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氷上で行われるウィンタースポーツのひとつ ウィキペディアから
カーリング(英: curling)は、氷上で行われるウィンタースポーツ。冬季オリンピック競技の一つ。
試合中に高度な戦略が必要とされる性質から「氷上のチェス」とも呼ばれている。
4人ずつ2チームで行われ、目標とする円をめがけて各チームが交互に8回ずつストーンを氷上に滑らせ、ストーンを円の中心により近づけたチームのみが得点を得る。これを10回または8回繰り返し、総得点で勝敗を競う。
ストーンは、ごく弱い回転をかけることで速度が落ちるに従い自然に曲がって(カールして)いく。また、進んでいくストーンの前の氷面を擦る(スウィープする)ことで、速度の低下や曲がりをある程度遅らせることができる。競技者はストーンを置く、他のストーンを弾くだけでなく、この曲がる性質を利用して他のストーンの背後にストーンを隠すといった複雑な戦略を採ることが可能となっている。ストーンのカールの度合いは、氷の滑り具合とともに、ストーンの個性、氷の状況や温度、コースの使用状況などによってばらつき、ゲーム中も刻一刻と変化する。
高い身体能力よりも、事前の予測と経験を元に相手の行動を先読みする想像力や、氷の状態やストーンの動きから即座に戦略を組み立て直す知能など、チェスなどのマインドスポーツで必須とされる能力が重視される。また、チームスポーツであるためコミュニケーション能力も重要である。
身体能力は、投擲やスウィーピングを正確に行うための正確性が重視されるが、先天的な能力は必要とされないため練習量が多いほど有利となる。また瞬発力や動体視力などの加齢による影響が強い能力は重視されないため、馬術競技と並び選手寿命が長い。公式大会は男女別に行われているが、体格による影響も少ないため男女間の成績に大差は無い。このような特徴から幅広い世代でプレイできるスポーツとなっている。
激しい動きや身体同士の接触はないため比較的安全な競技であるが、氷上競技であるため滑って転倒し頭部を強打する事故が発生しやすく、頭部外傷のガイドラインが示されている[1]。
ゴルフと同じく本来は審判員が存在しないセルフジャッジ競技であり、スポーツマンシップが重要視される。相手チームの失策を喜んだり、そのような態度を示すことは、慎むべき行為として忌避される。途中のエンドの終了時に自チームに勝ち目がないと判断したとき、潔く自ら負けを認め、それを相手に握手を求める形で示すという習慣(コンシード[注 1])もフェアプレーの表れの1つである。勝ったチームも、抱き合うなどして喜びを表現する前に相手と握手する。
この理念は、世界カーリング連盟が定めるカーリング競技規則[2]の冒頭にカーリング精神 (The Spirit of Curling) として掲げられており、競技の根本がこの理念から成立していることを示している。
カーリングの歴史は、1511年の刻印のあるストーンがイギリスのスコットランドで発見されており[3]、15~16世紀にスコットランドで発祥したとされている。当時は底の平らな川石を氷の上に滑らせていたものとされている。氷上で石を使うカーリングの元となったゲームの記録は、1541年2月に遡る。場所は、スコットランドのグラスゴー近郊のレンフルシャーである。ベルギーの画家のピーテル・ブリューゲルの作品『雪中の狩人』(1565年)の遠景には、すでに氷上でカーリングを楽しむ人々が描かれている。「カーリング」という名称の起源は定かではないが、1630年のスコットランドの印刷物中にこの名称の使用が確認されている。スコットランドでは16世紀から19世紀にかけて戸外でのカーリングが盛んに行われていた。リンクや用具の寸法はヤード・ポンド法で規定されているが、これはスコットランド発祥である名残でもある。
カーリングの現在の公式ルールは、主にカナダで確立したもので、1807年には王立カーリングクラブが設立されている。1832年にはアメリカ合衆国にカーリングクラブが誕生し、さらに19世紀の終わりまでにはスイスやスウェーデンへと広まっていった。カーリングは1998年の長野オリンピック以降、冬季オリンピックの正式種目として採用されている。現在ではカナダ、アメリカといった北米、イギリス、スイス、スウェーデン、イタリア、デンマーク、ノルウェー、ロシアのヨーロッパ諸国で盛んなほか、最近では日本、中国、韓国といったアジア圏でも盛んに行われている。
日本におけるカーリングは、1937年1月17日に山梨県の山中湖湖上にてカーリング大会が開かれた記事が認められる[4]。
1967年にアメリカ人のダンカーティスによって富士山麓にて講習会が開かれた。
1969年に長野県の蓼科湖にてゲームが行われ、1973年に第1回カーリング大会が開かれたものの、普及には至らなかった[5]。
日本において競技として定着させる礎となったのは、カーリングをカナダの指導者とともに紹介した小栗祐治を中心とする社団法人北方圏センター(現公益社団法人北海道国際交流・協力総合センター)であり、北海道の常呂郡常呂町(常呂町は、2006年に北見市と合併して消滅した。)である。 1980年の北海道とカナダのアルバータ州との姉妹提携を機に、北方圏センターがカーリング講習会を道内各地で実施した。なかでも、当時の常呂町は当初からビールのミニ樽やプロパンガスのミニボンベなどでストーンを自作し、自治体を上げての普及に取り組んだ。1981年には「第1回NHK杯(北見放送局)カーリング大会」を常呂町にて開催、さらには1988年に国内初となるカーリングホールを町内に建設した。国内外の大会を開催してオリンピック代表選手を多数輩出するなど、常呂町は競技普及に大きな功績を残すことになる。別な情報として「昭和51年には、日本で最初に池田町が導入し、町民のほか近隣町村への普及に努めました」ともある(※北海道池田町教育委員会)。その後、1998年長野オリンピックでの男子チームのスキップ担当の敦賀信人の健闘や、2002年ソルトレイクシティオリンピックでの出場がテレビで中継されたことで日本でも徐々に認知が広がり、2006年トリノオリンピックでは日本勢が不振の中で女子代表のチーム青森の全試合がテレビ中継され、7位に入賞するという活躍を見せたことで、日本におけるカーリングの認知度が一挙に高まっていった。そして2018年平昌オリンピックでは、女子代表のLS北見がオリンピックのカーリング競技で日本勢初となる銅メダル、2022年北京オリンピックでは2大会連続のメダルとなる銀メダルを獲得した。また、2022年世界ジュニアカーリング選手権大会ではジュニア女子日本代表チームが初優勝した。
日本カーリング協会のデータによると、2018年2月の取材で日本のカーリングの競技人口は選手が約3000人、趣味で楽しむ人はその倍程度であるとされている[6]。近年、冬季五輪日本代表チームの活躍で人気は高まり、2024年2月現在では通年の専用施設は9か所、季節限定の専用施設は4か所となった[7]。 [注 2]
カーリングは、長さ約44.5 - 45.7メートル(146 - 150フィート)、幅約4.4 - 5.0メートル(14フィート6インチ - 16フィート5インチ)のカーリング・シート(curling sheet、シート、アイス・シートとも)と呼ばれる細長い長方形のリンクで行われる[8]。シートは薄く氷が張られ、できるだけ平坦に保たれた上で、アイス・メーカーにより表面にペブル (pebble) と呼ばれる数ミリメートル程度の氷の突起が多数作られる。氷温は摂氏−5度程度に維持される。カーリングを目的とした専用の競技場(カーリング・ホール、curling hall)にはこうしたシートが複数備えられ、同時に競技が行えるようにしたものが多い。
細長いシートには、投擲時の蹴り台となるハック (hack) と、標的となる多重の同心円の模様が施されたハウス (house) が両側にそれぞれ備えられ、偶数エンドと奇数エンドに分けて交互に利用される。ハウスの同心円の直径は内から1, 4, 8, 12フィート(それぞれ約0.30, 1.22, 2.44, 3.66メートル)ある。最も内側の円はボタン (button)、円の中心はティー (tee) と呼ばれる。
その他、シートの各部分には以下のような名前が付けられている。
上部に取っ手をつけた円盤型の石。1チームが8個を使用し、カーリング競技を行うためには16個必要となる。チームの判別のために上部はプラスチックのカバーで色分けされており、五輪などの主要な大会では主に赤と黄の物が用いられるが青や緑もある。公式なサイズは円周が36インチ(約91センチメートル [cm])以内とされており、よって直径は約29 cm以下である。また、高さが4.5インチ (11 cm) 以上、重量は38 - 44ポンド(約17 - 20キログラム)と決められている[8]。
ストーンの底面は平坦でなく中心部分がわずかに凹んでおり、直径およそ13 cm、幅1 cm前後のランニング・バンド (running band) 、またはエッジと呼ばれるリング状の部分でのみ氷と接する。ランニング・バンドの表面の粗さはストーンの曲がりに影響し、競技で使用されるに従いカールしにくくなっていくため、必要に応じてランニング・バンド部分の表面が適切な粗さとなるよう特定の紙やすりの上を滑らせることによって処理される[9]。近年まで[要出典]ストーンの曲がり易さはアイスの状態によるものとされており、ペブルの作り方によって曲がり方に差が出るものとされてきた、しかし、最近になってカーリングにおけるカールは、このランニングバンドにあると突き止められた。
国際大会で使用されるストーンは、氷と接する滑走面にスコットランドのアルサクレイグ島特産のブルーホーン (Blue Hone) 花崗岩と呼ばれる花崗岩を用いているものが主流である。ブルーホーン花崗岩は、鉱物粒子が細かく強度と均質さに優れており、カールの仕方も「他の石では真似できない」とされる。他産地の石では密度が低いために氷の上で石が水を吸い、吸われた水が再び凍ったときに石が膨張して割れやすくなる。衝突が起こるストライキング・バンド (striking band) を含む胴体部にはアルサクレイグ島産のコモングリーン (Common Green) 花崗岩など欠けにくく粘りと弾性に優れた花崗岩が使われる。この胴体部の石に空けたくぼみに滑走面用の石がはめ込まれエポキシ樹脂で貼り付けられている[10][11]。資源保護の観点からアルサクレイグ島での採石は20年に一度しか行われなず、直近では2002年に行われたが近年はかなり採掘量が減っており、花崗岩をスライスしてストーン1つ当たりの使用量を絞ったものも出てきている。石は有限資源であり、今後は枯渇が懸念される。
ストーンは、100年以上使用できるとされているほど耐久性が高いが、需給のバランスなどから1個約10万円以上(1セット160万円)する高価な物である。ただし、日本カーリング協会では「ストーンは個人で所有するものではなく、会場にあるものを使う」と説明しており[12]、基本的に選手が購入することはない。
オリンピック等の大きな大会ではストーンに内蔵された電子ホッグライン違反検知システム(Eye on the Hog)が使用される。このシステムは投擲時にホッグラインまでにストーンから手を離したかをセンサーを用いて審判の代わりに自動的に確認するもので、ストーンを傾けると作動し始める。正常に作動した場合はグリップから手を放すと緑色のランプが点滅するため、選手は投擲前にこれを確認する。投擲の動作を行っている間は、選手の集中を阻害しないようランプが消灯される。[13]正常に投擲された場合は手を離すと緑色のランプが点灯する。投擲前にストーンを傾けるのを忘れたり、ホッグラインを過ぎても選手が手を離さなかったなどの違反があった場合は赤のランプが点滅して投擲は無効となり、スイーパーがストーンを取り除く。なお、北京オリンピックではこの検知システムが作動しない不具合が多発したため、競技日程(ラウンドロビン)の途中で使用が停止された。[14]
イニング制であり、ゲーム中の1回の攻守はエンド (end) と呼ばれる。試合は8エンドまたは10エンドで行われ、この他に各チームに持ち時間が与えられる。冬季オリンピックなど公式な試合では10エンド、持ち時間38分で行われる。10エンドを終わって同点の場合はエキストラ・エンドとなり、持ち時間は4分30秒となる。持ち時間は相手チームのストーンが止まってから自チームのストーンを投げ始めるまで時計が進み、持ち時間が無くなるとそのチームは負けとなる。1試合に1回のみコーチの助言を仰ぐことができ、コーチがコーチ席からシートに移動するまでの間のみ時計が停止される[注 3]。
試合途中で自チームの勝ちが望めないと判断した場合、相手チームの勝ちを認めゲームを終了させることができる(コンシード)。10エンドマッチでは、6エンド終了後からコンシードでき、スキップ(主将)が相手に握手を求めることで行う。
第1エンドの先攻・後攻は、試合直前の練習時に各チームの選手が規定数のストーンを投擲し、ハウスの中心部までの距離が測られ、合計値の小さいチームに選択権がある(LSD、ラスト ストーン ドロー)[15]。または、サードの者がジャンケンかコイントスで決定する。勝った方はストーンの色か最初のエンドの後攻をとることができる。第2エンド以降は前のエンドで得点を取ったほうが先攻となる。ブランクエンド(得点なし)だった場合は、前のエンドと同じになる。
各エンドではリード・セカンド・サード・フォースの順に、1人2投ずつ各チームが交互に1投し、ハウス(円)をめがけてストーンを氷上に滑らせる(これを「投げる」という)。ストーンの位置の指示はスキップまたはスキップの代理が行う。ストーンはホッグラインを越えなければならず、バックラインを越えてはならず、サイドラインに当たってもいけない。いずれの場合もストーンは除かれる。ただし、ホッグラインの近くにあるストーンに当たったストーンがホッグラインにかかった場合は取り除かれない。
ストーンを投げる前には4人が話し合って次の作戦を決める。ハウスの近くにいるスキップが作戦を立てることが多いが、他のメンバーが作戦を提案することもしばしばある。スキップは投げ手やスウィーパーに対して言葉や仕草で投げてほしい速さを伝える。例えば「10半」と言えば10.5秒くらい、「バックライン」と言えばバックラインで止まるくらい、「ハック」と言えばハウスの後ろにあるハックで止まるくらい、「ボード」または「バンパー」と言えばリンクの最後方の縁にある板のあたりで止まるくらいのスピードになる。また、投げ手が投げるときの目標となる位置にブラシを当てて待つ。投げ手はこのブラシに向かってストーンを投げるが、投げられたストーンは曲がりながら進んでいくので、ブラシを当てた位置はストーンを置きたい(または当てたい)位置とは異なる。
ストーンを投げる選手はハックと呼ばれる蹴り台を蹴って勢いをつけ、ストーンを押し出して氷上を滑らせる。手を離すとき、グリップをひねってインターン(右投げであれば時計回り)またはアウトターン(右投げであれば反時計回り)の回転をストーンにかける。時計回りのストーンは投げ手から見て右に、反時計回りのストーンは左にカールしていく。回転をかけないとストーンは予測不能の動きをしてしまう。
ストーンが投げられると、スウィーパーがストーンのスピードを目測してスキップや投げた選手に伝え、それを聞いたスキップや投げた選手がストーンの動きを見ながらスウィープについての指示を出す。ストーンのスピードについては、ドロー系のショットではストーンがどのあたりで止まりそうかを数値化して伝える。ハウスの一番手前あたりの距離で止まる速さを4、ハウス中心のティーラインあたりで止まりそうな速さを7、ハウスの一番奥で止まる速さを10などと言い表すので、例えば「6, 7」と言った場合はハウス中心かその少し手前に止まりそうな速さだということを伝えている。テイク系のショットでは2本のホッグラインの間を何秒くらいで通過するかを伝えることが多い。
ストーンの距離を伸ばしたり、方向を微調整するため、自チームのストーンの進行方向の氷をブラシで掃く(スウィーピング)。通常は投げた選手とスキップを除いた2人で行うが、距離が足りない時などには3人(まれに4人)で行うこともある。また、スキップ(代理も含む)はティーライン(ハウスの中心を通る横のライン)より後ろであれば相手チームのストーンをスウィープできるので、ストーンを投げた方ではないチームの選手が相手のストーンを出し切るためにスウィープすることがしばしばある。ただしこの場合スウィープできるのは一人だけであり、二人以上が同時にスウィープすることはできない。なお、ストーンがティーラインを超える前でもスウィープは開始できる。
(先攻チームのセカンドの第1投)まで[注 4] 相手チームのストーンに自チームのストーンをあて、動かしたりハウスからはじき出したりすることができる。ただし、最初の一定数のストーンまではフリーガードゾーン(ホッグラインからティーラインの間で、ハウスを除いた部分)にあるストーン全体をプレイエリアから出してはいけない(フリーガードゾーンルール)。2018-2019シーズンより前は最初の4ストーン(後攻チームのリードの第2投)までであったが、2018年10月にルールが改正され、最初の5ストーン(先攻チームのセカンドの第1投)までとなった(ファイブロックルール)[16][17]。投げたストーンを軽く当てて相手チームのストーンをずらすことは可能だが、テイクアウトすると反則となり、投げたストーンは取り除かれ、相手ストーンは元の場所に戻される。このルールがあることによって、ハウス内に貯まるストーンやガードストーンの数が増え、得点が動きやすくなって、ゲームがより面白くなる。
エンド終了時にナンバーワンストーンを持っているチームにのみ得点が与えられる。ハウス内にあり、かつ中心に最も近い相手チームのストーンよりもさらに内側にあるストーンの数がそのチームの得点となる。エンドの最大得点差は8点、最小得点差は0点である。1エンドに満点の8点を獲得したチームは8-enderと呼ばれる。通常は両チームが確認して勝ち負けを決定するが、どちらのストーンがより中心に近いか目測では判断しがたい場合は、エンドの終了後にメジャーで計測が行われる。これはエンドの途中に行うことはできない。メジャーまたは100分の1ミリまで測定できる専用の器具を用いて中心からストーンの内側までの距離を測定する。このとき、両チームのバイス・スキップだけが測定に立ち会うことができ、両者が納得すれば測定は終了する。
第5エンドが終了すると7分間のハーフタイムとなり、選手たちは自分たちが試合しているシート(レーンとも言われる)の近くで後半の作戦を練る。カーリングの試合は2時間30分前後の長丁場であり、集中力と体力を激しく消耗するため、糖分を含む食べ物や飲み物を摂取し体力の回復を図る。なお、試合中でコーチとの話し合いが認められるのは、タイムアウトを除きこの時間のみである[注 5]。
1チームは4人または5人だが、試合に出られるのは4人まで(3人以下でもショットを分担してゲームを行うことが可能)、補欠は1人しか置くことは出来ない(複数いてはいけない)が、いなくてもよい。
カーリングは、中国など国家単位で強化している国を除くと、シーズンごとのメンバー入れ替え・移籍が活発に行われるスポーツとされていて[20][21]、特にオリンピックのあるシーズンから翌シーズンにかけては、大幅な選手の入れ替えや移動が発生することが多い[22]。
1チーム男女1名ずつで構成される。オリンピックでも平昌大会から正式種目に採用されている。
得点方法などの基本的なルールは4人制と同じであるが、主に以下のような違いがある[23]。
4人制と比べてハウス内に石が溜まりやすいため、ビッグエンドやスティールが多いとされる。
多くの大会では、決勝トーナメントの前に予選リーグ(ラウンド・ロビン)が行われる。限られた試合数の予選リーグでは複数チームが同勝率となることがしばしばあるため、以下のタイブレークにより順位を決定する。
また、予選リーグが複数のグループに分かれる場合、異なるグループの同一順位のチーム間の順位を決定するためにもDSCが使われる場合がある。
エンド最後のストーンを投げることができる後攻が有利とされ、後攻が1点を取ることは容易であるため通常次のような戦術を取る。
後攻のチームは、基本的には2点以上を狙うが、ブランクエンドであれば後攻を維持できるので、1点を取るくらいならブランクエンドとして次のエンドで得点を狙う。特に、最終エンドに後攻を得ることが勝利に結びつきやすいので、その前のエンド(10エンドまでの試合であれば第9エンド)で後攻のチームは積極的にブランクを狙い、最終エンドも後攻を得ようとすることがしばしばある。 逆に先行のチームは機会があればスチールを狙うが、それが難しい場合は相手がブランクできない状況を作り、1点を取らせることで次に後攻を得ようとする。
詳細についてはen:Curling#Strategyも参照。
カーリング中継の解説で特定のストーンあるいはライン(ストーンを進める方向)を指し示す必要がある場合、テレストレーターで図示する(黄色などで画面上に表示させる)方法がとられる。しかし、国際中継などで単に中継の受け手となっておりこの方法をとることができない場合、シート上に位置するそれぞれのストーンを個別具体的に示すために、「11時方向のストーン」というようにハウスをアナログ式時計の文字盤に見立てて具体的なストーンを指し示すクロックポジションが用いられる。
2006年トリノオリンピックからワイヤレスのマイク(ピンマイク)が選手に装着されるようになった。これにより(自国語でのやり取りになるので、その言語の理解力が必要になるものの)各国選手の戦略・臨場感・緊迫感をライブでテレビの視聴者に伝えることができるばかりでなく、選手のため息や愚痴なども同じように拾うことができ、同種目のタフさが理解できるようになったとされている。これはデニス・バクスター発案による視聴者の新たな体験を意図した音響の演出である。カーリングでは同時に複数のシートでゲームが展開されることが多いが、それぞれのシート上の各選手にワイヤレスマイクを使用することになるため、事前に周波数の調整などがなされる。[24][25][26][27][28]
カーリングは、運動量保存など力学の基礎を説明するための題材としてもしばしば取り上げられ、この場合、多くは回転によって曲がる(カールする)性質や、さらに摩擦も無視した理想化されたモデルで表されるものとして扱われる。一方、より詳しくストーンの動きを考察することは、氷上の摩擦に関する研究途上の科学でもある。摩擦は一般的な理論化ができない複雑な現象であるため、ストーンのカールやスウィーピングの効果など、実際のストーンの動きは実験と理論の両面から分析されなければ理解できない。特にストーンのカールはそれ自体が物理に対して興味深い問いを投げかけてもいる。
カーラーとともにカーリングの物理の実践的な分析も行われており、日本カーリング協会でも「研究を通じて選手の独創性や先見性を育て、新たな戦略に結びつけたい」として、2008年より氷やストーンの特性とストーンの動きとの研究を行っている[29]。カナダでは2010年のバンクーバーオリンピックに向けてデリバリーのフォームやスウィーピングの科学的研究を極秘裏に行った[30][31]。
ストーンの軌道が大きく曲がる(カールする)という性質は、カーリングのゲームを面白くさせている大きな要素である一方で、物理的にも興味深い問題である。衝突の動きが初等的な力学で比較的よく記述されるのに対して、カールの物理的メカニズムには諸説あってはっきりしていない[32][33]。
経験的にカールは次のような特徴をもつ。カールの効果は氷の状態によって大きく変化するものの、極めてはっきりしており、通常、曲がりの大きさは元の軌道と比べてストーンの停止までに1メートル前後にも達する。まったくペブルのないアイスの方が曲がりは大きいが摩擦も大きくなり遠くまで飛ばなくなるため、ペブルの存在はカールよりも摩擦の低減に寄与している。ストーンの角速度(回転の速さ)はカールの効果に顕著に影響しないことが知られており、幅広い角速度の範囲で回転は曲がる方向を決めているにすぎない。角速度の大き過ぎるストーン(スピナー)はむしろ余りカールしなくなり、ストーンの角速度は通常ハウスまで2 - 3回転程度となるよう小さく保たれている。また、カールの効果もハウスに近づきストーンの直進速度が小さくなってから顕著になることが知られている。
だがこうしたこと以上に物理的に興味深いことは、カーリングのストーンが、回転しながら接触面の上を進む物体が摩擦によって曲がると普通予想される方向とは逆に曲がるということである[34][35]。カーリングのストーンでは、そのコースは回転方向と同一の方向、すなわち、上からみて反時計回り(右手のアウトターン)に弱く回転させたストーンはハウスに近付くにつれて進行方向に向かって左に、時計回り(右手のインターン)は右に曲がる。ストーンの氷との接触面であるランニング・バンドと同様にリング状の接触面を持つものとして、机の上で反対向きに伏せたグラスなどを同じように回転させながら滑らせてみると、グラスはカーリングのストーンとは逆向きに曲がっていく。すなわちグラスにおいてはカールの方向は反時計回りで右となる[36]。
グラスの曲がる方向は通常の摩擦の考え方で理解できる。以降、上からみて反時計回りに回転する場合のみを考える。進行方向を変えるのは進行方向に直交する摩擦の成分である。これは主にリング状の接触面の進行方向前部と後部の摩擦力が寄与する。対して、接触面の左右は横向きの正味の力をほとんど生み出せないため曲がりにはほぼ寄与しない。グラスの重心が接触面よりも上にあるために、グラスの接触面前部における方が後部よりも押さえつける力が大きい。よって、通常の動摩擦の関係のように接触面への力が大きいほど摩擦力も大きいとの関係が満たされるとき、接触面前部による進行方向右向きの摩擦力の方が後部の左向きの摩擦力より大きくなり、進行方向右向きの正味の力が生まれることになる。
このカーリング・ストーンの逆向きの曲がりという謎を説明するために1920年代以降よりいくつかの説が現れてきた[9]。カーリングのストーンでも速度を持つときはグラスと同様に進行方向前部での押さえつけの力が大きいはずであるが、曲がる向きが逆になることは、少なくともある条件の元で押さえつける力が大きくなるとかえって摩擦が小さくなっていることを示唆している。そこで1981年にジョンストン (G.W. Johnston) は、曲がる理由をランニング・バンド前部で大きくなる摩擦による熱が氷の摩擦係数をかえって低くしているためだとした。
ジョンストンのアイデアは氷の融解を考えるものではなかったが、カナダの物理学者で自身カーラーでもあるマーク・シェゲルスキー (Mark R.A. Shegelski) は、1996年、溶けた水の非常に薄い膜がストーンの接触面に形成されるのだとした。カールの問題に対して最も精力的に研究を公表しているシェゲルスキーは、圧力の強い前面ではこの膜が厚くなるために、摩擦力を後部より小さくしているとする[34][37]。またストーンが水の膜を引きずりやすい性質をもつ花崗岩で作られ、摩擦の方向は氷面に相対的な速度の方向ではなく、この引きずられた水の膜に相対的になっているとする。さらにストーンの停止間際では引きずられた膜が一周して前面がさらに厚くなり、一層曲がりやすくなる。こうしたことから予測される性質の一部は実験的に確認されている[38]。
これとは別に日本の前野紀一は、2009年にストーンのカールが蒸発による温度低下とペブルの摩耗によるとする説を提案している[39][40][41]。この説では、ランニング・バンド前部で熱せされた氷は瞬間的に蒸発して気化熱を奪い、後部ではむしろ温度が低下して摩擦係数が大きくなるのだとする。さらに前部ではペブルの一部が摩耗して氷の屑が作られるために、さらに後部の摩擦は大きくなるとする。
2012年には、スウェーデンのニーベリ (Harald Nyberg) らがストーンが通過するときにランニング・バンド前部によってストーンの接触点であるペブル上につけられた高さ0.01ミリメートルに満たない程度の多数のひっかき傷がストーンの軌道を変えているのだとした。進行しつつ回転するストーンは軌道に対して数度程度斜めになった微小な傷をペブルの先端に作る。ランニング・バンド後部のストーンの微小な凹凸がこれに引っかかり、傷に沿うように動こうとするため横向きの力を生み出すのだとする。ニーベリらはこうした傷を顕微鏡写真で調べるとともに、ランニング・バンドを磨き凹凸を少なくしたストーンではカールの効果が現れないことを実験的に示した[42][43]。
ストーン左右での摩擦の非対称性は、通常の摩擦においては横向きの力を生み出せないためカールの説明とならないが、2000年にカナダのレイモンド・ペナー (A. Raymond Penner) は、摩擦が部分的に粘着的なものなら、ストーンの遅い側(反時計回りで左側)で優越的なピボット(旋回軸)として作用し、横向きの力を生み出しうると示唆していた[44]。これを発展させ、2016年以降、カナダのエドワード・ロゾウスキー (Edward Lozowski) とシェゲルスキーは、ピボット=スライド・モデル (pivot-slide model) と呼ばれるモデルを提案している[45][32][33]。 このモデルでは、断続的で瞬間的なペブルによる引っかかりをピボットとしてストーンがわずかずつ進行方向を変えるものと考える。ロゾウスキーらはこのモデルにより、ストーンの初速やペブルの形状・密度、氷の硬さ・ヤング率などのパラメータをもつ簡易な式で停止までのカールの量を表せるようになったとしている。また、式はストーンの回転角速度に依存せず、他の説では説明が困難だった回転の速さがカールの量とほとんど関係しないという特徴的な性質も説明できるとする[46]。
いずれにしても、ストーンがカールする量が氷面のペブルの状態やコースの使用状況、氷面の温度、ストーンの速度などに応じて、敏感な変化を起こす状態に調整されていることは、ストーンの動きの状況に応じた鋭敏な変化をもたらし、ひいては競技者の氷の読みに対する経験とそれにもとづく判断が競技において重要なものとなる物理的な要因となっている。
スウィーピングによりストーン前面の氷をこすることで、ストーンの摩擦を減少させ速度を保つことができる。結果的に速度を保ったストーンは、大きくカールし出す地点も遅くなり、またハウス内では曲がったコースのままより先へと進めることができる。一般にこの摩擦の減少は、ブラシとペブルとの間の摩擦熱によってペブルの表面をわずかに溶かし、水の膜を形成しているためだと説明される。一方で、ウェスタン・オンタリオ大学の研究者は、計測の結果温度上昇はわずかなものであり、実際には氷を溶かすのではなく、スウィーピングによって氷の微粒子が形成されてそれが潤滑剤として働いているのだとしている[47]。
またスウィーピングには、ブラシをストーンの進路に対して斜めに置くとする古い流儀と、直角に置くとする最近の流儀とがあるが、生体力学研究者のジェンキン (Tom Jenkyn) は、前者が均一に氷を暖めるのに対し、後者はムラができ効率がよくないとしている[31]。このスウィーピングにおいて、遅くても力をかける方がよいか、力が弱くなっても素早くスウィープする方がよいかという2つの選択肢がある。マーモー (B.A. Marmo) らによるモデル解析では、ブラシの位置だけを考えた場合にはかける力を大きくする方がはるかに効率的であるが、同じ氷を複数回ブラシがこするほうがさらに熱が発生するため、全体としてはハウスの近くでは素早くスウィープする方が効率的であるとする。ただしストーンが素早く動いている間は同じ場所をスウィープできないため、力をかけたスウィーピングの方が効率的である[48]。
カーリングの大会はおおむね、参加チーム全部、または参加チームを複数のグループに分けて総当たり方式(ラウンドロビン)により決勝トーナメント進出のチームを決める。ワールドカーリングツアーでは、3回敗戦したチームから大会を去るトリプルノックアウト方式の予選が一般的である。
決勝トーナメントはノックアウト方式で行われることが多い(オリンピックなど)が、日本選手権ではページシステム方式で行われている。世界選手権では、2017年までは上位4チームによるページシステム方式で行われていたが、2018年からは上位6チームによるノックアウト方式に変更されている。
同一勝敗数の複数チーム間の順位は上述のタイブレーク方法によって決定される。
ここではワールドカーリングツアー(WCT)が関わる大会について述べる。
ここでは世界カーリング連盟(WCF)が関わる大会について述べる。
なお、イギリス・アイルランドについては、冬季オリンピック以外はイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドカーリング協会(アイルランド・北アイルランド)で別々に代表を送っている。
日本の国内大会は大小様々なものがあるが、ここでは世界大会に直結する日本選手権に関わる大会について述べる。
カーリングからはいくつかのニュースポーツが派生している。障害者スポーツである車いすカーリングは氷上で行われる。ユニカール、フロアカーリング、カローリングは、いずれも氷上ではなく床の上で競技する。
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