写ヒーロー番組として製作されることとなった[1]。実写ヒーロー番組『電光イナヅマン』として練り直された企画は当初、TBSのタケダアワーでの放送を想定していたが、東映エージエンシーの参加によりNETでの放映が決定する[1]。原作漫画とキャラクターデザインを担当した石森章太郎は、第11話で脚本と監督も担当している[1]。
主役のイナズマンこと渡五郎役には、前年に『人造人間キカイダー』で主演した伴大介が起用された[注釈 8]。また、少年同盟のメンバーである超能力少女のヒロイン・大木サトコ役に野球根性ドラマ『ガッツジュン』のマドンナ・村丘美代子役で出演した桜井マリ、サトコの弟である少年同盟メンバーの大木カツミ役に『仮面ライダー』の少年ライダー隊隊員・ミツル役で出演していた山田芳一、五郎の盟友・丸目豪作役に東映映画『新網走番外地 大森林の決斗』(降旗康男監督、1970年)で準主役デビューした北村晃一がそれぞれ起用された。
脚本陣では、東映で『仮面ライダー』、『仮面ライダーV3』のメインライターを務めた伊上勝が初期の番組フォーマットを担当し、『仮面ライダーX』の製作準備に移る第9話まで脚本を担当した[2]。同じく仮面ライダーシリーズを担当した島田真之に加えて『マジンガーZ』の高久進らベテラン陣が起用され、「超能力」を主題とした怪奇アクション路線が採られた。演出面では『仮面ライダーV3』から監督の田口勝彦、山田稔、塚田正煕をスライド起用するなど強力な布陣が揃えられ、音楽は『人造人間キカイダー』、『マジンガーZ』、『キカイダー01』など、これも東映作品で実績のある渡辺宙明が起用された。
番組制作スタジオの東映生田スタジオでは、ミニチュア特撮面が強化された[15]。美術担当のエキスプロダクションの八木功をチーフとする特撮班により、ライジンゴーの空中戦や大規模な崩壊特撮が盛り込まれ、従来の生田作品からのさらなるスケールアップが図られている[16][15][注釈 9]。
劇中アクションは、『仮面ライダー』などを担当した大野剣友会。イナズマン、サナギマンを演じたのは剣友会のベテラン、中村文弥。「肩のプロテクターが邪魔で動きにくかったが、色合いも明るく、スマートに演じるよう心がけた」と語っている。番組アトラクションショーも日本各地で行われたが、これは大野剣友会は担当していないという。
イナズマンをはじめとするキャラクター造形は、エキスプロによる。イナズマンの肩のプロテクターはラテックス製で、当初は石森のデザイン画に合わせて胸と一体型だったが腕がうまく上がらず、アクションには不向きだった。このため、肩の部分で分離したものに修正されたものとなったが、それでも中村が言うようにかなり動きづらいものだった。また、手袋とブーツには原デザインと同じく蝶の羽根のような黄色い模様があったが、放映版では省かれている。イナズマンの触角は、アップ用のFRP製のものが第1話の撮影で早くも折れてしまい[注釈 10]、アクションシーンではラテックス製になっている。サナギマンの衣装は、放映開始前の雑誌撮影会の際にエキスプロで誤って背中の着脱用のファスナーを着け忘れたまま納品してしまい、現場で着脱部を針金で縛ってしのいだという[19]。サナギマンのスーツは第5話以降、より動きやすいものに変更されている。
メインライターを務めた伊上は第9話を最後に『仮面ライダーX』の企画参加のため、降板した[20]。それ以後、高久や島田に加えて第17話からは円谷プロのウルトラシリーズや『ロボット刑事』を執筆していた上原正三が参入し、それまでの怪奇キャラクター路線から五郎と相棒の丸目豪作の2人を中心に据えた、人間ドラマを中心とするエピソードが増えた。中盤以降はさらに人物関係が整理され、少年同盟もサトコとカツミの姉弟、カオル以外のメンバーはほとんど登場しなくなっている[1]。
放送日 | 話数 | サブタイトル | 登場怪人 | 脚本 | 監督 |
---|---|---|---|---|---|
1973年 10月2日 | 1 | 恐怖の新人類 バンバの挑戦!! | 伊上勝 | 田口勝彦 | |
10月9日 | 2 | 危うし少年同盟!呪いの水!! |
|
山田稔 | |
10月16日 | 3 | 黒い死を呼ぶファントム地獄! |
|
高久進 | 田口勝彦 |
10月23日 | 4 | 日本列島大爆発!! |
|
島田真之 | 山田稔 |
10月30日 | 5 | 大空中戦!かみつくライジンゴー!! | 高久進 | ||
11月6日 | 6 | 怪奇ユキバンバラ!新人類手術!! |
|
伊上勝 | |
11月13日 | 7 | 奇怪!空飛ぶ一ツ目!? | 塚田正煕 | ||
11月20日 | 8 | 恐怖砂あらし!大空港沈没!! |
|
高久進 | |
11月27日 | 9 | 光るカビは夜歩く!! |
|
伊上勝 | 田口勝彦 |
12月4日 | 10 | 人喰いガスの恐怖!! |
|
島田真之 | |
12月11日 | 11 | バラバンバラはイナズマンの母 |
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石森章太郎 島田真之 |
石森章太郎[注釈 11] |
12月18日 | 12 | 母の仇バンバ対イナズマン |
|
島田真之 | 山田稔 |
12月25日 | 13 | 傷ついたイナズマン |
|
高久進 | 塚田正煕 |
1974年 1月1日 | 14 | 怒りのライジンゴー 大空中戦!! |
|
山田稔 | |
1月8日 | 15 | 影をくわれたお母さん | 島田真之 | 塚田正煕 | |
1月15日 | 16 | 約束に向って走れ! |
|
高久進 | |
1月22日 | 17 | 謎の対決!ふたりの渡五郎!! |
|
上原正三 | |
1月29日 | 18 | 友情のイナズマ落し!! |
|
高久進 | 山田稔 |
2月5日 | 19 | 謎の殺人ボクサー ミラーX? |
|
上原正三 | |
2月19日 | 20 | 星円盤を追え!ライジンゴー!! |
|
曽田博久 | 塚田正煕 |
2月26日 | 21 | 渡五郎 イナズマン死す!? |
|
上原正三 | |
3月5日 | 22 | 歩く土人形 恐怖の大地割れ!! |
|
島田真之 | 山田稔 |
3月12日 | 23 | 呪いのえのぐが人を溶かす | 平山公夫 | ||
3月19日 | 24 | 謎のロボット戦士? | 上原正三 | 塚田正煕 | |
3月26日 | 25 | 壮烈!帝王バンバの最期!! |
|
こうしてさまざまな新機軸が盛り込まれたが、変身ブームは沈静化しつつあり、同時期に制作されていた『仮面ライダーV3』と肩を並べるほどの人気には至らず視聴率は低迷した[2]。この情勢のなか、1974年(昭和49年)初頭に石油ショックが発生して諸物価を高騰させ、日本の産業界は大きな打撃を受けた。東映生田スタジオもその例外ではなく、同年1月以降の特撮資材費の高騰は番組1本当たり毎回50万円(当時)の赤字を出し続けることとなり、同スタジオに深刻な営業不振を及ぼした[15]。このことは、後に同スタジオ所長の内田有作が辞職する一因となった[15]。
これを受け、制作陣は第3クール(第26話)から番組のリニューアルを決定し、キャストや敵組織など設定一切を一新するうえ、タイトルを『イナズマンF』と改めることとなった。第24話からは、これに先駆けて新しい敵組織が登場し、渡五郎の服装、変転した際のバンク、イナズマンのマフラーの色なども変更されている。
番組人気はいま一つだったが、作中に登場するライジンゴーは、スポンサーであるポピーから「ポピニカシリーズ」として合金玩具が発売され、大ヒットとなった[3][31] 。これを受け、ライジンゴーは『イナズマンF』にも引き続き登場した。
石森は、石ノ森と改名した後年のインタビューで本作について「早すぎた」と述べており、放送当時の特撮技術では超能力を表現するのに不十分であったとする旨を語っている[32]。
イナズマンの登場作品・客演作品については、イナズマン (架空の人物)も参照。
すべて東映ビデオより発売
以下、客演作品。
石ノ森章太郎執筆の作品についてはイナズマン (漫画)を参照。
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