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主にブドウを原料とするアルコール飲料 ウィキペディアから
ワイン(仏: vin、英: wine、伊: vino、独: Wein)は、主としてブドウの果汁を発酵させたアルコール飲料(酒)。葡萄酒(ぶどうしゅ)とも。通常、単に「ワイン」と呼ばれる場合には、ブドウ以外の他の果実の果汁を主原料とする酒は含まない。日本の酒税法では「果実酒」に分類されている。また、日本語での「酒」と同じく、欧州語においてはアルコール飲料(特に果実酒)全体を指す場合もある。
ワインは日常的に飲まれるアルコール飲料でありながら、ギリシャ神話やローマ神話、キリスト教において重要な役割を果たす神聖な存在でもある。また、外観や香りや味わいを鑑賞する嗜好品としても高い地位を獲得しており、食文化を牽引する存在の一つとなっている。長期熟成に耐えうることから、近年ではコレクションや投資の対象としても大きな注目を集めている。
古くは紀元前の南コーカサスやメソポタミアに端を発し、その後はフランスやイタリアをはじめとするヨーロッパ周辺地域で広く生産から消費まで行われる時代が続いたが、現在ではさらに生産地域を広げ、そして世界中で愛飲されている。
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 556 kJ (133 kcal) |
13.4 g | |
0.1 g | |
ビタミン | |
ビタミンB6 |
(1%) 0.01 mg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 5 mg |
カリウム |
(1%) 70 mg |
カルシウム |
(1%) 5 mg |
マグネシウム |
(1%) 5 mg |
リン |
(1%) 7 mg |
鉄分 |
(2%) 0.3 mg |
他の成分 | |
水分 | 75.2 g |
アルコール | 11.1 g |
(100 g: 96.4 mL、100 mL: 103.7 g)
アルコール: 14.5 容量 % | |
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%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
ワインは世界で最も多くの地域で飲用されているアルコール飲料の一つである。ワインは主に以下の3種類に分類される。
ほかに発泡ワイン、オレンジワインなどの特殊な製法のものがある。ワインの風味を構成する味覚は、白ワインでは酸味・甘味であり、赤ではそれに渋みが加わる。加えて、香りが風味の重要な要素であり、これらのバランスが取れているワインが一般的に良いものとされる。
ワインの主成分は水、エタノール、各種の有機酸、糖、グリセリン、アミノ酸、核酸、タンニン、炭酸ガスなどである。各種の有機酸の中では酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酢酸、コハク酸の6つがワインの風味に関して最も重要な要素と考えられている。また、貴腐ワインにはグルコン酸が多く含まれている。
魚介類との相性に関しては、従来はタンニンが関与していると信じられていたが、タンニンではなくフェノール化合物、カルボニル基を持つ物質、鉄が関与するとの報告がある[5]。特に、鉄分の含有量は魚介類料理との相性に大きく影響を及ぼし、鉄分濃度に依存し1-オクテン-3-オン、(E,Z)-2,4-ヘプタジエナールなどの物資により生臭味が増強されてしまう[5]とされている。なお、鉄の起源は、土壌、製造工程中の鉄製品、コラージ(澱引き)に依存している。
ワインは瓶に詰められた後でも熟成が進み、風味は変化を続ける。熟成期間はボルドーワインなどの一部のワインでは50年以上もの熟成に耐えるものもあるが、多くは1年から10年ほど、長いものでも20年から30年である。安価なワインでは熟成によって品質が向上することはあまりなく、むしろ早く飲まないと劣化してしまう。長い熟成に耐えるものを長熟、逆に早く飲むものは早飲みという。作られて間もないワイン(「若いワイン」と表現する)は、ブドウの生の味が強く、渋すぎたり、酸味がきつすぎたりするということもあるが、熟成が進むと角が取れてまろやかになる。また、年数が経てば総数が減るため希少価値により価格も高くなる傾向にある。ただし、熟成したワインがどれも同じように高くなるというわけではなく、生産年、地域、作り手の知名度などにより価格は大きく異なる。
ワインが食文化に根付いているヨーロッパでは日常的に飲まれることも多いが、近年では[いつ?]日本における日本酒と同様に、1人あたりの需要量は減少傾向にある。イスラム教においては飲酒が教義により禁止されているため(「ハラール」を参照)、イスラム教発祥地である現在の中東諸国では、ワインの生産は、イスラエル、世俗主義国家であるトルコ、比較的リベラルなイスラム教徒やキリスト教徒が住むレバノン、ヨルダン、パレスチナ、エジプトなどに限られる。日本を含むアジア諸国では、1人あたりの需要量は依然として少なく、需要の伸びは著しい[注釈 1]。
日本では、冷やしてストレートで飲むものと言うイメージが強いが、ヨーロッパではホットワインは冬の定番の飲み物である。ホットワインもそうだが、香料やスパイスを入れたフレーバーワイン(スパイスワイン)もなじみ深い。特に中世ヨーロッパではストレートで飲めるワインは最高級品であり、滓を取ったり、香料やスパイスを加えたりして飲みやすくするのが通常であったため、歴史は古い。
ワインは極めて歴史の古い酒の一つであり、新石器時代に醸造が始まったとされる[7]。様々な歴史的記念物、文献などからジョージアでは7000年から5000年前に醸造され、発祥地の一つとされる[8]。近東のワイン造りの化学的痕跡としては、イランのザグロス山脈で見つかった紀元前5400 - 同5000年(約7000年前)のものが最古とされていたが、ジョージアで発掘された約8000年前の陶器の壺が科学分析により世界最古のワイン醸造の痕跡であると2017年に発表された[9]。また、アルメニアでは約6000年前のものとされる世界最古のワイン醸造所跡が発見されており、その頃には既に高度な醸造技術が確立されていた[10]。以後、醸造法が南方に伝播したことから、中東、特にメソポタミアを中心とする地域で広く愛飲されるようになる。ただし、メソポタミアはブドウの栽培に適した土地でなかったため、イラン高原では紀元前6000年頃から生産が始まっていたものの、メソポタミア(特に南部のシュメール)においては紀元前4000年頃になってようやく醸造できるようになったとされている[11]。古代エジプトではビールが多く飲まれていたが、紀元前4000年代末期にはワインが製造されていた[12](シェデフ)[13]。ビザンツ帝国時代の地中海周辺では大規模なワイナリーも存在しており、商業的に流通していたと考えられている[14]。
しかしながら、ワイン文化が西洋へ広まった要因はやはり、現在のレバノンが位置する地中海岸沿いを拠点としていたフェニキア人であり、そしてその地域こそがワイン生産の起源とも言える[15][16]。フェニキア人の生産するワインはその後、古代ギリシアやローマ帝国時代にわたり上質なワインを表す「ビブライン」(フェニキアの町ビブロスから)という形容詞となり、その存在は続いた[17]。『ホセアの予言書』(紀元前780年 - 725年)の中では、「ブドウの木のように栄えており、その香りはまるでレバノンのワインのようだ」と弟子たちにヤハウェのもとへ急いで伝えるようにと記されている[18]。
フェニキア人は3つの点においてワインの世界に重要な意味をなしている。
ワインについて書かれた世界最古の文献は、紀元前2000年前後に作られたシュメール語の粘土板である[21]。例えば、『ギルガメシュ叙事詩』(アッカド語版)には、メソポタミアで英雄視された王(ギルガメシュ)が大洪水に備えて箱船を造らせた際、船大工たちにワインを振る舞ったという場面がある。シュメールでは紀元前5000年頃に世界初となるビールの醸造技術が確立しており、紀元前3000年代初期に双方が古代エジプトへと伝わったとされる[21]。古代エジプトでは大量生産されるビールが主流であったが、ブドウ栽培や醸造を描いた壁画が残されている[22]。またシェデフと呼ばれる赤ワインのような飲料も存在した。
その後、フェニキア人により古代ギリシアへも伝わる。この頃は水割りにして飲まれ、原酒のまま飲む行為は野蛮とされた。これは当時の上流階級が、ギリシャ北方に住むスラブ系の祖先であるスキタイの原酒飲酒の習慣を忌み嫌っていたからだと言われている。現代ギリシャ語でワインをοίνος(「エノロジー(oenology、ワイン醸造学)」の語源)ではなく普通κρασί(混合)と呼ぶのはこの水割りの習慣の名残である。ワインはそこから地中海沿岸に伝えられ、古代ローマへと伝わり、ローマ帝国の拡大とともにガリアなどの内陸部にも水割り文化とともに伝わっていった。当時のワインは、ブドウ果汁が濃縮されかなりの糖分を残している一方、アルコール度数はそれほど高くなかった。今日の蒸留酒を飲むときに行うようなアルコール度数を抑えるための水割りではなく、過剰な甘さを抑えるための水割りであった。酒というよりはソフトドリンク、長期保存可能なブドウジュースといった感覚であった。ヨーロッパの水は硬水が多く大変飲みにくいものであったため、それを飲みやすくするためにワインは必要不可欠なものであり、その意味では水で割るというよりも、水に添加して飲みやすくするものであった。
ワイン製造の技術が格段の進歩を遂げたのはローマ時代においてとされ、この時代に現在の[いつ?]製法の基礎が確立した。それにより糖分がかなりアルコールに転化され、ワインをストレートで飲む「大酒飲み」が増えていった。
中世ヨーロッパでブドウ栽培とワイン醸造を主導したのはキリスト教の僧院であった。イエス・キリストがワインを指して自分の血と称したことから、ワインはキリスト教の聖餐式において重要な道具となった。ただしこの時代、ワインは儀礼として飲むものとされ、むやみに飲んで酩酊することは罪とされていた。中世後期にはワインは日常の飲み物として広まるようになっており、12世紀のイタリアで著された医学書『サレルノ養生訓』では、いいワインの選び方やワインと健康についての考察がなされている。また、ブルゴーニュワインが銘酒として有名となったのはこの頃からである[23]。ルネサンスの時代以降、娯楽としての飲酒が発展する。17世紀後半、醸造や保存の技術、また瓶の製造技術が向上し、ワインの生産と流通が飛躍的に拡大した。
また、これらのワインとは全く異なるが、古代中国においても独自のワイン醸造技術が存在していたという。3000年前の殷王朝末期の墓から封印されたワインの容器が出土しており、後の漢王朝の時代にはワインについての記録も残っている[24]。ただし、この系統は完全に廃れてしまい、現代中国で生産されるワインは西洋由来のものである。
広い意味でのワイン作りはブドウの栽培と醸造に二分できる。ワイン産地では、ワイン作りといえば醸造(英語ではwinemaking)を指し、醸造学は英語でエノロジー(oenology/enology)という。これに対し、ブドウ栽培(英語でgrapegrowing)の技術や学問はヴィティカルチャー(viticulture)と呼ばれる。海外[どこ?]の大学はブドウ栽培と醸造学の両コースを持つのが普通である[要出典]。
ワインの生産主体はフランスのボルドー地域においては「シャトー」、ブルゴーニュ地域においては「ドメーヌ」と呼ばれることが多い。フランス語の「シャトー」は、元々は城館を表す言葉で、ボルドー地域においては転じてブドウ園や管理場、生産者のことをも指す。主なものではシャトー・ムートン・ロートシルト、シャトー・ラフィット・ロートシルト、シャトー・マルゴー、シャトー・ラトゥールなどがある。イタリアにおける「カステッロ」、ドイツの「シュロス」、スペインの「カスティーリョ」も同様である。「ドメーヌ」は、フランス語で「土地」を表す語である。カリフォルニアワインなどで「エステート」という語を使っているのもドメーヌと同義である。
どんなに醸造の技術が進歩しても、良いワインを作るためには良いブドウがなくてはならない。そのため、良質なブドウを収穫するための栽培技術方法は醸造技術以上に重要である。さらに、現代のワイン醸造では理想の味わいを生み出すために、醸造前あるいは醸造後に複数品種のブドウを組み合わせる手法が多く用いられている。したがって、ブドウ品種の選定とブレンド比は味の特徴を決定する大きな要因である。しかし、一方で品種の特徴を生かしたブレンドを行わない単一品種ワインも生産される。また、生育環境全体の栽培される畑の日当たりや局地的な気候などの要素を加え、それらを一括りにして「テロワール」と呼ぶ。実際には、品種、土壌、気候条件の違いを栽培技術や収穫時期の最適化で補うことで、広い地域で栽培が行われている。
その年のブドウの作柄のことをヴィンテージと呼ぶ。現在では[いつ?]転じてブドウを収穫した年のことをヴィンテージと呼び、その年の出来不出来によってワインの出来が変わる。そのために各国のワイン関連組織やワイン専門誌などによってヴィンテージチャートが発表される。ただし、現在では[いつ?]補糖や補酸、適切な酵母の選択などの醸造技術の進歩により、力のあるワイナリーであれば悪い年でもそれなりのワインができるようになり、味に関しては激しい差はない。その代わり、悪い出来のブドウでは長い熟成に耐えることが難しくなり、より早飲みになる。安価なワインでは品質を安定させるために複数の年のワインを混ぜた「ノン・ヴィンテージ」であることが多い。シャンパンはノン・ヴィンテージが一般的であり、産年表示された「ヴィンテージ・シャンパン」は、高級品に限られる。
世界的にはワインに使われるブドウの種はヨーロッパ種(学名:Vitis vinifera)が主流である。品種はサルタナ(トンプソン・シードレス)種などごく一部に生食用品種を使用するものもあるが、ほとんどはワイン専用品種である。日本では、巨峰、ナイアガラなどの生食用品種やヤマブドウも使われている。
一般にワイン専用品種は生食用品種よりも果実の粒が小さく、皮が厚く、甘みと酸味がより強い。代表的な品種としてリースリング、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどがある。また、伝統的な品種だけでなく、品種改良によって耐寒性や耐病性を向上[25]させたり、他産地との差別化を図ったりするための手法も行われている。
品種毎に適する土壌には違いがあるとされている。代表的な好土壌は、カリ白亜土、赤砂質粘土、黄土土壌、混砂粘土、泥灰岩土壌、石灰質土壌、粘陶土質土壌の水はけの良い土地が多く選ばれている。しかし、穀物栽培に適する腐植土壌の堆積平野や湿潤な土地、極度に乾燥した砂漠、塩分の多い土壌は良質なブドウの収穫は望めず不向きである。
ブドウは気候に対する適応能力が高いため、温帯を中心に栽培されている。良質なワインを醸造できる特性を兼ね備えた果実を収穫できる地域の多くは、緯度20度から40度の地域に存在しているが、ヨーロッパでは北緯50度の地域においても栽培が行われている[26]。湿潤な気候区分では地中海性気候が適する。潅漑用水があればより乾燥したステップ気候地域でも栽培可能である。
高温多湿な地域ではべと病などが広がりやすいが、農薬の進化により栽培が可能となった[27]。
2020年ごろから地球温暖化の影響により、ブルゴーニュなど栽培に適していた地域での栽培に影響が出ており[28]、2050年代には最適地がさらに高緯度に変わるという予測もある[29]。
冷涼な地域(畑)では収穫期を遅らせ糖度の上昇を待つ、あるいは温暖(畑)な地域では適度な酸が失われる前に早期の収穫を行うことで収穫されるブドウの品質向上を図っている。また品種改良や栽培法の工夫も行われている[28]。
その年に雨が多く、日照量が少ないとブドウの生育が悪くなり、そこからできたワインは糖分と果実味に乏しく腐敗果の混入のおそれが増える。逆に日照が良すぎて生育が早過ぎると酸が欠けて糖分が強くなり過ぎ、酸味とのバランスが悪くなる。
伝統的な方法では、搾った果汁を樽や甕に入れ、自然酵母(野良酵母)によりアルコール発酵させたあと、滓(おり)引きを行い、樽で数か月から数年間熟成し瓶詰めされる。ルイ・パスツールによってワインの醸造が酵母によるものだと発見されて以来、微生物を混入させないような製法が開発されているが、基本的な方法はワイン発祥の頃と変わっていない。近代的な醸造方法では培養酵母を添加し、ステンレス製タンク内で発酵させる。熟成(マロラクティック発酵)の際も、特別に培養した乳酸菌を添加する。
ワインは、そのほぼ全工程で、なるべく空気、特に酸素との接触を断つ必要がある。これは多くの場合、空気とともに酢酸菌[注釈 2]が侵入して酢酸醗酵が行われることで、酸味の強過ぎるワインになったり、ワインが腐敗状態となったりするのを防ぐためである。このためワインの製造工程のいくつかの段階では、酸化防止剤としても知られる二酸化硫黄(亜硫酸ガス, SO2)またはその塩の1種であるピロ亜硫酸カリウムが添加される。ただし、この二酸化硫黄には、確かに酸素の除去という効果もあるものの、その反応は遅い。しかも、二酸化硫黄は人体に有害な物質としても知られているため、これを添加をしない製法も存在する。このように酸化防止剤を添加しない場合は、醗酵させるタンク内の空気を窒素に置換することで、酸素との接触および雑菌の繁殖による腐敗を抑制する手法が多く用いられる。しかし、二酸化硫黄には酸化防止剤としての働きと雑菌の抑制および殺菌のほかにも、ブドウの果皮に含まれる酸化酵素の阻害、果汁中の色素の安定化、ワインで発生することのある過酸化水素の除去などの働きもあり、二酸化硫黄の添加を行うことでワインの品質をより簡単に安定させられるという利点がある。また、二酸化硫黄が含まれていても、少量であれば人体にほとんど問題はないとされていることから、簡単に品質を安定させる手段として、現在でも[いつ?]二酸化硫黄の添加が主流となっている。そして中には、フランスのワイン法のように、二酸化硫黄の添加を義務づけている地域も存在する。ただし、日本やヨーロッパ諸国、アメリカなどでは、製品中の二酸化硫黄の濃度が一定値を超えてはならないと規制されているため、使用には限度が存在する地域もある。なお、ワインへのこの他の酸化防止剤の使用は日本では認められていないが、南米などから気温が高い赤道を越えて船で輸送されるものは、多くの場合に保存料として認められているソルビン酸が添加される。
醸造するには、まずブドウを収穫しなければならない。ブドウの収穫は糖度が14 - 26度程度になったところで、鋏または機械で行う。収穫時期をいつにするかということもまたワインの味を決める重要な要素で、単純に糖度が高いだけでは酸とのバランスが悪い仕上がりになる。この際に病気の腐敗果や生育が悪いものは、必要以上に酸をもたらすため取り除く。この過程を選果という。
伝統的なワインの製造(発酵)方法は、ブドウの芯(果梗)を取り除き(除梗:じょこう)、実の皮を破る(破砕)。産地によっては、ワインにより強い渋みをつけるため果梗を混ぜる場合がある。スペイン、イタリアの農村では収穫期には伝統的に村人総出で、素足で体重をかけて搾汁する光景が見られる。最近の[いつ?]ワイン工場ではステンレス製の除梗破砕機を使用し搾汁する。多くのワイン専用品種では収穫した果実重量の55 - 65%程度の果汁が得られ、大粒生食用品種の巨峰などでは80 - 85%程度の果汁を得る。
この次に赤ワインの場合は、果皮や果肉の混ざったままの状態で醗酵させる。白ワインの場合は、圧搾機にかけて果汁を搾り出した(搾汁)後、果汁のみを醗酵させる。ただし、一部の白ワインではスキンコンタクト法という「破砕した果実と果汁を1 - 24時間接触させたあとに搾汁する」方法も取られる。このように、白ワインは醗酵させる前に果皮や果肉は捨てられるのが一般的であるものの、種子についてはグレープシードオイル(葡萄種油、食用油)の原料として利用される。ロゼワインの場合は、概要の節で述べたように様々な製法があり、この工程はそれぞれの製法によって異なっている。
なお、ワインの渋みとなるタンニンは果梗や果皮あるいは種子に由来し、タンニンはエタノールによって溶出する。したがって、果汁のみを醗酵させる白ワインにはタンニンが少ない。
発酵させるにあたり、ブドウの果実には自然酵母(野生酵母)が取りついており、さらに、果汁中には酵母が利用可能なブドウ糖が含まれているため、果汁が外に出ることで自然にアルコール発酵が始まる。伝統的な製法では酵母には手を加えない自然発酵が主流であったが、現在では[いつ?]安定した発酵をさせるため、特別に培養した酵母を使用した酒母として添加し、それ以外の菌を作用させない方法がとられる。さらに、ブドウ産地が高温で酸に乏しいブドウとなる場合は、酸を多く生じる酵母を用いる。その後、場合によっては糖(果糖、ぶどう糖など)が添加される。この後、赤なら約20 - 30℃、白なら15 - 18℃に保ち、数日から数十日かけた「主発酵」を経て、圧搾によって液体成分を搾り出す。目的の発酵度合い(糖の残り具合)になったところで、温度を下げ発酵を停止させることもある。発酵の際の温度が20℃を越えると微香成分が失われるため、低温で長期間の発酵を行う場合もある。一緒に仕込んだ果皮や種が、アルコール発酵中に発生する二酸化炭素(炭酸ガス)により浮き上がり、好気的な微生物の作用を受けやすくなるため、ピジャージあるいは撹拌や循環により固形分が常に液体に浸った状態を維持する。
酵母による発酵の成果として十分に発酵した場合、糖度計による計測糖度の約2分の1の値のエタノールと二酸化炭素が生成される。目的の発酵度合いになったところで、液体と固形分を分離する。このとき、圧力をかけずに自然と流れ出た液体が「フリーランワイン」で、高級ワインの原料として使用される。一方、残った固形分を圧縮し搾った液体が「プレスワイン」である。「フリーラン」「プレス」は別々に二次発酵から瓶詰めを行うが、プレスワインはブレンド用のワイン原料として利用されるほか、一部ではフリーランと混合され、各々が特徴を持ったワインに仕上がる。
なお、酵母によるアルコール発酵で作り出せる酒のアルコール度数には限界が存在する。これは、エタノールがある一定濃度以上になってしまうと、酵母は自身の生産したエタノールにより死滅してしまうためである。この上限濃度は酵母の菌株によって異なっており、だいたい16 - 20%である。したがって、シャンパンのように瓶内二次発酵を行いたい場合は、この濃度に達していない必要がある。なお、酒精強化ワインの場合は、ここで高濃度のエタノール(蒸留酒)を添加することによって、酵母が死滅するようにエタノールの濃度を上げてしまうため、酵母によって消費されなかったブドウ糖などが多く残るために、一般的に甘口に仕上がる。
搾り出された液体はステンレスやコンクリート製のタンク、木製(主にフレンチオーク、一部ではアメリカンオークも使用される)の樽に貯蔵される。木製の樽を利用するとその香りなどがワインに影響し、それが良い効果を与えるとされている。一方、ステンレス製のタンクではワインへの影響がないため品質管理がやりやすくなるという利点があり、ステンレス製タンクを利用する生産者が増えている。熟成期間は数十日から数年と様々である。底にたまった滓(おり)は随時回収する。アルコール発酵で生じた二酸化炭素を大気中に発散させず、液中に封じ込めたものはスパークリングワインとなる。
酸味の強いワインでは樽での貯蔵中に乳酸菌が投入されてマロラクティック発酵(Malolactic Fermentation, MLF)が行われる[30]。これを「熟成」とも呼ぶ。マロラクティック発酵は酸味の主成分であるリンゴ酸を乳酸と二酸化炭素へ分解する化学反応で、製品の酸度の減少と微量芳香成分の付与をする[31][32]。MLF発酵が行われる温度は15 - 18℃で、12℃以下では起こらない。多くの場合、MLF発酵が行われるのは冬期の寒冷期であることから、近代的な製法では乳酸菌スターターの添加と加温管理で行われる。さらに、ワインのpHは3.1 - 4.0の範囲になければならない。pH4.0を超えると失敗しやすくなる。ただし、最適なpHは使用される乳酸菌によって異なっている。また、マロラクティック発酵は赤ワインだけでなく白ワインでも行われる。
乳酸菌としては、 発酵の初期はホモ型(Lacobacillus paracasei , Lb. plantarum)、ヘテロ型(Leuconostoc mesenteroides)、発酵の後期になると Oenococcus oeni [33][34]などが作用をもたらす[35]。この乳酸菌が日本酒に作用すると腐造となる。
発酵が終わったワインは、酵母や酒石(酒石酸水素カリウム)などの澱が沈降するため、セラミックフィルター、遠心分離、濾過、静止などにより澱を分離する。また、熟成期間中のワインも澱が生じるため適宜澱引きを行う。発酵を停止させる方法は、静止のほか、冷却して酵母を沈殿させたり、50℃程度までの加熱を行い酵母を死滅させたりする方法が用いられる。なお、ここで取り除かれる酵母は、加工を行ったうえで健康食品として販売されることもある。また、蛋白質を除去して透明化させるため、卵白やベントナイトという粘土などを添加する方法はコラージ(collage)と呼ばれ、高級赤ワインでは広く行われている。
ワインを購入者が混ぜ合わせたり、カクテルの材料にしたりする以外に、製造工程の一環としてブレンドが行われることがある。フランスのシャンパーニュ地方におけるシャンパンづくりでは「アッサンブラージュ」と呼ばれる。購入者の希望に合わせてブレンドを受け付けるサービスもある[36]。
貯蔵後はガラス瓶などの容器に詰め、コルクなどで栓をして出荷される。コルクには天然のコルクと、合成素材のみ、もしくは天然コルクと合成素材を組み合わせた合成コルクがある。合成コルクは主に安価なワインに使用される。汚染などが問題になるコルクの代りにスクリューキャップ(英: Screw cap)も用いられる。安いワインはバッグ・イン・ボックスと呼ばれる段ボール箱に入った特殊な薄い袋(容量は2リットルから4リットル程度)に詰めて売られることも多い。これは、輸送コストが安く、空気が入りにくいため開栓後ワインが酸化しにくいのが特長である。また、ペットボトルや紙パック、缶が容器として使用されることもある。
香りはワインの品質を決定づける重要な要素であり、原料のブドウと醸造の各々の段階で加わり複雑なアロマを形成する[37]。
ヨーロッパ周辺地域においては歴史上古くからワイン造りが行われている。代表的な産地はフランス、イタリア、スペインなどであり、名だたる高級ワインを生産している。近代以降になってワイン造りが始まった地域は「ニューワールド」と呼ばれる。安定した気候や企業的経営を背景に、一般消費者でも手軽に買い求められるワインを生産している。近年では[いつ?]ニューワールドワインの品質向上も目覚しく、ヨーロッパの名醸ワインをしのぐ品質のワインも出てきている。
2007年ごろからは「ブランドにこだわらなければどこの国のものも同じ」とニューワールド物に流れる傾向が強まり、ワインが売れずに廃棄されたり、フランスでは一部の零細ワイナリーが廃業したりする事態になってきている[45]。またフランスでは温暖化によりブドウが影響を受け、従来の味を保つのが難しい地域も出ている[28]。
ワイン用ブドウの栽培適地は緯度が30°から50°とされているが、それを越えて広がってきた[47]。ワイン産地の北半球における北進(南半球では南進)は地球温暖化における気温上昇が影響しているとみられる[28]。リースリングワインは北欧ノルウェーで製造されるようになっているほか、北米大陸ではカナダ東部ノバスコシア州でスパークリングワインが生産されている。従来産地でもブドウが熟しやすくなり、シャンパンで知られるシャンパーニュ地方で非発泡のスティルワインの品質が向上するといった変化が起きている[48]。
ルーマニア、旧ユーゴスラビア諸国、ブルガリア、ロシア、ギリシア、ジョージア、アゼルバイジャン、アルメニア、トルコ、ウズベキスタン、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ地域、レバノン、キプロスなどでワイン生産が行われている。また、ほんのわずかではあるが、アイルランド南部の一部にもワイナリーが存在するという。新大陸では、生産量が多いチリ、アルゼンチンのほかに、ブラジル南部 (ブラジルワインの項参照)、ボリビア、ウルグアイなどでも比較的規模の大きいワイナリーが存在する。
日本におけるワイン生産は、江戸時代初期の豊前小倉藩(現在の北九州市など)に始まる[49]。その後、鎖国政策の一環で途絶えたあと、再び明治時代になって新潟県岩の原などで作られるようになる。しかし国産ワインの需要も少なく、各地で細々と作られていただけであった。1980年代頃から本格的なワインに対する消費者の関心も高まり、また純国内栽培による優秀なワインも生産されるようになり、勝沼ワイン(山梨県)ほか国産ワインの知名度が浸透するにつれて、国際的にも評価されるようになってきた。2002年からは山梨県が主導して「国産のぶどうを100パーセント使用して作った日本産ワイン」を対象とするコンペティションも行われるようになり、純国産ワインの品質向上を競うようになってきている。
日本を除く先進国をはじめ、ほとんどのワイン生産国では法律でアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレが設けられ、原料となる葡萄を収穫した土地をワインの産地として表示することが義務づけられている。また、フランスやイタリアなどの国では、産地によって使用できる葡萄品種、収穫量、製造方法までが定められている場合がある。
かつて日本では、原料産地にかかわらず国内で醸造を行うことで「日本産」の表示が可能であった。このため輸入果汁から生産されたワインが日本産ワインとして少なからず流通してきた。しかし、一部自治体で独自の原産地呼称管理制度が始まり、長野県の「長野県原産地呼称管理制度」や、山梨県甲州市(勝沼地区)の「ワイン原産地認証条例」が実施された。
2018年10月30日以降、「日本ワイン」と表示できるのは、国産ブドウを使って国内で醸造されたワインに限られる。産地の地名を表示する場合は、その土地で採れたブドウを85%以上使う必要がある[50]。
ワインは変化を受けやすい酒であり、保存の際には光、振動、温度、湿度などに気を使う必要がある。保存には「暗く」「振動がなく」「常に12 - 14℃くらいの温度で」「適度な湿度がある」環境に「寝かせて」保存するのがよいとされる。光・振動はともにワインの変化を促進させる。温度については高温であると酸化が進み、逆に低温であると熟成が進まない。湿度が少ないとコルクが収縮して中に空気が入ってしまう。寝かせるのもコルクに適度な湿り気を与えるように、つまりスクリューキャップ(英: Screw cap)であれば関係ない。
これらの条件を一番容易に満たすのは地下である。フランスなどでは一般家庭でもワイン保存用の地下室が存在することがある。日本ではそのような地下室はまれであるが、専用のワインセラーがあれば問題はない。ワインセラーを持たない場合には一般的に押入れや冷蔵庫に保存されるが、押入れは夏場に非常な高温になり、また匂いが移ってしまうためよくなく、また冷蔵庫は「乾燥し」「振動が多く」「冷えすぎ」「食品の匂いが移る」のでよくないとされる。ただ熟成が進まないことを気にしなければ「1、2年ならセラー保存とあまり変わらない」とも言える。一般家庭では長期保存、特に夏を越しての保存は考えないほうがよい。ただしこれらの保存に関する要素は長期保存する場合の話であり、すぐに飲んでしまうならば直射日光や高温(25℃以上)などに長時間曝さない限りはあまり気にする必要はない。
また光や温度以上にワインを変化させてしまうのは空気である。そのため、いったんコルクを抜いてしまったワインは数日中に飲まないと劣化してしまう。どうしても余ってしまった場合はハーフボトルに移して食品用ラップフィルムなどで空気と遮断しておいたり、真空ポンプ式のワインストッパーを使用したりすれば1週間程度は保管できる。またワインによっては、抜栓後すぐでは味や香りが十分に発揮されず、空気に触れさせるために一定時間置いておくことが推奨される場合もある。
AOCボルドーのついたワインにもスクリューキャップ(ねじ栓)のものが出てきており、ペットボトル、紙容器、缶入りなど、そのまますぐに飲めるワインも多くなった。大半の高級ワインは今でもコルク栓で密封されており、これを抜くための道具が必要である。コルク抜き(コルクスクリュー)には、ワインを買うと粗品・景品として提供されるT字型のものから、1本数万円のもの(純金製の、100万円のソムリエナイフが発売されたこともある)まである。また方式も、主なものだけで10種類ほどあり、それぞれ長所と短所がある。家庭用には、ウィング式(つばさ型)が多く用いられている。プロのソムリエも使っているソムリエナイフは、素人でもコルクの中心から垂直に差し込むコツを覚えれば、あまり力をかけずに抜くことができる。
古いボルドーの赤ワインやポートワインは飲む直前に瓶からいったんデカンタに移し替える場合もある。この作業をデカンタージュと呼ぶ。デカンタージュを行う理由は、第一にワインの澱を分離すること、第二に飲む前に少し空気に曝した方が風味が引き立つとされることである。ブルゴーニュワインは澱が少ないために普通はデカンタージュをしない。デカンタージュは必要ないという考え方もあり、個人の好みによるところが大きい(デカンテーション参照)。
まず鑑賞するのは、ワインの外観である。清澄度や濁度、色調、粘度を観察することで、醸造方法や熟成度合い、また大まかな味わいを予想することができる。その次に香りを鑑賞する。ブドウのみから造られるワインであるが、そこから生まれる多彩な芳香成分は、ブドウ以外のあらゆる香りに例えられる。グラスを円を描くように回す「スワリング」は、ワインを空気に触れさせることで香りを引き立てる役割を果たすほか、壁面にワインを付着させることでグラスの中に香りを充満させるために行われる。最後に口に含むことで、酸味、甘み、渋み(タンニン)、苦み、果実味を感じ、そして飲みこんだ後に口から鼻へと伝わる戻り香、続く余韻を味わう。
なお、テーブルワインのような日常消費用に造られたワインでは、以上のような内容を気にすることなくさらりと飲まれることも多く、これもまたワインの正しい飲み方である。
ワインの開栓や保存、またワインをより楽しく、おいしく飲むための製品をワインアクセサリーと呼んでいる。ヨーロッパでは1000年以上のワイン文化があるだけに、様々なワインアクセサリーが製造・販売されており、中には実用よりも、見たり集めたりして楽しむものもある。近年[いつ?]、日本でもこれを専門にするショップも出てきている。
螺旋状に巻いた鋼鉄製の針金を差し込んで開けることから、コルクスクリューと呼ぶこともある。ワインを買うとおまけにくれるような、差し込んで引き抜くだけのT字型のものから、家庭用のウィング型、ダブルハンドル型、スクリュープル型、瓶とコルクの間にピンセット状の刃を差し込み、ねじりながら抜くもの、空気注入式などさまざまなタイプがある。しかし、現在では[いつ?]素人でもソムリエナイフを使う人が増えてきた。
ワインを飲むための食器としては、近年では[いつ?]ガラス製の無色透明のいわゆるワイングラスがよく使用される。ただし、その容量や形状は目的などに合わせて様々である。また、ガラス以外の素材で作られたものも存在する。なお、過去には鉛製のものが広く使用された時期もあった。鉛製のものはワインの中に含まれる有機酸との反応で鉛が溶け出すが、酢酸鉛は甘味が感じられることもあり、鉛製のもので飲むワインが好まれたことがあったことで知られている。ただし、この飲み方は鉛中毒を引き起こす。
ワインを恒温で保存しておくために作られたワイン専用の冷蔵庫。家庭用の数本用の小型のものから、大型の数十本入るものまである。温度・湿度の設定が可能、1機種で2種類の温度管理ができるものもある。英語ではワインクーラー(wine cooler)などと呼び、ワインセラーは通常ワイン貯蔵室のことを指す。
ワインセラーと同じように、ワインを寝かせて保存しておくための棚または箱状の家具。温度調節機能はなく、ただ置いておくだけのものである。欧米では、地下の貯蔵室用に、数百本から1000本以上を並べられる大型のラックが売られているが、日本ではまだあまり出回っていない。
デカンテーション(上記「デカンタージュ」参照)をするためのガラス製の容器で、ワインのボトルとほぼ同じ容量のものが多い。凸レンズに首が搗いたようないかにもそれらしい形のものから紡錘形、フラスコ型など様々な形のデキャンターがある。
飲み残したワインのボトルに被せておく栓。開栓時にコルクを割ってしまったときはもちろん、抜いたコルクを差し込んでおくだけでは無粋だという人も用いている。発泡性ワインの気が抜けないように作られた通称でシャンペンストッパーと呼ばれるものもある。また、主に手動の空気ポンプと専用の栓を用いて、ビン内の空気を空気ポンプで吸出し減圧してワインの酸化を遅らせたり、発泡性ワインでは逆に空気をポンプで入れ込み加圧することによって気の抜けを防いだりするワインストッパーも普及している。
ギリシャ神話におけるディオニュソス、ローマ神話におけるバックスが葡萄酒の神とされる。ディオニュソスは、近代においても、ニーチェの『悲劇の誕生』などにより、重要な概念となった。
キリスト教においては、キリストが主の晩餐と呼ばれる晩餐においてワインを使ったことから、正教会の聖体礼儀、カトリックのミサ、聖公会・プロテスタントの聖餐式においてワインが用いられる。正教会では赤ワインの使用を定めているが、西方教会では赤ワインと白ワインのいずれであるかを問わない教派が多い[51]。
他方、教派・教会によっては、アルコール依存症を治療している信者や未成年信者への配慮や、アルコールの摂取を禁止する戒律などの理由から、ぶどうジュースや、煮沸してアルコールを飛ばしたワインを用いる場合もある。
古代においては、冬ごとに刈り込まれて春に芽吹き、秋には再び実をつけるブドウの樹は復活の象徴とみなされていた[52]。
ワインが娯楽や趣味の対象として王侯貴族にも好まれるようになると、やがてワインの品質や管理に関しての専門的知識をもつ人材が求められるようになった。このような経緯から生まれた、ワイン専門の給仕人を「ソムリエ」と呼ぶ。
ワインはそれ単体で楽しまれるだけでなく、料理との相性も重要視されている。この「ワインと料理の組み合わせ」のことを「ペアリング」と呼ぶ。また、ワインと料理の組み合わせから生まれる相乗効果を「マリアージュ」と表現することもある。
ワインツーリズムとは、欧米では盛んな旅のスタイルの一つである。ワインの産地を回りながら、時には作り手との交流を交え、ワインの造られた郷土の料理やワインを楽しむ。欧米では日帰りや宿泊のプランが用意されており、国や現地の法人が積極的に取り組んでいる。日本でも山梨県で行われている[53]。
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