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『妖精作戦』(ようせいさくせん)とは、笹本祐一による日本のライトノベル。初版がソノラマ文庫から1984年に発売され、1994年に新装版、2011年に創元SF文庫よりシリーズが再刊された。作者のデビュー作であり、著者の「現役最古のライトノベル作家」[1]という自称が示すとおり、この作品は青少年向けSFが「ジュブナイル」と呼ばれていた時代に発売され「時代を変えた」[2]、「ライトノベルの直系の先祖」とも言える作品である[3]。
妖精作戦 OPERATION FAIRY | |
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ジャンル | 学園、SF |
小説:ソノラマ文庫版 | |
著者 | 笹本祐一 |
イラスト | 平野俊弘一巻初版のみ若菜等 |
出版社 | 朝日ソノラマ |
レーベル | ソノラマ文庫 |
刊行期間 | 1984年8月31日 - 1985年9月30日 |
巻数 | 全4巻 |
小説:ソノラマ文庫版(新装版) | |
著者 | 笹本祐一 |
イラスト | 御米椎 |
出版社 | 朝日ソノラマ |
レーベル | ソノラマ文庫 |
刊行期間 | 1994年 - 1994年 |
巻数 | 全4巻 |
小説:創元SF文庫版 | |
著者 | 笹本祐一 |
イラスト | D.K |
出版社 | 東京創元社 |
レーベル | 創元SF文庫 |
刊行期間 | 2011年8月31日 - 2011年12月22日 |
巻数 | 全4巻 |
カセットテープ:妖精作戦 | |
原作 | 笹本祐一 |
脚本 | 関澄一輝 |
演出 | 竹内豊 |
放送局 | NHK-FM |
番組 | アドベンチャー・ロード |
発売元 | ソノラマ文庫 |
レーベル | ソノラマ文庫カセット版 |
話数 | 10話 |
枚数 | 全2巻 |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | ライトノベル |
ポータル | 文学・ラジオ |
9月1日、榊裕が夏休み最後の休日を利用してオールナイト映画のはしごを終え、国立にある私立星南大付属高校の学生寮に帰ろうと新宿駅東口改札へ着いたとき、自動販売機で切符を買えずに困り果てている一人の少女を見つける。機械を使うのが苦手と言う少女、小牧ノブを送り届けた榊だが、寝ぼけていたために名前すらもよく覚えていなかった。
次の日の放課後、榊と沖田玲朗、真田佐助が買い物に出かけた際、非常識な低空飛行を行っていたベル ジェットレンジャーが墜落する場面に遭遇する。その現場を眺めている少女、ノブを見つけた榊は昨日の出来事を思い出し、4人で自己紹介をしている場に、事故を取材していた鳴海つばさが現れる。夏休みのバイトのレポートを依頼していたつばさと沖田が揉め始め、皆は解散する。
ある日、神戸港に着いた貨物船から大排気量にチューンアップされたCB1100Rに乗った男が降りてくる。山あいの喫茶店ダイアナで、マスターという情報屋から「小牧ノブという少女のボディーガード依頼」を受けた男はその金額に目を見張り、その背景を尋ねる。「SCFのブルーサーチがスターボウ計画という超能力者のスカウトを行っている」と聞いた男は、そのリスクの大きさに納得しながら契約書に「平沢千明」とサインし、超能力者の専門家としてマスターに幹本沙織という占い師を紹介される。
ノブの転校以来、何度も何者かに連れ去られそうになる事件が起き、その都度平沢の手により難を逃れていたが、これ以上騒ぎに巻き込みたくないノブが深夜に寮を立ち去ろうとする時にSCFの部隊が現れ、その場に居た榊もノブと一緒に薬で眠らされ、横須賀沖の超弩級潜水艦「カサンドラ」に拉致されてしまう。
ノブ達を救出しようと、沖田、真田、つばさ、そして平沢達はカサンドラに潜入するも捕まり、赤道直下のアレキサス諸島の海底にあるイエローサーチに連行される。平沢と協力し脱出を試みる6人は、地球-宇宙連絡機CHC-73 ワルキューレを奪取し日本への帰還を計画するが、機体は自動操縦にロックされており機体は大気圏を突破する。
宇宙まで連れてきてしまったことを詫びるノブは榊に、自分が超能力者であり、そのためにSCFから追われる身であることを話し、これ以上ついて来ると後悔すると言う。しかし榊は、後悔なんてしない、と答えノブに付き合うことを伝える。
宇宙船「CC-104 ルナトランスポーター」に捕獲され、月のヘヴィサイドクレーターにあるルナベースへと着いた一行は、基地指令のキーラーからSCFが存在する意味と、その敵について知る。
SCFとの戦いから離れ、沖田を主人公として文化祭前後の出来事が語られる。『ビューティフル・ドリーマー』へのオマージュであり、「1巻より売れていた」という伝説の怪作[4]。
文化祭まであと一週間と二日という日の放課後、沖田は買出しに出かけた国立駅前通りで黒服の男たちに少女が誘拐されそうになる光景を眼にして助けようとするが、不意に空中に出現した大岩が落ちると共に少女も黒服たちも消滅する。
その夜、桂木荘の正面玄関でクラスの自主制作映画『クレオパトラに投げキスを』の夜間ロケを行っていた沖田達は、突然起こった地震に驚きながらも撮影を終えるが、自然研の地震計は正面玄関だけしか地震を記録していなかった。
次の日、授業を受けていた沖田は、3階の窓の外に昨日の少女を見つけ愕然とする。そして夕食後、スタッフたちとロケのフィルムを観ていた榊は、地震の実況撮影の3コマ[注釈 1]だけに写っている人間に気付く。それは、あの少女だった。
驚く暇も無く部屋につばさが飛び込んで来て、大温室での夜間ロケの準備中に姫が謎の人物に誘拐されたと聞かされた一行は現場に急ぐ。
高さ40メートル以上、その中でロードワークが出来るほど広大な大温室の第3層で、長身に黒マントを着た誘拐者は沖田達の攻撃を5メートル以上もジャンプして避け、第4層のキャットウォークへ逃げ出す。
沖田と南部はそれぞれ、スズキRH250とヤマハRZ350Rの2台のバイクで追いかけるが、途中で沖田の前に少女が現れ「誘拐者は本物のドラキュラだ」と告げ、付いて行きたいと話す。
沖田は了解し、タンデムでドラキュラを追って上層に駆け上がりながら名前を聞くと、少女は氷島陽子と答える。
つばさとの協力で最上階に追い詰めたドラキュラの姿は温室のガラスに映っていなかった。ガラスを割って天井に飛び出したドラキュラを追いかけ、大温室のガラス屋根を疾走するバイクの後部に座っていた陽子が、小さな銀の十字架のネックレスを沖田に手渡す。
銀のロザリオの攻撃を受け、屋上から飛んで逃げようとするドラキュラを追いかけてバイクで飛び出した沖田は、ロザリオを叩き付けながら姫を引き摺り下ろして屋上のつばさへ投げ飛ばすと、ドラキュラは消え、コウモリが飛び去っていく。
高度40メートル以上から空中へダイビングした沖田は観念するが、頭の中に「助けてあげる」という陽子の舌足らずな声が届くと共に、バイクは羽が生えたように浮遊し地上の花壇に何事も無く着地する。
騒ぎは収まらず、翌朝、桂木寮に狼男が現れ、金紺館には雪女が大吹雪を引き起こし、寮全体を凍らせていた。再び陽子に救われた沖田の前に案内人が現れ、「この騒ぎの原因の一つは、あなたです」と告げて消える。
その後、加速的に騒ぎは拡大し、学園内に巨大なサラマンダーやシーサーペント、ゴーレム等が出没する。
「氷島陽子の正体は何か?」、「なぜ、こんな怪奇現象が続発するのか?」真相を知るために、沖田は調査を開始する。
文化祭の準備のため、星南学園全体に非常事態宣言が発令され、メイン催事場の講堂、体育館、校舎、寮の全てがイベント準備のために24時間態勢で作業を行っている中、2-Bスタッフ一同が405号室でフィルム編集作業を行っていた。
PM4:30、沖田は不意に誰かの視線を感じたが、窓の外を見ても誰も居ない、気のせいか寝不足のためと思い作業に戻る。
PM6:30、ノブとつばさが食事をしていた食堂のTVで流れるニュースは、「南太平洋大戸島で栄光丸と備後丸が消息を絶った」、そして「阿蘇山が噴火した」と告げていた。
AM2:30、寮の自動販売機を漁って食事をしていた沖田は、ポケットからロザリオを取り出し考え込んでいた。そこに怪物の仮装をした3人組が現れる。沖田は即座に南部たち3人と看破し、アテレコに来るように伝えると、3人と座敷童子が出て行く。
AM9:00、高校放送部のスタジオでアテレコを行っていた沖田は、舌足らずな呼び声を聞く。声の主を必死に思い出そうとするが、どうしても思い出すことは出来なかった。
PM2:00、男子・女子部合同の新聞部本部となった第三家庭科室で、つばさは締め切り前の修羅場を指揮していた。どうにか本日分の作業が終わり、校舎の屋上に出たつばさは、空に細い胴体の4発プロペラ機が編隊飛行しているのを見つける。その時、どこからかサイレンが鳴り響くと、きな臭い風が吹き、眼下の町は残骸と化し焼け爛れていた。不意に肩を叩かれ、怯えるつばさ。振り向くと、ノブが居た。景色も普通に戻り、寝不足で幻覚を見たと考えたつばさはヤケ喰いする。
PM4:30、映画の編集作業が終わり、参加者全員でラストカットの声を入れる。
PM7:00、格納庫でバイクのレストアを行っていた沖田達は、首の無い人物が乗ったカワサキW1が走り去るのを目撃する。自分でもなぜかは判らないまま、「また怪奇現象が起きるのでは」と思いながら女子寮の方を見る。
PM11:25、ノブに呼び出され、こっそりと大温室に出かけた榊は「現実があやふやな感じがする」というノブの悩みを聞く。不安げなノブをなだめる榊は覗き見していた沖田たちを見つけ、邪魔者を叱責する。そこで沖田は再び呼び声を聞き、遠くのキャットウォークに居る少女を見つけるが、次の瞬間消えてしまう。
AM 02:43、榊は夢を見ていた。 破損だらけの状態で再突入するスペースシャトルをなんとか着陸させようと奮闘している最中、両側の主翼が千切れ、続いて垂直尾翼が千切れ飛ぶ。そして、出鱈目なスピンに陥った機内に高温のプラズマが吹き込み、瞬時に6人を蒸発させる[注釈 2]。
405号室で飛び起きた榊は、真田、そして沖田も同じ夢を見たことを知る。
AM 07:00、2-Bの教室で試写会の準備をしていた沖田達の所へ、ノブとつばさが訪ねてくる。榊が目を腫らした表情のノブに理由を尋ねると、「スペースシャトルが燃える夢を見た」と答え、つばさも同じ夢を見たことを告白する。不思議な踊りを踊りだした榊は、ノブに何時頃に「夢」を見たか尋ね、つばさを含め5人全員が概ね同じ時刻に同じ夢を見たことを確認する。
AM 07:35、試写会の最中に榊は「女の子」が再び一瞬だけ映っているのを見つけ、沖田に伝える。沖田は記憶の底を探り、思わず「ひじまようこ」という名を呟く。
AM 08:00、試写会が終了し、観客がスタンディングオベーションを贈る中、沖田は達成感に喜ぶスタッフ達の中に居る和田にボツフィルムの在り処を尋ね、教室を飛び出ていく。
AM 10:30、男子部・女子部合同ブラスバンド部が『スター・ウォーズ』のテーマ曲に合わせたバンドドリルの練習を一旦終え、クラリネットパートのノブも休憩しようとした所へ榊が現れる。その後ろからつばさが現れ、ラジオのニュースで「駿河湾に巨大な卵が流れ着いた」と報じているのを聞いた後、校内のミニFMが「正面玄関で事故が発生した」というニュースを伝えていることに気付き、無線で状況を確認して華道部のスタッフが巻き込まれたことを知る[注釈 3]。ノブは姫が正面玄関の飾り付けのことを話していたことを思い出し、「姫が正面玄関に居る」と榊とつばさに告げる。
AM 08:01、スタッフたちと喜んでいる榊に、ノブが「昨日の事を覚えている?」と問いかけてくる。何のことか判らない榊がノブと一緒に廊下に出てもう一度尋ねると、「ラストカットの歓声の中に『沖田くん』という声が聞こえた。そして、昨日の温室でも同じ声を聞いた事を思い出した」と答える。だが、榊には聞こえていなかった。
AM 08:30、沖田はボツフィルムの中から、少女が3カットだけ写っているフィルムを見つけるが、正体に思い当たらず困惑する。
AM 09:30、沖田は大温室の中で昨日までの記憶を探っているうちに、ポケットの中に入っていたロザリオに気付き、何かを思い出しそうになる。その背後から黒服の男が現れ、なぜか知り合いと感じた沖田は誰何するが、相手は謎の笑みを浮かべて否定する。
AM 09:35、沖田は男子部新聞部部室で名簿を調べ、「一年三組、氷島陽子、347号室」という見覚えのある名前を見つけるが、和田に去年の名簿であることを告げられる。今年の名簿は行方不明だという和田の言葉に、沖田は部室を出て行く。
AM 10:30、ブラスバンドの練習を終えたノブは榊を見つけて話しかけるが、夢の中に居るような違和感を覚え、今の会話を前にもした気がすると言いながら、もうすぐつばさが来ると呟く。ちょうどその時、つばさがやって来て榊との会話を聞き、「やっぱり二度目だ」と確信する。そして様子を心配する二人に、「正面玄関で姫が取り残されてしまう」と告げた途端、つばさの耳に事故の話が飛び込んでくる。榊は「時を駆けた、もしくは夢邪鬼の所為か…」と問いかけながら助けに向かう。
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※「声」はラジオドラマ版の声優。
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この作品に影響を受けた作家は数多く、谷川流は創元SF文庫版『カーニバル・ナイト』の解説において、長門有希は和紗結希のオマージュと書いている。有川浩は著書『レインツリーの国』で重要な役割を果たす「フェアリーゲーム」は『妖精作戦』のオマージュであり、創元SF文庫版の解説において「トラウマ」と書いている。秋山瑞人はこの作品の結末に衝撃を受け『イリヤの空、UFOの夏』を書いた。他に小川一水[5]などファンは多い。
現在のライトノベルに影響を与えた点として、三村美衣は『ライトノベル30年史』[6]において、
主人公たちはただの高校生だが、おたく的な知識が事件解決の手段として使われている。また70年代から80年代のアニメや特撮物を共通基盤にした独特のノリ、型番やスペックをそのまま出すメカの書き込みなど、同時代的情報を共有する小説の流れは本作から始まったといっていい。
と述べている。
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