テレビショッピングは、テレビの視聴者商品又は役務を紹介して購入を促す内容の生活情報番組[1]、あるいはコマーシャルメッセージを媒介として売買契約を成立させる通信販売の一形態である。「テレショップ」と略されることもある。

概要

販売者の販売員や芸能人、演出上のいわゆるサクラなどが、商品の使用法を実演しながら利点・価格などの情報を提示して商品を紹介し、購入申し込みや問い合わせ先であるフリーダイヤルなどの電話番号(このため番組名をテレフォンショッピングとする場合もある)やショッピングサイトURLなどを提示する。

スタジオ内に組まれたセットで出演者が紹介するほかに、屋外のロケーション撮影や長期間の事前収録など様々な演出形態がみられ、複数商品を紹介する従来形式に加え、特に1商品を採り上げたインフォマーシャルも増えつつある。通信販売だけを放送するテレビショッピング専門チャンネルも複数存在する。

扱う商品は、電気製品装身具化粧品日用品健康食品ダイエット商品、学習用品、スポーツ用品、新聞、金融商品、通信販売限定CDパッケージツアー保険商品など多種多様である。

商品の紹介方式

録画番組と生放送がある。

生コマーシャル方式
生放送の生活情報番組ワイドショーなどのスポンサーは、通販専門会社や百貨店などの通販部門を擁する小売業者らが多く、数分間の生コマーシャル形式のコーナーが設けられる。
キャラバン方式
テレビショッピング番組の多くはこの方式で「協賛型」とも言われる。通販会社とは別に設けられた番組の企画会社が、スタジオの手配、タレントの選定、演出、媒体計画など全ての制作を受け持つことが多い。商品を宣伝するメーカーや販売会社は、企画会社に300から650万円前後の協賛金を支払い、出演者がそれらの協賛会社の商品を紹介する。1商品を2.5から4分間、60分の放送枠内で15 - 18商品ほどを紹介する。主に全国のローカル局で1から2か月間放送してキャラバン方式とも称される。自社で制作から媒体購入するよりも比較的リスクが少ないといわれている[誰によって?]
インフォマーシャル方式
バラエティ番組ドキュメンタリー番組の手法を用い、1社が商品を提供し、30分から1時間の放送枠内でおよそ1商品について繰り返して説明する番組を、日本で「インフォマーシャル」と称する。日本での火付け役は1997年放送開始の三井物産テレコンワールド」(テレビ東京ほか)[2] で、現在はオークローンマーケティングのショップジャパン、プライムショッピングなどがある。30秒から120秒程度のタイムCMスポットCMで、専用に制作した番組(番組の再編集を用いる場合もある)で商品を紹介する例もみられる。同じ商品の繰り返し放送や放送枠の拡大や縮小など自在な調整が可能だが、時間帯や放送局により電波料が異なり高額になる可能性がある。本方式は視聴者が「通販のCMを観る」事前認識を抱かずに視聴するため、衝動的な購買意欲に依存する。現在はCS放送が主流である。

放送の形態

日本のテレビショッピングは当初、主として日中のワイドショー内での生CMや、フィルムまたはVTR収録による1から2分程度のタイムCM又はスポットCMが中心であった。現在も「日本直販」の名で知られる総通や、日本文化センターがCMでのテレビショッピングを制作している。その後、一般の番組を模倣した15分から1時間程度の番組として制作されるケースが多くなった。

番組には、テレビ局やその系列会社が独自に制作するものと、通販会社が独自に番組を制作し、ローカル局の放送枠を買い取るものの2種類がある。通販会社による番組制作の方法としては、フィラー枠・ローカルセールス枠などの番組枠を購入した上で放送[3] する形式が一般的である。

放送局がテレビショッピング事業に進出する例がある。逆に、通販会社自らがケーブルテレビ衛星放送専門チャンネルを立ち上げ、そのチャンネルのすべての時間帯でテレビショッピング番組を放送している例がある。地上波テレビ基幹放送事業者については、放送枠全体に対する番組種別ごとの割合を確認する目的から、半年ごとに番組種別とその放送時間を公表することが義務付けられているが(放送法第107条及び放送法施行規則第4条4項)、通販番組については特に細分して公表することを求められている(放送法施行規則第4条5項)。

民放BSデジタル局(衛星基幹放送事業者)では、総務省の認定基準で「30%以下」とすることが要求されている。[4]

このほか海外製の商品または海外の業者が開発した商品は、当該国で制作された映像を編集し、日本語吹き替えを付けて放送することもある。

法規制・自主規制

特定商取引に関する法律

通信販売にはクーリングオフ制度がなく、これを背景に2008年頃には、健康食品や化粧品などを中心に「番組の印象と違う」「返品を受け付けてもらえない」など消費生活センターへの苦情相談件数が増加していた[5]。そこで2009年12月から、返品特約事項表示義務を怠り広告で返品に関する規定が明示されていない場合のみ、クーリングオフに準じた制度が導入された。

特定商取引に関する法律(特定商取引法)の通信販売に関しては、返品の特約を表示していない場合は「商品の引渡しを受けた日から8日以内」であれば、送料を自己負担の上で返品を可能とするよう、2008年6月に改正され、公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されることになっており、2009年12月1日に施行された。

各団体の放送基準にもとづく表現規制

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)や医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)違反にならないように公正取引委員会(公取委)が監視しており、少しでも法規制に抵触した表現があった場合は番組制作会社や出演者が公取委に呼び出され、厳重注意などの処分が行われる事例がある[6]

医薬品医療機器等法第68条[注釈 1] においては、『医薬品など厚生労働省の承認又は認証を受けていないものについて効能・効果又は性能をうたってはならない』と定められており、かつ、実際には効果がないのに「病気が治る」「防止できる」などと宣伝することは景品表示法にも違反し、医薬品医療機器等法違反なら行政処分実刑、景品表示法違反なら消費者庁による措置命令の対象になり得る。

テレビショッピングで扱われた健康食品、浄水器、美容商品などの宣伝がこの規定に抵触する例が続出し、実際に放送を打ち切った例(二重マル健康テレビ#薬事法違反の恐れも参照)が出たことから、日本通信販売協会および放送事業者の団体(日本民間放送連盟衛星放送協会日本ケーブルテレビ連盟)は、テレビショッピングに関わる放送基準を相次いで改正し、宣伝の際の表示に対する自己チェックを強化した[7]。その後、テレビショッピングでは商品説明や客が感想を述べる場合には原則として「個人の感想であり、(商品の)効能・効果をあらわすものではない」という主旨で注意を促すテロップを出したり、「健康によい」などの効能効果ではなく、「飲みやすい」「栄養成分がこれだけ含まれている」などといった事実の表現をすることが習慣となっている。もっとも、当局による法律の解釈、運用によっては今後の対応がさらに変化する可能性もある[6]

歴史

  • 1970年 - フジテレビ平日夕方の生活情報番組東京ホームジョッキー』の出張販売企画「産地直送バーゲン」のスピンオフとして開始しヒット企画となる。これが日本初のテレビショッピングである。
  • 1971年 - 東京12チャンネル(現 テレビ東京)の生活情報番組『今日は!奥さん2時です』で、髙島屋がテレビショッピングコーナーを開始。翌1972年には日本教育テレビ(現 テレビ朝日)『奈良和モーニングショー』にも拡大。
  • 1972年 - 『東京ホームジョッキー』が『リビング11』にリニューアルし、産経新聞の分冊『サンケイ ホームニュース』のリビング面(第一次オイルショックの影響により1973年12月に終了。サンケイリビング新聞社「リビング新聞」の前身)と連動。
  • 1976年 - 日本通信教育連盟(現:ユーキャン)がスポットCMでテレビショッピングを開始。
  • 1977年 - 日本直販(総通)がスポットCMで生活用品のテレビショッピングを開始。
  • 1980年3月 - 番組を私企業の営利目的に使用しているという批判の高まりから、日本民間放送連盟は放送基準にテレビショッピング・ラジオショッピングに対する規定を追加。自主規制として「通信販売の広告に関する留意事項」、「生活情報を提供する番組におけるテレビ(ラジオ)ショップの取り扱いに関する留意事項」(同年5月)をまとめる。後者の規定がテレビショッピング・ラジオショッピング番組を「生活情報番組」と位置づける根拠となっている。
  • 1983年5月 - フジテレビ『リビング11』の終了を受け、同番組の司会者・出演者・主要スタッフらの制作で、テレビ東京『レディス4』を放送開始。三越一社提供で、三越の通信販売を中心に据えた番組編成とする。『リビング11』は2時台に移動。『リビング2』として、リニューアルした。
  • 1994年7月[8] - テレビ東京『テレコンワールド』(三井物産の一社提供)で、深夜の放送休止枠で放送開始。以降はこれを先駆けとしてテレビ局各社で深夜の通販番組、放送時間30分以上の通販番組の放送が始まる。
  • 1996年11月1日 - 通信販売専門チャンネル『ショップチャンネル』(住友商事、アメリカHSN, Inc.の合弁)と『MALL OF TV』が放送開始。日本初の通信販売専門チャンネルとなる。
  • 2001年 - 通信販売専門チャンネル『QVCジャパン』が放送開始(アメリカQVC Inc.、三井物産の合弁)。

専門チャンネル

テレビショッピングの専門チャンネルは、新4K8K衛星放送スカパー!スカパー!プレミアムサービスケーブルテレビ光放送IP放送で放送されている。視聴料金は無料。

●=日本国外でも展開されているもの

スカパー!・スカパー!プレミアムサービス共通

放送終了したチャンネル

スカパー!プレミアムサービスのみで放送

放送終了したチャンネル

スカパー!のみで放送

現在無し。

放送終了したチャンネル
  • 147ch ベルーナお買物テレビ(2006年8月31日放送終了)
  • 183ch ディノスチャンネル(2007年3月31日放送終了)
  • 185ch プライム365.TV(2012年3月31日放送終了)

ケーブルテレビ

ショップチャンネルとQVCは、ケーブルテレビによる再送信の視聴者が多い。地上アナログ波で多く再送信されており、電波障害地域やCATV導入集合住宅などの非加入者も通常のテレビ受像機などで常時視聴可能である。視聴可能チャンネル名やチャンネル番号はケーブルテレビ局によって異なる。

日本国外の通販専門チャンネル

  • ホーム・ショッピング・ネットワーク英語版

主な企業・番組一覧

現在放映中の企業・番組

など

複数社による企業・番組

  • 朝から欲バリ毎日放送
  • ええもんもりもり! せのぶら本舗(朝日放送『せのぶら!』の1コーナー)
  • ABCテレビショッピング(朝日放送)
  • 買っトク!(TBS)
  • 買いテキ!通販ツウTBS
  • 買物大図鑑(TBS)
  • 新生活提案セレクションF(テレビ朝日系・BS朝日)
  • 新生活提案セレクションX(テレビ朝日系・BS朝日
  • BS-TBSプレミアムコレクション (BS-TBS)
  • ポシュレシリーズ(日本テレビ
    • 気になる通販ランキング!ポシュレデパート深夜店/PON!PON!ポシュレ ※一部NNS系列局でも放送(2011年10月~BS日テレにてBSポシュレとして2番組で放送されたものを再編集し、不定期的に放送)
  • 3つ星ショッピング(朝日放送)[注釈 21]

など

過去放映をしていた企業・番組

など

米国のテレビショッピング

アメリカではジョセフ・シーゲルが世界最大の民間造幣所であるフランクリン・ミント社を設立し、各国から貨幣メダルの鋳造を委託されていたが、1964年ダグラス・マッカーサーの死去をきっかけに著名人の銀製メダルを月間限定版で発売して大ヒットとなった[9]。ジョセフ・シーゲルは1980年にフランクリン・ミント社をワーナー通信社に2億2500万ドルで売却し、この資金を元手に1986年にテレビショッピング専門チャンネルであるQVCを設立した[9]。QVCは2010年までに米国や日本など4か国で約1億4000万人の客を擁し、米国国内だけで年間70億ドル以上を売り上げる企業となった[9]

脚注

参考文献

関連項目

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