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一国の中心となる都市 ウィキペディアから
首都(しゅと、英: capital / capital city)とは、一国の中心となる都市のことを指す。
多くの場合にはその国の中央政府が所在し、国家元首等の国の最高指導者が拠点とする都市のことであるが例外もあり、場合によっては中央政府の所在とは別に、その国のシンボル的存在として認められている都市が法律上の首都とされることもある。首都の存在を一国の法律上の地位として規定する社会もあれば慣習上の存在とみなす社会もあり、また国政上「首都」という概念を重視しない国もある。
首都は首府(しゅふ)・国都(こくと)・都(みやこ)などとも呼ばれ、また、帝制国家や王制国家の場合は帝都・王都等の称がある。
「首」はかしら(頭)くび、こうべ、かみ(上位:首座)、かなめ(要)、かしら(魁帥)、おさ(長)などの意。「都」はみやこ、天子の宮城のある首府をあらわす。周代の行政上の区画では君主の宗廟のある場所を都(ト・ツ)といい、無い場所を邑(イウ)と呼んだ。「都」は寄せ合わせ残らず集める意。曹丕文「頃撰二遺文、一都爲二一集」。「京」はみやこ(帝都)切り立った高い場所、丘、高い、多い、くじら(鯨=京)などの意。「京師」は天子の居ますみやこ、京は大、師は衆、大衆のおる所の意、春秋成十三「公如京師」。「京都」は晋の時代、景王の諱を避けて京師を京都としたことによる、魏志文帝紀「任城王薨於京都」[1]。清代に編纂された佩文韻府にはみやこを首に例える用例「首都」「首府」の採録はなく、熟語「首善之區」の元となった首善を採録する。これは漢書・儒林傳序の「故教化之行也,建首善自京師始」に由来する。英語Capitalの語源はラテン語kaputであり印欧語の「頭」あるいは「ウシの頭」をあらわす。ヒエログリフにおける牛の頭はフェニキア語や古代ギリシア語、ラテン語の文字に転用されアルファベット筆頭の「A」を表現する。またCapitalは「資本」とも翻訳される。メトロポリスはギリシャ語で「母都市」の意(mḗtēr「母」+pólis「都市」)[2]。
日本では一般的に京、洛と呼ばれ、古代から明治までの律令においては「皇都」、明治期から戦前にかけては「帝都」、戦後は「首都」と呼称することが多い。「帝都」の字句は幕末期の文書:船中八策に登場している。
漢字検定テキストなどによっては、「主都」は「首都」の誤字・誤用とされている[3]。ただし、「主」はきみ(君主)国家の元首やあるじ、ぬし(家長)、つかさどり(宰)まもり(守)すべる(領)ひと、神や神霊のやどるところ、神などをあらわす意であり、帝都を主都と表記しても字義的には誤りではないと解することもできる。
また、国の首都とは別に、その地域のおもだった都市(プライメイトシティ)を指して「主都」と記述することがある(例:ドイツのバイエルンの主都であるミュンヘン)。「都」ではなくその地域でのおもだったムラ(邑)という意味で「主邑」(しゅゆう)との表現がある。
日本のキリスト教では「主都」を冠する会派がある。
「首都」の他に「首都圏」という用語もある。「首都」はひとつの都市であるのに対して、「首都圏」は首都とその周辺に広がる都市の群、即ち圏域(都市圏)を指す。いわば、「首都」は点であるのに対して「首都圏」は面であることになる。首都圏を1個の地方行政区分とする例(フィリピンのマニラ首都圏、インドのデリー首都圏)もあれば、日本のように一部の法律に定義される程度の事例まで存在する。また、中国の北京市など、首都の地方行政区分の区域を広げる例もある。
世界の各国の中には、首都の位置を憲法や法令で明示的に記述している国も存在する。たとえばドイツ連邦共和国は憲法や法律により首都を具体的に指定しており、ドイツ連邦共和国基本法には第22条(1)に「ドイツ連邦共和国の首都はベルリンである。」(Art 22 (1) Die Hauptstadt der Bundesrepublik Deutschland ist Berlin. ドイツ連邦法務省のサイトより) と明記されている。アメリカ合衆国では憲法では首都の具体的な地域は指定していないものの、1790年の合衆国首都設置法は首都の位置をワシントンD.C.と明示している。
また、逆に法定の首都を持たない国も存在する。たとえばイギリスや日本は首都の地位を明示する法が存在しない。また、オランダやボリビア、タンザニアなどのように、法的に定められている首都と実際に首都機能が置かれている都市が違う場合もある。
なお、日本の首都について直接定める法令は現存しないが、一般的には東京都であると認識されており、東京都が事実上の首都である。
2018年2月には衆議院議員逢坂誠二の質問[4]に対し、「首都を東京都であると直接規定した法令はないが、東京都が日本の首都であることは、広く社会一般に受け入れられているものと考えている」とする日本国政府の公式見解が示された[5]。 なお、東京都からは衆議院国会等の移転に関する特別委員会に対して、日本の首都の定義に関する質問を何度か行っている[6]。
首都と呼べる都市を複数持つ国もある。現在日本でも首都が地震や災害などで機能しなくなる事を防ぐ為、首都機能をバックアップする為に近畿圏に副首都を設置・整備する副首都構想がある。
古代の東アジアでは、中国の唐が長安と洛陽と太原の三都制(後には鳳翔と成都を加えた五都制となる)を採用しており、さらに日本(天武朝など)や渤海などの諸国がそれを模倣したように、複都制が広く行われた。この類型の中には、首都が移動するという場合もある。複都制を採っていた唐も、実質的には長安が第一首都(正都)であってその他の都は名目上(副都)にとどまっていたが、時には皇帝は長安を離れて洛陽に移動し、後者が正都としての機能を果たすこともあった。
鎌倉時代後期・江戸時代の日本でも首都機能が分散されており[注 1]、名目上の首都(天皇のいる京)と、行政機関所在地(幕府のある鎌倉・江戸)とが別々に置かれていた[注 2]。
モンゴル帝国(元朝)では、大ハーンは宮廷を引き連れ、中国の最北端にある大都(現北京)と、上都(草原の南端部、万里の長城をはさんで大都と対の位置にある)を季節移動した。
ガンデンポタン時代前期(1642-1732)のチベットでは、歴代のチベット・ハンたちはラサのガンデン・カンサル宮殿とダム草原を季節移動した[7]。
三権分立の観点から、国家の中枢機能を複数の都市に分割している国がある。
時期によって首都を移動させる国もある。
首都と、実権を握る国家元首の常住地が異なっている場合もある。
憲法や法律で首都を規定している国家では、憲法や法律で規定された名目上の首都と、国家機関が集中する事実上の首都が異なる例が存在する。
遷都を宣言したにもかかわらず、新首都に国家機関の移転が進まず、実際の首都機能の大半が未だ旧首都にとどまっている事例もある。
それとは逆に、新たな都市を建設して首都機能の主要部分を移転するという事例もある。この場合、遷都は宣言されない。また、法的な首都の方にも首都機能の一部は残ることになる。
政治的な事情により、事実上の首都と形式上の首都が異なる国もある。極端な場合、実際には統治していない場所を政治的理由から首都と主張することもある。事実上の首都は「臨時首都」などの名称で呼ばれることもある。
これも政治的な事情により、事実上の首都が国際的には認知されていないという場合もある。
都市国家については、1つの都市が主権を持ち国家となっているため、国家と都市と首都が同義である。シンガポール、モナコがその事例であり、前者は首都シンガポール市がそのままシンガポールという国家、モナコは首都モナコ市がそのままモナコ公国という国家になっている。こうした国家では、地方自治体が存在しない。
面積の小さなミニ国家では、首都が存在しない場合もある。
首都は、国政の中心として交通の便が良い場所が選定されることが多い。したがって、首都と最大都市は、必ずしも一致しない。
首都が最大都市である国(例:日本、韓国、北朝鮮、タイ、イギリス、フランス、ロシア、メキシコなど)もあれば、首都と最大都市が異なる国(下表)もある。
外国大使館は基本的に首都に置かれるが、イスラエルのように、承認に係る事情から外の都市に置かれる例もある。
また、政治の中心地と経済の中心地(その国の最大都市であることが多い)を分離する場合もある。パキスタン最大の都市カラチ(旧首都)は人口1200万人を超える(非公式推計では2000万人に達するともいわれる)が、首都イスラマバードは人口80万人程度であるという極端な例もある。これらの中には、それまで政治中枢と経済中枢を兼ねていた首都が過密になり過ぎ、また一極集中の弊害も無視できなくなったために、別の場所に新都市を建設して遷都したという例もある。コートジボワールとブルンジでは、最大の都市(いずれもかつての首都)を「経済の首都」として公式に経済の中心地と定めている[9]。
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一時期のみ異なっていた例も含めている。以下、「首都」とある都市はすべてその国の政治中枢である。
国 | 首都 | 最大都市(または事実上の首都) |
---|---|---|
アメリカ合衆国 | ワシントンD.C. | ニューヨーク(旧首都) |
アラブ首長国連邦 | アブダビ | ドバイ |
インド | デリー | ムンバイ |
エクアドル | キト | グアヤキル |
オーストラリア | キャンベラ | シドニー |
カザフスタン | アスタナ | アルマトイ(旧首都) |
カナダ | オタワ | トロント(旧首都) |
カメルーン | ヤウンデ | ドゥアラ |
ガンビア | バンジュール | セレクンダ |
コートジボワール | ヤムスクロ | アビジャン(旧首都、経済の首都) |
サンマリノ | サンマリノ | セラヴァッレ |
シリア | ダマスカス | アレッポ |
スイス | ベルン | チューリッヒ |
スーダン | ハルツーム | オムドゥルマン |
スリランカ | スリジャヤワルダナプラコッテ | コロンボ(旧首都) |
赤道ギニア | マラボ | バタ |
タンザニア | ドドマ | ダルエスサラーム(旧首都) |
中華人民共和国 | 北京 | 上海 |
トリニダード・トバゴ | ポートオブスペイン | サンフェルナンド |
トルコ | アンカラ | イスタンブール(かつての東ローマ帝国・オスマン帝国の首都) |
ナイジェリア連邦共和国 | アブジャ | ラゴス(旧首都) |
ニュージーランド | ウェリントン | オークランド(旧首都) |
パキスタン | イスラマバード | カラチ(旧首都) |
パラオ | マルキョク(人口約400人) | コロール(旧首都) |
フィリピン | マニラ | ケソン |
ブラジル | ブラジリア | サンパウロ |
ブルンジ | ギテガ | ブジュンブラ(旧首都、経済の首都) |
ベトナム | ハノイ | ホーチミン市(旧称:サイゴン。旧ベトナム共和国と旧南ベトナム共和国の首都) |
ベナン | ポルトノボ | コトヌー(事実上の首都) |
ベリーズ | ベルモパン | ベリーズシティ(旧首都) |
ボリビア | スクレ | 事実上の首都ラパス、経済の中心都市サンタクルス |
マラウイ | リロングウェ | ブランタイヤ |
マルタ | バレッタ | ビルキルカラ(旧首都) |
南アフリカ共和国 | プレトリア(行政府所在地としての首都のひとつ) | ヨハネスブルグ |
ミャンマー | ネピドー | ヤンゴン(旧称:ラングーン。旧首都) |
モロッコ | ラバト | カサブランカ |
リビア | トリポリ(トリポリタニア) | 東部の行政中心地ベンガジ(キレナイカ)、 かつての王室アルバイダ(キレナイカ) |
リヒテンシュタイン | ファドゥーツ | シャーン(旧首都) |
一般に、首都は過密地になりやすい。これは、国家機関(日本でいうところの国会議事堂、中央省庁、最高裁判所)が置かれているために、国家機関の周りに企業が密集するためである。このように、本来、首都は政治と行政の中心地であるが、経済の中心地になることも珍しくない(例:東京都(特に東京特別区)、パリ、バンコク、ソウル)。こういう経過に至った国家では、首都を移転すること(遷都)によって、経済の中心地ではない都市を新しく首都に選定することもある。
ただし、ブラジリア(ブラジル)やキャンベラ(オーストラリア)のように、何もない原野などに国家機関だけを建設した場合は、この限りではない。ベリーズの首都であるベルモパンに至っては、人口が1万人程度である。
政治の中心地であるので、政界などではしばしばその国の中央政府を指すのに首都名を使う。例えば「ワシントン」はアメリカ政府を指し、「北京」は中国政府を指す。特に分断国家に対する中立的呼称として使われることがある。 例:北京政府(中華人民共和国)と台北政府(中華民国)
基礎自治体(例えば市)よりも上位にある広域自治体(例えば県・州)そのものが首都であることがある。
1市単独で広域自治体(県や州)を構成する市は、特別市と称される。特に首都は過密化しやすい点から、特別市となっている所が多い。また、首都以外でも、首都に伍する過密都市(大抵は1つ)は、特別市とされる所もある。
一方で、首都であっても国内のほかの主要都市同様、上位の広域自治体の管轄区域内に含まれるケースも少なからず見られる。たとえば、カナダの場合は連邦政府の直轄行政地区が存在せず、同国の首都オタワは行政上オンタリオ州内の一都市としての位置づけである。また、イタリアの首都ローマはローマ県、およびその上位地方行政区画であるラツィオ州の区域にそれぞれ属し、同時にその県都ならびに州都でもある。
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