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開かずの踏切(あかずのふみきり)とは、遮断機が降りた状態が長時間続き、自動車や歩行者の通行が困難な踏切。運行本数が多い鉄道路線や、複数の線路が並走している区間で、特に駅近くが「開かずの踏切」となりやすい。
日本での呼称であり、国土交通省は自動車・歩行者から見て踏切道が遮断されている時間がピーク時において1時間(60分)当たり40分以上と定義し、2021年9月末時点で500カ所以上あるとしている[1]。
「開かずの踏切」は、20世紀以降の日本語。古くからの日本語「開かずの門(不開門、あかずのもん)」「開かずの間(あかずのま)」が関連していると考えられる。
英語には該当する語は存在せず、この状態を表すのには "railroad crossing without opening"(あるいは "railroad" を略す)などという言い回しが見受けられる。
国土交通省(旧・運輸省)では、「緊急に対策の検討が必要な踏切」として、「ピーク時の遮断時間が1時間あたり40分以上となる踏切」[2]と定義される「開かずの踏切」と、「1日あたりの踏切自動車交通遮断量が5万台時以上となる踏切」または「1日あたりの踏切自動車交通遮断量と踏切歩行者等交通遮断量の和が5万台時以上かつ1日あたりの踏切歩行者等交通遮断量が2万台人時以上になる踏切」と定義される「ボトルネック踏切」と、「歩道が狭隘な踏切」を挙げている[1]。
このうち開かずの踏切は、1999年(平成11年)度に日本全国に約1,000箇所、2007年(平成19年)度に約600箇所あり、その半数にあたる約300箇所は東京都内にあった[3]。近年は連続立体交差事業等の進展で開かずの踏切の除却が積極的に進められており、東京都内においては2007年度から2012年(平成24年)10月までに80箇所が除却され、以後も70箇所以上を除却する計画がある[4]。
大都市圏を走る鉄道路線の朝夕の通勤ラッシュ時には列車の運行本数が極めて多いため、踏切の遮断時間が長く、特に通過列車が多い複線・複々線の踏切では上下対向・後続の列車の通過が重なり、開かずの踏切になりやすい。さらに駅至近の踏切では、停車列車の過走防護のため電車が踏切を通過するかなり前のホーム入線時から遮断機が下りていることが多く、遮断時間がより長くなる。
開かずの踏切では、長い踏切待ち時間が自動車などの交通渋滞を発生させ通行者のストレスを高める。通行者や自動車が開いている短い時間に急いで一斉に通行するため、混雑による転倒・衝突事故などを誘発するほか、高齢の歩行者や幼児連れの親子などが踏切が開いている間に渡りきれない事態が発生したり、特に通勤時間帯では仕事や学校に遅刻しないようにという一心から、歩行者・自動車が待ち時間を嫌って遮断機が下りかけているもしくは下りた後にも関わらず遮断器を潜り抜けて強行突破(駆け込み横断)し、人身事故・物損事故の要因となっている。踏切待ちによる時間損失を貨幣価値に換算すると年間約1兆5,000億円にも上ると試算されている[5]。
開かずの踏切の抜本的な対策は、線路や道路の立体交差化(高架化・地下化)による踏切の除却であり、線路の連続立体交差化事業は国からの補助のもと自治体の負担によって行われる。近年では開かずの踏切の解消が積極的に進められているが、立ち退きや工事騒音や日照権問題などによる住民の反対、財政状況の悪化、地価や資材価格の値上り、既設路線を運行しながらの工事により、事業に莫大なコストと時間がかかる実態は依然として解消されていない。
開かずの踏切については、交通の円滑化、踏切事故防止、地域分断の解消を目的に、踏切の立体化をはじめとした対策がとられている[6]。
以下の3つは踏切の立体化を伴わない対策である。
道路交通が多く、鉄道路線が少ない場合、線路の高架化もしくは地下化という方法を取ることが多い。立体化により複数の踏切をまとめて除却することを連続立体交差化という。
道路側が単独で高架化もしくは地下化することにより踏切を立体化することを単独立体交差化という。鉄道路線が多くて連続立体交差化が難しいなどの理由でこの方法がとられることもある。
歩行者が多い場合は、跨線橋や地下道を設置するだけでも意味がある。
最終的に踏切そのものを無くす方向で対策し、根本的解決を図る。
JR東日本横浜支社は、南武線向河原駅の踏切で、列車の種別(同駅を通過する快速列車か各駅停車か)を識別して踏切の遮断を1時間当たり数分短縮する「賢い踏切」としての運用を2022年12月に始める予定である[10]。
ここでは、日本において、2020年度(令和2年度)までに改良もしくは改良計画の策定が義務付けられた開かずの踏切について解説する。
2016年(平成28年)4月の改正踏切道改良促進法の施行を受けて、自治体や鉄道会社は2020年度までに開かずの踏切等の問題のある踏切を改良すること(連続立体交差事業などの大規模計画の場合には改良計画の策定)が義務付けられた。これを受けて国土交通省は同月に「改良すべき踏切道」の第1弾として全国58箇所の踏切を指定した。このうち「開かずの踏切(第2条第3号[11])」は東京都27箇所、その他3箇所の計30箇所であった。第1弾指定の改良すべき踏切道のうち開かずの踏切は次のとおり[12][13][14]。
2016年(平成28年)6月、国土交通省は「課題のある踏切道」として全国1,479箇所を抽出し、それらの課題や対策方針を取りまとめた「踏切安全通行カルテ」を公表した[15][16]。2017年(平成29年)1月、国交省は「改良すべき踏切道」の第二弾として新たに529箇所を指定した[17]。
課題のある踏切道とは、以下の問題がある踏切道のこと[16][18]で、この中にも多くの開かずの踏切が含まれている。
分類 | 詳細・指定基準等 |
---|---|
開かずの踏切 | ピーク時間の遮断時間が1時間当たり40分以上。 |
自動車ボトルネック踏切 | 交通量が多く渋滞の原因となっている踏切。頻繁に遮断したり遮断時間が長く交通の流れを大きく阻害している踏切。1日の踏切自動車交通遮断量が5万以上。 |
歩行者ボトルネック踏切 | 歩行者の滞留の原因となっている踏切。1日あたりの踏切自動車交通遮断量と踏切歩行者等交通遮断量の和が5万以上、かつ1日あたりの踏切歩行者等交通遮断量が2万以上。 |
歩道が狭隘な踏切 | 前後の道路に比べ歩道が狭い、もしくは前後の道路に歩道があるのに歩道がない踏切のうち、 1) 以下全てを満たす ・前後道路の車道部幅員が5.5m以上 ・前後の歩道に比べ踏切内の歩道が1.0m以上狭い ・1日の自動車交通量が1千台(通学路では500台)以上(1日当たりの歩行者交通量が500人を越える場合は除外) ・1日歩行者交通量が100人(通学路では40人)以上 2)上記の基準のうち1つ以上で基準を大幅に上回るなど緊急的な対策が必要な箇所 |
通学路要対策踏切 | 通学路にもかかわらず歩道がない、あるいは狭隘であったり、危険性が指摘されている踏切。 |
事故多発踏切 | 事故が多発する危険な踏切。事故の発生が直近5年以内に2回以上。 |
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